キャリア・カウンセリング研究
Online ISSN : 2436-4088
23 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 平林 工志, 岡田 昌毅
    2021 年23 巻1 号 p. 1-14
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2022/08/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,利用者の施設生活下で心理的自立に至るまでのプロセスと,指導員による支援の関連を明らかにすることである。半構造化面接を用いて,児童指導員10名を対象にインタビュー調査を行った。研究協力者から集められたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析を行い,仮説モデルを作成した。結果として,7カテゴリーグループ,27カテゴリー,73概念が生成された。

    主な結果として,児童養護施設利用者が,施設生活と自身の将来に対する捉え直しの進むなかで,人間関係の構築に対して消極的な姿勢から,サポート希求が出来る積極的な心理状態に至るまでのプロセスが生成された。その中で,集団からの自己の個別化や自身の境遇へ対峙を経験することの重要性が示唆された。

    また,生成されたプロセスにて,利用者の内的統制感が変動することや,時間的展望が変化する様子が確認され,利用者の内的統制感を高める働きかけや,時間的展望の急激な変化に対するケアの重要性が示唆された。

資料
  • 安達 智子
    2021 年23 巻1 号 p. 15-23
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2022/08/19
    ジャーナル フリー

    立場の異なる日本の若者のキャリア選択に対する自己効力感,キャリア探索,キャリア決定–未決定の関連性について比較検討した。調査対象は,正規従業員として働いた経験をもたない若者600名(男性268,女性332名),平均年齢は22.04歳(SD=0.73)であった。キャリア選択に対する自己効力感とキャリア探索を独立変数,決定を従属変数とする階層的重回帰分析を行ったところ,いずれの立場においても,自己効力感は決定に対して直接的なプラスの関りをもつことが示された。また,大学生は情報収集を通じて,フリーターは他者から学ぶ活動を通じて決定が促されるという間接効果がみとめられた。猶予を従属変数として同様の分析を行ったところ,いずれの立場においても,キャリア選択に対する自己効力感は猶予に直接的なマイナスの関りをもつことが示された。キャリア探索を通じた間接効果はフリーターで確認され,他者から学ぶ活動は猶予と関連していた。これらの結果から,キャリア選択活動を上手く行えるとの自己効力感の効果は,正規従業員として働いた経験のない大学生,フリーター,無業者に一般化して考えることが出来る。一方,若者の探索活動を理解し支援する際には,それぞれの立場や状況に応じた働きかけが必要になることが示唆された。

  • 前田 具美, 原 恵子, 岡田 昌毅
    2021 年23 巻1 号 p. 24-33
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2022/08/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,組織内キャリア支援におけるキャリアコンサルタントの役割意識・行動の変化のプロセスを探索的に検討することである。組織内でキャリア支援を行う16名のキャリアコンサルタントに対し,半構造化面接を行った。調査対象者から得られたデータは,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析し,結果として,63概念,15サブカテゴリ,16カテゴリ,4カテゴリグループが生成された。主な結果は次のとおりである。自己の動機付けを起点として,支援対象との信頼関係を重視し,支援の環境づくりをすることに始まり,キャリア支援の推進にともない意識や行動が変化するが,その過程では,支援の障壁や基盤となるものの影響も受けていた。最終的には役割が広がることで,支援対象である個人と組織の成長も実感し,キャリアコンサルタントとしての成長へとつながる可能性が示唆された。

ケース報告
  • 伊藤 孝恵
    2021 年23 巻1 号 p. 34-41
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2022/08/19
    ジャーナル フリー

    留学生の就職支援のためのセミナーやワークショップを開催しても,受講してほしい留学生が参加しないという主催者の悩みも少なくない。

    そこで,本研究では,留学生を対象に,自分の強みを発見するための2つのツールを用いて自己理解を促すセッション(個人ワーク,グループワーク)を2時間程度行い,それが留学生の自己PR文の表現にどう影響を与えたか,その実際的な効果を探った。本稿で参考とする「表現」とは,自分の強みや長所が伝わりやすい自己PR文として,日本学生支援機構(2018)で示されている構成・内容を基準とし,それを8つの評価項目から分析した。その結果,強みの自己発見と整理,経験の振り返りが主たる活動を通して,自分が主張したい強みを主軸に具体的な経験が展開され,統一感のある文章へと,表現の変化が見られた。

    また,グループワークでは,他の参加者からの指摘を受けて,自分の強みを見直す場面も見られた。特に留学生の場合,エントリーシートでも面接でも,日本語による表現に,何かしら他者からの指摘や指導が必要である。グループワークやピアワークにおいて,留学生同士で指摘し合い修正・改善を試みることで,自らの気づきをもたらし,個別の添削や指導も効率よく行うことができると思われる。

書評
特別記事:追悼 木村周先生
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