近年多くの興味を集めている量子液体相とは,量子効果によりすべての秩序が融解し,対称性の破れを伴わない物質相である.量子ホール効果における2次元電子系,整数スピン鎖,トポロジカル絶縁体がその典型例であり,その多くがバルクな系での励起に有限のエネルギーを必要とし,低エネルギーに特徴的な構造を持たない.一方で,これらの相では系の境界や不純物近傍にエッジ状態とよばれる局在状態が特徴的かつ必然的に現れ,このエッジ状態がバルクの非自明な性質を反映する.この相互関係はバルク-エッジ対応とよばれ,量子液体相の特徴付けにおけるその有効性が広く認識されつつある.また,バルクな系でも古典論を離れ,量子干渉効果であるベリー接続を用いてチャーン数,量子化ベリー位相等の「トポロジカルな秩序変数」を定義すれば,これらは励起にエネルギーギャップを持つ系の断熱不変量となり,相分類において有効である.これらに関する我々の試みに関して平易な解説を試みたい.
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