Print ISSN : 0016-450X
48 巻, 2 号
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  • 中原 和郎, 福岡 文子, 杉村 隆
    1957 年 48 巻 2 号 p. 129-137_3
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    現在続行中のキノリン誘導体の癌原性に関するわれわれの研究のうち, 4-nitroquinoline-N-oxide が極めて強力な発癌性を有するという事実を報告した。マウスの皮膚に0.25%ベンゼン溶液として1週3回塗布すると80-140日で全例にパピロマを発生し, 120-200日で悪性化する。できた腫瘍は普通の扁平上皮癌の外に相当数の線維肉腫を含んでいる。何れも悪性腫瘍に特徴的な解糖作用を示す。転移は2例に証明された。移植は表在性腫瘍であるため非常に困難であるが, 試みた3例中1例において成功した。
    4-Nitroquinoline-N-oxide の発癌力は最強力な多核炭化水素のそれに接近している。キノリンの如き比較的簡単な二核化合物中にこのような強力な癌厚性物質があることは予期されなかったところである。
  • 梅田 真男
    1957 年 48 巻 2 号 p. 139-144_1
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    p-Quinone による発癌実験は滝沢などによつて, 塗布あるいは吸入実験が行われ, 何れも癌の発生を認めている。しかしいまだ p-Quinone による肉腫の発生は認めていない。私はラッテを用い p-Quinone の propylene glycol 溶液を1週間1回宛, ラッテの背部皮下に注射し, 394日以上生存した17匹のうちの2匹に肉腫の発生を認めた (p-Quinone: 81~85mg, Propylene Glycol: 16.5~17.5cc). Propylene glycol のみの注射実験においては1例も肉腫の発生を認めなかつた。
  • 馬場 恒男
    1957 年 48 巻 2 号 p. 145-158_3
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    DAB投与によるラット肝癌発生の実験的抑制の研究は, 中原等の牛肝粉末以来, 多くの業績が見られるが, 未だ, 特定の機構は確認されていない。一方, Griffin 等は, 実験的腫瘍発生における下垂体前葉ホルモンの重要性を強調している。p-Hydroxypropiophenone (PHP) は, Dodd の発見になるが, Lacassagne 等は下垂体の TSH, Gonadotropin の分泌を抑制すると説いている。著者は下垂体関係をめぐる実験的発癌の研究で, DAB によるラット肝癌発生に及ぼす PHP の効果と, hypophysectomy の影響について実験した。PHP は Robertson 等が少数の動物で試みて報告している如く, 非常に毒性の低い物質であり, しかも butter-yellow 発癌に対して, 100%抑制作用を示めした。このことについて肉眼所見と組織所見を詳述した。この PHP の抑制の機転については, 下垂体関係のホルモンの影響を介てしというよりは, むしろ, 肝蔵蛋白に対する DAB と PHP の競合にある可能性が強く, これに関する data も示した。
    Hypophysectomy は, 不完全であったが, 部分的に剔出されているものは, その程度に応じて発癌は抑制されていた。
  • 杉村 隆, 小野 哲生, 梅田 真男
    1957 年 48 巻 2 号 p. 159-168
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    放射性鉄をローダミン肉腫を移植したラットに腹腔内注射して, 24時間後に殺し, 腫瘍, 肝, 血液その他の鉄量を測定し, また放射能を測定した。
    担癌動物は貧血, 網状赤血球増加, 肝カタラーゼ活性低下があり, 肝鉄量, 血漿鉄の減少が著明である。腫瘍組織の鉄濃度は低いが, 腫瘍塊中の総鉄量は肝より多い。担癌動物の赤血球よりとった結晶ヘミンの鉄の相対比放射能は正常動物の約3倍高く, 肝の総鉄, ノン•ヘミン鉄, フエリチン鉄の相対比放射能は正常動物の約1/2である。
    これらの事実から, 担癌動物における鉄代謝の様相を理解し, あわせて肝カタラーゼ活性低下, 貧血, ポルフィリン畜積等に関連して考按した。
  • 杉村 隆, 小野 哲生
    1957 年 48 巻 2 号 p. 169-180
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    先にわれわれは, 鳩胸筋より調整したコハク酸酸化酵素は十分に検圧法で活性があるにもかかわらずTTCを還元することができない。そして, それに粗コエンチームA標品を加えるとTTC還元がおこることをみとめ, それをイオン交換樹脂でわけた。
    その後その物質を追求する途次に, また別の新事実を見出した。
    等電沈澱をくり返した鳩胸筋コハク酸酸化酵素はコエンチームA標品を十分加えてもTTC還元がおこらなくなるがこれに, ラット肝の上清分劃中の蛋白を加えると十分なTTC還元が起るようになる。すなわち, コハク酸を基質とした, コハク酸酸化酵素によるTTCの還元には未知の助酵素のほかに, 肝上清にふくまれる蛋白成分が必要なのである。
    同様のことがラット肝のミトコンドリアをコハク酸酸化酵素として用いた場合にもみとめられた。鳩胸筋のコハク酸酸化酵素を用いると, この末知助酵素または, 蛋白成分を Rate limiting になるような system を作ることができる。
    また還元したチトクロームcを加えるとラットモジエネートでもTTC還元がおこること, この場合もミトコンドリアでは十分TTC還元がおこらないことをみとめた。メチレンブルーを加えるとコハク酸を基質としたTTC還元は促進されるがこれはチアン阻害を受け難い。メチレンブルーを加えない時にはチアン阻害は著しい。
    以上からコハク酸酸化酵素によるTTC還元には助酵素のほかに肝上清中の蛋白の必要なことおよび, TTCがチトクローム酸化酵素のレベルで共軛する可能性を考察した。
  • 第一報 アミノ酸と結合した色素体の抽出並びに精製について
    草間 慶一, 寺山 宏
    1957 年 48 巻 2 号 p. 181-188
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    ヂメチルアミノアゾベンゼン (DAB) を一カ月投与した白鼠肝の脱脂粉末より, 高度に精製されたアミノ酸と結合した色素体の抽出法を研究した。放線菌培養液より作られる強力プロテアーゼで予め肝蛋白を水解し, ブタノール抽出, 醋エチ洗滌を行ったのちIRC-50 (H型) でカラムクロマトを行うことによって高度に精製された含アミノ酸色素体を容易にうることができる。このものをさらにアルカリで処理すると, 恐らくアミノ酸一個と結合したと考えられる色素体を得る。このものについて, 吸収スペクトル, 変色pH領域, 酸性における安定性, DNP-化に対する挙動等の性質を調べた結果, 並びにアミノアゾ色素, アミノ酸及びフォルマリンより合成的に作られる類似化合物の性質を比較した結果, 色素と結合したアミノ酸としてチロシンがもっとも可能性が多いことを結論した。
  • 特に性ホルモンの影響について
    藤森 正雄, 矢走 英夫, 石塚 稔, 三浦 義彰
    1957 年 48 巻 2 号 p. 189-197
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    ヒトの乳腺腫瘍, 特に乳腺症, 乳癌などの推移に著者等は興味をもち, 次のような実験を行った。すなわち23Pをトレーサーとして, あるいは患者に静脈内注射を行った後に外科的に乳腺組織を剔出, あるいは剔出した組織を in vitro で32Pとともに反応を行わせ, 乳腺組織の燐脂質及びリボ核酸を抽出してその量と放射能を測定した。その結果, 32Pを静脈内注射した例では一定の傾向は得られなかったが, in vitro で反応させた場合には次のような傾向がみられた。
    (1) 乳腺症組織よりも乳癌組織の方に燐脂質量の多いこと。
    (2) 乳腺症組織よりも乳癌組織の方がリボ核酸の相対比放射能が高いこと。
    (3) 予め男性ホルモンを注射した患者の乳癌組織のリボ核酸の相対比放射能は低いこと。
    (4) 50才以後の患者には男性ホルモンより女性ホルモンの投与の方が乳癌組織のリボ核酸の相対比放射能を低めること。
    (5) 8-アザグアニンは in vitro で乳癌組織のリボ核酸の相対比放射能を低めること。以上の事実から著者等は次のように推論している。すなわち
    (1) 乳癌組織自体の燐脂質の相対比放射能はさして高くしないところから, 乳癌に燐脂質量の多いのは肝において合成され血流によって運ばれる燐脂質が乳癌組織では乳腺症組織にくらべ特によく沈着するのであろう。
    (2) リボ核酸の相対比放射能の高低はおそらく蛋白合成の度に平行関係のあることを示唆するから, 乳癌組織では乳腺症組織にくらべ蛋白合成が盛であると考えられ, かつこの代謝は性ホルモンのバランスによって影響を受けているものと思われる。
  • 藤森 正雄, 矢走 英夫, 石塚 稔, 三浦 義彰
    1957 年 48 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    乳癌患者に男性ホルモンを投与すると乳癌組織のリボ核酸代謝が低下する事実をみとめたので, 次に性ホルモンが Target organ 以外の臓器の代謝にも影響を及ぼすか否かをみるため次のような実験を行った。
    すなわち体重100g前後の雌のダイコクネズミ4匹づつ7組を飼養し, 各組毎を次のような区分に分けた。(1) 対照の正常ネズミ, (2) 両側の卵巣剔除を行ったネズミ, (3) 正常のものにエストロゲンを投与したネズミ, (4) 卵巣剔出を行った後にエストロゲンを投与したネズミ。
    これらのネズミを断頭して肝をとり出し, そのスライスまたはホモジネートと32Pを in vitro で反応せしめ, 後に燐脂質分劃及びリボ核酸分劃を抽出, その量と放射能を測定した。その結果, スライスによる実験では, 卵巣を剔出したネズミにエストロゲンを与えると肝のリボ核酸代謝が昂進することが明らかになった。このことはホモジネートでは統計的に明らかではない。
    これらの事実から性ホルモンの Target organ でない肝でも性ホルモンはそのリボ核酸代謝に影響を及ぼすこと, 及びその影響は細胞のレベルまででホモジネーションによって消失することが明らかになった。さらにこれらのエストロゲンの影響が卵巣剔出によって明瞭になる事実は何か卵巣からの刺激によって脳下垂体から或因子が分泌され, これが逆に卵巣のエストロゲン分泌を抑制しているのではないかという推察を与える論拠となるものである。
  • 内田 正男, 高木 弘
    1957 年 48 巻 2 号 p. 205-217
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    砂川等が新しく合成した p-Phenylenediphosphoric acid tetraethyleneimid (O, O'-p-Phenylene N, N', N", N'''-tetraethylene-tetramidodiphosphate) は Ehrlich 腹水癌腹水型, 皮下腫瘍型, C3H系及びA系ハツカネズミ乳癌 (第一代雑種への移植癌) に対し制癌作用を示した。
    1) LD50 (マウス)
    腹腔内注射177~217mg/kg, 皮下注射202~224mg/kg, 静脈注射190~215mg/kg.
    2) 薬剤を試験管内で Ehrlich 腹水癌腹水に作用させたところ, 該腹水を接種したマウスは全く腹水癌の発生をみなかった。
    3) 毎日1回6日間連続腹腔内注射で Ehrlich 腹水癌の発生を抑制した。30mg~60mg/kgが有効量とみとめられる。
    4) Ehrlich 腹水癌細胞の有糸分裂を抑制した。
    5) Ehrlich 腹水癌皮下腫瘍周囲に皮下注射したが, いちじるしい効果はみとめなかった。
    6) C3H系マウスに自然発生した乳癌をSM×C3H/F1に移植し, またA系マウスに自然発生した乳癌をddN×A/F1に移植して, 腫瘍周囲に皮下注射したところ, 結節癌の増大抑制をみとみた。
  • 瀬木 三雄, 藤咲 暹, 栗原 登
    1957 年 48 巻 2 号 p. 219-225
    発行日: 1957/08/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    著者等は23カ国 (南阿連邦, カナダ, チリー, 米国, イスラエル, 西ドイツ, オーストリア, ベルギー, デンマーク, フィンランド, フランス, アイルランド, イタリー, ノールエー, オランダ, ポルトガル, 英国, スコットランド, 北アイルランド, スエーデン, スイス, オーストラリア, ニュージーランド) の中央統計官庁より直接入手せる1952-54年の癌死亡資料により, 1953年の日本の性別人口を標準とする年令訂正死亡率を, 全部位の癌並びに胃, 食道, 肺, 乳房, 子宮, 卵巣及び前立腺の各部位の癌について算出し, これを比較し, 諸国におけるその率を順位づけた。
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