炭素は,固体としてグラファイトとダイヤモンド,そしてフラーレン固体の多形を持つだけでなく,アモルファスカーボンとしても活性炭やカーボンブラック,カーボンファイバー等,様々な姿で我々の周りに存在している.そのような炭素材料の持つ多形性をミクロな視点で眺めると,それらはspからsp
3すなわち2配位から4配位迄の結合形態の混在と,熱力学的に安定なグラファイトの6員環ネットワークへの,5員環や7員環などの欠陥の混入という,炭素原子ネットワークの2種類の乱れに起因していると考えられる.これは同じIV属のシリコン原子には見られない,炭素の極めて特異な性質である.フラーレン分子群の発見は,その後者を特にクローズアップさせたと言うことができるであろう.我々は,炭素ネットワークのとり得る多形性を,多面体の観点で眺めることにより,その幾何学的構造を系統的に議論する.更に,負の曲面を持つ多種多様なフラーレンネットワークにおいて,ミクロなレベルの構造に関する幾何学的パラメータによって,その電子状態がいかに多様性を持って変化するかを示す.
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