Chem-Bio Informatics Journal
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ISSN-L : 1347-0442
3 巻, 3 号
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  • 浅岡 丈生, 安藤 格士, 目黒 俊幸, 山登 一郎
    原稿種別:  
    専門分野: 分子生物学における情報計算技術
    2003 年 3 巻 3 号 p. 96-113
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/10/01
    ジャーナル フリー
    タンパク質の機能を理解するには、配列、構造や物性の情報が重要である。現在のタンパク質機能予測は、アミノ酸配列情報が蓄積され膨大化していった影響を受け、アミノ酸配列を利用したホモロジー検索やモチーフ検索が主な手法である。しかし、タンパク質の機能はアミノ酸配列が折りたたまることによってできる複雑な立体構造により決定される。このことをうけ、タンパク質立体構造を系統的に決定しようと構造ゲノム科学が新しい研究分野として生まれた。構造ゲノム科学の進展により、今後はタンパク質立体構造情報が急激に増加していくことが期待される。タンパク質立体構造情報の充実に伴い立体構造を利用した高速・高効率な機能予測法の確立が必要となってくる。そこで、タンパク質の立体構造情報を利用した機能予測アルゴリズムの作成を行った。研究対象として、立体構造情報及びその機能情報が充実しているEFハンドCa2+結合タンパク質について解析を行った。まず、局所構造におけるアミノ酸の出現頻度及び局所構造内部に見られるCα間の距離を構造情報として抽出した。次に、機能部位で見られる構造情報とその他の局所構造で見られる構造情報の差を利用してスコア関数を作成した。その結果、EFハンドCa2+結合部位とその他の局所構造に分類することが可能となった。距離情報を用いることで、膨大化した立体構造情報の高速且つ網羅的な解析が可能になると期待できる。今後、他の機能部位についても本手法を適用し有効性を検討していく予定である。 
  • 吉村 淳, 下之坊 匡弘, 関口 達也, 岡本 正宏
    原稿種別:  
    専門分野: 分子生物学における情報計算技術
    2003 年 3 巻 3 号 p. 114-129
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/10/01
    ジャーナル フリー
    代謝経路に代表されるような大規模な生体内非線形反応システムを解析するためのシミュレータMassAction++を開発した。利用者は数理モデルの導出や数値計算を全く意識することなく、反応系の動的挙動や未知パラメータの推定を行うことができる。また、Javaアプレットとして開発されているので、インターネットに接続されているマシンであれば、機種に関係なく利用できる。本研究では、最適化手法に以前のバージョンのMassAction++が搭載していた修正パウエル法(MP)に加え、遺伝的アルゴリズム(GA)、さらに本研究で新たに考案したMPとGAを組み合わせたハイブリッド法の3種を追加した。これらの手法はそれぞれ一長一短があり、ユーザは最適化を行う規模や状況に合わせて手法の選択を行うことができる。すなわち、MPは未知パラメータの数が少なく、最適解の範囲が大体わかっており、かつパラメータ感度が鈍いような系では、他の2手法(GA、ハイブリッド法)に比べ圧倒的に速く最適解を見つけ出すことができる。しかし、最適解に収束する範囲は限られていて、それを以外の初期値からは最適解を見つけ出すことはできない。一方、ハイブリッド法はかなり広い範囲から最適解を探し出すことができ、GAよりも最適解への収束が速い。効率のよい局所探索の機能を持っていないGAに対してMPを組み合わせることにより、大域探索と局所探索を効率よく行うことができるようになった。
Review
  • 神沼 二眞
    原稿種別:  
    専門分野: 疾病メカニズムと制御モデル
    2003 年 3 巻 3 号 p. 130-156
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/10/01
    ジャーナル フリー
    スーパーファミリーを構成する核内受容体は、リガンドの結合によって活性化される転写因子として機能する。この受容体に属するひとつのクラスはステロイド/甲状腺ホルモンとレチノイドが結合するホルモン受容体であり、もう一つはリガンドが知られていないオーファン受容体である。最近いくつかのオーファン受容体に対するリガンドが発見され、それらの受容体が脂質のセンサーとして機能し、それゆえにSyndrome Xと呼ばれている一群の代謝障害と関係していることが明らかになってきた。Syndrome Xは、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化などを含むいわゆる生活習慣病に関係している。オーファン受容体は外因性および内因性の化合物を代謝する酵素や、運搬するTransporterを転写制御することで、防衛的な機能も担っている。一方で、核内受容体やSyndrome Xは、計算化学とBioinformaticsに関わる幅広い問題を提供している。例えば、受容体のモデリング、リガンドと受容体の結合、DNAと受容体ダイマーとの相互作用、標的遺伝子の同定、cis調節エレメントの同定、生成物であるタンパク質、それらが形作る経路網、さらに、膵β細胞、脂肪細胞、インシュリン信号、肥満のモデリングとシミュレーションなどである。この論文では核内受容体とSyndrome X研究の現状を計算化学とBioinformaticsの観点から概説し、もし成功したらゲノム時代の計算化学とBioinformaticsのKiller Applicationになるような研究プロジェクト、NR-SX計画を提案する。
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