普通の分子場近似をランダム磁性体に適用しようとするとき, その系のランダム性からくる場の分布をどう扱うか工夫が必要である. これまでCPA等いろいろな方法が考案されているが, 我々は内部磁場の分布を考え, その分布関数を定める積分方程式を導く方法を開発した. もととなる近似の分子場近似のレベル, ベーテ (対) 近似のレベル, クラスター (四面体等) 近似のレベルに応じて得られる積分方程式も異るが, これを解くことにより, ランダム磁性体の諸物理量, 特にスピングラスのキュリー温度, スピングラス転移温度, 等を求めることが出来る. 得られた相図は Eu
pSr
1-pS 等の実験結果と定性的に一致する. 従来のスピングラスの代表的理論であった, 長距離のランダム相互作用をもつシェリントン-カークパトリック (Sherrington-Kirkpatrick) モデルの彼等の解で問題となっていた低温での負のエントロピーの問題は, いまのモデルによる解析では生ぜず, 絶対零度のエントロピーは正の小さい値となる.
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