この研究の目的は,職業選択過程のモデルを考案し,その各段階に15の職業選択要因がどのように影響を及ぼすかを検討するものである。被調査者は大学工学部学生, 112名であった。主な結果は次の通りであった。1.職業選択過程の全ての段階に強く影響を及ぼす要因は,(1)職業に対する基本的知識,(4)職業の労働条件,(6)職業適性,(9)生き方,(10)就職への努力の5要因であった。2.職業選択過程の後半の段階で強く影響を及ぼす要因は,(3)心身の健康と活力,(7)就職の難易度の2要因であった。3.職業選択過程の中間の段階で強く影響を及ぼす要因は,(13)職業の社会的評価の要因であった。4.職業選択過程の前半の段階で弱く影響を及ぼす要因は,(5)就職以前の職業的経験,(8)家庭状況に対する理解,(10)先輩・友人の助言,(11)就職の際の運と縁故の4要因であった。5.職業選択要因の職業選択過程に影響を及ぼす程度についてみれば,(1)職業に対する基本的知識,(3)心身の健康と活力,(7)就職の難易度,(11)就職の際の運と縁故,(14)就職への努力の5要因は職業選択過程の段階が進むにしたがって,それらの要因の影響を及ぼす程度が増してきていた。
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