乱流においては, 速度や圧力の不規則な巨視的変動に伴い, 乱れのない層流運動の場合に比べて, いろいろな物理量の輸送が通常きわめて活発に行われる. その程度を定量的に見積もることは, 乱流理論にとって最も重要で興味深い課題の一つであるが, 流体運動を支配する方程式の非線形性が災して, 輸送機構を一般的に定式化する問題はまだ解決されていない. この解説では, 基本的な実験事実を手がかりに現象をモデル化して当面の要求にこたえようとする試みの過去と現状を展望し, 乱流輸送の理解に向けられた努力の一端を紹介する.
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