日本白内障学会誌
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26 巻, 1 号
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総説
学術賞受賞記念論文
  • 長井 紀章
    2014 年 26 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2014/08/26
    ジャーナル フリー
    白内障予防および治療において,その発症機構を把握し,エビデンスに基づいた治療薬を開発することは非常に重要である.本研究では,3 種の遺伝性白内障モデルラット(UPLR,SCR,ICR)を用い,いずれの水晶体混濁機構においても一酸化窒素(NO)がかかわることを見出すとともに,NOを標的とした点眼製剤の開発とその抗白内障効果を評価した.その混濁機構として,UPLR では過剰なNO がミトコンドリアゲノム傷害とATP 産生減少を招き,その結果としてCa2+-ATPase の機能不全に伴う細胞内Ca2+増加や水晶体混濁がみられた.一方,SCR およびICR では過剰なNO が脂質過酸化を引き起こし,これによりCa2+-ATPase 活性が低下,結果として細胞内Ca2+が増加し水晶体混濁につながることを明らかにした.さらに,2- ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを用い,ラジカルスカベンジャーでありNO 産生阻害作用を有するジスルフィラム点眼製剤の調製法を確立し,本点眼製剤がNO を標的とした白内障薬物療法に有用であることを明らかにした.
  • 小早川 信一郎
    2014 年 26 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    白内障術後眼内炎の発症機序は不明な点が多い.筆者らは,前房内に迷入した細菌が眼内レンズ(IOL)表面に定着増殖後,眼内へ拡散するとの仮説を立て,IOL素材と細菌の付着性,増殖開始後の眼内への拡散経路,ドラッグデリバリーシステムを応用した眼内炎予防法について検討した.IOL素材と細菌の付着性では,シリコーン,PMMA,アクリルの3素材に関して,腸球菌と表皮ブドウ球菌ともに48,72時間後ではシリコーンがもっとも少なく,アクリルがもっとも多かった.つぎに,水晶体嚢内で細菌が増殖した際の組織学的変化は,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および表皮ブドウ球菌はともに水晶体嚢の内側に付着していたが,MRSAでは水晶体嚢へ直接浸潤,埋没,水晶体嚢から圧出された所見が観察された.ドラッグデリバリーIOLならびにソフトコンタクトレンズ(SCL)の有用性では,抗菌薬前房内投与や点眼液と同等以上の効能を確認した.
《特集1》 オープンLABー臨床医が知っておきたい基礎研究
《特集2》 白内障症例検討会
原著
  • 松島 博之, 向井 公一郎, 勝木 陽子, 綿引 聡, 寺内 渉, 永田 万由美, 後藤 憲仁, 青瀬 雅資, 妹尾 正
    2014 年 26 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    ジャーナル フリー
    白内障手術後嚢内に残存した粘弾性物質が,前嚢収縮,後発白内障の発生に関与するか実験的に検討した.日本白色家兎を5羽用意し,全身麻酔後白内障手術を施行した.片眼は粘弾性物質を使用して嚢内に眼内レンズ(IOL)を挿入後,I/Aを使用して粘弾性物質を完全に吸引除去し,僚眼はIOLを嚢内に挿入後,嚢内の粘弾性物質は残存させて前房中の粘弾性物質のみ吸引除去し,嚢内粘弾性物質残存群とした.前嚢収縮を比較するために,術後1週間,3週間に前眼部徹照像を撮影し,後発白内障は術後3週で眼球を摘出し組織学的に解析した.結果,粘弾性物質残存群では前嚢収縮と後発白内障が統計学的有意に進行した.前嚢収縮と後発白内障の抑制に術中粘弾性物質を十分に除去し,術後早期より水晶体嚢とIOLの接着を進めることが重要である.
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