シンクロトロン放射光を用いた物質科学や生命科学の研究は20年以上の歴史を持っている.この間放射光の持つ優れた特徴を生かした多くのユニークな研究成果が生み出された.その中には,純粋な物理学や化学,生物学のみならず,ULSI(Ultra Large Scale Integration)製造に不可欠と言われているX線リソグラフィ技術を中心とするエレクトロニクスの分野においても大きな成果が得られ,次世代電子デバイスの作製にとって放射光は不可欠な技術になりつつある.物理や化学とエレクトロニクスの境界領域は,(1)超微細加工,(2)原子オーダ制御の放射光励起薄膜プロセス,(3)原子オーダの表面・界面解析であり,いずれも各々が密接に関連し合っている分野である.21世紀のナノテクノロジーを実現するためには,従来のように物理,化学,エレクトロニクスが別々に進むのではなく,相互に連携をとってその境界領域を産・官・学・国際にわたって共同研究を行う必要がある.本稿では,高度情報化技術の開発を使命とする1企業の研究者から見た今後の放射光研究について考えてみた.
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