分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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年間特集「波」: 総合論文
  • 尾崎 幸洋
    原稿種別: 年間特集「波」: 総合論文
    2026 年75 巻4.5 号 p. 175-189
    発行日: 2026/04/05
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

    赤外,ラマン,近赤外,遠赤外,テラヘルツ分光法のことをここでは振動分光法5姉妹と呼ぶこととする.分子振動は分子の構造や化学結合の強さなどを敏感に反映するので,振動分光法は分子の同定や分子構造の研究に非常に有用である.また,分子と周辺の環境との相互作用(例えば水素結合)の研究にもすぐれている.振動分光法5姉妹はそれぞれに利点を持つ.たとえば,赤外,ラマン分光法は分子の同定,分子構造の研究いずれにも非常に強力である.近赤外分光法は,丸ごとあるがままの非破壊分析に強い.遠赤外,テラヘルツ,低波数ラマン分光法は格子振動,骨格変角振動などによるバンドを与え,分子間相互作用の研究などに有用な情報を与える.本稿ではこの5姉妹の歴史,原理,特徴,応用などについて最近の応用例も含めて議論する.

  • 宮川 晃尚
    原稿種別: 年間特集「波」: 総合論文
    2026 年75 巻4.5 号 p. 191-201
    発行日: 2026/04/05
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

    マイクロ粒子をガラス基板に固定し,超音波—重力複合場を印加すると,マイクロ粒子はガラス基板から解離する.このときに必要な印加電圧は,マイクロ粒子の密度やマイクロ粒子とガラス基板間の分子間結合力に依存する.本論文では,粒子表面で反応を起こして密度または分子間結合力の変化を誘起し,その結果得られる粒子解離電圧の変化から高感度計測や分子会合体の平衡定数の定量を行った研究について述べる.例えば,マイクロ粒子に金ナノ粒子(AuNP)を結合することで,マイクロ粒子の密度変化を誘起できる.これにより,粒子解離電圧が変化するため,その変化量からAuNPの結合量を定量できる.また,マイクロ粒子とガラス基板間の結合反応を変化させることで,分子間結合力の変化に基づく計測ができる.さらに,分子間結合力と結合定数に相関があることを利用し,粒子—ガラス基板間の分子会合体の結合定数の定量が可能である.本総合論文では,高感度計測法及び平衡定数定量法について,著者の研究を中心に述べる.

  • 北濱 康孝, 合田 圭介
    原稿種別: 年間特集「波」: 総合論文
    2026 年75 巻4.5 号 p. 203-210
    発行日: 2026/04/05
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

    表面増強ラマン分光(SERS)は,同時に多種類の分子を検出可能な分析手法であるラマン分光法の一種であり,単一分子の検出も可能な感度を持つ.しかし,分析手法として広く応用されるためには,信号の均一性,再現性や測定基板の耐久性に欠けるという難点があった.そこでそれらの難点を解消するために,従来のように電磁場増強機構に基づいた貴金属ナノ構造SERS基板ではなく,化学増強機構に基づく新たな材料を用いたSERS基板の開発が進められている.著者らはさまざまな材料を用いた化学増強型SERS基板を開発してきており,それらを紹介する.これらのSERS基板は非金属材料で作製されており,高い均一性,再現性,耐久性を示し,従来の金属SERS基板の難点を克服した.また,化学増強型SERS基板の欠点であった測定感度を改善することにも成功した.このような性能を持つ化学増強型SERS基板が示したその他の特徴も通して,その応用可能性を検討する.

年間特集「波」: 報文
報文
  • 加藤 毅, 山本 佳奈, 水口 恵美子
    原稿種別: 報文
    2026 年75 巻4.5 号 p. 215-222
    発行日: 2026/04/05
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

    ポリフェノール化合物の高精度な分析において水素核(プロトン)の定量NMR(qHNMR)は有用な手法であるが,通常は炭素結合プロトン(C-H)が定量シグナルに用いられる.構造的特徴であるフェノール性水酸基(Ar-OH)のシグナルは,重水素置換やプロトン交換によって容易にシグナルの消失や広幅化を来すため,定量対象から除外されてきた.本研究では,このAr-OHを信頼性の高い定量シグナルとして活用することを目的に,金属塩添加によるシグナルの先鋭化効果を検討した.イソフェルラ酸,没食子酸,ルチンをモデルとし,塩化マグネシウム六水和物(MgCl2)を飽和させたDMSO-d6を溶媒に用いた結果,すべてのAr-OHシグナルにおいて顕著な先鋭化が認められた.ルチンにおいては,複数のAr-OHに加え,糖鎖由来の水酸基(OH)シグナルについても安定的に観察できる可能性が示唆された.各Ar-OHから得られた定量値はC-Hシグナルの結果と良好に一致し,高い再現性を示した.本手法は,利用が限定的であったAr-OHを,ポリフェノール化合物の精確な定量及び純度評価に資する新たな指標へと転換する有用な技術である.

ノート
  • 島村 紘大, 浅野 拓也, 堀 千春, 中村 圭介, 羽成 修康
    原稿種別: ノート
    2026 年75 巻4.5 号 p. 223-228
    発行日: 2026/04/05
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

    高温高圧水用の高速液体クロマトグラフを用いた多孔質炭素材料(PCM)からのペルフルオロアルキルカルボン酸(PFCAs)脱着法を開発した.PCMからのペルフルオロオクタン酸(PFOA)の脱着効率を基に条件を検討したところ,温度を150℃,圧力を3 MPa,PCMを繊維状活性炭とした場合において,PCMに吸着したPFOAを高効率に回収可能であった.また,トリフルオロ酢酸(TFA)とPFOAの脱着効率を既存の脱着法であるアルカリ脱着法及び真空加熱脱着法と比較した.その結果,高温高圧水脱着法によるTFAとPFOAの脱着効率(TFA: 100 %,PFOA: 105 %)は,アルカリ脱着法(TFA: 93 %,PFOA: 64 %)及び真空加熱脱着法(TFA: 82 %,PFOA: 45 %)で得られた脱着効率と比較して,特にPFOAに対して高い値を示した.以上の結果は,高温高圧水を用いることで,PFCAsを吸着したPCMを安全かつ低環境負荷に再活性化できる可能性があることを示唆している.

  • 野田 博行
    原稿種別: ノート
    2026 年75 巻4.5 号 p. 229-234
    発行日: 2026/04/05
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,室温における水-エチルアルコール系の気化挙動を気化量と液温変化から検討した.内径28mmのシャーレに,約5cm3のエチルアルコール溶液を注入し,気化量は電子天秤,温度変化はデジタル温度計を用い測定した.その結果,エチルアルコールと水の揮発量の重量比が30wt%まで,2.56付近の値を示し,この値はエチルアルコールと水の分子量比が1:1の値に相当することが明らかとなった.また,液温低下(ΔT)とエチルアルコールと水の比の関係を調べたところ,値が1.5を超えたところで液温低下が大きいことが明らかとなった.さらに,溶解熱による温度上昇は,約30wt%エチルアルコール水溶液で極大を示した.これらの結果から,エチルアルコールと水の気化熱と水素結合が切れることによる解離熱を考慮すれば,本研究の一連の気化挙動が説明できることを示唆された.

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