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  • 大西 孝之
    1958 年 49 巻 4 号 p. 233-248
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    1. 白ネズミの正常組織を脂質分劃と, 脂質を抽出したあとの残渣分劃との二つにわけ, そのおのおのについて lipid peroxide の形成をしらべた。これらの分劃は単独では lipid peroxide を形成しないが, 二つをくみあわせると lipid peroxide の形成がみられる。
    2. 脂質をさらにいろいろの分劃にわけて peroxide の形成をしらべたところ, 燐脂質がperoxide をつくることがわかった。
    3. 透析した残渣分劃と脂質分劃とのくみあわせでは lipid peroxide の形成がみられないから, lipid peroxide の形成比は透析性の補助因子が必要である。
    4. 鉄は単独で, 組織または脂質分劃にはたらいて lipid peroxide の形成を促進するが, 亜鉛はEDTAで処理した組織の場合だけに効力がある。したがって正常組織における lipid peroxide の形成には, 燐脂質のほかに, 透析性の補助因子と亜鉛とが必要である。
    5. 癌組織の脂質分劃に正常組織の残渣分劃を加えても lipid peroxide が形成されない。
    6. 癌組織で lipid peroxide の形成のみられないのは, 癌組織に antioxidant があるがらではない。
    7. 癌組織では燐脂質が変化し, そのうえ細胞構造と亜鉛との結合がきわめて強いために lipid peroxide の形成がみられないものとおもわれる。
    8. 癌組織では, ある種の燐脂質が完全に飽和化されて質的にかわってしまっているか, 量的に激減しているかのいずれかであると考えられる。
  • 和田 武雄, 大原 弘通, 梅谷 直治, 細川 忍, 森本 義雄, 吉川 春夫
    1958 年 49 巻 4 号 p. 249-259
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    有酸対照胃液•histamine 抵抗性無酸胃液および胃癌胃液について, その polarograph 的(P), 電気泳動的, 並びに diphenylamine (DPA)•tyrosine (Tyr)•hexosamine (Hxm)• hexuron 酸 (Hxu)•nitrogen (N) 等の化学的測定値の比較検討を行った。
    P的には胃癌胃液は他のものに比し波高の変動が最も著しく, また insulin 静注後20分目に波高の低下を来し, これは診断上有用である。
    化学的測定の含量はすべてが胃癌, histamine 無酸, 有酸対照例の順に高い。これらの化学的側定値の中, DPA と Hxm, Tyr とNがそれぞれ相関する。DPA-Hxm と Tyr-N 系とは相互に相関はない。したがって胃癌胃液で増量する高分子組成は DPA-Hxm 系と Tyr-N系の二種に分つことが出来る。
    Glass and Boyd 法に従って胃液を分画すると, 有酸胃液では泳動的に易動度の最も速いmucoprotein 分画にP活性が高く, 一方胃癌胃液では易動度の遅い mucoproteose 分画にP活性は移行し同時にに高いDPA, Hxm含量を認める。histamine 無酸胃液ではP 活性度の移行, 泳動像上の態度, 並びに化学測定値の上で, すべてが有酸対照と胃癌胃液との中間的態度を示す。
    その詳細については後報したい。
  • 特に histamine 抵抗性無酸胃液について
    和田 武雄, 大原 弘通, 吉川 春夫
    1958 年 49 巻 4 号 p. 261-270
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    前報に引続き特に histamine 抵抗性無酸胃液について, さらに詳細にその全胃液並びにGlass-Boyd 法による各分画の電気泳動的研究を行った。
    全胃液の電気泳動像では, histamine 無酸群の態度は有酸対照および胃癌胃液の中間的態度を示す。すなわち有酸対照泳動像は易動度の速い峯 (B1) と遅い峯 (B4) が著明で中間易動部 (B2, B3) の形成は少く, 胃癌胃液ではB1が著減しB2, B3が増量する。これに対し histamine 無酸群では癌同様B2~B3の増量をみるが, 一方対照同様B1は減少しない。
    分画試料については, FVIII (MP) はB1 (pH 8.6) 又はa, b-峯 (pH 4.5) と密接に関連し, FVII (Ms) は B4 (pH 8.6) と関連する。中間易動部 (B2~B3) は主としてFVIおよびVIIと関連する。histamine 無酸および癌胃液のMP (FVIII), Ms (FVII) 分画は泳動的に均一でない。
    Acetone 可溶部であるFVはMPを除くすべての胃液組成を含み均一でない。また histamine 無酸および胃癌胃液ではFVIに移行する部分も多い。したがって病的胃液において は acetone 可溶分画は無視出来ぬ部分と思われる。
  • 特に胃液の機能的前癌性変化について
    和田 武雄, 大原 弘通, 遠藤 景
    1958 年 49 巻 4 号 p. 271-280
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    これまでの知見を今回は連続滬紙泳動法を用い, 有酸対照例•胃癌並びに histamine 抵抗性無酸胃液を分画し, polarograph 法•orcinol 反応•diphenylamine 反応bull;hexosamine• hexuron 酸•tyrosine および nitrogen 含量を測定した。
    連続滬紙泳動像と平面滬紙泳動像とは極めてよく一致した像を示す。したがって上述の理化学的測定値は泳動的に均一な分画についての分析値と考えられる。
    有酸対照胃液では, Polarograph 波•Orcin•DPA•Tyr 含量は易動度の最も速いB1に多く認められ, Hxm はB1とB2の中間およびB4に, Hxu, NはB4に最も多く認められた。
    Histamine 無酸胃液および胃癌胃液では, 上記理化学分析値の含量が次第に易動度の遅いB2, B3分画内に移行し, 無酸例は有酸対照と胃癌の中間的態度を示した。
    したがって今後B2およびB3分画内組成を詳細に追求することにより, 機能的前癌性変化の解明が期待されよう。
  • 第1報 ヒスチダーゼ
    岸 三二, 鶴岡 延熹, 浅野 文一
    1958 年 49 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    従来正常組織と癌組織の酵素を比較する場合に両者の酵素活性度を単に定量的に論ずることが多かった。癌化に当って酵素がはたして本質的に母組織のその酵素と相違して現われるかどうかを滬紙電気泳動法によって追究することを企てた。
    実験材料に肝癌生成物質バターエロー (DAB) を投与したシロネズミ肝を選び, ホモジエネートとし, そのままかあるいは分屑を滬紙上に電気泳動し, 蛋白ゾーンの中に如何に酵素が配分されているかを観察した。
    それには泳動後の滬紙を一定幅の多数片に裁断して一つ一つを酵素源とし, 同数のコーンウエイ装置を準備して, 基質ヒスチヂン溶液とpH 8.6の燐酸緩衝剤の混合液から22時間に産生するアンモニアを定量した。この数値をグラフの縦軸にとり, 横軸には切り取られた滬紙片の原点からの距離を目盛って結んで得た活性度パターンを検討した。
    正常肝のヒスチダーゼ活性パターンは易泳動部に一箇の著しく突起している曲線を認めた。しかしてその位置は肝蛋白ゾーンの末端に近い部であった。正常肝のパターンと再生肝の示すものとは性格的には変りなかった。
    DAB投与4週で上記パターンの特性が殆んど失われた。これは摂取したDABに直接影響されたものと思われる。DAB長期投与でしかも正常食に戻してなお飼育をつづけたシロネズミの病変肝のうち, 硬変肝は稍低いがパターンの特徴を示した。肝癌のパターンは最も低調であったが, 痕跡ながらなお特性がうかがわれた。これらの観察からヒスチダーゼはその産生される臓器, すなわち肝の癌化に伴って漸減する活性度の量的の差は諸学者の報告と同様であったが, 滬紙電気泳動法によっては性格的変化を認め得なかった。
  • 第2報 酸およびアルカリフォスファターゼ 附 血清アルカリフォスファアーゼ
    浅野 文一
    1958 年 49 巻 4 号 p. 287-294
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    第1報につづき滬紙電気泳動法によって肝の癌化に伴って起り得る酵素の性格の変化を追究した。ここに従来から癌の酵素の対象としてしばしば取扱われた酸フォスファターゼ (ACP) およびアルカリフォスファターゼ (ALP) を採り上げた。
    バターエロー (DAB) 投与ネズミの肝性組織のホモジエネートあるいは血清を滬紙上に電気泳動し, 泳動後滬紙を順序正しく多数の小片に切ってそれぞれを酵素源とした。活性度の測定法は一列の小型試験管に基質パラニトロフェニールフォスフェートのヂソヂウム塩溶液とマグネシウムイオンを含む緩衝剤 (酸性およびアルカリ性側) との混合液を分注し, 上記滬紙片の一つづつを入れ, 一定時間孵卵器中で保温し後強アルカリを加えて産生されたパラニトロフェノールを呈色定量した。この数値をグラフの縦軸に, 切り取られた滬紙片の位置すなわち酵素の滬紙上の泳動距離を横軸にとって作成したパターンを論じた。
    正常肝ACPの示すパターンは2つの顕著な由を原点と易泳動部に認めた。前者は鋭い頂点をもち, 後者は半円形であった。ALPは原点に低い極大値と易泳動部に極めて低い凸曲線があった。硬変肝 (DAB長期投与, 後正常食で飼育した動物) のACP, ALPは正常肝のそれぞれに近似しているが, 原点の山, とくにALPのそれは正常肝より著しい。肝癌のALPは原点に著しく, 硬変肝, 正常肝より高い。原点のACPは正常肝, 硬変肝より低い。
    DAB投与実験4週の動物の肝は外見正常でありながらACP, ALPのパターンからはすでに肝癌のそれらに似ていた。血清ALPのパターンは正常ネズミ血清もDAB投与ネズミ血清も大差なく, α2グロブリン分屑に頂点をもつ明瞭な山と原点に位置する低い山を認めた。
  • 第3報 リボ核酸脱アミノ酵素
    佐藤 永雄
    1958 年 49 巻 4 号 p. 295-300
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    バターエロー (DAB) 投与ネズミの肝癌生成過程において予想し得る肝酵素の性格上の相違を追究することを目的とした。対象とした酵素は当研究室でかつて調べたリボ核酸 (RNA) 脱アミノ酵素である。しかし従来の単なる活性度の定量でなく, 性格を調べるため滬紙電気泳動法を用いた。
    肝性組織のホモジェネートあるいはその上清, 沈澱を滬紙上に電気泳動し, 泳動後滬紙を多数の小片に切りそれぞれを酵素源とした。
    活性度の測定にはコーンウェイ装置を使用し, 基質RNAと緩衝剤 (酸性側およびアルカリ性側) の混合液から上記滬紙片によって一定時間保温, 産生されたアンモニアを装置の硫酸部に捕捉しネスレル化して比色定量した。グラフの縦軸にアンモニア量を, 横軸に酵素の泳動距離を目盛ってRNA脱アミノ酵素 (酸性側およびアルカリ性側) のパターンを作成して論じた。
    肝性組織 (正常肝, 硬変肝, 肝癌, DAB投与4週動物の肝) のホモジェネートは総て共通のパターンで台地形曲線を示した。すなわちいづれも展開された蛋白部全般に亘ってほぼ同程度の活性度であった。ただ原点に山形曲線が現われた。
    ホモジェネートの上清および沈澱のそれぞれのパターンはホモジェネートそのままが示したパターンの各一部づつを現わした。すなわち上清は易泳動部を沈澱は難泳動部 (原点およびその隣接部) を示した。
  • 森 和雄, 一井 昭五, 松本 克彦
    1958 年 49 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    1) p-Dimethylaminoazobenzene 肝癌生成過程の白鼠, 腹水肝癌移植白鼠あるいはエーリッヒ癌移植廿日鼠尿中のトリプトファン, キヌレニン並びにアントラニール酸等を, トリプトファン負荷前後に比色定量して, それらの動物のトリプトファン代謝を検討してみた。
    2) 肝硬変あるいは肝癌をもった白鼠の尿中のトリプトファン並びにその代謝物は, いづれも正常白鼠尿中のそれらより低い値を示した。尚動物にトリプトファンを負荷した後のトリプトファン並びにその代謝物の増量も軽度であった。
    3) 腹水肝癌移植白鼠でも, トリプトファン並びにその代謝物の尿中えの排泄は正常鼠に比べて低値を示していた。
    4) エーリッヒ癌廿日鼠では, 尿中えのトリプトプァン並びにアントラニール酸の排泄量が正常の場合より減じている。しかしキヌレニンの尿中えの排泄量は癌移植後の発育につれて増してくることがわかった。
    5) 以上の結果から白鼠と廿日鼠では, 癌のある場合のトリプトファン代謝過程がちがうようにおもわれる。
  • 幡谷 正明, 白須 泰彦, 竹内 啓
    1958 年 49 巻 4 号 p. 307-318_4
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    犬の可移植性性器腫瘍におよぼすX線照射の効果を, 自然発生の本腫瘍を膣に有する8頭の犬について検索した。
    陰門部附近に発生した腫瘍はすべて1回線量200, 300, 400rの6回照射 (間隔2~3日) 総量1200~2400rの照射によって縮少治癒した。この結果本腫瘍が放射線に対する感受性の高い腫瘍であることが分った。
    また組織学的検索の結果, 治療初期に一時的な細胞分裂の抑制, 種々の異常分裂像, 細胞および核の大きさの増大が認められた。それ以後の時期では腫瘍細胞の著しい変性, 遊走細胞の侵潤が認められ, 線維芽球の増生によって腫瘍基底部に瘢痕組織が形成された。
    臨床所見および血液所見から考えるとX線照射の犬の全身状態におよぼす影響は少なかった。
  • 堀 浩, 高山 奨, 松本 雄雄, 牧野 佐二郎
    1958 年 49 巻 4 号 p. 319-330_1
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    Wistar 系シロネズミ (70~120g) の腹腔内にMTK腹水肉腫IIIを移植し, 移植後3, 6, 8または9日後に宿主を殺して, 肝におけるグリコーゲン (McManus PAS 反応), RNA (Toluidine blue 染色) およびDNA (Feulgen-Schiff 複合体の顕微測光法による測定) の消長を調査した。
    グリコーゲンは正常なネズミの肝においては常に豊富に含有されているが, 肉腫を移植されたものにおいては, 次第に肝小葉周辺部より減少し, 宿主が死亡する8~9日後にはほとんど肝全体に亘って消失してしまう。6日間絶食させた, 肉腫を植えないネズミにおいてもこれほど極度なグリコーゲンの消失は見られなかった。グリコーゲンの消失とは逆に, RNAは肉腫移植後次第に増加する。RNAの増加と関係があると思われるが, 仁の肥大•多形化•数の増加および核膜の肥厚が肝細胞において一般的に観察された。一方, DNAも担癌動物において, やや増加する傾向が見られた。また肝細胞核の体積の増加もDNA量の増加と平行して見られた。この外, 担癌動物肝においては, 有糸分裂の増加および sinusoid の膨脹が観察された。
  • XXIV. シロネズミ腹水肝癌 (H-17) の異代移植中にみられた腫瘍の性状の変化
    佐々木 本道
    1958 年 49 巻 4 号 p. 331-340_2
    発行日: 1958/12/31
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    p-Dimethylaminoazobenzene 経口投与により高度の純系シロネズミ Wistar-King A系(F153) に発生した腹水肝癌 (H-17) の累代移植中にみられた肝癌島の性状, 移植性, 生存日数, 染色体数の変化について調査した。
    約90代 (2年間) の累代移植中にその移植率は次第に増加したが腫瘍動物の平均生存日数は必ずしも移植率の増大と平行して減少しなかった。また, 肝癌島の性状も次第に変化し, その大きさは累代移植とともに小さくなった。一方, このような変化と平行して染色体数の変異の幅が次第に狭くなり高い mode を示すようになった。
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