2008年に発見された鉄系新高温超伝導体について,現時点での理論的理解を概観し,銅酸化物高温超伝導体との比較も含めて鉄系超伝導体の特徴と課題を理論的に整理することを試みる.まず,鉄系超伝導体は銅酸化物高温超伝導体について一般的に考えられているのと異なり,低エネルギー有効模型が本質的に多軌道系であることを示し,このことが理論的にどのような面白さと複雑性を生むかを説明する.現在までに様々な超伝導機構が提案されてきているが,ここでは磁気揺らぎに媒介される超伝導に焦点をあてて紹介する.さらにこれらの理論が,現在までの実験結果とどのように整合するか,将来の問題は何かを議論し,今後の展望をまとめる.
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