白内障予防および治療において,その発症機構を把握し,エビデンスに基づいた治療薬を開発することは非常に重要である.本研究では,3 種の遺伝性白内障モデルラット(UPLR,SCR,ICR)を用い,いずれの水晶体混濁機構においても一酸化窒素(NO)がかかわることを見出すとともに,NOを標的とした点眼製剤の開発とその抗白内障効果を評価した.その混濁機構として,UPLR では過剰なNO がミトコンドリアゲノム傷害とATP 産生減少を招き,その結果としてCa
2+-ATPase の機能不全に伴う細胞内Ca
2+増加や水晶体混濁がみられた.一方,SCR およびICR では過剰なNO が脂質過酸化を引き起こし,これによりCa
2+-ATPase 活性が低下,結果として細胞内Ca
2+が増加し水晶体混濁につながることを明らかにした.さらに,2- ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを用い,ラジカルスカベンジャーでありNO 産生阻害作用を有するジスルフィラム点眼製剤の調製法を確立し,本点眼製剤がNO を標的とした白内障薬物療法に有用であることを明らかにした.
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