実験技術の長足の進歩に伴い, 二個以上の電子が同時に基底外の高い軌道に押し上げられて生じる多重励起共鳴状態の生成と崩壊という動的な現象が多く観測されてきた. それに促され, 共鳴状態のエネルギー準位, 幅, あるいは共鳴付近での散乱断面積を決める精密な理論が種々提唱され, 計算値と実験値の差は日増しに狭まっている. 反面, 準安定性を大きく左右する電子の相対的な運動や電子の経験する相互作用の有効的な強さを示すのは難しかった. けれども, 超球座標系(hyperspherical coordinates)を使えば分子のポテンシャルエネルギー曲線に似た有効ポテンシャルを原子についても計算できる(§1, b c). それに基いて, 実験観測量の物理的解釈を見通しよくできるようになってきた. 本稿では超球座標法を, 原子内の二電子励起(§1, §2a)を中心にして解説する. さらに, 三原子分子の振動準位決定の話題(§2b)や原子核への二, 三の応用例(§2C)についても簡単に述べる.
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