Chem-Bio Informatics Journal
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4 巻, 3 号
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  • 刑部 泰輔, 藤井 康之, 畑 晶之, 津田 穣, 根矢 三郎, 星野 忠次
    2004 年 4 巻 3 号 p. 73-92
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/11
    ジャーナル フリー
    ヒト8-oxoguanine DNA glycosylase 1 (hOGG1) はDNA修復酵素の一つである。これによる修復機構では、8-oxoguanineとリボース間のN-glycoside結合開裂反応が生起する。この反応を原子レベルで解明するために、触媒アミノ残基Lys249と8-oxoguanine(8-oxoG)を含むguanosine反応モデルについて、B3LYP/6-31G**レベルの量子化学計算を行った。計算の結果、この反応メカニズムは3つの素反応により構成されることが分かった。第一段階素反応は、Lys249のammonium groupから8-oxoGの酸素原子(8O)へのH+移動反応である。この反応は、8OとdeoxyriboseのO4'間の水素結合生成を伴う。第二段階反応は、Lys249の側鎖窒素原子(Nζ)によるdeoxyriboseのC1'への求核攻撃反応と8OからO4'への自発的H+移動の協調反応である。第三素反応は、Nζから8-oxoGのN9へのH+移動反応である。この最終反応により、C1'とN9の間のN-glycoside結合は完全に開裂する。この反応の最終生成物はSchiff-baseであることが確認された。第一素反応と第二素反応では反応に8Oが係っている。従って、この酵素反応は基質支援触媒反応であると言える。この反応経路は取り分け大きな活性化エネルギーを要することも分かった(<42kcal/mol)。この結果は、hOGG1の酵素活性が低いという実験事実を非常に良く反映している。
  • 瀧ノ上 正浩, 陶山 明
    2004 年 4 巻 3 号 p. 93-100
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/11
    ジャーナル フリー
    DNA分子メモリはDNA分子とその分子反応を用いたメモリである。DNA分子は塩基配列にアドレス情報を持ったナノスケールのメモリ素子として利用され、その分子反応はメモリのアドレッシングとデータの書き込みに利用される。非常に多数あるDNA分子の反応はそれぞれが並列的に進行するので、DNA分子メモリは大容量なメモリ空間を持つことができ、無配線の超並列アドレッシングが可能である。一般に、メモリでは二つの安定な状態の一つをデータが書き込まれた状態、もう一つを書き込まれていない状態とするので、エネルギー的に双安定な構造とその状態間の遷移を実現する必要がある。我々はこのような双安定な状態間の遷移をヘアピンDNAを利用した分子反応で実現した。ここでは、DNA分子メモリを構築するためのDNA分子とその分子反応の開発について報告する。
  • 柯 閏聡, 美宅 成樹
    2004 年 4 巻 3 号 p. 101-109
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/11
    ジャーナル フリー
    Drosophila melanogasterゲノムからの全タンパク質の正味電荷分布を正規分布と比較することによって、進化のプロセスにおけるアミノ酸配列のランダム性と自然選択のバランスを調べた。電荷分布は、正規分布にかなり近い分布を示したが、体系的なずれが見られた。しかし、タンパク質の大きさ別に11個のサブセットについて電荷分布を調べたところ、正規分布からのずれは見られなかった。さらに、分布の平均値と分散がタンパク質の大きさに対して線形に依存することから、電荷分布はほとんど完全に正規分布で表現できることが分かった。また、D.melanogasterゲノムからのタンパク質の電荷密度は100残基に約1個の正電荷という値を中心にランダムな変動をしていることが分かった。この分布をランダム配列の場合と比較してみると、実際のタンパク質では、電荷が正の相関を示すことが分かった。このことは、進化のプロセスで体系的な何らかの選択メカニズムが存在することを示唆している。 
  • 辻 敏之, 美宅 成樹
    2004 年 4 巻 3 号 p. 110-120
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/11
    ジャーナル フリー
    高精度な膜タンパク質予測システムを開発するために、我々は立体構造またはトポロジーが知られている膜タンパク質の膜貫通へリックス付近の疎水性と両親媒性の分布を解析した。7残基の移動平均で、疎水性のピークが膜貫通へリックスの中心に、両親媒性のピークが疎水性のピークの終端に2つ存在することを見いだした。 これらのピークは疎水性ピーク中心からみて非対称であった。 この非対称な性質を考慮し、膜タンパク質予測システムSOSUI(Hirokawa and Mitaku, Bioinformatics, 1998)の改良を行った。 その結果、精度が原核生物のポジティブデータセットで98%、ネガティブデータセットで96%となった。 また、真核生物でも同様の精度を得ることができた。
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