JET (Joint European Tokamak) の実験結果は実質的にエネルギー・ブレイクイーブンを達成し, またD-T燃料で中性子出力2.2MJを得るに至った. この結果, トカマク型でD-Tベースの核融合が点火条件を達成する見通しはついたと言える. この事実はプラズマ物理学の大きな成果である, 賞賛に値する. しかし, D-Tベースの核融合炉を実現するには, 安全性, 環境性及び経済性を同時に満たす公共受容性を見出さねばならず, これに対する見通しは極めて厳しい. このため公共受容性が得やすいD-
3Heベースの核融合の研究を本格的にスタートすべき時期が来ている. D-
3Heの点火条件はD-Tのそれに比べ温度と密度の積で約20倍の大きさが要求されるが, 中性子の両が2桁少ないことを考えると, 浮上超伝導体を用いるなど斬新な炉の設計が可能になる. D-
3He核融合はエネルギー生産以外にも陽電子源の製造や核廃棄物の処理に利用できる陽子工場としての応用が考えられる. この場合, 必ずしも点火条件の達成は要求されない.
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