近年,トムソンISIの学術文献引用データベース,Journal Citation Reports (JCR)で毎年公表されるImpact Factor (IF)が研究者,及び学術研究を取り巻く巷をにぎわせている.自分のよく投稿する学術雑誌や,とりわけ日本物理学会の会員にとってはJournal of the Physical Society of Japan (JPSJ)のIF値の変動は大きな関心事である.JCRは学術雑誌間の引用に関する様々なデータを提供し,雑誌の個性や重要度といった尺度として多くのことを読み取ることができる.中でもIFは特定の雑誌の最近の論文がどのくらい頻繁に引用されたかを示す尺度であり,その雑誌の重要度の一断面と解釈できる.注意したいのは雑誌の評価はIF値だけで一義的に決まるのではなく,例えば過去の論文への引用も含めた総引用数など,様々な側面から測られなければならない,IF値だけで雑誌を評価するのは必ずしも適当でない.ましてや,IFを用いて特定の研究者の研究を評価することが間違いであることは,応用物理学会の発行するJapanese Journal of Applied Physics (JJAP)誌を例にして詳細に報告されている.それにもかかわらず,実際には雑誌や個人の業績評価としてIFが偏重されており,そのことが研究成果の海外誌への流出など,昨今の日本の学術雑誌の抱えている問題の根底にあると考えられる.IFをどのように用いるかは使う側の責任に帰すものであるが,利用するならばIFがどのような要因で決まっているかを理解する必要があるだろう.本稿では物理系学術誌刊行協会で編集を行っている立場から,JPSJとそれに関連のあるいくつかの雑誌の引用関係の調査を行い,雑誌のIF値を決めているいくつかの要因,特に変動の起こるメカニズムについて分かったことがあるので報告する.
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