キャリア・カウンセリング研究
Online ISSN : 2436-4088
23 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 須藤 章, 岡田 昌毅
    2022 年23 巻2 号 p. 65-78
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/08/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,役職定年者を対象に,役職定年後の新たな役割に対する再適応プロセスと,次のキャリアに対する模索プロセスを明らかにし,両プロセスがどのような影響関係にあるのかを探索的に検討することである。大手製造業に所属する役職定年者17名を対象に1年間にわたる縦断的半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を行った。その結果,56個の概念,4個のサブカテゴリ,15個のカテゴリ,8個のカテゴリグループが生成された。主な知見は以下の通りである。役職定年者は,役職者としての過去の経験,役職定年後の現在の新たな役割,そして模索する次のキャリアへと思考や感情を行き来させながら,次のキャリアの再形成を図っている。そして,過去,現在,未来という時間的展望の中で最も重要なものは,役職定年後の現在の新たな役割であり,現在の新たな役割で自己の価値を再認識することが次のキャリア形成への原動力となっている。しかし,役職定年が会社や組織への想いを否定的なものにし,働く意欲やキャリア形成を減退させている可能性もある。

  • 谷口 ちさ, 石山 恒貴
    2022 年23 巻2 号 p. 79-89
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/08/19
    ジャーナル フリー

    本稿では,組織を越えたデベロップメンタル・ネットワーク(DN)および支援者(メンター)に着目し,メンタリングへの参画動機とメンタリング・プロセスを通じて獲得した利益について,組織内外の違いを明らかにすることを目的とする。先行研究によれば,組織内DNにおけるメンターは,人の役に立ちたいという向社会的動機と,組織内で影響力を行使したいという動機からメンタリングに携わり,それを通じて自分の過去を再評価するという獲得利益が観察されていた。本稿では,組織を越えたDNにおいて,大学生のキャリア開発を目的としたメンタリングに参画する社会人メンターの参画動機と獲得利益を質的に調査した。結果として,メンターの組織を越えたDNへの参画動機は所属組織に対する閉塞感であり,大学生のキャリア開発支援への参画動機は向社会的動機であった。また,組織を越えたメンタリング・プロセスを通じて視野を広げるだけでなく,その学びを所属組織に還元する動きが明らかとなった。

資料
  • 桃谷 裕子, 大塚 泰正
    2022 年23 巻2 号 p. 91-99
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/08/19
    ジャーナル フリー

    本研究は,McAllisterによる情緒的・認知的信頼尺度(affect- and cognition-based trust measure:ACTM)の日本語版を作成し,日本の労働者を対象にその信頼性と妥当性を検証することを目的とした。情緒的・認知的信頼尺度日本語版(ACTM-J)は,原版を日本語に翻訳し,原版著者によるその逆翻訳のレビューを経て作成した。インターネット調査で得られた日本人労働者291名のデータを用いて,ACTM-Jの信頼性(内的整合性)と構成概念妥当性(因子分析と相関分析)を検証した。確認的因子分析の結果,ACTM-Jは原版と同様の2因子モデルがデータによく適合していた。Cronbachのα係数は情緒的信頼が.94,認知的信頼が.89であり,いずれも内的整合性が高かった。相関分析の結果,この2つのタイプの信頼は,リーダー・メンバー交換関係,職務満足感,組織コミットメント,組織市民行動と正の関連を示し,離職意図と負の関連を示した。これらの結果から,ACTM-Jは一定の信頼性と妥当性を有しており,日本の職場における上司に対する部下の情緒的信頼と認知的信頼を適切に評価できる尺度であることが示された。

  • 森本 康太郎
    2022 年23 巻2 号 p. 101-109
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/08/19
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学生の持つイラショナルキャリアビリーフに関連する要因について明らかにすることを通じ,キャリアに関するイラショナルビリーフに着目したクライエントの行動の理解や,カウンセリングにおける仮説設定を行うための基礎的資料を整備することを目的とした。日本国内の大学生231人を調査対象者とし,性別,Big Fiveの5因子,大学生活充実度,職業キャリアレディネスを独立変数,イラショナルキャリアビリーフを従属変数とした階層的重回帰分析を実施した。その結果,男性の方が非現実的な楽観,女性の方が自己に対する無力感のビリーフを持つ傾向が示され,Big Five5因子のうち,神経症傾向が強いと,非現実的な楽観ビリーフを持ちにくく,自己に対する無力感のビリーフを持つ傾向があることが明らかとなった。また,大学生活に対する充実度が,非現実的な楽観に対して有意な正の関連,自己に対する無力感に対して有意な負の関連を持ち,職業キャリア自律性が自己に対する無力感と負の有意な関連を持つことが示された。一方で,性別や性格特性といった個人属性とイラショナルキャリアビリーフの有意な関連が,大学生活充実度やキャリアレディネスを投入することで消失した。これらの結果を基に,ビリーフに着目したアセスメントやキャリア支援に関する継続研究が求められる。

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