キャリア・カウンセリング研究
Online ISSN : 2436-4088
24 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
資料
  • 黒沢 拓夢, 下村 英雄
    2023 年24 巻2 号 p. 1-12
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    自律的キャリア観と転職意向の関係性については,一貫した知見が得られておらず,更なる検討が求められる。本研究では,自律的キャリア観と転職意向の関係において,職場環境がどのような調整効果を持つのかを探索的に検討した。 20~ 50代の就業者6,000人を対象に Webモニター調査を実施し,年齢,性別,自律的キャリア観,転職意向,快適職場観等の独自に設定した指標を含む調査項目について回答を求めた。職場環境の調整効果を検討するため,自律的キャリア観,快適職場観及び双方の交互作用項を独立変数,転職意向を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。その結果,快適職場観のキャリア形成・人材育成,仕事の裁量性,処遇,社会とのつながり,労働負荷と自律的キャリア観の交互作用が転職意向と有意な負の関連を示した。さらに,単純傾斜の下位検定を行ったところ,キャリア形成・人材育成,仕事の裁量性,労働負荷の各快適職場観得点が高い場合には,自律的キャリア観と転職意向の関連は有意とならなかった。以上から,特定の快適職場観は,自律的キャリア観が転職意向に及ぼす影響を緩衝する可能性が示唆された。

  • 原 恵子, 清水 康子, 依藤 聡, 正道寺 博之, 岡田 昌毅
    2023 年24 巻2 号 p. 13-23
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    企業内労働組合の女性役員を対象に,受任に至る決断と役員経験を通した意識や行動の変容について検討することを目的とした。 13名を対象とした半構造化面接(14問)を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)によって分析した結果, 40概念, 15サブカテゴリー, 4カテゴリーが抽出された。女性労組役員における受任に至る決断と役員経験を通した意識や行動の変容は,【受任に対する逡巡と決断】があり,受任後は【労組役員としての意識や行動】と【少数派や女性役員ならではの経験や思い】が相互に関係し,【労組特有の環境や支え】が存在するプロセスであった。女性労組役員は逡巡ののちに,長期的な視点のもと能動的な姿勢で決断されることや,非専従時と専従時の決断の重みは異なる等が示された。責任者や同性役員からの声がけや丁寧な説明は決断に至る重要な要因であること,少数派として多 数派の考え方や慣習に苦労し,女性活躍推進や多様性の発揮を推進することを期待されるなど,特徴的な側面も抽出された。また,組合業務は時間調整がしづらく女性活躍推進の遅れなどの組織風土が残るが,執行部仲間や社内外の人脈は人的サポートとなり,仕事と生活の両立への方策を講じることは意識や行動の変容全般への促進要因になるなど,労組特有の環境や支えに関しても整理された。

  • 坂本 真士, 鈴木 雄大, 佐久 浩子, 村中 昌紀
    2023 年24 巻2 号 p. 24-32
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,新タイプ抑うつの素因とされる対人過敏傾向(IS)・自己優先志向(PS)のうち PSを取り上げ, PSが高い社員は, 1)相互作用のない勤務状況(無相互作用在宅勤務)を出社勤務よりも快適だと感じる,(2)出社勤務から在宅勤務への変化をより肯定的に認識する,という仮説を検証した。参加者は,コロナ禍以前(2020年1月)には在宅勤務をしておらず,調査時点(2020年10月)で週1-4日在宅勤務をしている, 20-49歳の独身・独居の会社員146名であった。欠損データを除き,無相互作用在宅勤務の快適度から出社勤務の快適度を引いた差得点を目的変数として階層的重回帰分析を行ったところ(N=133),年齢,性別, IS得点を統制した後でも PS得点が高いほど,差得点が大きいことが見いだされた。次に,出社勤務から在宅勤務への変化の認識得点を目的変数として階層的重回帰分析を行い(N=105),同様の結果を得た。これらのことから仮説は支持された。

事例研究
  • 岸野 早希, 平野 光俊
    2023 年24 巻2 号 p. 33-46
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は近年企業において導入が加速している人事施策の1つである1on1ミーティング(以下,1on1)に着目し,1on1の実施・定着における現状や課題について質的調査を通じて探索的に検討することである。1on1は働き方改革に伴う人材育成の時間・機会の減少を補完する効果的な方法として注目され,近年日本において導入する企業が増加している。しかし,1on1を導入したもののうまく定着していない等の問題が生じている。そこで1on1の実施・定着の状況について,国内大手メーカー A社の管理職(上司)9名を対象にインタビュー調査を行った。その結果,1on1の実施・定着の現状について,1on1を実施する管理職,実施はしているが目的に沿わない 1on1 を実施する管理職,1on1を未実施の管理職,というように,1on1の実施にばらつきがある様子が見られた。1on1の未実施が起こる要因については「1on1に類似したマネジメントを実施していると管理職が認識している」,「現職場の状況」が挙げられた。また,1on1の有用性を経験を通じて理解することにより1on1の定着につながることが示唆された。そして,1on1の定着における課題としては,「部下のキャリアステージに応じた 1on1の展開」,「管理職の時間リソースの不足」が挙げられた。

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