Print ISSN : 0016-450X
48 巻, 3 号
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  • 浜崎 幸雄, 有木 庸, 横井 徹, 安部 晴夫
    1957 年 48 巻 3 号 p. 227-238_3
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    著者等は腫瘍病毒を異種動物脳を通過させて分離する方法を広汎に行い「一般に発癌性因子は異種動物を通過させて分離固定するときはその発癌性を失うが, 特殊抗原性はよく保有するものである」ことを提唱した。その最も重要な論拠をなしたのがこの実験である。すなわち千葉系家鶏肉腫ヴィールスを海〓, マウスあるいはハムスター, に異代移植すると宿主動物に肉芽性炎症を起す滬過性病毒が常に得られる。この病毒は交叉中和実験によってラウス・ヴィルスと同種のものであり, ニューキャッスル病, リンパ細胞性脈絡脳炎, 吉田腫瘍病毒 (HST. V.) 及び, 牛痘ヴィルスとは関係のないことを証明した。
    この病毒は成鶏に接種しても腫瘍を生じないが, 内臓に肉芽性炎症を起し, 家鶏肉腫に対して強い免疫が現れる。これに反しこの病毒を雛に異代接種したのち, 雛の肝片を成鶏に移植するときは可移植性の線維粘液腫を得た。これ等の成績から判断すると, 家鶏肉腫ヴィルスを異種動物通過によって分離するとき発癌性を失うことは家鶏体細胞に由来する第2因子を失うためと考えられる。従ってこれを雛に継代すると再び腫瘍形成能が得られるのであろう。
  • 星島 秀行
    1957 年 48 巻 3 号 p. 239-242
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    人の胃癌組織より精製した toxohormone を廿日鼠に投与し, 肝臓の non-hemin 鉄を測定したところ, ferritin 鉄劃分のみの減少がみられ, かつその減少は catalase の減少と平行していることを見出した。またこの toxohormone は結晶牛肝カタラーゼには何等抑制作用を示さなかった。
  • 土井 源治郎
    1957 年 48 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    DABで飼育した白鼠の肝臓における1カ月目の鉄代謝関連物質の変化をしらべたところ, hemosidein, ferritin, ascorbin 酸は正常白鼠に比し増加していたが, Catalase, 銅及び総 riboflavin 量は減少していた。
    Ascorbin 酸を除いては, 上記成分の増減はすべて Catalase の減少と平行していた。
    DABは結晶 Catalase に対しては直接の抑制作用を示さなかった。
  • 杉村 隆, 神谷 知弥
    1957 年 48 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    デオキシリボース生合成については Racker のデオキシアルドラーゼによって3-phosphoglyceraldehyde とアセトアルデヒドから縮合する酵素が知られている。他のみちすぢも推測されているがまだ関与する酵素は確認されていない。
    われわれは増殖の盛んな癌組織において, デオキシアルドラーゼ活性を測定することを試みた。数種のハツカネズミ, ダイコクネズミの移植性腫瘍は, Racker により哺乳動物の組織の中では活性が高いと報告されているハツカネズミの肝の約2/3の活性ないしほぼ等しい活性を示した。われわれは広く癌組織一般にこの酵素が存在するものと推定する。
  • 直良 博人, 直良 初子
    1957 年 48 巻 3 号 p. 255-261
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    動物体内の一部に非常に増殖しつつある組織をもっている動物の肝では, DNAの合成が盛んに行われ, 有糸分裂像がしばしば見出されるということが一般にみとめられている。これには, (1). 増殖性細胞 (例えば癌細胞) により産生される Stimulating substances による場合及び, (2). 増殖性細胞の成長増殖のために動物体内で血清蛋白の欠乏が生ずる, それの補償的な意味で, 血清蛋白の製造所である肝細胞の増殖 (あるいはそれに匹敵する現象) が起るという2個の可能性がある。ここでは後者の可能性にたって, 人工的に生ぜしめた血清蛋白欠乏ネズミにP32を皮下注射して, 肝及び腎のDNA-P及びPNA-Pへのとりこみをみた。
    Plasmopheresis によって肝のDNA合成能は非常に高められ, その合成能は, 再生肝にみられる合成能に比較できる程度のものである。しかしながら, この場合, 腎のDNA合成能は誘発されない。
    このような事実は, さきにのべた(2)の可能性を支持するものである。
    なお, 肝における細胞数の調節機構についても, このような見地に立って, 若干, 論議した。
  • 福岡 文子, 杉村 隆, 鈴木 幸子
    1957 年 48 巻 3 号 p. 263-270
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    われわれは多数のキノリン誘導体の制癌作用についての実験を行い, これら誘導体中 4-nitroquinoline 1-oxide, 4-nitro-2-alkylquinoline 1-oxide, 6-bromo-4-nitroquinoline 1-oxide, 等, 4位にニトロ基を有する quinoline 1-oxide 型の物が最も強い制癌作用を有することを報告している。しかるにこれらはいずれも水に難溶であったので, 6位にカルボキシル基を入れ (すなわち6-carboxy-4-nitroquinoline 1-oxide), これをK塩とすることにより水溶性とした, 今回は主としてこの物質の制癌性について, もとの4-nitroquinoline-1-oxide その他と毒性, 制癌性及びそれらの作用機作について比較実験した結果を報告した。
    LD50は前者70mg/kgに比し650/kgで毒性は約1/10近く, in vitro の殺癌効果は1/10でほぼ同じであり, 延命効果は125mg/kgで前者の7/kgの場合に匹敵した。次に解糖に対する態度は, 前者4×10-4Mで60%阻害を示し, 本物質は1×10-2Mで約50%阻害を示す. したがって濃度比は in vitro 及び in vivo の場合のそれに等しいといえよう。
    さらに今回は, 作用機作の一連の実験の一つとして, アルドラーゼ阻害について, これら二物質以外全く制癌性のない quinoline 1-oxide をも含めて, 比較したところ, 10-3Mで nitroquinoline 1-oxide では50%, 6-carboxyquinoline-uoxide では60%阻害を示し, 全く抗癌性のない quinoline 1-oxide ではわずか20%の阻害であった。
  • 福岡 文子, 直良 博人
    1957 年 48 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    抗腫瘍性を有する 4-nitroquinoline 1-oxide ならびに 6-carboxy-4-nitroquinoline-1-oxide, 抗腫瘍性を持たざる quinoline 1-oxide, 及び4-nitroquinoline による, P32の核酸へのとりこみに及ぼす影響を Ehrlich 癌細胞を用い, in vitro でしらべた。
    結果は抗腫瘍性を有する前物質は等しくP32取込みに対しても顕著な抑制を示し, 抗腫瘍性を持たざる後物質中の 4-nitroquinoline は前2物質と同じくP32取込みに対して抑制を示したが, quinoline 1-oxid は全く抑制しなかった。
    すなわち抗腫瘍の場合は, 4の位置に nitro 基を有し, さらに oxide 型であることを必要とするが, P32核酸とりこみの場合は, nito 基のみを必要とするのではなかろうかと推察せられる結果となった。
  • 実験的肝癌発生に対するトリパン青の抑制効果
    藤田 啓介, 岩瀬 正次, 伊藤 哲彦, 新井 豊久, 高柳 哲也, 杉山 泰世, 松山 睦司, 高木 千枝, 大前 竹代, 三根 隆男
    1957 年 48 巻 3 号 p. 277-288_2
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    トリパン青によるDAB肝癌抑制についての当面の問題は, 2点に集約されよう。第1は, トリパン青が Miller 等の肝蛋白結合DABに対してどのような影響を与えるのか。この点についての従来の報告には, 結合DAB量に対して, リボフラビンまたは20-メチルコラントレンと同じように, その量を減少させ, また maximum level の時期をおくらせるという報告と, このような作用を全く示さないという報告がある。第2は, 市販のトリパン青には種々の不純物, または副生色素が含まれていて, メルク製品の場合, 少くとも赤色, 紫色及び青色の3種色素の混合物であった。このような副生色素が市販のトリパン青の肝癌抑制においてどのような作用をもつものか。本報告は, これら2つの問題に対する結果を取扱っている。
    1) トリパン青の市販製品に含まれる赤色色素は熱エタノールによって除くことができる。
    2) 上の操作によってメルクのトリパン青から赤色色素を除いた色素標本が, 1%水溶液として2週間毎にラッテの皮下に注射された。20週に亘るDAB飼育期間を通じて, 結合DABの量及び maximum level の時期には有意義な差を見出し得なかった。
    3) 1%トリパン青水溶液を活性アルミナによる吸着クロマトグラフィーによって, 赤色, 紫色及び青色成分に分離する。これらの色素成分のうちでは, 青色色素成分が最も肝癌抑制効果が強いけれども, もとの市販製品に比べると, その効果は弱い。しかし, 毒性もまた, 低下することが注目された。
    4) 3) の場合のトリパン青の青色色素は, 副生色素である赤色及び紫色色素がもとの製品より少いことは明らかであるが, それらを全く含まないものではない。市販のトリパン青中の青色色素が活性アルミナにより繰返し純化された。この色素標本を用いた場合, もはや肝癌抑制効果は完全に失われ, 生体染色能力も毒性も著しく低下した。市販製品の中の副生色素のどのような種類のものが, どのような量に含まれるとき, 最小の毒性で最大の肝癌抑制効果を示すか今なお明らかではない。
  • 酸ヘマテイン法による正常及び腫瘍組織の燐脂質の分布に関する研究
    堀 浩
    1957 年 48 巻 3 号 p. 289-296_2
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    シロネズミの胃, 十二指腸, 膵, 腎, 肝の各正常組織, 及び, MTK肉腫III, 吉田肉腫, 紡錘形細胞肉腫の腫瘍組織に酸ヘマテイン染色を施し, 燐脂質の分布を比較調査した。その結果, 正常組織細胞の大部分のものは, 酸ヘマテインに対して陽性に反応する顆粒 (多くの場合糸粒体と分泌顆粒) をその細胞質中に有しているが, 腫瘍細胞は全く陽性物質を有さない。このことは肝へ腫瘍細胞を注入して行った実験において明瞭に示された (図11参照)。これらの事実から, 腫瘍細胞の細胞質顆粒 (主に糸粒体) は, 正常細胞のそれに比して燐脂質の含有量が極めて少いのではないかと思われる。
    次に, MTK肉腫III, 吉田肉腫の腹水中に浮遊している細胞, 及び組織培養した紡錘形細胞肉腫細胞を切片とせずに, 酸ヘマテイン法で染色すると, その細胞全体が強い陽性反応を呈して青黒色に染るものと, 全く反応が陰性で黄色を呈するものの2種類を区別することができた。すなわち, これら腫瘍細胞には燐脂質含有量の多い細胞と, 非常に少い細胞があるのではないかと思われる。著者は前者をBH-p型細胞, 後者をBH-n型細胞と名づけた。なおBH-p型細胞の意義については目下調査中である。
  • 酸性ヘマテインに対して異った染色性を示す2種の腫瘍細胞について
    堀 浩
    1957 年 48 巻 3 号 p. 297-304_1
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    BH-p型腫瘍細胞の本質を究明するために, 形態学的ならびに細胞化学的研究を行ったところ, 次の結果が得られた。
    1) BH-p型細胞に含まれている燐脂質は非常に不安定な形であって, しかもミトコンドリアより小さい細胞質内物質と比較的ゆるく結合しているのではないかと思われる。2) 腫瘍腹水を低温処理した際に生き残る残存腫瘍細胞はBH-p型である。しかしながらすべてのBH-p型細胞が残存細胞になりうるとは限らない。3) BH-p型細胞の数が多い程, 腫瘍の成長は促進する。4) 生き残るBH-p型細胞は, 腫瘍の形成に第一義的にあづかる種族細胞に匹敵するものではないかと思われる。
  • 和田 武雄, 大原 弘通, 佐々木 忠男, 中島 二郎, 谷内 昭
    1957 年 48 巻 3 号 p. 305-314
    発行日: 1957/11/30
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    癌および悪性腫瘍の際血清ムコ蛋白が著明に増量するが, これと生理的に存在するムコ蛋白との異同について研究している。
    生理的に存在するムコ蛋白は, 実験的並びに臨床的に肝機能障害時に低下し, また肝前および肝後血清の比較から肝内産生が結論された。また網内系機能低下時血中に遊離し, 亢進時には捕捉されるかの如く血中減少が起り, その動的平衡は網内系機能と密接に関係する。
    悪性腫瘍の際増量するムコ蛋白は, 臨床的にも肝外産生を推論せしめるが, 腫瘍の輸出入血液のムコ蛋白比較実験から, 腫瘍内産生ムコ蛋白の存在が確認された。一方悪性腫瘍の際増量するムコ蛋白の一部には, 生体反応 (防禦反応) 的な意義の下に恐らくは肝で産生されるものの存在も推論され, われわれは腫瘍内産生ムコ蛋白を特異的MP, 反応性増量ムコ蛋白を非特異的MPと名付けた。悪性腫瘍 (癌) 患者血清並びに尿から単離したムコ蛋白は非癌および正常のそれに比し著明にカタラーゼ抑制作用を現わすことから, 腫瘍的産生ムコ蛋白は悪液質毒 (癌腫毒) の担体としての意義を有するのではないかと考えている。さらに生理的ムコ蛋白と異なり, 網内系により代謝され難い事実が推論された。
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