人類の将来のエネルギーとして原子力に大きな期待が持たれている. しかし, 原子力発電所の現状, またウランの埋蔵量から考えると, 原子力が, 近い将来において, 石炭はもちろん石油にかわることは不可能と考えるほかはない. これに対し, 使用済燃料の再処理によるリサイクル, また, ウラン-238の大部分をエネルギー資源として使うという高速増殖炉計画があるが, これも現状と種々の障害を考えると, 仮にできたとしても30年以上も先の話である. それに再処理は常に核兵器問題に結びつく. 原子力発電所の危険性は, 平常運転の場合についても, 事故の場合についても非常に不確実なことしかわかっていない. 原子力に大きく依存した日本のエネルギーの長期の見通しは考えなおすべきである.
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