キャリア・カウンセリング研究
Online ISSN : 2436-4088
26 巻, 2 号
キャリア・カウンセリング研究
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
事例研究
  • —休職を転機としたキャリアの見直しに焦点を当てた支援—
    向阪 俊佑, 馬場 洋介
    2025 年26 巻2 号 p. 37-46
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー
    近年,労働者のキャリア自律が求められる社会情勢となっており,多くの研究の中でキャリア支援に関す る効果が示されている。しかし,メンタルヘルス不調による休職者が職場復帰をするにあたってはキャリア に基づいた環境調整は前提とされていない。また,うつ病リワーク協会が示す復職支援プログラム(リワー クプログラム)の構成要素にキャリア支援を展開することは含まれていない。本研究では,リワークプログ ラムに参加する休職者に対してキャリア支援を行った事例を紹介し,リワークプログラムという枠組みで のキャリア支援を実施することの有効性について検討した。本事例のクライエントは,休職という転機を通 じて過去の働き方や自身のスキルの棚卸を行い,自分に適した業務を具体化したことで,復職後に会社と労 働者のニーズを合致させる新たな事業の立ち上げを実現することとなった。疑似的な職場環境の中で他の 休職者や支援者に支えられながらメンタルとキャリアの両側面から支援が行われたことで本事例のような 結果につながったこともうかがえ,本事例ではリワークプログラムにおけるキャリア支援の有効性の一端 が示されたと言えよう。
  • 小金井 希容子, 岡田 昌毅, 西松 能子, 鬼頭 諭
    2025 年26 巻2 号 p. 47-56
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,出産後にキャリアや過去の選択について葛藤を抱いた40 代女性との,ナラティヴ・セラピー の経過を精査した。クライエントは,仕事と育児の両立困難から,産後に退職し,さらに次の職場からの内 定を辞退した。コミュニティーからの孤立感や,キャリア構築したいという強い思いから,内定辞退後に時 間を空けずに再就職を選んだ。その結果,疲労や心理的健康を損なうこととなったため,精神科受診をし て17回のナラティヴ・セラピー(1期から3期)が実施された。クライエントの語りは,女性にもキャリア を求めるディスコースと,育児の担い手としての伝統的な母親像を求めるディスコースによって影響を受 けており,自分自身の選択に価値を置けず,また人生の駒を進めることが困難になっていると理解できた。 ナラティヴ・セラピーによって,クライエントは自分の状況を振り返ることができるようになり,ドミナン トストーリーの矛盾に気づき,オルタナティブなストーリーが徐々に浮かび上がってきた。この結果から, ナラティヴ・セラピーは,現代女性が直面する困難な経験に対処する際に有用な介入となりうることが示唆 された。
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