旅行の発動要因と旅行地の誘引要因の相互作用によって規定される旅行者の旅行動機は、交流人口の拡大を目指す島嶼地域にとって重要なマーケティング情報となる。このため、いくつかの研究において島嶼地域を訪れる旅行者の旅行動機を定量的に把握する試みがなされてきた。しかし、島嶼旅行者を対象として発動要因に関わる旅行動機を包括的に分析した研究はない。そこで本研究では、発動要因の充足に対する島嶼旅行者の期待と満足を定量的に把握することを目的とした。このために、隠岐旅行者を回答主体としたアンケート調査を実施し、そのデータに基づいて3つの分析課題に取り組み、以下の知見を得た。第1に、発動要因への期待を分割指標とした潜在クラス分析の結果から、①隠岐旅行者が5つの旅行者層に分割されること、②発動要因の充足への期待の構成において脱日常性と関係強化が共通のベースとなること、③新奇性への期待の違いが人的成長、緊張解消、娯楽追求の充足への期待の違いを生みだすことがわかった。第2に、順序ロジットモデルの結果から、発動要因の充足への期待に対して、旅行者属性(性別、年齢層、同行形態、訪問経験)ならびに好意的・肯定的な旅行者選好が選択的に規定要因となることがわかった。第3に、隠岐の観光資源への満足を条件部とし、発動要因の充足への満足を結論部としたアソシエーション分析の結果から、①島情緒、歴史文化およびジオ資源の満足が娯楽追求、新奇性および人的成長の充足への満足をもたらす顕著な効果があること、②活動と食・宿の満足がいくつかの発動要因の充足への満足をもたらす効果があること、③脱日常性、緊張解消、関係強化を結論部とした相関ルールの頻度が高く、その中では景色自然を条件部としたものにおいて顕著に高い頻度をとることがわかった。
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