環境情報科学論文集
Vol.16(第16回環境研究発表会)
選択された号の論文の61件中1~50を表示しています
  • 矢野 昌彦, 盛岡 通
    p. 1
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    環境問題への関心が高まる中で「環境に配慮した経営」が21世紀に生き残る企業のための選別基準の1つとなっている。環境経営の実現のためにISO14001など環境マネジメントシステムを導入し、省エネ、省資源や廃棄物削減など環境パフォーマンスの向上とコストの削減を実現している組織も多い。しかし、一方で形式的な対応のみで成果が乏しい企業も多いといわれている。筆者は「エコステージ研究会」の事務局として環境経営評価システム(エコステージ)の提案を行い、環境経営に関する研究活動を進めてきた。この評価システムのねらいは経営改善と競争力の向上を図ることで「組織の持続可能性」を高めることであり、事例研究を通じてシステムの効用について考察する。
  • 岡野 雅通, 盛岡 通
    p. 2
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    本研究は, 企業が自社の環境活動を定量的に評価する仕組みである環境会計を用いて, 循環型社会の構築を支援する手法を提案するものである. まず単独主体における活動の評価を行う枠組みを基本とし, これを拡張することで単独主体, 更には循環型社会を構築する全主体の費用対効果を評価する枠組みを提案している. 評価方法としては, 2つの環境効率指標によって, 相対的に非効率な活動を改善点として抽出すると共に, 費用と便益の帰着点を明確にし, 新たな代替案の検討や, 循環の形成へと向けた産業構造の転換を促す評価基準を提供する. また, 以上から循環型社会を構築するための意思決定に関わる, 社会的な情報提供のあり方について示す.
  • —中国長江上流域の人工林を事例として—
    高橋 勇一, 箕輪 光博, 和 愛軍
    p. 3
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    森林経営あるいは森林評価の分野において, 住民参加または協働管理に関しては, 最近まであまり考慮されてこなかった。そこで本稿では, 従来の森林経営の資本評価について再検討を行い, 平田説ukを拡張した形で, 住民との協働管理を考慮した資本評価u(k+CS)を提示した。このuは輪伐期, kは持続的管理のための年間費用, そしてCSは地域住民の森林に対する補償余剰である。次に, この評価方法を中国長江上流域における雲南マツ人工林を対象に適用し, さらに生態系の維持や社会の成熟度による変化等を考慮して, u'{k+α(CS+ε)}という持続可能な森林経営の資本評価を導いた。ここでu'はエコシステムの維持を熟慮した広義の輪伐期, αは係数である。
  • 長谷川 渚, 谷川 寛樹
    p. 4
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    維持管理作業が行われていない人工林は, 木材生産能力が落ちるだけでなく, 気象変動に対する抵抗力が小さくなり, 二酸化炭素固定能力や水源涵養機能といった, 森林の有する様々な機能が失われることになる. 本研究では, 広範囲を観測でき, かつ可視域以外からの情報も判読可能な衛星データを用い, 森林ストック推計システムを構築することを目的とする. ケーススタディ対象地域を, 和歌山県紀南地方, 印南町付近の森林とした. 現地調査から森林健全地域, 枯死地域を特定し, 衛星データを用いて比較を行い, それぞれの特性を定量化した. 森林枯死地域については枯死率別に3分類し, それぞれの針葉樹面積を推計し, 森林ストック量を推計した. その結果, 健全地域の面積は全針葉樹面積の52%, 枯死地域の面積は全針葉樹面積の軽度枯損が11%, 中度枯損が29%, 重度枯損が8%であることが明らかになった. 活性度別森林ストック量は, 全針葉樹1,399,000m3のうち, 健全地域が1,033,000m3, 軽度枯損が77,000m3, 中度枯損が220,000m3, 重度枯損が69,000m3であることが明らかになった.
  • 後藤 惠之輔, 渡邉 浩平, 立入 郁
    p. 5
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    本研究では, 著者らが開発した斜面市街地での新たな交通手段の導入に向けたルート選定手法を用いて, 長崎市の4つの斜面市街地において, ルート選定を行った. 本手法では, 地域の異なる4つの属性データについて, 重要度をAHP(階層化意思決定法)により算出し, この総合評価点より候補ルートを挙げ, その後, 各ルートの評価点平均値と地域の高齢者割合の分布からルートの検討を行い, 地域で建設が必要なルートの選定を行った. その結果, 開発したルート選定手法を用いることで, 地域の状況が異なる斜面市街地においても, ルート選定が行えることが分かり, 本ルート選定手法の有用性を確認できた.
  • —横浜市舞岡公園における県立大師高校の事例的考察—
    大澤 啓志, 勝野 武彦
    p. 6
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    神奈川県立大師高校の水田耕作体験を通じた環境教育を事例に、その意義と要因について調査·考察した。中心的に関わってきた教員へのヒアリングおよび討議から、プログラムを通じて通年で谷戸を訪れることで生徒に形成される「風土景観の心理的残像」や、保全活動への情熱を持ったメンバーとの作業体験の共有という「他者との協働」の重要性が指摘された。また、この「風土景観の心理的残像」と「他者との協働」が、特に都市域に残る谷戸の水田耕作体験相において相補的に作用しながら環境教育上の成果を上げている構造的側面が得られた。高校生の環境教育の場としての視点からも、都市域に残る水田の保全が重要であることが示唆された。
  • 藤田 知則, 大澤 啓志, 勝野 武彦
    p. 7
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    都市域の8公園で水田管理への市民参加状況を調査し、その市民参加の形態と市民的管理における段階性について考察した。各公園における市民の関わり方は、単日の体験イベントヘの参加や複数日実施の体験講座への参加という形態が最も広く行われていた。日常的な水田管理は行政もしくは地元農業経験者が行っている場合が多く、NPO/市民グループが担っている事例は1件しか得られなかった。水田活動における問題点として、日常管理を行っている農業経験者の高齢化があげられた。将来市民ボランティアが水田管理を担うことへの公園部局の積極的な姿勢はあまりみられなかったが、農業経験者の作業補助という形態の市民参加も萌芽的に存在した。
  • —大阪市住之江区での事例—
    辻本(今津) 乃理子, 中山 徹
    p. 8
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    環境学習の重要性と高齢者の生きがいづくり、社会参加への環境整備の必要性が注目される中、本研究では、行政が目指した住民参加のまちづくり活動が発展し、シニアボランティアの指導による街区公園を利用した小学校の授業としての自然環境学習が、行政·環境NPO·シニアボランティア·小学校の連携のもとに実施された事例を対象に、この取り組みがそれぞれに及ぼす効果を考察した。その結果、今回の取り組みが行政·環境NPO·高齢者ボランティア·小学校それぞれの連携と目標が達成された。また、児童にとっては地域を再認識するきっかけとなり、高齢者にとっては自然環境に関する活動·学習の継続、社会参加、世代間交流として効果があった。
  • —川崎市宿河原地区を事例として—
    大工原 洋充, 畔柳 昭雄
    p. 9
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、神奈川県川崎市宿河原地区で活動が展開されている「かわさき水辺の楽校」を対象事例とし、地域環境を「地域資源」とする楽校活動及び、開催されたワークショップ活動を通して、顕在化した課題や問題点の把握を目的とした。その結果、以下のことが明らかとなった。(1)イベントに継続的に参加している子どもは少数であった。しかし、これらの子どもは、大人との親密な活動を通じて共同意識や共通認識を感じることで積極的行動、参加意欲を高めている傾向が見られた。(2)イベント実施にあたって、地域の大人達の子どもの特性に対する認識や自然環境に対する認識の不足が見られた。(3)ワークショップでは、継続的に参加していた子どもが欠席するなど、参加意欲が希薄化する問題が見られた。そのため、子どもたちの間に連帯感や共通認識が芽生えず、成果やプロセスの共有が困難であった。
  • 玄地 裕, 八木田 浩史
    p. 10
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    IT化によりオフィスビル、家庭に多数導入されたパーソナルコンピュータ(PC)を取り上げ、わが国のPCによる1999年、2000年の消費電力量推計を行った。その結果、1999年のPCによる消費電力量は52億kWhとなり、これは日本の電力需要量の0.64%にあたると推定された。また、2000年のPCによる消費電力量は61億kWhとなり、これは日本の電力需要量の0.73%にあたると推定された。これらのうちオフィスの消費電力が75%を占めていた。2000年時点で、日中の待機設定と夜間の電源をオフにする電源管理により、約25.8億kWhの電力が削減可能であったと推測された。
  • 福田 眞典, 村川 三郎, 西名 大作
    p. 11
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    将来における都市のエネルギー消費予測を行うためには、既存建物のエネルギー消費の実態を把握し、各用途のエネルギー消費原単位を知る必要がある。これは、今後の省エネルギーを推進していくうえでも重要な指針となる。本論文では、広島市内の建物、特に、散在している小規模建物にも重点を置いて、各種建物用途のエネルギー消費実態調査を行った。広島市(5区)を対象として、建物のエネルギー消費構造の特性を明らかにすることを目的に以下の3点を示し、エネルギーの高消費型建物、高消費密度地区を明らかにした。 1)各種建物用途のエネルギー消費原単位 2)各区の建物構成とエネルギー消費量 3)広島市(5区)における建物のエネルギー消費密度マップ
  • 名知 洋子, 宮崎 隆昌
    p. 12
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    建築生産の場では環境負荷低減のために建設副産物の削減を強く求められている。これまで、建設副産物発生量予測は過去の各々建築生産現場からの建設副産物発生総量をもとにしていたため、発生要因の分析や削減方法の策定まではできなかった。本研究では、各々の建築生産プロセスの建設副産物発生量を分析する事によって、建設廃棄物の減量対策を考慮した建設副産物発生予測と、減量化対策を明らかにした。さらに、事例研究として事務所ビルを対象に分析・検討し、その結果から建築生産現場でその周辺環境に於ける環境負荷を決定する建設副産物発生量予測と、それに基づく減量化対策を提案した。
  • —農産物供給のライフサイクル分析に関する基礎的検討—
    陳 杰, 小林 久
    p. 13
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    農産物供給のエネルギー効率の改善には輸送段階を含めた検討が必要であるという認識から,都道府県単位の穀物物流を対象に「実態」のエネルギー消費量を算定し, さらに物流量を最小化したとき(効率的配分時)のエネルギー消費を試算した. 「効率的配分」の物流量試算による域間輸送トンキロ(1,556百万t-km/年)は, 実態(3,679百万t-km/年)の42%であった. 域間輸送における「実態」と「効率的配分」のエネルギー消費量は, それぞれ6.34PJ/年, 3.10PJ/年と見積もられ, 都道府県間の輸送を中心に過分な穀物物流が存在していると考えられた. この過分な穀物物流にともなうエネルギー消費は約3.24PJ/年と試算され, これは実態のエネルギー消費量の51%に及んだ. このような結果より, 輸送の効率化がわが国の穀物供給における環境対策上の重要課題の一つであると考えられた.
  • 松本 由紀子, 三浦 浩之, 尾崎 平, 和田 安彦
    p. 14
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    廃棄物中間処理施設の設置は, 周辺住民との合意が容易には得られないこと等からきわめて困難な状況となっている. 本研究では, 処理施設の建設と住民合意形成を円滑に進めるために, 処理施設から周辺地域に対するサービスを行い, 住民の合意が得られるような廃棄物中間処理施設建設のための条件を検討した. これより, 処理施設建設のための見返りサービスとして, 処理施設からの排熱を利用したエネルギー供給が最も効果的であり, 供給量としては1ヶ月の電気代, 暖房·給湯代の約50%に相当する量を望む声が最も多かった. 対象地域において無料でエネルギー供給を行った場合, 全世帯で42.5%の電気代, 暖房·給湯代に相当し, エネルギー供給を用いた処理施設建設の住民合意形成の可能性が示された.
  • 岩見 千津子, 谷川 寛樹
    p. 15
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    維持管理が行われなくなった人工林は, 木材生産能力の低下だけでなく, 二酸化炭素固定機能や水質涵養機能といった, 森林が本来持っているさまざまな機能が失われることになる. そこで本研究では人工林をエネルギー資源として活用するために, 人工林の手入れ法·回収範囲·利用法についてシナリオを設定し, 検討を行った. なお本研究では, GISの利用による林道や傾斜角データと衛星画像による森林の現況データなどの詳細なデータを取り扱うことで, 空間的な解析を可能にした. その結果, ケーススタディ地域のエネルギー必要量に対して, 間伐材を木質バイオマス発電に利用したシナリオでは, 4∼32%, 同じく間伐材をペレットストーブで暖房用に利用したシナリオでは19∼151%のエネルギー供給が可能であることがわかった.
  • 小林 昭裕
    p. 16
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では2001年度に策定された「知床国立公園適正利用構想」を事例とし, 適正利用を実現するための会議で提起された問題点の整理および方策の立案過程について, 提起された内容をもとに起因を把握し, 問題点への対処や実現にいたる過程を明らかし, 他の国立公園での応用や展開を図る際, 基礎的資料となることを研究目的とした。現状の問題点について, その特性を要約し, 発生場所を捉えることによって, 問題点の分布構造を把握できたほか, 起因要素との関係を整理することによって, 起因要素の地理的分布を推計することを通じて, 実際との比較から, 問題点が顕在化した状況および問題点が潜在化する場所の特定を行うことができた。
  • 土田 勝義
    p. 17
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    長野県の霧ヶ峰高原は、昔から半自然草原が発達しているが、草原景観や、草花を嘆賞する観光地として親しまれている。しかし最近、亜高山帯にもかかわらず帰化植物の繁殖が目立ってきている。とくに北米原産のヒメジョオンやヘラバヒメジョオンが草原に一面に広がってきている。これらの帰化植物は、草原景観や、野生植物に大きな影響を与え、生物多様性の低下を招いている。そこでヒメジョオン類の生態を調査し、適正な駆除法を得るために、引き抜きや茎の切断実験を行った。その結果、ヒメジョオン類の生活史や繁殖様式が明らかにされた。また実験により7月初旬に茎の根元の切断が、個体の駆除と種子生産の阻止に効果があることが分かった。
  • 栗原 雅博, 中野 浩平, 熊田 章子, 古谷 勝則
    p. 18
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    全国で減少している二次草原の保全方法を模索するため、霧ヶ峰における二次草原の土地利用の変遷を把握した。方法は、既往文献調査を中心に進め、明治以降の5万分の1地形図をGISにより解析し、伝統的土地利用の定量的な把握を試みた。既往文献調査から、霧ヶ峰において伝統的土地利用のシステムが形成されたのは18世紀末であることが明らかになった。また、土地利用の転換は明治時代末期から始まった。また、二次草原の多面的な価値が注目され、第二次世界大戦後に観光開発されたことが明らかになった。GISの結果から、草原の面積は1911∼1990年の間に46%に減少していることが明らかになった。
  • 杉村 乾
    p. 19
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    奄美大島において1985年から2002年にかけて鳥類とアマミノクロウサギの生息調査を行い,異なる時期の調査結果を比較して生息数の変動傾向を明らかにした。その結果,20種のうち14種が減少傾向にあることが確認された。生息数の地域的な差について統計的に解析したところ,ルリカケス,アカヒゲ,ズアカアオバト,ホオジロ属,アマミノクロウサギは侵入種マングースの増加が著しい地域でより大きな減少を示した。また,オオアカゲラ,コゲラ,サンコウチョウは,マングースが高密度になる以前の減少傾向が著しく,既往の解析結果や生態的特性をもとに考察すると,壮齢林面積の減少が寄与している可能性が高いと考えられた。
  • —中国の世界遺産黄山を対象として—
    周 永広, 川本 義海, 川上 洋司, 本多 義明
    p. 20
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    本研究はまず、二つの世界遺産を持ち、中国のほかの都市と比べいち早く観光開発が進んだ黄山市(地区級都市、日本の県に相当)を研究対象としてとりあげ、黄山市の観光と黄山の観光管理の現況を把握する。つぎに、地元行政と観光関連企業に対し観光開発に関する意識調査ならびにインターネットによる黄山への国内観光客調査を総合することにより観光供給側と観光ニーズ側双方の問題点を把握する。最後に、デマテル調査に基づいた観光開発における問題の構造化を行なうことにより、中国の地区級都市レベルにおける自然環境に配慮した山岳型観光の階層的な問題構造と開発体制を見出すものである。
  • —「経堂の杜」を事例として—
    松本 洋俊, 糸長 浩司
    p. 21
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    本研究はパーマカルチャー理論をベースに, 植物を用いて生活排水等を浄化, 処理することが可能な植物浄化システムを建築環境の中に導入することを目的とした実証的研究である。研究の方法は, 「経堂の杜」の「立体ビオトープ型雨水循環システム」における水質の分析と評価を行った。その結果, 本システムを更に高度化すれば, 将来的に生活排水等を浄化, 処理することが可能な環境共生設備として位置付けることができると考えられる。今後の研究の課題は, 植物浄化システムの実験装置の開発と評価を行い, 建築物に持続的な生活環境を体系化するのと同時に, 食べ物の生産を可能とした「富める生態系」を創造するためのパーマカルチャー的デザインを建築学的に確立することである。
  • —神戸市内小学校へのアンケート調査より—
    藤本 妙子
    p. 22
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    全国の中で学校ビオトープの多い神戸市内小学校を対象に、その整備および利用状況に加えて、学校ビオトープを保有する学校の教員の意欲度を促す要因について検討した。その結果、神戸市内小学校に見られる学校ビオトープは、環境教育を主な目的として整備されており、全てにおいて水辺タイプのビオトープを保有しており、授業内では生物観察に特化した活用がなされていることが明らかになった。また、教員の意欲が高まると同時に、生態系貢献度意識の否定的意見が減少していることに有意な差が見られた。以上を踏まえ、今後の学校ビオトープの方向性について考察した。
  • 田中 ゆう子, 檜山 博昭, 鈴木 秀男
    p. 23
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、東京湾奥部において泥場やタイドプール等を取り込んだ「生物と共生する護岸」を実験的に創出した。その結果、生物と共生する護岸では、既設の直立護岸で生息できなかった生物種の利用がみられ、護岸域の生物生息を拡大させる傾向が認められた。泥場やタイドプール等を加えた護岸の創出により、沿岸海域における新たな生物生息場の供給が可能である。
  • 島村 雅英, 井手 佳季子, 伴 武彦
    p. 24
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    横浜市では、1980年代からエコアップ事業が展開され、これまで約150地点で事業が実施されている。エコアップの目標は、自然環境の改善とともに、失われつつある自然と人間の関係の復権であり、エコアップの成果は、回復·創出した生物相の豊かさだけでは評価できない。本研究では、エコアップ事業実施地点の生物相に加え、社会的、空間的な側面も含めた評価手法を検討し、25地点について評価を実施した。その結果、エコアップ地点の管理·育成にかかわる市民が自ら実施できる多面的評価手法を普及させることで、自然と触れ合う市民活動の新たな方向性への「気づき」と活動の活性化を促進できる可能性が示された。
  • —文京区環境基本計画を対象として—
    窪田 亜矢
    p. 25
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    環境優位の都市計画が社会的に要請されているものの、実際にまちづくりの現場では、環境への配慮が都市計画に組み込まれていない。環境への配慮を基本的な目標として掲げる環境基本計画は、自治体における諸処の計画の基盤となる基本構想や総合計画において明記され、その理念が具現化されるような位置づけを得なければならない。また、環境基本計画を「計画」「規制」「事業」の三つの部分から成るとすると、都市計画法などの法律もしくはまちづくり条例等の総合的な条例により、「計画」そのものに加えて、三部分の連携を担保するか、個別の環境基本条例を拠とするならば他分野における条例などとの連携が必要だ。
  • 宮本 克己
    p. 26
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    マリブ·サンタモニカ沿岸山岳地域における1920年代に開発された別荘開発地は敷地が小規模で下水·道路などの基盤整備に欠け、これら小敷地のさらなる再分割による建築は環境上問題視され、1979年開発権移転制度(TDCs)が導入された。これは、新たな敷地分割を伴う開発に対して、既基盤低水準敷地分割地からTDCsを購入することを義務づけることで開発を抑制する一方、開発権を譲渡した敷地には地役権を設定し開発行為を放棄させることで自然資源環境を保全するというプログラムである。TDCプログラムにおける送り地は基盤低水準敷地分割開発地と自然資源保全地域、受け取り地は既開発地域とされた。また、宅地需要が増大するに伴うTDCに対する需要と供給を調整するために、基金、トラストを設立している。しかし、現在、相次ぐ自治体の誕生を迎え、これまで州法に基づく州委員会のガイドラインに規定されていたTDCプログラムに関する諸制度も、自治体による地域レベルの沿岸計画(LCP)が確立されるとともに自治体条例に規定される方向にあり、それにともないより精緻化された規定の策定が行われている。
  • 瀬戸島 政博, 赤松 幸生, 今井 靖晃, 朝廣 和夫, 重松 敏則
    p. 27
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    本研究は、福岡市近郊の里山を対象に、その代表的な構成樹種の葉色の変化を年間にわたる時系列なカラー航空写真データのRGBとHSIの値の変化特性から求めた。さらに、樹種区分をするために有効な条件(撮影時期とRGBおよびHSIの色に関する特徴量)を抽出し、それらの組み合わせによる樹種区分の可能性を検討した。その結果、5月中旬と12月上旬のR値、H値、I値では、樹種間の分散が大きく、これらの値を用いて加算や比演算などの処理を施し、処理結果を組み合わせることで特定の樹種の区分が可能であった。
  • —LANDSATデータを用いて—
    桑原 祐史, 小柳 武和, 志摩 邦雄
    p. 28
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
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    日立市の山林は、市全域の約60(%)の面積を有している。山林は、石灰岩や、林業等の資源の生産の場として利用されるとともに、自然環境を活かした諸レクリエーション施設が点在している。しかし、本領域は山林火災が多く、平成3年に約218(ha)、平成13年は約5(ha)が消失する火災が発生した。自然環境の保全と、防災の観点から山林の植生変化の概況を経時的にモニタリングしておくことが重要である。そこで、本研究では、衛星リモートセンシングデータから算出する植生指標値変動に着目し、日立市周辺山林における植生経年変動評価図を作成した。加えて、評価図に基づく現地調査を実施し、結果の妥当性を検証した。
  • 中山 康孝, 成田 健一
    p. 29
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    関東全域の複数の自治体(市区)を対象にリモートセンシング手法による緑被面積率の算定を行い、緑の残存量と人口密度の関係を環境評価指標として行政区画別の環境評価を試みた。その結果、人口密度が同程度の自治体間で緑被面積率に最大で約50%の差異がみられた。また、開発で多くの緑を失った自治体と緑を残した開発が行なわれた自治体とを分類でき、一例として緑被面積率30%で比較すると、両者の収容人口の間に2倍の差異が確認できた。高人口密度地域に限っては、緑被面積率と戸建住宅率に対応関係があることが示唆された。
  • 清水 美砂, 押田 佳子, 上甫木 昭春
    p. 30
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では, 大阪府堺市の神社林の現状を明らかにするために, 神社の空間特性を敷地規模と周辺の土地利用から, そして緑地の構造特性を緑被と地表面の現況から検討した. また, これらの調査結果に基づき比較的自然状態に近いと思われる神社林について, 植生調査を行った. その結果, 神社林の現状として, 立地特性や敷地規模が多様であること, 比較的自然状態に近い神社林の面積割合は, 周辺市街地割合が50%未満, 敷地規模が5,000m2以上で多くなる傾向にあることが明らかとなった. 植生構造では, 木本種数と面積との間に相関がみられたが, 本来の照葉樹林の構成とはなっていない状況にあることも明らかとなった.
  • 吉田 有里, 上甫木 昭春, 田原 直樹, 澤木 昌典
    p. 31
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、道路拡幅や区画整理などにより寺社や民家の敷地内から道路上にはみ出して位置することになった路傍樹についてその現状を把握し、継承のあり方を考察することを目的とした。調査対象木は大阪市内に現存する23本とし、現地調査とヒアリング調査により路傍樹の現状を把握すると共に、3箇所の路傍樹を選定して、周辺住民に対するアンケート調査を行った。その結果、路傍樹に対する認知度は高く、好評価を得ており保全意識も高いが、管理への参加意向が低いことが問題であることが明らかとなった。また、対象木をよく知っている人ほど保全意識、管理への参加意向が高く、路傍樹に対する認知度を高めることが重要であると考えられた。
  • 島田 正文, 小谷 幸司, 増村 千英子, 濱本 和敏
    p. 32
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では, 全国343の自治体を対象に, 条例に基づく保存樹木等の指定件数, 指定解除, 助成措置等の現状や, 運用上の問題点を把握し, 今後の樹木保全のあり方を検討した。その結果, 過去3年間で保存樹木1,092件, 保存樹林465件が指定解除されており, その主たる要因は, 枯死·倒木, 維持管理の手間, 相続税の負担, 宅地開発であることが把握された。所有者への助成措置は, 管理費相当の助成金が中心であり, 固定資産税等の減免措置のある自治体は少なかった。以上より, 基準を強化して指定件数の拡大を図るとともに, それらを適切に維持すべく, 所有者への助成金や保存樹木等の買取り資金の確保, 所有者および地域住民の保全意識の向上等の必要性が指摘された。
  • 赤澤 宏樹, 田原 直樹
    p. 33
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では, 緑化活動の原因になる集合住宅の空間特性を明らかにし, 効果的なコミュニティ計画づくりの指針を得ることを目的とした。兵庫県の震災復興団地における, 住民による主体的な緑化の発生状況を調べた結果, コミュニティ形成を誘発, 誘導するための緑化活動空間の特性は, 以下の点であることがわかった。(1)住民による緑化の発生は, 植栽しやすい地被条件に強く影響される。(2)景観など対外性を意識した緑化は, 特に歩道から視認できる範囲において期待できる。(3)それを補完する内在的緑化は, 住戸周りで食用などの実用的なものが, 生育条件にあわせてプランターなどでも栽培される。以上の結果から,適切な空間配置による緑化の発生の可能性を論じた。
  • 伊藤 信太郎, 斎藤 庸平, 赤澤 宏樹
    p. 34
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    仮設住宅に住む高齢者には,コミュニティ形成が必要である.その一方で,緑化活動がコミュニティ形成につながることが明らかにされている.本研究は,阪神·淡路大震災時の仮設住宅における緑化活動が,特に高齢者のコミュニティ形成を促すことと,その場所や緑化活動内容を明らかにすることを目的とした.そのため,仮設住宅の元居住者を調査し,当時の緑化活動およびコミュニティ形成の状況を,高齢者と非高齢者に分けて整理した.その結果,高齢者の緑化活動は,非高齢者と比べると親密なつきあいをつくるという点でコミュニティ形成につながりやすいことが明らかになった.特に「裏庭型」,「周辺型」における緑化活動が,コミュニティ形成につながりやすいことが明らかになった.
  • 平田 富士男
    p. 35
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    ガーデニングの普及とともに淡路島のように自然に恵まれた地域でも、外国から輸入された園芸種が多用されるようになってきた。真に自然と共生する社会を実現していくためには、何でもいいから花や緑を植栽すればいいのではなく、その地域に自生する植物の有効利用を考える視点が重要である。そこで島民へのアンケートを通じて、自生植物等の利用に関する意識を調査したところ、園芸種の多用は、その植物の好き嫌いやコストの問題ではなく、むしろ増殖しやすいかどうか、が大きな理由であることがわかった。また、自生植物に関する認識も高く、特に、ユリ、スイセンの利用に対する意識が高いことがわかった。これらの自生種は今後園芸利用の対象として有望だが、住民が容易に育成、増殖できるような技術開発が重要であることも把握された。
  • 苗村 晶彦, 花光 重一郎, 中根 周歩
    p. 36
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    和歌山県紀伊田辺における降水およびアカマツ(Pinus densiflora)の樹幹流中の溶存化学成分について調べた。降水の加重平均pHは山間部で4.52、沿岸部で4.59となり全国平均より若干酸性であった。降水のN/S比では山間部で0.29、沿岸部で0.17であり人為的なNO3-の寄与は非常に小さかった。樹幹流では山間部でH+が多く酸性度が高いのに対し、沿岸部では塩基成分の中和によってH+の吸着が見られた。
  • 若山 信一郎, 鄭 会勳, 田中 孝, 矢沢 正士
    p. 37
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    農業的土地利用に囲まれた石狩泥炭地内の小湖沼を対象に,水深の月変動の実態と湖沼周辺の近年の土地利用変化について研究を行った。対象5湖沼の水深は,周辺水田の灌漑期(4月下旬から8月下旬)に上昇,水田落水後の非灌漑期に低下し,最大水深と最小水深の差はほぼ20~60cmに達した。灌漑用排水路を通して湖沼への水の流入があるためで,湖沼水深が周辺の水田灌漑と密接に関連していることが実証された。1978年と1998年の空中写真を用いた土地利用変化の解析により,湖沼を含む100~200haのエリア内では水田から畑への変化が確実に進行しており,水田より畑が多くなったケースもあること,20年間の湖沼水面の減少率が2.3~30%に達すること,湖沼周囲の荒地が一般に増加傾向にあることを明らかにした。
  • 村上 和仁, 瀧 和夫, 天野 佳正, 立本 英機, 松島 眸, 本田 善則
    p. 38
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    環境因子としての底質処理が生態系群集構造に及ぼす影響について, 生態系モデルであるマイクロコズムを用いた実験的検討を行った。その結果, 底質処理により底泥中の硫化物と水中の植物プランクトンを同時に抑制可能であること, T-N/T-P比は調和型湖沼とされる10付近となること, アオコが優占している富栄養化湖沼の生物群集を貧栄養状態の生物群集構造に改善できることを示し, 環境因子としての底質処理が生態系群集構造に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。また, 環境修復の手段として, 底質改善は有効であるが, 環境要因としての影響の大きさを考慮すると, 生物種の多様性のレベル設定が必要であることを示した。
  • —淮河の水質汚染問題を中心に—
    劉 啓明, 中村 耕二郎
    p. 39
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    中国には、主に長江、黄河、淮河、海河、遼河、松花江、珠江の7大水系があるが、広い範囲に渡り、深刻な水質汚染が見られる。中国政府が最初に取り組んだ流域単位の水質汚染処理の対象が淮河であった。本論文は中国の水系全体の汚染現状を概観した上で、淮河を中心に中国政府が行った対策の成果とその限界性の分析を試みたものである。中国政府は流域の水質汚染問題に対処するため、法体系を整備したものの、その実施において、政府の役割が突出しており、住民参加、企業の自己努力については十分にその機能が発揮されているとはいいがたい。
  • —情報系大学生を対象としたケーススタディ—
    坂部 創一
    p. 40
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    テクノ依存症とQOL(Quality of Life)の調査票を用いて情報系の大学生を対象に調査を実施し、情報環境が及ぼすテクノ依存症とQOLの関連分析を行った。その結果、依存度の高い学生は人間関係に支障をきたすなど総合的にはQOLをやや低下させている傾向がみられた。予防策としては、このやや低下している時点で情報環境がもたらすデメリットを明示して重度の依存症へ移行する潜在的危険性を自覚させ、自主的にQOLを向上させるという視点から周囲の人と人間的交流を深められるような種々の支援策が重要であることを指摘した。
  • —南アルプスの植生写真の提示結果—
    青木 陽二, 近田 文弘, 古谷 勝則
    p. 41
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    植生自然度は人間が決めるものであり、人々がどのような植生を自然だと思うかは重要な視点である。ここでは南アルプスの多様な植生景観に対して、多様な気候風土や文化的背景に居住する人々が、どのような植生に自然を感じるかを調べた。その結果、高山植物群落や亜高山樹林などに人々は自然を感じていた。冷温帯および亜熱帯の人は、シラビソ、クマイザサ、ブナ·ナラおよびモモ畑(果樹園)のような植生には、自然らしさを感じることは少なかった。住民はイネ(畑)、リンゴ(畑)に、登山者はガレ場、ハイマツ、ダケカンバ、ブナ·ナラ、シラビソに、訪れる頻度の高い人はシラカシやアヤメ、チャ(畑)、カラマツに自然を感じていた。
  • 衛藤 貴朗, 三浦 浩之, 尾崎 平, 和田 安彦
    p. 42
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は, 多数の水鳥が飛来する, ため池のある公園を対象としている. 子供を連れた来園者は水鳥とのふれ合いは子供には良い体験だという気持ちから, 子供と一緒に水鳥に給餌行為を行っている. しかし, 給餌行為は水質保全のために禁止されているが, 来園者は禁止を知りながら水鳥への給餌を行っている. そこで, 給餌行為が禁止であると認識していながら, 給餌行為を行ってしまう要因を明らかにするために, 来園者に対してアンケート調査を実施し, 属性別, 来園目的別に給餌行為の禁止に対する意識の相違を心理的な側面から分析した. その結果, 来園者は水質問題を深刻に感じていないこと, 他人の行動が来園者の環境意識に影響することを明らかにした.
  • 熊澤 貴之, 村松 陸雄, 中村 芳樹
    p. 43
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、教育学や心理学で有効性の高い役割体験学習がまちづくり方針の評価に与える影響を明らかにする。実験では、役割体験の後にまちづくり方針に関する集団討論を行った場合と、役割体験を行わずまちづくり方針に関する集団討論を行った場合を設定し、それぞれの前後において、まちづくり方針に対する評価を測定した。その結果、役割体験学習は人の評価に大きな影響を与えることが把握され、個人間での評価の分散を小さくすることが明らかになった。この知見から、役割体験学習は、相互理解や共有化を促進させ、人々の価値や立場から生じる対立を解消することが可能である。
  • 石川 聡子, 盛岡 通
    p. 44
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本稿は, 大阪府能勢町ダイオキシン問題の事例分析により, 地域住民が行政や住民との間で展開した環境コミュニケーションにおける社会的関係や役割遂行, 情報授受や学習活動の諸特性について分析·評価したものである. 特に, 複数の住民運動組織の連携のなかで調停への推進力を発揮した組織の特性, 行政とのコミュニケーションにおける住民の学習·調査活動の有効性と課題, 行政と住民のパートナーシップに見られた特性について明らかにした. また, コミュニケーションの民主性を高める条件についても考察した.
  • —千葉県木更津市盤洲干潟をケーススタディーとして—
    柴垣 太郎, 畔柳 昭雄
    p. 45
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、千葉県木更津市に位置する盤洲干潟を対象に、人と干潟との係わり方の違いに着目し、干潟に対する住民と市民の意識の差違を把握し、干潟を中心とした地域構造を明らかとした。以下に結果を示す。(1)漁業環境の変化が人々の干潟に対する意識の変化をもたらした。(2)住民は生活環境の向上のため、干潟の存在価値を生業の場から現金収入の場へと変化させた。(3)住民は経済的な価値を干潟に求め、市民は学術的な価値を干潟に求めていた。
  • アーメド K. S. サロワロ ウッデン, 小島 治幸, 後藤 惠之輔
    p. 46
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は, 諫早湾干拓事業の費用便益分析を仮想評価法(CVM)より再評価を行ったものであり, 著者らは, このCVMが事業評価の過程において社会環境の価値を考慮できる一つの方法として有用と考え, 適用した. その結果, 社会環境的コストは325億4千9百万円と算出され, この費用を含めて再計算した費用便益率は, 同事業について行われた1986年と1996年の算出結果の間の値となった. また, 結論として, 事業開始前に事業継続の可否を判断する社会環境コストを, 市民と事業主体それぞれの立場から評価が行える資料の提出が行えるとともに, 周辺住民への補償金支払い額の算定資料の提出が行えることが示唆できた.
  • 亀野 辰三, 熊野 稔
    p. 47
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は住宅地における歩道幅員と樹高とのプロポーションを分析したものである。歩行者の視点から見て, 所与の歩道幅員のとき景観上望ましい樹高を樹形別に明らかにするために, 住宅地内街路の景観疑似画像を作成して心理実験を行い, 被験者の評価構造に基づく望ましい樹高を求めてみた。因子分析の結果から, 街路樹景観の評価は, 「好ましさ」と「開放感」の2つの因子軸によって表され, ほぼこの2つの因子で総合評価が説明できること, また, 歩道幅員に応じて, 望ましい樹高は樹形によって異なること等が明らかになった。
  • —盛岡城天守閣の復元に対する検討—
    佐々木 栄洋, 安藤 昭, 赤谷 隆一, 石田 謙介
    p. 48
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    城郭の景観評価に際しては、首尾一貫性のないデータを扱わなければならない場合が多く、必ずしも客観的な評価が行われているとはいえない。また、天守閣の復元、堀·石垣の修復等、城郭の再利用にかかわる景観評価手法が現在のところ確立されているわけではない。そこで、本研究は、東北地方の近世城郭を対象に、AHP法を適用して城郭の景観評価の構造を明確にし、盛岡城天守閣復元後の城郭の景観評価を予測することを目的に行ったものである。その結果、作事と普請の重要度評価の割合を考慮した城郭の景観評価を予測することができた。
  • 黒岩 孝, 宮本 和樹, 大内 宏友, 松原 三人
    p. 49
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    本論文では、3次元グラフィックスソフト(Discreet社 3ds Max)により作成した3次元街区モデルのフラクタル性について検討を行う。具体的には、3次元街区モデルに対して上から光を照射したときに生じる影を用いて陰影画像を作成する。次に、そのフラクタル次元を求めることによって、都市空間の構造との関連性について検討する。結果として、街区内における建物の配置や高さ、あるいはその形状とフラクタル次元との間に強い関連性のあることを明確にする。また、本方法は都市空間の構造の解析、あるいは、その形態の分類等の分野へ応用できる可能性のあることも明らかにする。
  • 高山 範理, 辻 華欧利, 下村 彰男
    p. 50
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/09/22
    会議録・要旨集 フリー
    森林景観を新たな森林管理の方法として捉えていく立場から、景観としての地域個性や特徴について整理し、把握するための手法が求められている。本論では、森林景観の特徴の指標化の一環として、代表的な林業地である日田地域、吉野地域を対象として、フラクタルの概念を用いて、中景域における樹冠の輪郭線に着目した定量化をおこなった。その結果、同一樹種でも配列が規則的で整然とした印象を懐かせる日田地域の森林景観はフラクタル次元が相対的に低く、不規則で雑然とした印象を懐かせる吉野地域ではやや高いなど見え方との関連が示唆され、フラクタルの概念が森林景観の特徴の指標化のための手法として有効であることが示唆された。
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