秩序変数が振幅と位相で記述される超流動では,位相の勾配が流れをつくる.流れを乱すには位相の勾配を生む欠陥が必要で,欠陥の周りを流れが回転する量子渦のみが,超流動の乱流(量子乱流)を構成している.このことは,乱流の性質を"渦の運動"の視点で理解することを可能にする.我々は,物体の壁に付着し安定に残留する量子渦のユニークな性質を利用して,物体の運動で量子乱流を発現させ,乱流中の,さらには乱流から放出される"渦の運動"を調べてきた.本稿では,超流動ヘリウムの量子乱流中で運動する渦について,最近の我々の実験および数値的研究について解説する.
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