日本物理学会誌
Online ISSN : 2423-8872
Print ISSN : 0029-0181
60 巻 , 9 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 花村 榮一
    2005 年 60 巻 9 号 p. 688-696
    発行日: 2005/09/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    1900年プランクは, 古典物理学では説明できない溶鉱炉中の光エネルギーの波長分布の謎を, 光量子仮説を導入して解決した.これが量子力学の誕生である.1905年この光の粒子性(光子)を用いて, アインシュタインは光電効果を説明した.光が波動と粒子の二面性を持つという非日常性は, ハイゼンベルグの不確定性原理で理解できた.しかし, 青色の1光子が赤色の2光子に分割されるパラメトリック過程で発生する2光子の量子もつれ合い(強い相関)は, 2つの光子を遠く離しても存在し続ける.このもう一つの非日常性を1935年アインシュタインらは指摘した.これも, 量子力学特有の非局所性として理解され, 最近は量子コンピューターと量子通信に使われようとしている.レーザー光の発明は光学と工学に革命をもたらし, 金属加工に用いられる一方で, 人類は10-9Kのオーダーの超低温まで原子系を冷却できるようになった.その結果, 原子系はボーズ・アインシュタイン凝縮やフェルミ凝縮を示して, 波動として振舞う.この百年の歩みはアインシュタインに負うところが大きかったが, 最近は日本からの寄与も大きくなりつつある.これらを概観する.
  • 森田 浩介
    2005 年 60 巻 9 号 p. 698-707
    発行日: 2005/09/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    我々は, 独立行政法人理化学研究所の重イオン線形加速器からの70Znビームを209Bi標的に照射し, ビーム核と標的核との完全融合反応によって合成される, 原子番号113, 原子質量数278の原子核278113の崩壊を観測することに成功しました.ビームやその他実験にとってバックグラウンドとなる粒子から分離された目的の核は, 半導体検出器に打ち込まれ, そこで4回の連続したα崩壊をした後, 自発核分裂を起こして崩壊しました.4回目のα崩壊の崩壊エネルギーと崩壊時間, それに引き続いて起こった自発核分裂の現象と崩壊時間は, 既知の崩壊連鎖である266Bh(原子番号107)→262Db(原子番号105)のものと矛盾がなく, これらの崩壊に先立って起こった3回の連続したα崩壊は278113→274Rg(原子番号111)→270Mt(原子番号109)→という, これまでに報告されていない新同位体の崩壊であると結論づけました.観測された原子数はわずか1ですが, 保守的な言い方をすれば, 今回合成された278113は, 実験的に原子番号と質量数を決定されたものとしては, 原子番号, 原子質量数ともに最大のものであり, 新元素の発見の可能性があると考えています.
  • 永目 諭一郎, 中原 弘道
    2005 年 60 巻 9 号 p. 707-709
    発行日: 2005/09/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
  • 篠原 厚, 塚田 和明, 永目 諭一郎
    2005 年 60 巻 9 号 p. 709-716
    発行日: 2005/09/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    原子番号が100を超すような非常に重い元素は, マクロ量で世の中に存在することはなく, その化学的性質は, 加速器を使って合成しつつ, 1個1個の原子を対象に調べることになる.それゆえ, 現在でも未知の領域であり, 普通の「化学」を議論できるレベルのデータはほとんどない.しかし最近, 理化学研究所(理研)の113番元素の合成で象徴されるように, 超重元素といわれる領域の研究が盛んになっており, その化学的研究も本格化してきた.本稿では, まず, 相対論効果により大きく変更されるかもしれない, 元素の周期表のこの最終端領域の化学的研究について簡単に説明する.次に, 世界の研究の現状と併せて, 最近, 日本原子力研究所(原研)で見出された104番元素ラザホージウム(Rf)の興味ある化学的性質を中心に, 世界のトップレベルに達しつつある我が国の超重元素に関する化学的研究の現状と将来を概観する.
  • 小浦 寛之, 橘 孝博
    2005 年 60 巻 9 号 p. 717-724
    発行日: 2005/09/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    近年盛んになっている超重元素合成実験において, より大きい原子番号の元素が発見されるに伴い, 原子核は一体どこまで存在するのであろうかという疑問が生じるのは自然なことであろう.軽・中重核領域の基底状態にある原子核の崩壊はβ崩壊が主であるのに比べて, 重・超重核領域ではα崩壊や自発核分裂に代表されるような多様な崩壊様式が重要になってくる.つまり, 原子核の存在領域の理解の鍵を握るのは超重核領域における核分裂であり, 現在, 原子核の微視的および巨視的な研究が進められている.本解説において重・超重核領域の崩壊様式についての全体像を示し, その存在領域についての一つの見解を示す.
  • 野村 亨, 阿部 恭久
    2005 年 60 巻 9 号 p. 725-732
    発行日: 2005/09/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    二つの重い原子核を融合させて超重元素核をつくろうとしてもなかなか融合しない.その上, わずかに融合しても複合核はすぐ分裂して壊れてしまい, 生き残って残留核になる割合がごく少ない.これが超重元素合成の最大の困難である.ここでは, まず, 何故融合し難いかを揺動力を含む最近の2段階模型に基づいて解説し, エネルギー散逸に伴うゆらぎが融合機構に果たす重要性を示す.次に, 複合核の脱励起過程を考察し, アルファ粒子放出を含む崩壊モードが高い生き残り確率を持つ可能性を指摘する.最後に, N=184の魔法数領域の原子核を合成する反応例について, 融合および生き残り確率の観点から議論する.
  • 坂口 英継
    2005 年 60 巻 9 号 p. 733-736
    発行日: 2005/09/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    心室細動と呼ばれる不整脈は心臓突然死の主因になっており, その発生メカニズムの解明, および細動を除去する有効な除細動法の開発が急務となっている.この高頻度で不規則な振動は, 心室内を旋回するスパイラル波動が複雑に分裂して生じると考えられている.非線形物理学の立場からスパイラル波動の不安定化のメカニズムおよびスパイラルカオスを除去する方法を考察する.
  • 真庭 豊, 片浦 弘道
    2005 年 60 巻 9 号 p. 736-740
    発行日: 2005/09/05
    公開日: 2008/04/14
    ジャーナル フリー
    微細な空間に閉じ込められた物質はバルクにない特異な性質を示す.本稿では直径が11Aから15Aの単層カーボンナノチューブ(SWCNT)に閉じ込められた水のX線回折実験について述べる.SWCNT空洞の1次元性にもかかわらず, 気体-液体-固体間の相転移挙動が観察され, 低温相が計算機実験によって予測されていたアイスナノチューブであること, また, 細いSWCNTでは常圧以下で室温氷が形成されることが示された.
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