地域地理研究
Online ISSN : 2433-460X
Print ISSN : 2187-8277
26 巻, 2 号
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  • ―ベトナム南部カントー省を事例に―
    The Hung NGUYEN, 本田 恭子, 金 枓哲
    2022 年 26 巻 2 号 p. 1-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/18
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、グローバルな市場競争下におけるベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)のキャットフィッシュの加工・輸出企業の経営戦略を明らかにした。キャットフィッシュ産業が輸出を本格化させた2000年以降、加工・輸出企業はアメリカ合衆国(以下、米国)によるダンピング税の課税、養殖業者と加工企業間の需給の不均衡、食品安全に関する認証基準の強化という3つの課題に直面してきた。ベトナム南部カントー省内の加工・輸出企業16社への聞き取り調査によると、企業は自社養殖池の確保、認証の取得、輸出市場の転換と開拓、輸出に向けての企業間連携といった4つの方法で上記の3つの課題に対応していることが明らかとなった。また、これらの企業の対応を事業規模別に比較した結果、事業規模が大きい企業ほど安定的に原料を調達し、市場のニーズに応えた高価格な商品を安定的に輸出しているのに対し、事業規模の小さい企業は原料調達に不安要素を抱え、市場のニーズに応えることができず、不安定な条件での輸出を強いられており、企業の二極化が進んでいることも明らかとなった。一般的に、規模の小さい企業では商品の差別化による高付加価値化が市場戦略となりやすいが、キャットフィッシュ産業においては高価格で販売可能な輸出市場の参入障壁が高いためにこれを採用することができず、企業間の連携が強化されている。ベトナムのキャットフィッシュ加工・輸出企業は、上記の3つの課題への対応を通じてグローバル市場における諸問題への解決能力を高めてきており、今後も大きな成長が見込まれる。ただし、輸出市場の多角化やグローバルな認証基準への対応を通じて、加工・輸出企業の階層分化が一層進むことも予想される。
  • ―岡山県内のJA女性部フレッシュミズ部会を事例に―
    本田 恭子, 岡本 彩花, 金 枓哲
    2022 年 26 巻 2 号 p. 23-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/18
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、岡山県内の農業協同組合(JA)の女性部フレッシュミズ部会を事例に、農村女性のグループ活動を都市近郊地域と中山間地域で比較した。その結果、農村女性のグループは女性のライフステージのみならず地域性によっても異なることが明らかになった。都市近郊地域には狭い範囲でも20~50代の女性が一定数以上存在するため、メンバーを集めやすく、頻繁な活動が可能である。非農家が中心となることがあり、非組合員が含まれることもある。これに対して中山間地域では、数少ない女性が広範囲に住んでいるため、活動の範囲を広げざるを得ず、頻度を上げることも難しい。農家や組合員もメンバーに含まれる。また、乳幼児期から学童期(特に小学校低学年まで)の子どもを持つ女性にとって、フレッシュミズ部会はママ友作りの場であり、子連れでの参加が基本となる。この傾向は子どもが小さいほど顕著となる。一方、子どもが青年期を迎えた女性にとってフレッシュミズ部会は同世代の女性同士の交流の場であり、女性だけの参加が基本となる。以上をふまえると、都市近郊地域では従来の地縁の女性組織と似た特徴をもつ女性グループが存続しやすく、子どもの年齢が小さいことや年配の女性組織との深い付き合いをもつことなどの一定の条件を満たすことで、地域活性化の主体として地域に貢献していく可能性がある。一方、中山間地域では、メンバー数を確保するために広域化せざるを得ない状況になっている。これにより、従来の地域の範囲を超えた交流などの新たな魅力が生まれている反面、移動の負担が大きいことや活動回数を増やしづらいというデメリットも抱え、女性の社会進出も相まって、組織自体の存続が難しくなっている。
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