脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
Online ISSN : 2188-7519
Print ISSN : 0915-9401
26 巻 , 2 号
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原著
  • Tadashi Watabe, Yasukazu Kanai, Hayato Ikeda, Keiko Matsunaga, Takashi ...
    2015 年 26 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study was to validate the usefulness of digital subtraction angiography (DSA) using the fluoroscopic mode of a small-animal PET/CT in detecting recanalization of occluded middle cerebral artery (MCA), and to evaluate reperfusion by 15O-water positron emission tomography (PET) in rats with transient unilateral occlusion of MCA. Methods: Rats with (n=6) and without transient unilateral MCA occlusion (n=6) were examined. DSA was performed in the X-ray fluoroscopic mode with small-animal PET/CT. An iodine contrast medium (0.3 mL) was administered by bolus injection via the catheter in the internal carotid artery under isoflurane anesthesia. A 10-min dynamic PET scanning was started simultaneously with an intravenous bolus injection of 15O-water during MCA occlusion (occlusion duration: 45 min) and approximately 30 min after recanalization in ischemic rats. Cerebral blood flow (CBF) was evaluated semi-quantitatively as CBF index determined from the 15O-water PET images, which is normalized to the injected dose per body weight. Results: DSA revealed recanalization of the ipsilateral MCA in the ischemic rat models. The 15O-water PET images showed decreased CBF during MCA occlusion and recovery of the CBF after recanalization in the ipsilateral MCA territory. The CBF index of the ipsilateral and contralateral MCA territories during MCA occlusion were 0.84±0.12 and 1.66±0.13, respectively, and those after recanalization were 1.24±0.17 and 1.67±0.10, respectively. The CBF index of the ipsilateral MCA territory increased significantly after recanalization (p=0.04), although it remained significantly lower than the CBF index of the contralateral MCA territory (p=0.04). Conclusions: This study demonstrated the feasibility of DSA using the X-ray fluoroscopic mode of a small-animal PET/CT. Recovery of the CBF was not sufficient at 30 min after recanalization in rats with transient MCA occlusion.
  • 柴田 俊秀, 米澤 久司, 高橋 純子, 工藤 雅子, 小原 智子, 鈴木 真紗子, 石塚 直樹, 藤澤 豊, 佐々木 敏秋, 寺崎 一典, ...
    2015 年 26 巻 2 号 p. 11-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 【目的】18F-AV45(Florbetapir)をアルツハイマー病(AD),軽度認知機能障害(MCI),前頭側頭葉型認知症(FTLD),正常対照(HC)に対し用い比較検討し,その有用性を検討する.【方法】対象は,AD 28 例,MCI 14例,FTLD 11 例,HC 8 例.18F-AV45 を約370 MBq 静脈投与し,小脳に対する脳各部位のstandardized uptake value ratio(SUVR)を指標とした.症例群間でSUVR 値を比較した.AD とMCI におけるSUVR 値と認知機能検査との関連を検討した.【結果】SUVR 値は,AD は高値,MCI は中間値,HC とFTLD は低値であった.ADとMCI におけるSUVR 値と認知機能検査との相関はなかった.【結論】18F-AV45 アミロイドイメージングは,認知症性疾患の鑑別に有用であり,簡便で多数の組入れが可能な検査として期待される.
  • 稲葉 俊東, 須田 智, 上田 雅之, 仁藤 智香子, 西山 康裕, 片山 泰朗, 木村 和美
    2015 年 26 巻 2 号 p. 19-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 イブジラストは脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害に使用されている.今回,我々は中大脳動脈永久閉塞モデルを用いて,イブジラスト投与による脳保護効果について検討を行った.雄性SD ラットに,イブジラスト30 mg/kg/日を虚血7 日前から経口胃管投与後,永久閉塞を行った.虚血後30 分と24 時間にMRI を撮像した.虚血後24 時間後にMRI を用いて脳血流低下領域を測定し,神経徴候,梗塞体積,浮腫index(%)を評価すると共に,免疫組織化学的検討を行った.イブジラスト投与群はコントロール群と比較して脳血流低下領域が縮小し,神経徴候は改善し,梗塞体積および脳浮腫も縮小した.また,イブジラスト投与により,虚血周辺部の酸化ストレスマーカーや炎症マーカー発現の抑制を認めた. 今回の結果から,イブジラストは脳虚血後の血流障害の改善や酸化ストレス軽減,虚血後炎症の抑制を介して脳保護作用を発揮することが示唆された.
  • 須磨 健, 松崎 粛統, 渋谷 肇, 平山 晃康, 吉野 篤緒, 片山 容一
    2015 年 26 巻 2 号 p. 25-31
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 当施設では頸動脈狭窄症における脳循環予備能低下例などに対して循環動態を安定させることが可能で体動を抑制できる全身麻酔(全麻)下でのCAS を行っている.そこで全麻下でのCAS の治療成績を検討した.【対象と方法】2010 年7 月から4 年間でCAS を行った 22 例のうち全麻を施行したのは13 例であった.全麻群においてはpropofol を用い,過灌流症候群の発生が懸念される例にはedaravone を投与し術後数日は全麻を継続した.【結果】全麻群においては脳循環予備能低下,対側の頸動脈閉塞が約半数を占め,局麻群では心疾患の合併が最多であった.手技は全例で成功したが全麻群でTIA が2 例,局麻群で脳出血と網膜動脈閉塞が1 例ずつ発生した.局麻群の脳出血例で麻痺が後遺したが,全麻群では後遺症の発生はなかった.【結論】全麻下のCASは合併症が懸念される症例に対して合併症の防止に寄与できる可能性があると考えられた.
症例報告
  • 森﨑 雄大, 輪島 大介, 明田 秀太, 米澤 泰司, 中川 一郎, 中瀬 裕之
    2015 年 26 巻 2 号 p. 33-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 【はじめに】脳静脈血栓症は脳静脈の閉塞に伴い脳出血や静脈性脳梗塞を発症するが,急性期診断を行い治療経過を報告したものは少ない.今回,我々は連続2 症例の急性期症例を経験し考察を加えて報告する.【症例】1:79 歳女性.突然の意識消失で受診.脳血管撮影検査で左S 状静脈洞とvein of Labbe 閉塞を認め抗凝固療法を行い症状改善を認めた.2:48 歳男性.突然の左上肢麻痺が出現し受診.脳血管撮影にて上矢状静脈洞閉塞を認め抗凝固療法を行い症状改善を認めた.【考察】脳静脈血栓症の基礎研究では梗塞病変周囲penumbra 類似病変の救済の可能性があり,急性期での診断と治療が重要である.T2*での閉塞静脈洞の低信号所見が急性期診断に有用であり,急性期に抗凝固療法を行った.【結語】脳静脈洞血栓症においては急性期早期診断と治療を行うことが重要と考えられ,T2*画像での低信号所見は有用と考えられた.
シンポジウム1 脳梗塞急性期の診断・病態と治療
  • 矢吹 悌, 福永 浩司
    2015 年 26 巻 2 号 p. 39-43
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳梗塞の約23%が一過性脳虚血発作によって引き起こされる.活性酸素種産生による酸化ストレスの亢進は,脳虚血による神経障害を悪化させる要因の一つである.現在臨床適応されている抗酸化薬はエダラボンのみである.しかしながら,エダラボンは急性腎不全および肝障害などの重篤な副作用や治療可能時間域の短さが問題となっている.故に,一過性脳虚血発作に続く重篤な脳梗塞発症を予防するために新たな治療薬の開発が望まれる.本稿では,生体内で合成される抗酸化物質グルタチオン(GSH)に着目し,脳においてGSH 生合成を高める薬物の基礎および臨床研究結果と,われわれのGSH 経口投与による一過性脳虚血に伴う脳機能障害を改善効果について紹介する.
  • 八木田 佳樹
    2015 年 26 巻 2 号 p. 45-49
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳梗塞急性期治療において,微小循環障害や出血性変化を抑制しうる脳保護療法の開発が期待されている.脳血管内皮を標的とした脳虚血発症前の介入により,良好な転帰が得られることは多くの研究により示されている.しかし脳虚血発症後の介入により有効性を発揮しうる脳保護薬の開発は楽観視できないのが現状である.我々は脳虚血急性期の血管内皮機能障害の分子メカニズムを検討し,内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase; eNOS)機能不全がその原因の一つである可能性を報告してきた.脳血管内皮においてeNOS が産生するNO は脳血流維持や抗血栓作用など脳内の恒常性維持に重要な役割を担う.しかし機能不全をきたしたeNOS はスーパーオキシドの産生源となり,酸化ストレスを亢進させることにより組織損傷を拡大させる.このような問題点を一つ一つ明らかにしていくことが脳梗塞急性期における脳保護療法の開発につながるものと考えている.
  • 横田 千晶
    2015 年 26 巻 2 号 p. 51-56
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 急性脳卒中例におけるバイオマーカーとして,終末糖化産物(advanced glycation end products; AGE)とその可溶性受容体(soluble RAGE; sRAGE)に着目した.発症後3 日以内の急性期脳卒中例の検討より,sRAGE 低値と重症白質病変,入院時重症度,喫煙習慣,正常糸球体濾過率は有意に関連した.急性期脳卒中例におけるsRAGE とesRAGE には良好な相関があった(R=0.85).急性脳梗塞例と年齢をマッチさせた吹田コホートとの比較より,AGE の一つである血中ペントシジン(PENT)値は,他の危険因子で補正後も有意に急性脳梗塞と関連した.脳卒中発症後平均3 日と14 日にsRAGE,esRAGE,PENT を測定し,健常例と比較した.sRAGE,esRAGE は,脳出血発症早期に低下しており,脳出血発症に関連している可能性がある一方,PENT は,脳卒中発症リスクのバイオマーカーとなる可能性がある.
シンポジウム2 脳梗塞慢性期治療とNOACs
  • 田中 耕太郎, 高嶋 修太郎, 田口 芳治, 道具 伸浩, 温井 孝昌, 小西 宏史, 吉田 幸司, 林 智宏, 山本 真守
    2015 年 26 巻 2 号 p. 57-62
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 我々の施設の非弁膜症性心房細動による心原性脳塞栓症(NVAF-CE)入院患者について入院時の抗血栓薬を検討すると,NOAC 登場前は,ワルファリン(W)32%,抗血小板薬(P)23%,抗血栓薬なしが45%であった.NOAC 登場後はW が35%,NOAC が18%,P が9%,抗血栓薬なしが38%であり,NOAC 登場前に比しP 処方患者が明らかに減少,抗血栓薬なしも軽度減少していた.以前ならW の代わりにP を処方していた症例に,NOAC が処方されている症例が増加していると考えられた.NOAC 服用中のNVAF-CE 発症患者の入院時NIHSS は平均1.4 であり,W 服用中の8.8,抗凝固薬非服用中の10.9 に比し,有意に(p<0.05)低値であった.入院時D-dimer 値についても,NOAC 服用群で有意に(p<0.05)低値であった.NVAF-CE の退院時の抗凝固薬は,NOAC 登場前はW 76%,処方なしが24%,登場後はW 44%,NOAC 43%,なしが13%で,抗凝固薬処方なしが減少していた.NOAC 使用が普及しつつあるが,長期の安全性と有用性については今後も検証が必要である.
  • 赫 寛雄, 齋藤 智子, 小林 万希子, 石村 洋平, 鈴木 友里愛, 井上 文, 田口 丈士, 井戸 信博, 加藤 陽久, 相澤 仁志
    2015 年 26 巻 2 号 p. 63-66
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant; NOAC)の観察研究が欧米より報告され,第III 相国際共同試験との間に一部解離が認められた.理由として,第III 相試験における患者の選択・除外基準がreal world に即してない可能性があること,またreal world でのNOAC の用量設定の問題等が指摘された.大規模観察研究では,NOAC のワルファリンに対する有効性と安全性の評価は,対象とする母集団の背景因子(CHADS2 スコア等)によって異なっていた.ダビガトランについては,CHADS2 スコアの低い患者集団を対象とした場合,安全性の評価においても優れていた.また服薬非継続率に関する研究では,NOAC は一貫してワルファリンよりも優れていた.今後,本邦においても大規模な観察研究が行われ,real world での現状が示されることが望まれる.
シンポジウム3 脳梗塞病態と新治療開発
  • 髙橋 愼一
    2015 年 26 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 我々はこれまでneurovascular unit におけるニューロンとアストログリアの代謝コンパートメントについて研究を進めてきた.脳梗塞の病態においてもアストログリアの代謝応答は重要な働きを担うが,ニューロンに対する障害作用と保護作用は表裏一体であり,一方のみを強調して論じることは難しい.アストログリアの主要な代謝コンパートメントには,1)グルコース代謝,2)脂肪酸代謝,3)アミノ酸代謝がある.それぞれ,1)虚血下で増加する解糖系代謝産物である乳酸の影響,解糖系のシャント路であるペントースリン酸経路の亢進による抗酸化ストレス作用,2)脂肪酸代謝活性の高いアストログリアからの内因性ケトン体産生と虚血性神経細胞障害に対する保護作用,3)虚血性神経障害で重要な役割を演じるグルタミン酸のco-agonist であるD-セリンとその立体異性体であるL-セリンの代謝コンパートメントについて,脳虚血における障害/保護作用をまとめ,脳梗塞治療への応用を考察する.
  • 野田 百美
    2015 年 26 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳白質のモデルとして使われているマウス視神経を用い,飲用水中の分子状水素(H2)が虚血による視神経機能障害を改善させるかどうかを検討した.視神経機能の測定には,摘出後,複合活動電位(CAP)の面積を測定した.灌流チャンバーを脱酸素・脱グルコース(OGD)にすると,CAP は速やかに消失し,再灌流後は25%程度しか回復しない.ところが,10~14 日間,H2 水を飲用したマウスの視神経では,CAP が完全に消失することはなく,再灌流後の回復も顕著に改善された.虚血・再灌流後の視神経線維の脱落は,H2 水飲用群で有意に減少しており,グリア細胞(とくにオリゴデンドロサイト)の核8-オキソグアニン(nu8-oxoG:酸化DNA 障害のマーカー)の蓄積は,H2 水飲用群において,有意に抑制されていた.これらの結果は,有髄神経が占める白質の保護にH2 水飲用が有効であることを示唆しており,酸化ストレス耐性と治療の有用性が期待される.
  • 神谷 達司
    2015 年 26 巻 2 号 p. 83-91
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 近年,脳梗塞急性期の治療方針としては,まず脳血流の改善を目的としてrt-PA の静脈内投与による血栓溶解療法が行われている.一方,脳保護薬としてフリーラジカルスカベンジャーが2001 年6 月1 日より世界初の脳保護薬としてわが国で認可され,臨床実地の場で使用されている.この脳保護薬による急性期脳梗塞治療をさらに有益にするためには,さまざまな方法が考えられる.複数の脳保護薬の併用などが考えられるが,相互作用等懸念される.そこで脳卒中における急性期脳保護として,脳保護薬と低体温療法の併用は,保護作用が増強されるなど多くの利点があり,近年注目を集めており,臨床応用が期待される.本稿では,ラット局所脳虚血モデルにおける脳保護療法と超軽微低体温の併用療法の効果と作用機序を概説する.将来,これらの動物モデルでの実験結果を参考にして,脳保護薬と低体温療法の併用を目指した臨床研究が行われることが望まれる.
シンポジウム4 脳保護療法とNVU
  • 下畑 享良, 金澤 雅人, 川村 邦雄, 高橋 哲哉, 西澤 正豊
    2015 年 26 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳梗塞に対するtPA を用いた血栓溶解療法は,発症から4.5 時間を超えて行った場合,脳出血を合併するリスクが高くなる.脳出血合併症を防止する治療の開発は,予後の改善と,tPA 療法の治療可能時間域の延長をもたらす可能性がある.我々は,血管リモデリングに関与する血管内皮増殖因子(VEGF)やアンギオポイエチン1(Ang1)を標的とした血管保護療法の可能性について検討し,ラット脳塞栓モデルにおいて,① VEGF 抑制薬,および②組み換えAng1 の投与が脳出血合併症を防止し,予後を改善することを明らかにした.その後,知的財産権の確保,および米国ベンチャー企業との産学連携を行い,現在,臨床試験の実現を目指している.これまでの経験から,アカデミア研究者が,創薬研究の「死の谷」を乗り越えるためには,①動物実験の質の改善,②知的財産権の確保,③産学連携の推進が重要であると考えられた.
シンポジウム5 新しい脳循環代謝機能イメージング脳画像の進歩
  • 正本 和人, 菅野 巖
    2015 年 26 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 神経血管ユニットに関する光イメージングを用いた基礎研究は,二光子顕微鏡法と多様な蛍光タンパクの登場により飛躍的に進展している.本稿では,マウス脳内の微細構造をin vivo で可視化し,画像データを定量的に解析また視覚化するための手法について報告する.二光子顕微鏡法で撮像した脳微小血管に関するマルチスライス画像からは血管の長さ・径を算出し,ネットワーク構造を3 次元空間に再構成した.一方,神経・グリア細胞に関しては蛍光標識を施し,画像上で細胞の位置情報と共に形態を評価した.さらに形態画像に加えてダイナミック撮像を組み合わせることで,血流やカルシウム応答などの機能情報を同時に取得することが可能である.今後は,各種の細胞環境の画像化や遺伝子・タンパク発現を画像化することで,神経血管連関におけるシグナル機構や細胞環境を介した神経作用について明らかにするために有用なツールに発展すると期待される.
シンポジウム6 脳出血、もやもや病、SAH
  • 野崎 和彦
    2015 年 26 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳卒中の10%を占めるくも膜下出血の主原因である脳動脈瘤の成因,治療に関する研究において使用される脳動脈瘤の動物モデルには,1)動脈に対する直接的な外科処置を用い動脈壁に直接損傷を起こし形成する方法,2)脳動脈瘤形成の原因因子を動物に負荷することにより誘発する方法の2 つがある.後者のモデルでは,組織学的に内弾性板の消失,中膜平滑筋細胞層のヒハク化・消失など,ヒトの脳動脈瘤に類似した所見を有しており,脳動脈瘤の病態解明に有用である.当施設では,ラットの脳動脈瘤誘発モデルに加えて,雌カニクイザルに対して両側卵巣摘出術,片側腎動脈・総頸動脈結紮術を行い,術後より食塩水,コラーゲン結合阻害作用を有する薬剤を投与して作成したモデルを開発中であり,MRI での画像追跡による薬物効果判定を進行中である.脳動脈瘤に対する薬物治療の可能性を含め概説する.
シンポジウム7 脳卒中再生医療
  • 高木 康志
    2015 年 26 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 iPS 細胞が樹立され再生医療の可能性について期待が膨らんでいる.この細胞の最大の利点は自分自身の細胞から樹立できることであり,生命倫理学的問題点の克服のみならず,自家移植が可能で免疫学的な問題点も克服できる可能性が示されている.現在の脳梗塞に対する再生医療の基礎研究と臨床応用の状況について,その歴史とともに我々の研究室のデータを元に解説する.脳卒中に対する細胞移植治療には,少なくとも運動ニューロンを含めた皮質脊髄路の再構築が必要であり,まだ様々な研究の発展が必要である.また脳卒中に対する神経新生治療では,現在ヒトにて機能回復が果たせる神経新生を得る条件は見つかっていない.現時点では将来の基礎研究発展に備えて,多角的,科学的な評価システムを構築することが必要であると思われる.
シンポジウム8 生活習慣病と脳卒中・認知症
  • 山口 修平
    2015 年 26 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 我が国には600 カ所以上の脳ドック施設があり,未破裂脳動脈瘤や無症候性脳梗塞およびその危険因子の早期発見に貢献している.脳ドックの受診者は中高齢者が多く,近年は脳卒中に加え物忘れの精査を希望する例も増加している.脳ドック学会ではT2*強調画像による脳内微小出血(CMB)の検出が新たに施設認定条件に加えられた.CMB は無症候性脳梗塞や白質病変と同様,将来の脳出血および脳梗塞の重要な危険因子である.皮質に多発する場合はアミロイド血管症も考慮する必要がある.また脳ドック学会は認知機能検査実施も施設認定の条件に加えた.現在約3 割の施設で認知機能検査が実施されているが,人員と時間が必要なためiPadを用いた簡易なスクリーニング検査(Cognitive Assessment for Dementia, iPad version: CADi)などが推奨される.MRI では脳小血管病変の検討とともに,海馬萎縮の検討も勧められる.さらに認知症の早期発見のために,安静時機能的MRI も将来有力な検査項目と考えられる.
  • 細見 直永, 松本 昌泰
    2015 年 26 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 アテローム動脈硬化病巣においてPCR により歯周病菌の存在が示されており,歯周病菌感染症がアテローム動脈硬化に関与していることが示唆されている.歯周病と脳卒中との関連に関して,歯周炎による脳卒中の発症への影響が報告されている.脳梗塞患者の病型別における各種歯周病菌の血清中抗体価の検討により,歯周病菌の一つであるprevotella intermedia に対する抗体価がアテローム血栓性脳梗塞において高値を示しており,頸動脈のアテローム動脈硬化病変との関連性が示唆された.また異なる歯周病菌であるporphyromonas gingivalis に対する抗体価の上昇により心房細動との関連性が示唆され,異なる歯周病菌の影響により,機序の異なる脳梗塞が発症する可能性を示した.このように,脳梗塞の新たな危険因子として歯周病の関与を解明することにより,脳梗塞の発症抑制法として新たに歯周病対策を考慮する必要性が示唆されるが,歯周病対策による脳卒中発症予防効果はまだ明らかになっていない.
  • 伊藤 義彰
    2015 年 26 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 糖尿病は脳梗塞のリスク因子であり,脳血管性認知機能障害をきたすリスクを2.0~4.2 倍にするが,アルツハイマー病の独立したリスク因子とも報告される(1.1~2.4 倍).病理的には,動脈硬化病変,虚血性脳病変,微小出血に加えてアルツハイマー型のアミロイド・プラークが増加するとの報告がある.発症機序としては,単純な動脈硬化性病変による脳虚血のほかに,アミロイドが穿通枝の脳小動脈に沈着し抵抗血管の障害,さらに静水圧の増加から末梢の血液脳関門が破綻し白質病変をきたす機序,血管病変のためにアミロイドのクリアランスが低下し実質でのアミロイドオリゴマーがニューロンを傷害する機序,Advanced Glycation Endproducts(AGE’s)や酸化ストレスによる糖毒性,さらに高インスリン血症による神経障害作用などが提唱されている.今後,これらの機序を標的とした特異的な治療法の開発が待たれる.
シンポジウム10 認知症、炎症と血管障害リスク
  • 七田 崇, 伊藤 美菜子, 吉村 昭彦
    2015 年 26 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 高齢化社会を迎え,脳卒中医療の重要性はますます高まっている.次世代の脳梗塞治療法の開発には炎症を制御することが重要であると考えられる.脳梗塞後の炎症の惹起には,虚血壊死に陥った脳組織から放出されるDAMPs,DAMPs を認識する炎症細胞の活性化,インフラマソームの活性化によるIL-1βの産生など,様々なメカニズムが寄与していることが明らかとなった.脳梗塞後の炎症の経過をさらに詳細に解明することにより,適切な炎症の制御を行うことで新規の脳梗塞治療法を開発できる可能性がある.
シンポジウム11 神経再生と脳保護療法
  • 梅村 和夫, 外村 和也, 松本 祐直
    2015 年 26 巻 2 号 p. 141-143
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 マウス頭蓋内出血モデルを用い,S. mutans(標準的な株であるMT8148 株(MT)と頭蓋内出血患者から分離した高病原性TW295 株(TW))を静脈より投与し,24 時間後の頭蓋内出血の程度を検討した.頭蓋内出血量はMT 群では,コントロール群と比べ変化がなかったが,TW 群では有意に増加した.TW は菌表層にコラーゲン結合蛋白質(Cnm)を有しているが,MT は有していない.そこで,このCnm を欠損させたTW295CND 株を作製した.CND 株群では,脳組織への集積は認められず,頭蓋内出血の増悪も認められなかった.また,TW群は出血部位に強いMMP-9 の発現増強を認め,さらにコラーゲン添加による血小板凝集能を低下させた.これらの結果から,高病原性S. mutans は,Cnm を有しており,そのCnm を介して血管内皮傷害により露出したコラーゲン層に集積し,MMP-9 の発現を亢進して血管壁を融解し,さらに血小板凝集能を低下させることで頭蓋内出血を助長したと考えられる.
  • 松山 知弘, 中込 隆之
    2015 年 26 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳血管ペリサイト(血管周皮細胞)は血管内皮細胞やアストロサイトとともにBrood Brain Barrier/Neurovascular unit の恒常性の維持にとって重要な働きをしている.以前よりペリサイトは血管内皮細胞や平滑筋細胞に分化することが知られているが,我々は,脳虚血負荷後にペリサイトが脱分化して神経幹細胞になることを報告してきた.本シンポジウムでは虚血負荷を受けたペリサイトが神経幹細胞にとどまらず,血管内皮細胞やミクログリアにも分化しうる多能性幹細胞としての特性を獲得することを示し,脳血管ペリサイトが脳保護のみならず脳修復生機構にも関与する可能性について紹介する.
  • 日宇 健, 堀江 信貴, Tonya Bliss, 西山 康裕, 山口 将, 福田 雄高, 堤 圭介, 松尾 孝之, 永田 泉, Gary ...
    2015 年 26 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 移植されたヒト神経幹細胞がホストの内在性修復機構を促進するという仮説を基に機能回復の内在性修復メカニズムを検証した.ヌードラットに中大脳動脈脳皮質梗塞モデルを作成し,1 週間後にヒト神経幹細胞を同側皮質に定位移植した.機能回復は移植4 週間後でみられ,脳梗塞後のangiogenesis,axonal sprouting,dendritic branching については,移植細胞により修飾亢進された.高解像度イメージングを駆使したarray tomography を用いて シナプスの定量化を行い,移植4 週間後に細胞移植群で皮質第5 層に興奮性シナプスが増加した.神経幹細胞移植に伴うシナプスの変化をin vivo で捉え,synaptogenesis が機能回復に一致して起こることが明らかとなった.
シンポジウム12 脳救急医学と脊髄・新生児脳障害
  • 内野 博之, 原 直美, 石田 裕介, 長島 史明, 西山 遼太, 鎌田 早紀, 小平 亜美, 白澤 一弘, 荻原 幸彦
    2015 年 26 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 心肺蘇生後に起こってくる心停止後症候群を如何に軽減させるか,それは早期から積極的に脳保護を念頭に置いた治療を行い,脳機能不全までの段階で負のカスケードを阻止して機能改善を図っていくことである.心肺蘇生時の救命救急処置法の改善および脳梗塞時の血流改善治療法の進歩および脳指向型集中管理法の併用により,神経機能回復に光明を見出すことができるようになってきたが,人の脳は,予備力が少なく,虚血侵襲に対しての防御機構を兼ね備えていない.また,神経細胞障害のメカニズムは複雑かつ多要素で,治療に対するtherapeutic window が極めて短く,脳機能不全から患者を完全に回復させ,社会復帰させることができる状況とは言い難く現在も社会復帰率の向上を目指した努力が続けられている.さらに,脳保護のためには,脳障害を誘発するメカニズムの解析が重要となるが,中でも,ミトコンドリア機能不全に焦点を当てた解析と創薬は蘇生後脳症の治療と脳保護において重要な役割を担うものと思われる.本稿では,心停止後症候群について触れ,これらの要因となる虚血性神経細胞死のメカニズムを紹介し,細胞死誘発に深く関わるミトコンドリア機能不全とカルシニューリン・イムノフィリン情報伝達系の重要性を概説した.
シンポジウム13 頭痛とてんかん・うつの脳循環代謝(頭痛学会・てんかん学会とのjoint)
  • 小林 勝弘, 上利 崇, 佐々田 晋, 秋山 倫之, 岡 牧郎, 遠藤 文香, 吉永 治美, 伊達 勲
    2015 年 26 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 乳幼児期に発症する重症てんかんの多くは,激しいてんかん性脳活動のために認知・行動発達の遅滞・障碍を来すてんかん性脳症となる.脳形成異常はその主要な原因であり,これに伴うてんかんは難治のため脳機能に可塑性がある乳児期の間の外科治療が推奨されている.乳幼児のMRI はコントラストが乏しく判読が難しいため,PET とSPECT とくにSPECT で発作時のデータから発作間欠時のデータを差し引いてMRI に重ね合わせるSISCOM(Subtraction Ictal SPECT CO-registered to MRI)が発作焦点の同定において有用である.岡山大学病院てんかんセンターで乳幼児期に半球離断術を行った重症てんかんの8 症例 (初回手術時年齢:生後2 カ月~2 歳,平均9.9 カ月)の中,MRI 所見の不明瞭な2 例ではSISCOM が病変同定のために有効であり,PETも効果を発揮した.これにより乳幼児のてんかん外科治療における脳循環・代謝に関わる機能神経画像の有用性が実証された.
シンポジウム14 認知症予防の脳循環代謝(認知症予防学会とのjoint )
  • 浦上 克哉
    2015 年 26 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 日本に認知症は462 万人,認知症予備群は400 万人と報告され,認知症予防対策は急務と考えられる.認知症予防対策を実践していくために,平成23 年に日本認知症予防学会を立ち上げた.本学会の目指すところは,認知症予防活動の実践普及,認知症予防に携わる人材の育成,多職種協働と地域連携,認知症予防のエビデンス創出である.認知症予防の取り組みは,鳥取県琴浦町から始まり全国へと広がっている.認知症予防に携わる人材の育成としては,認知症予防専門士と認定認知症領域検査技師である.認知症予防のエビデンス創出は,エビデンス創出委員会を立ち上げ体制を構築しつつある.日本認知症予防学会が目指すところは,日本脳循環代謝学会が目指すところとの共有部分も多いと思われる.
新評議員
  • 岩田 智則
    2015 年 26 巻 2 号 p. 173-176
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 CAS 後の過灌流症候群発症の術前と術後の予測因子を明らかにし,SPECT とTCCS の有用性をretrospectiveに検討した.待機的CAS を施行し,SPECT とTCCS を術前と術後3 時間以内に施行した患者を対象とした.過灌流症候群の術前予測因子と術後予測因子を単変量と多変量解析で明らかにした.対象となった64 症例中で9 症例に過灌流症候群が出現した.過灌流症候群発症有無で分け,単変量解析で有意差のあった因子について,術前と術後で多変量解析を行った.術前因子で多変量解析すると術前MCA 平均血流速度(p<0.05)とCVR(p<0.01)が重要な過灌流症候群予測因子であり,術後因子で多変量解析すると術前後MCA 平均血流速度比(術直後MCA 平均血流速度/術前MCA 平均血流速度)(p<0.05)と小脳比(rCBF in the affected MCA territory/rCBF in the affect-sided cerebellum)術前後の差 (術後小脳比–術前小脳比) (p<0.05)が重要な予測因子であった.CAS 後の過灌流症候群発症を予測する上で,SPECT とTCCS は有用である.
  • 木村 和美
    2015 年 26 巻 2 号 p. 177-179
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(recombinant tissue plasminogen activator: rt-PA)の脳梗塞急性期への研究は,1995 年に発表されたNINDS 研究の結果を基に,1996 年に米国のFood and Drug Administration(FDA)がalteplase を承認し,その後,世界中で広くrt-PA 静注療法が行われるようになった.日本では米国における認可から10 年遅れ臨床試験を経て,ようやく2005 年10 月にalteplase の使用が承認された.その後,多くの研究で発症4.5 時間までは有効の可能性が示され,わが国でも2012 年9 月から発症3 時間以内から4.5 時間までに延長され現在に至っている.われわれは,t-PA 静注療法時にMRI を駆使した研究を行ってきた.本稿では,t-PA 治療前のDWI 所見と転帰,t-PA 治療と右左シャントの関連,M1 susceptibility vessel sign(M1 SVS)と再開通現象,早期再開通現象が見られない因子,t-PA 治療とmicrobleeds の意義について,われわれの行ってきた研究を中心に概説する.
  • Teruo Kimura
    2015 年 26 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    We have come to the time to reconsider the bulk theory that have been hitherto upheld in explaining the cerebrospinal fluid as the third circulatory system next to the blood and lymph. There are possibilities that the cerebral capillaries serve as the site of generation and absorption of tissue and cerebrospinal fluids and as the drainage pathway for metabolic and waste products. If we assume that these functions of cerebrospinal fluid are disturbed when individuals enter pathological states or become aged, there are possibilities that the behaviors of the cerebrospinal fluid involve the neurovascular unit (NVU). Thus it is necessary to examine the correlation of these possibilities with the results of past experiments and clinical findings. If we are to believe that astrocytes, a component constituting NVU, are related to the water channel such as aquaporine, it becomes necessary to re-examine the cerebral blood circulation, which has hitherto been defined by the accepted theories and knowledge, in line with the added concept of cerebrovascular circulation. In the past, the studies on metabolism related to cerebrovascular circulation tended to lean heavily on blood circulation. For the future studies of neuroprotection, complex and comprehensive approaches, such as the concept of the NVFU (NeuroVascular cerebrospinal Fluid Unit) with spacial and functional expansion encompassing not only cerebrovascular but also cerebrospinal fluid circulations may be necessary.
  • 小泉 博靖, 鈴木 倫保
    2015 年 26 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 近年,頭蓋内圧と血圧変動の相関係数を指標とした重症脳損傷の急性期モニタリングが注目されている.脳血管自動調節能の作用が血圧変動に対するvasomotor reaction を介して脳血管床に変動をもたらし,脳血管床の変動が頭蓋内圧に反映されるため,頭蓋内圧と血圧の変動は連動し,この2 変量の相関係数から脳血管自動調節能の保全状態を評価することが可能である.我々は重症くも膜下出血,重症頭部外傷の自験例において本モニタリング法を導入し,その有用性を検証した.重症くも膜下出血術後に脳血管攣縮を発生した症例において相関係数は上昇し,遅発性脳梗塞を併発した重症例ではその上昇が有意であった.また,重症頭部外傷では急性期に解析した相関係数の平均値と3 カ月後の転帰が有意に相関した.今回の我々の研究結果について文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 健一
    2015 年 26 巻 2 号 p. 193-195
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳血管内治療はその低侵襲性とディバイスの進歩により治療適応が拡大の一途をたどっている.脳血管内治療が標的とする脳血管は,脳組織の血液循環を司る「パイプ」としての機能的役割と,それ自身が増殖,リモデリング,退縮を繰り返す血管組織という両面を併せ持つ.したがって,脳血管内治療の適応や成績は脳血管画像だけで語られるべきでなく,疾病に暴露された脳組織あるいは標的血管組織の循環代謝や組織構築の変化を考慮に入れるべきである.本稿では,脳血管内治療における脳循環代謝研究の現状と今後の展望について,自験例を踏まえて論じる.
  • 高橋 哲哉, 下畑 享良, 西澤 正豊
    2015 年 26 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 虚血耐性現象とは軽度の虚血負荷により内因性の耐性が誘導される現象で,代表的なものとしてIschemic preconditioning(IPC)がある.IPC は短時間の血流遮断により人工的に軽度の虚血状態を作ることで,引き続いて起こる虚血での障害が軽減される現象であり,複数の動物種で,また多数の臓器で確認されている.IPC は動物実験では強力な保護作用を持つものの,脳虚血が起きる前に行う必要があることから臨床応用は困難であった.しかしその後ischemic postconditioning と呼ばれる,脳虚血が起きた後に類似の血流遮断を行う手法,さらには脳への血流を供給する血管ではなく遠隔臓器の血流遮断(remote ischemic preconditioning/postconditioning)でも神経保護作用が確認され,臨床応用の可能性が広がった.近年,血栓溶解療法や血管内治療が発展し,血管再開通の可能性が上がっていることもあり,これらの虚血耐性現象のメカニズム解明および治療への更なる発展が期待される.
  • 中込 隆之
    2015 年 26 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳がひとたび梗塞性変化をきたすと,その変化は不可逆的であり,脳梗塞巣には壊死組織や炎症細胞しか存在しないという考えがこれまでの通説であった.しかし,我々は,マウス大脳皮質脳梗塞モデルを用い,脳梗塞巣には幹細胞が誘導されていることを発見した.この幹細胞は神経系の細胞に分化可能であったことから,我々は脳傷害誘導性神経幹細胞(injury-induced neural stem/progenitor cells; iNSPCs)と命名してきたが,その後の研究により,iNSPCs は神経系以外の細胞にも分化可能な多能性幹細胞であることが明らかとなった.本稿では,我々がこれまでに得た知見をもとに,この脳由来虚血誘導性多能性幹細胞(Brain-derived ischemia-induced multipotent stem cells; BiSCs)に関する特性やその起源を中心に,BiSCs を介した再生治療の展望に関して紹介する.
  • 菱川 朋人, 飯原 弘二, 宮本 享, 伊達 勲
    2015 年 26 巻 2 号 p. 207-212
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 私の脳循環代謝研究はくも膜下出血後脳血管攣縮の基礎研究,頸動脈プラークイメージングに関する研究,もやもや病に対する臨床研究に大別される.脳血管攣縮ではhypoxia-inducible factor-1 に,プラークイメージングでは病理組織との比較検討に,もやもや病では後方循環障害に焦点を当てて研究を行った.本論文ではこれらの研究を概説し,現在大学院生と行っている研究について紹介する.脳神経外科手術や日常診療と臨床および基礎研究のバランスを維持しながら,科学的視点を持った外科医としてこれらも邁進していく所存である.
  • 平野 照之
    2015 年 26 巻 2 号 p. 213-223
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳梗塞急性期血行再建療法の適応判断に画像診断は必須である.発症4.5 時間以内であればASPECTS/ASPECTS+W で早期虚血変化を評価し,rt-PA 静注の適応を決定する.MRI 拡散強調画像はCT より虚血感度が高いが,表示条件を標準化しCT との検出特性の違いを念頭におく.同時に脳血管情報を収集し,適応を満たせば遅滞なく脳血管内治療を実施する.MR CLEAN 以降のステント型血栓回収デバイスを用いた脳血管内治療のランダム化比較試験は,治療ターゲットである閉塞血管があり,虚血コアが小さい例を対象とし,その上で良好な側副血行あるいは灌流画像で救済可能組織を確認したことが成功の一因となった.MRI first の迅速診断体制の強化か,CT first (CTA/multiphase CTA/CT perfusion)への転換か,我々の立ち位置が問われている.
  • 松尾 龍
    2015 年 26 巻 2 号 p. 225-232
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳梗塞における血液バイオマーカーは,診断や予後の予測,今後の個別化医療において有用である可能性がある.これまで多数のバイオマーカー研究の成果が報告されているが,実際に臨床応用されているものは少ない.われわれは,脳梗塞バイオマーカー探索研究(REBIOS)により,VEGF は心原性脳塞栓症では機能予後不良に関連するのに対し,アテローム血栓性梗塞ではむしろ機能予後良好に関連する傾向を認めることを明らかにした.このように臨床的な意義が病型により異なることは,臨床応用が困難な要因の一つと考えられる.これまでのバイオマーカー研究の問題点として,研究サイズが小さいこと,基準値が不明瞭であることも指摘されており,今後は大規模な研究サイズでの検証が必要である.さらに多くの知見が集積されることで臨床に有用なマーカーが出現することに期待したい.
  • 八木 貴, 吉岡 秀幸, 木内 博之
    2015 年 26 巻 2 号 p. 233-237
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 脳虚血耐性現象は,短時間の非致死的虚血負荷により,引き続く致死的脳虚血に対して強力な脳保護効果を誘導する現象として注目されているが,その分子機構は十分に解明されていない.我々は心筋虚血や癌細胞の細胞死の制御に重要な役割を果たすSTAT3 に注目し,ラット一過性前脳虚血モデルを使用して脳虚血耐性現象へのその関与を検討した.虚血後,海馬CA1 神経細胞においてリン酸化STAT3(ser727)が誘導され,致死的虚血群では再灌流後早期(1 時間)に一過性に増加するのに対して,非致死的虚血群では再灌流後8 時間以降に増加し,2 日目でピークを迎えた.阻害薬によるSTAT3 の活性化抑制は,虚血耐性現象の脳保護効果を減弱した.非致死的脳虚血後に海馬CA1 神経細胞で誘導されるリン酸化STAT3(ser727)の発現は,虚血耐性現象の脳保護効果獲得に重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 若井 卓馬, 吉岡 秀幸, 八木 貴, 金丸 和也, Pak H. Chan, 木内 博之
    2015 年 26 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 近年動物実験において,神経幹細胞移植治療が脳出血後の神経機能回復を改善させることが示されているが,ホスト組織の劣悪な環境が移植細胞の生着を妨げ,治療効果を減弱させる要因となっている.我々は,この幹細胞の傷害機序として,血腫分解物であるヘモグロビンによる酸化傷害に注目し,遺伝子操作により抗酸化特性を強化した神経幹細胞移植の効果を検討した.内因性の細胞内活性酸素分解酵素であるcopper/zinc-superoxide dismutase(SOD1)を過剰発現させた神経幹細胞では,野生型神経幹細胞に比較し,ヘモグロビンによる酸化傷害が軽減し,移植後の生存率が有意に改善した.これに伴い,移植周囲の神経栄養因子の発現量が増加し,神経保護作用が促進され,脳出血後の神経機能の回復が改善された.抗酸化特性を強化した神経幹細胞移植は脳出血の新たな治療となりうる可能性が示唆された.
  • 渡部 直史
    2015 年 26 巻 2 号 p. 245-251
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル フリー
    要旨 15O 標識ガスPET は臨床で20 年以上に渡って用いられており,Powers によるStage 分類が基本的な理論背景として広く普及している.しかし,実際の臨床ではこの分類に当てはまらない症例も少なからず存在し,特にAcetazolamide 負荷後の盗血現象についてまとまった報告はなかった.我々は盗血現象を認める領域をまとめて評価した結果,Powers 分類にてStage I あるいはStage II の領域に加えて,今まで報告されていない血流の高い領域が含まれることが明らかになった.さらに我々は小動物における15O ガスPET による脳血流・酸素代謝の定量手法を確立し,脳虚血モデルにおいて酸素摂取率の上昇をイメージングで捉えることに成功した.今後,様々な病態モデルでの脳循環代謝の評価に15O ガスPET さらにはグリア細胞のPET イメージングを用いることで,臨床における病態と比較する架け橋になることが期待される.
追悼文
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