環境情報科学論文集
Vol.19(第19回環境研究発表会)
選択された号の論文の94件中1~50を表示しています
  • 山田 真紀子, 加我 宏之, 下村 泰彦, 増田 昇
    p. 1-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、戦後阪神間に開発された戸建て住宅の庭に担保される緑被の変化実態を航空写真から読み取った緑被率を用いて解析した。本研究で得た結果を次に示す。1)緑被率と敷地面積との相関関係は接道部より非接道部で強い。2)全対象宅地の緑被率の最低値は敷地規模によって異なり、200m2型で10%強、280m2型で15%強、330m2型で20%強である。3)更新されなかった宅地では開発後15~25年では緑被は増加するものの、25~35年では200m2型では全緑被率が20%程度、330m2型では30%程度をピークに減少する。4)更新された宅地では更新後の全緑被率は敷地規模によって異なり、200m2型では6~9%、280m2型では9~20%、330m2型では15~19%である。
  • 森 あすか, 松島 肇, 淺川 昭一郎
    p. 7-12
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、交通量の多い車道に挟まれた札幌市創成川緑地を事例として、沿道緑地の遮蔽植栽と周囲を走る車が与える利用者への心理的負荷との関係を明らかにすることを目的とした。3枚一組の組写真を用い、背景の車の有無と植栽形態を変えた計16組のシミュレーション写真について、学生と小さな子供を持つ保護者にその印象をSD法により回答してもらった。因子分析により、総合評価性、静けさ、開放感の三因子が抽出され、総合評価性と静けさについては、車を多く隠す植栽を施すことで評価が高くなった。開放感については、学生と保護者の受ける印象に違いが見られ、学生は遮蔽率を低くすることで、保護者は背景に車がないことで評価が高くなった。
  • 鳴海 大典, 下田 吉之, 水野 稔
    p. 13-18
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本論文では、大阪府域の住民を対象とするアンケート調査や冷房使用状況調査を行い、ヒートアイランド現象に対する意識や冷房用エネルギー消費の相違について検討した。住民意識に関しては、都心地区で約80%の住民が冷房使用に関する影響を問題視していた。次いで健康面については、概ね半数が影響を問題視していた。ヒートアイランド対策の必要性に関しては、郊外地区においても約80%の住民が必要性を感じており、大阪府においてはほぼ全域的にヒートアイランド対策への要望が強いことが示唆された。最後に、得られた結果をもとにヒートアイランド現象の対策目標に関する考察を行った。
  • 野上 加代, 嶽山 洋志
    p. 19-24
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
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    本研究では、学校ビオトープとの比較を通じて、チョウとトンボの出現および行動と巨木の温度環境との関係を明らかにすることを目的とした。結果、巨木1本であっても温度環境が多様な条件がそろえば、チョウやトンボにとっての生息空間として重要であることが伺えた。また、生態的位置づけとしては学校ビオトープより劣るが、ステッピングストーンとして機能していること、計画的視点として、水面や樹林、菜園などと一体的な配置を行い、温度環境を多様にすることで、チョウとトンボの出現が多くなることが明らかとなった。
  • 愛甲 哲也, 小池 友里子, 松島 肇
    p. 25-30
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    自然公園において、水域におけるプレジャーボートの利用が増加し、その影響が問題視されるようになってきた。そこで本研究では、早 くから問題が発生し、関係機関などにより対策が行われてきた中禅寺湖、琵琶湖、洞爺湖、屈斜路湖の事例調査から、乗入れ規制地区、条例、自粛ルール等の特徴を整理し、今後の水域における利用調整の課題を検討した。その結果、地域の関係機関や団体の連携が不可欠で、対策の検討時から地元や利用者の意見を収集する仕組みが必要なことが示された。
  • 平野 勇二郎, 大橋 唯太, 藤野 毅
    p. 31-36
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、都市における暑熱環境緩和方策の基礎研究として、高アルベド塗料を塗布したコンクリート表面における熱収支観測データの解析とモデリングを行い、高アルベド化による表面温度低下効果を検証した。まず、観測データから熱収支解析を行い、表面熱収支の日変化パターンを明らかにした。この結果、例えば高アルベド塗料の塗布面では顕熱フラックスがほとんど生じていないことなどの知見を得た。次に、この熱収支解析を検証するために1次元熱収支・熱伝導モデルを作成しシミュレーションを行った結果、観測から得られた表面温度や熱収支を概ね再現することができた。
  • 瀬戸島 政博, 今井 靖晃
    p. 37-42
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、多摩森林科学園内の混交林を対象に、季節的に時系列に撮影したカラー航空写真から作成した航空オルソ画像と落葉期間に取得した航空機搭載型レーザスキャナデータに基づく時系列な樹冠高データを併用し、樹葉の葉色変化と落葉推移パターン、さらには階層構造から構成樹種の区分を試みた。さらに、従来からの手法である目視判読による区分結果と比較照合し、本手法の適用性を検討した。その結果、本手法は葉色変化の大きいスダジイ、ケヤキ、コナラ、スギなどの抽出に有用であった。また、ケヤキやコナラなどの紅葉(黄葉)時期が異なる樹種の区分には極めて有用であるとともに、その階層構造を面的に把握することが可能であった。
  • 關 正貴, 糸長 浩司
    p. 43-48
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、農地と宅地等の土地利用が複雑に接することや、都市化等で伝統的な土地利用が崩された宅地と農林地の土地利用の複雑化を土地利用の複雑性の様態として捉え解析することを目的とする。複雑性の要素は土地利用種目別面積とエッジを活用する。エッジは土地利用種目間の接縁のことで、その構成要素はエッジ数と、エッジ距離がある。結果、土地利用種目別のエッジと、異なる種目別のエッジの算出が可能となり、エッジの絶対量を示す量的複雑性、エッジの入りくみ具合を示す入りくみ複雑性という概念を組み合わせることで複雑性の様態を解析した。これらから、土地利用の複雑性を定量的に把握し解析することが可能となった。
  • 上田 紘司, 田崎 みのり, 本條 毅, 梅木 清, 林 恩美
    p. 49-52
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    メッシュ気候値の作成のためには、重回帰分析やニューラルネットワークが、測定地点間のデータを補間し推定を行う手法として用いられている。本研究では、Leave-one-out cross validation により、重回帰分析やニューラルネットワークの精度比較を行った。データすべてを使用して推定式の作成を行った場合、ニューラルネットでは、学習回数が多いほどRMSEの値が減り、重回帰分析よりも低い値を示している。一方Leave-one-out cross validation の効果では、RMSEは、ニューラルネットの場合より重回帰分析が低い値を示している。したがって、推定手法として、ニューラルネットに、重回帰分析以上の精度が期待できるとはいえないと考えられる。
  • 林 恩美, トーソン ソフィア, リンドバーグ フレドリック, 本條 毅, エリアソン インリヤード, 梅木 清
    p. 53-58
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、屋外空間における温熱感指標と温熱感覚との関係について検討するため、千葉県松戸市を対象地とし、異なる特徴を持つ2つの屋外空間(駅広場・公園)で微気象観測とアンケートを行い、観測した気象要因(気温・風速)が人々の温熱感覚に及ぼす影響を調べ、その違いを比較した。また、観測データから求めた温熱感指標SET*(Standard new Effective Temperature)をもって2つの屋外空間での温熱感覚の違いを分析した。その結果、駅広場と公園での温熱感はSET*の快適域とほぼ一致していたことがわかった。また、公園での快適感はSET*の快適域より広く、快適と感じる範囲が広いことも分かった。
  • 古田 明広, 白木 渡, 大林 成行
    p. 59-64
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、高空間分解能の衛星データによる広域植生モニタリングの周期性の安定化を目的に、高頻度観測のMODISデータから、本来は観測されていない時期におけるASTER-NDVI画像を推定する手法について検討した。本手法はMODISの1画素とそれに内在するASTERの画素の関連性に着目し、土地被覆構成比率を指標とした統計的手法を用いて2時期のMODIS-NDVI変化量をASTERレベルに高空間分解能化する点に特長がある。対象領域とデータの観測期間を限定した中で、本手法により推定したNDVI画像と実測されたNDVI画像を比較した結果、土地被覆構成要素をNDVI変化量の推定に利用する本手法の妥当性が示された。一方で、本手法を広域および多時期へ応用するためには、土地被覆カテゴリの代表性と土地被覆の時系列変化を考慮したカテゴリの細分化に課題が残された。
  • 熊谷 樹一郎
    p. 65-70
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    都市住民の活動範囲が広域化しており、加えて主要な生態系の保全が重要視されている現在では、緑の分布を都市といった枠組みの中だけでなく、広い範囲から検討していく必要がある。本研究では、緑のネットワークを構成する植生軸に着目し、Landsat ETM+データから算出したNDVIを植生の存在量を表すデータとして採用した上で、空間的自己相関分析を応用した植生分布の分析方法を開発した。空間的自己相関の計算範囲に注目した上で、近傍から遠方の範囲にわたって自己相関の高い地域を植生分布の空間的な連続性の高い地域と定義し、各々の計算範囲での出力結果を重ね合わせることによって、植生高集積度地域の空間スケールを表す新たな画像を提案している。
  • 黒岩 孝, 佐藤 敬太郎, 大内 宏友, 松原 三人
    p. 71-76
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    都市計画を実施する際は、客観的かつ科学的な資料が必要となる。また、多面的かつ広域に渡る都市環境情報を迅速に収集する必要もある。計算機の利用により、市街地の構造やその形態の定量的解析あるいは時間的な経過により生じた市街地の変化領域の抽出などが可能となれば、上述の資料を迅速に整えることができる。本研究では、実在する市街地を空中から撮影した航空写真のフラクタル解析を行うことによって、市街地の構造を定量的に評価し、その形態分類が可能であることを示す。また、異なる時期に撮影した同一地域の航空写真のフラクタル解析を行うことによって、市街地の変化領域の抽出を簡易に行う手法を提案する。結果として本手法は都市計画における基礎資料を迅速に得るための有効な方法になり得ることを明らかにする。
  • 友利 光, 浦山 益郎
    p. 77-82
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、名古屋市に隣接する東海市・大府市と知多市にあるため池を対象に、居住環境資源として整備する際の指針を得る方法を示した。まず、ため池の特性に関する14指標を因子分析し、5つの共通因子を抽出した。次に、因子得点をもとにクラスター分析し、5つの類型を得た。さらに、都市公園として整備および環境整備されたため池の因子得点を分析し、類似した因子得点をもつため池が居住環境資源として整備しうる可能性があると考え、条件を満たすため池を抽出した。さらに、5つの類型と居住環境資源として整備できる可能性をもつため池の関係を見ることによって、農業水利機能と居住環境資源としての機能の整備指針が得られた。
  • 風除室とその周辺空間の形状と機能に着目して
    富田 将義, 市村 恒士, 黒澤 和隆
    p. 83-88
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、風除室及びその周辺空間に着目し、風除室に期待する多様な機能を考慮した風除室及びその周辺空間の課題等について整理した。室蘭市の住民に対するアンケート調査及び風除室等の形状把握を行った結果、風除室には多様な機能が期待されていること、機能に対する満足度に影響する形状の要因は「風除室の面積」「風除室入口段数」「階段の位置」であること、風除室の面積が2.0畳以上となると「作業スペース」「接客スペース」の機能に対しては、不満足と認識する住民が殆どいなくなること、階段を風除室の内側に設置すると「積雪・凍結範囲の緩和」の機能に対しては不満足と認識する住民が殆どいなくなること等が把握された。
  • 和田 有朗, 道奥 康治
    p. 89-94
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本論文は、都市河川における河川ごとの親水機能の特徴と河川水質をもとに河川環境整備の方向について検討したものである。まず、複数の都市河川を対象に親水活動の現状を実地調査によって明らかにし、同時に河川水質を把握した。都市河川は河川の環境整備の状況によって堤外地を含めた線的な利用と、堤内地を中心とした点、面的な利用に分けられ環境面の親水性が備わることによって、より人々の利用が増え、潤いといやしを提供することを示した。
  • 松島 肇, 愛甲 哲也
    p. 95-100
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、早くからPersonal Watercraft (PWC)利用の問題に取り組んでいるアメリカ合衆国に注目し、特にNational Park Service (NPS)の所管地における事例を中心として行政、環境保護団体、業界団体といったPWCを取り巻くさまざまな動向を把握することにより、我が国の水域における今後のPWC利用の管理に有効な手法を検討することを目的とする。NPSは、PWCを他の動力船と区別して規制対象としており、一部の国立レクリエーション地域や国立海岸を除き、その利用を禁止していた。その根拠に関しては業界団体からの異論もあるが、NPSの設立目的からも支持されていた。アメリカではPWC利用の規制だけでなく、利用者の啓発等、さまざまな取り組みが行われており、我が国でも早急な対策が望まれる。
  • 小木曽 裕
    p. 101-106
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    昭和32年建設の武蔵野緑町団地建替の緑化に際し、既存樹木への思いを受けとめ、住民参加により緑の合意形成を行った。ここでは既存樹木の有効活用をグリーンバンク手法により保存、移植を行うとともに、建替工区内はもとより通常利用しない居住エリア(工区外エリア)の既存樹木も移植活用することができた。工区外移植を導入したことで、団地全体に分布した既存樹木の活用本数が33%増加し、段階的工事で1期の工区外移植の活用が有効であった。また、住民参加による合意形成をもとにした、期工区の細分化によって、既存樹木の保全緑化並びに緑化を推進されることが分かった。
  • 臼井 敦史, 鈴木 弘孝, 藤崎 健一郎, 田代 順孝
    p. 107-112
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、共同福利施設建設譲渡事業によって整備された緩衝緑地内の樹林形成に適用された「パターン植栽」の手法に着目し、植栽施工後約30年が経過した現況の樹林構造の実態と特性を分析し、緩衝緑地形成におけるパターン植栽手法の効果を検証することを目的とする。共同福利施設建設譲渡事業により整備された兵庫県姫路市の中島地区を対象として樹木の毎木調査を行った結果、植栽時における密度の違いによる現存樹木数の相違は見られず、100m2当り15~20本が残存していた。また、「パターン植栽」により、設計当初に想定されていた階層構造の樹林は形成されておらず、現況の樹林構造はパターンを構成する現存樹木の樹高と胸高直径階から三つのタイプに区分された。
  • 三坂 育正, 鈴木 弘孝, 藤崎 健一郎, 成田 健一, 田代 順孝
    p. 113-116
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    壁面緑化植物の蒸散作用による建物周辺の温熱環境改善効果を定量的に明らかにしていくことを目的として、実験を行った。実験には、壁面緑化に一般的に使用されている つる植物のヘデラカナリエンシスをプランターに植栽したものを用い、重量法によって蒸散量を推定した。測定の結果、土壌蒸発量を差し引いたヘデラカナリエンシスの重量法から推定される日蒸散量は、緑化部分の垂直面積あたり0.6mm程度であった。また、日中における蒸散による潜熱フラックスは、正味放射量の約25%程度であり、この分が顕熱や伝導熱の低減に寄与し、周辺暑熱環境緩和に貢献できるものと期待できる。
  • 松下 功, 波多野 眞司, 鳴海 大典
    p. 117-122
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本論文では、屋上緑化における植生種の違いが気候緩和や空調エネルギー消費削減効果に及ぼす影響について、主としてヘデラとセダムの比較から検討を行った。実証試験結果からヘデラは蒸発散の持続効果に優れる一方で、セダムや土壌のみでは速やかに乾燥が進んだ。また、数値計算モデルの計算結果から、屋上緑化を設置することで気温低減効果や冷房用エネルギー消費削減効果を確認することができたが、その効果は特にヘデラで顕著であった。また、今回の計算設定条件では気温低減による間接効果が断熱性向上による直接効果を上回る結果を示した。
  • 鈴木 弘孝
    p. 123-126
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、緩衝緑地整備の大半を担ってきた共同福利施設事業制度における財政支援措置により、地方財政負担の軽減がどのように図られたかについて、都市公園事業との比較により理論値と実績値の両面から定量的に検証し、今後緩衝緑地のストックを有効に継承し、都市の緑地の計画的な整備と保全に生かすための基礎的資料を得ることを目的とするものである。検討の結果、共同福利施設建設譲渡事業では、都市公園補助事業と比較して、事業費における地方公共団体の財政負担比率(地方負担率)は理論値、実績値とも1/2以下であり、建設段階における自己資金の比率(自己資金率)では実績値が1/5~1/3に軽減されており、理論値以上に軽減されていた。共同福利施設建設譲渡事業制度における財政支援措置は、地方財政負担の軽減に有効であったと考えられる。
  • 青野 万里, 島田 正文, 勝野 武彦
    p. 127-132
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、建築物の壁面を緑化するに当たりどのような植物がどのような条件下でどのように生育するかを明らかにしようとした。導入種の選定は多くの種が挙げられているが、現実に壁面に利用する際、その手法と初期成長の状況は必ずしも明らかになっていない。大規模な壁面緑化を別として中小の建築物壁面をツル植物で緑化する場合、どの場所でどの種がどう生育するかを明らかにすることは、今後の壁面緑化を進める場合重要となる。この調査では方位による種の生育に違いがあること、用いた軽量土壌などの量的指針が示されたこと、導入種による生育の差がそれぞれ明確になり適応性がわかった。
  • 群馬県伊香保温泉を事例として
    山田 桐子, 宮崎 均
    p. 133-138
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    各地の温泉地で様々な振興策が展開されている。温泉地におけるまちづくりは観光客に重点が置かれやすく、振興策の多くは観光客を主とした施設建設、施設整備である。本来、温泉街のまちづくりは居住者と観光客の双方にとって魅力的であるべきだ。そこで、全国の温泉地を対象とし、各地の温泉地で振興策調査を行い、その調査結果をもとにアンケートを作成し、伊香保温泉でアンケート調査を実施した。居住者が振興策や生活環境、温泉の魅力等について、どのように考えているか読み取ることで、まちの魅力や、まちづくりの整備・検討項目を明らかにすることを目的とする。アンケート調査より温泉街のまちづくりは、ハード事業、ソフト事業の両立を図りつつ、特にハード事業は温泉街の魅力となっている点を大切にし、住民が望む事業と振興策が一致することが望ましい。
  • 過疎地域と都市の交流促進に向けた新たな着眼点
    金岡 省吾, 市村 恒士, 小谷 幸司
    p. 139-144
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    過疎と都市の交流促進のため、マーケティング導入の必要性が指摘されはじめている。マーケティングの理論的背景として消費者行動が着目されているが、本研究では、来訪者の行動原理の連鎖の観点から既往研究を整理し、自然体験型余暇活動の促進に際しての消費者行動研究の今後の展望を考察した。消費者行動研究により、来訪地決定のメカニズム、提供サービスへの消費意欲、満足度とリピート意向との関係を解明することは、リピートを前提とした事業運営における計画技術として有効である。今後は、来訪者の多様性に対応するサービスメニューを提供するための研究蓄積が求められる。
  • 金 那英, 畔柳 昭雄
    p. 145-150
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、河川環境の変化が、河川流域の住民と河川との相互的関係性に如何なる影響を与えているかを捉えることで、都市河川の環境的意味を把握し、今後の河川環境整備のあり方を考える上での計画的示唆を得ることを目的とする。そのため、文献資料や統計資料から地域環境と河川環境整備の変遷について検討し、河川周辺に居住する住民を対象にヒアリング調査を実施して住民と河川の係わりの変化について捉えた。その結果、自然環境をもつ河川は住民との係わりが多様に見られ、住民が自由に利用できる社会的空間としての価値が高いことがわかった。一方、産業環境としての河川は住民の生活と直接係わりをもたない外的施設の状態になっていることが把握できた。
  • 中島 敏博, 古谷 勝則
    p. 151-156
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では里山活動の人手不足や高齢化の問題に対して、若者として学生が緑地保全活動に対して持つ意識と、緑地に赴き緑地保全活動へ参加意欲を持つまでのプロセスを明らかにすることを目的とした。学生たちは拠点となる場所から930m、生活圏から500m以内にある緑地に赴く傾向が強く、緑地に赴くことが緑地を評価することに繋がることがわかった。また、緑地保全活動への参加意欲は緑地評価と大きく関わりを持っていることがわかった。さらに、生活拠点となる場所から2km以内にある緑地が、学生の緑地保全活動への参加意欲を誘発することがわかった。これらの結果から若者の緑地へ赴く意欲が湧く過程から緑地保全活動への参加意欲が湧くまでのプロセスの一端を示せた。
  • 松本 文子, 市田 行信, 吉川 郷主, 水野 啓, 小林 愼太郎
    p. 157-162
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、ソーシャルキャピタルの形成という視点でアートプロジェクトによる地域づくり活動のプロセスを質的に分析したものである。活動の行われた集落の区長へのインタビューを基に、アートプロジェクトへの参加を通して集落や住民がどのように変容したかというプロセスについて調査した。地域社会を構成する各要素間の関係性の変化を調べた結果、活動によってソーシャルキャピタルが形成されたことが確認され、高齢者の参加や外部との交流などのネットワーク構築に関する要素が抽出された。また、アートプロジェクトのもつ、住民参加をより促進するという特性により、意欲の生成など、形成が難しく持続的発展に貢献するとされる認知的ソーシャルキャピタルの形成がより促されることが確認された。
  • 小柳 武和, 桑原 祐史
    p. 163-168
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    観光による地域再生と経済活動再生のコンセプトが提示され、国土交通省を始めとした様々な機関や団体においてモデル事業の検討が進んでいる。このような中、茨城県中・北部では、茨城県ひたちなか市と群馬県高崎市を結ぶ北関東自動車道の施工が進んでおり、一部区間の供用が既に開始されている現状にある。高速道の全線供用により、北関東3県間の移動が容易になることから、観光を取り巻く人と自然の環境が大きく変わることが想定される。そこで、本研究では、自動車道沿線市町村を対象として地域に根ざす観光資源(歴史・文化・自然・施設・景観等)を既存資料の分析によって類型化するとともに、地理情報の分析により新たな観光資源を情報化することを試みた。
  • 王 蕊, 下村 泰彦, 加我 宏之, 増田 昇
    p. 169-174
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、大阪市における市民に好まれる風景を対象に、緑の果たす役割をデザイン面から探った。その結果、緑の出現タイプでは両側型や中心型、床面型が典型例であること。緑は、ビスタやパースペクティブを形成し視線の誘導や奥行き感の創出、主景の遠近感の強調等の役割を果たすこと。風景の主景を形成する一方で、建造物の前景として外観のスケールを縮小させる調節的効果や足下を遮蔽したり、主景の正面性を強調すること。河川と建物とを調和させる効果や、一定の領域感を形成する効果、高木がフレームとなり主景を強調する効果があること。俯瞰景では、後方の市街地を眺望する際の引き空間としての効果を発揮すること等がわかった。
  • 葉山 嘉一, 吉田 博宣
    p. 175-180
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    外来種タイワンリスが生息する鎌倉で住民と観光地来訪者にアンケート調査し、リスに対する認識と印象を明らかにした。調査対象者は、以前からリスが生息する長谷地区と最近分布が確認された大船地区の住民と、代表的観光地の大船観音、建長寺、瑞泉寺、銭洗い弁天、鶴岡八幡宮、長谷寺への来訪者とした。その結果、SD法調査による印象分析で、接触度合いの異なる3グループに被験者集団が区分され、リス被害の直接体験が影響することがわかった。また、日常で得る身近な情報は間接情報でも影響があることが推察された。観光地来訪者は正確な情報を持たないものが多く、被害を知っていてもリスを肯定的に捉えるものが多かった。
  • 知床国立公園を事例に
    藤原 千尋
    p. 181-186
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    国立公園の管理手法を検討する際、重要な基礎データとなるのが利用者数である。本研究は、1)知床国立公園を事例として、知床連山の各登山口に利用者数計測のための自動カウンターを設置し、その有効性を検証すること、2)カウンターデータと入山簿を用いて、他地域でも実行可能でかつ正確な利用動態の把握方法を検証・提示することを目的とした。その結果、カウンターは捕捉率の測定を行えば、適切に利用者の通貨人数を把握できること、入山簿を用いてカウンターデータを分析することにより利用動態が把握でき、過剰利用問題について検討する際の基礎データになることが明らかとなった。
  • 杉谷 啓行, 丹治 三則, 盛岡 通, 齊藤 修
    p. 187-192
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、シナリオアプローチを援用して、人口変化、土地利用等の地域構造の転換と連動した生物生息空間の回復を目指す計画を立案するための分析の枠組みを作成し、生息地を保全する施策の効果を定量的に検討することを目的としている。具体的には、荒川流域(東京都、埼玉県)において、複数の将来シナリオを人口と土地利用によって定量的に示し、各シナリオ下での生物保全策の効果の比較分析を行った。その結果、丘陵地における森林再生施策、河川周辺でのヨシ群落の再生が効果的な施策であることが見込まれた。さらに、土地利用の転換と連動させて生息環境の回復を目指す施策を検討することの有効性と現状の課題について考察した。
  • 宮城県内の2集落を対象として
    小池 修, 田村 孝浩
    p. 193-198
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    農業水路の維持管理実態と住民参加拡大の可能性を明らかにするため、宮城県T町内の2集落を対象に調査を行った。その結果、現状の作業参加者数は必要最少人数に近く、一部の水路では既に不足していることが明らかになった。資金的な問題はほとんどみられなかった。水路の維持管理や生物保全に対する住民の意識は集落によって異なるものの、環境配慮を契機にすることにより維持管理作業への住民参加が拡大する可能性のあることが2集落とも確認され、1)作業実施体制 2)作業日・時間 3)環境配慮 4)施設条件 5)意識の調和、の5項目について住民参加拡大の条件を提示した。
  • 藤沢 直樹, 糸長 浩司
    p. 199-204
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    市町村合併が進められるなか、土地利用計画策定・調整の手法的開発や制度的開発が問われる。本稿では、筆者らが取り組む住民参画型での土地利用計画策定への調整支援研究の一環として試みた、14の旧村を単位として段階的な住民参画型ワークショップを用いた長野県飯田市での事例から、土地利用計画の決定に関する合意形成手法の実施過程を分析、その上で、今後の計画策定・調整への手法としての有効性を考察した。結果、計画段階に応じて実施した3回のWSによって、地域住民自身が、自らの身近な生活圏域である地域の市域での位置づけや、農業振興面での課題や土地利用上の課題を自覚することが可能となった。その上で、専門機関が土地利用の目標のたたき台を提示することで、農業農村計画環境や自然環境の保全を考慮した土地利用計画の策定を可能とした。このことから、市町村合併後の土地利用計画策定・調整においても、旧村を単位とした住民参画型WSを用いた、土地利用計画を策定・調整する本稿での手法は、新市町村領域での土地利用計画策定への反映は有効であると示唆できる。
  • 3D画像の可視化モデルを用いた鎌倉らしい景観について
    山田 悟史, 坂口 浩一, 渥美 智英, 松原 三人, 大内 宏友
    p. 205-210
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、歴史的都市の鎌倉を研究の対象に、3D画像の可視化モデルを作成し地域住民における景観認知について研究を行う。可視化モデルの作成とは「GISデータによる3D地形モデル」と「人の視覚的認知に近似である逆二乗減衰を適用した光の広がり」をもとに、地域住民の視点に立脚した3次元空間情報をもつ可視領域の設定である。作成した3次元陰影画像を活用し、明在系、暗在系という概念から、まち・山・海の認知領域構成要素、特に鎌倉らしい景観認知について景観分析を行う。
  • 鎌倉市広町緑地の運動事例
    熊澤 輝一, 原科 幸彦
    p. 211-216
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    緑地保全のための環境社会配慮の観点から、本研究では、鎌倉市の広町緑地の運動事例を対象に、住民と大規模緑地との関係及びその変容の把握を目的とした。その結果、1)運動事前期にあった生業の場としての関係は、1965年頃以降一部を残して消滅し、緑地は荒廃した。2)保全運動期には、新興住宅地の住民が運動の一環として緑地に入り、保全運動の対象としての関係が成立した。3)同期末には現場活動の組織化と多様化がみられ、保全運動の場としての関係に変容した。4)都市林計画期には、活動の場としての関係を成立させる人々の拡大、組織間の調整・連携がみられ、組織化を促す計画システムの設計次第で緑地との関係が変化し得ることが示唆された。
  • 京都府内の市町村を対象にした調査をもとに
    平岡 俊一
    p. 217-222
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    地方自治体での地球温暖化対策における市民参加に関して、京都府内の市町村を対象にしたアンケート調査をもとに、その現状を明らかにし、さらに、対策自体の進捗との関係性について考察した。市民参加の現状については、1)温暖化対策に着手している自治体では、条例・計画の策定段階、推進体制、普及啓発等の施策実施段階などでの市民参加が一定進んでいる、2)点検評価段階での市民参加はほとんど進んでいない、といったことが明らかになった。市民参加の推進と温暖化対策進捗の関係性については、推進体制などにおいて市民参加を図っている自治体のほうが、そうでない自治体よりも、対策の実施が大幅に進んでいることが明らかになった。
  • 永井 利明, 加藤 哲男
    p. 223-228
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    個人のマナーやモラルの低下によるゴミのポイ捨てや路上喫煙は後を絶たず、生活環境の悪化のみならず歩行者へ危害をもたらす恐れもある。本研究は、千代田区を参考として過料による取締りを計画している名古屋市を対象とし、市民の意識や行動実態をふまえた行政対応のあり方について考察することを目的とする。名古屋市民を対象として、ごみのポイ捨てや過料制度に関する市民の意識と行動を把握するために、アンケート調査を実施した結果、環境問題に関心が高い人ほど自らの責任を自覚していること、過料の適用によってはルールからマナーへの移行を期待できないこと、などが明らかとなった。
  • 井川原 弘一, 高山 範理, 香川 隆英, 朴 範鎭
    p. 229-234
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    森林保養地の整備指針の基礎資料とするため、森林保養地に設定された森林散策コースと街中での散策における気分状態の変化と散策空間の印象を把握し、あわせて「光」・「温熱」・「イオン」の物理環境要因を測定した。森林散策には心理的なストレス緩和効果があり、この効果には散策空間のイメージと相関があるものと考えられた。散策空間のイメージと物理環境要因では温熱環境がよく対応していた。また、森林浴の効果には、さまざまな物理環境要因が複合的に連鎖して、影響しているものと考えられた。
  • 菊田 翔一朗, 上甫木 昭春
    p. 235-240
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では古くから河口部に存在しているクロマツに着目し、その地域における住民の意識特性から、地域資源としてのクロマツが地域の個性創出にどのように寄与しているかを探ることを目的とし、クロマツの分布特性の異なる2地区を選定し、各地区におけるクロマツの分布状況や景観特性と住民意識や所有者意識との関係性を把握した。その結果、地域内における個性を創出しているクロマツの密度や景観特性が住民意識や所有者意識に影響を及ぼしていると考えられた。
  • 園田 陽一, 倉本 宣
    p. 241-246
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、都市住民の野生哺乳類に対する態度の意識構造と共存希望との関連性を把握し、生息環境の維持・管理の方向性を示した。因子分析の結果から、住民の野生哺乳類に対する態度として、「自然性」、「利用性」、「対立性」が抽出された。また、都市住民は、総体的に「自然性」に対する認識が高く、共存への理解も高い。また、都市住民は、全体として「対立性」に対する認識が高い。特に、実際の被害を受けた経験のある住民において「対立性」の認識が高く、野生哺乳類との共存に対して否定的な態度をもたらすことが示された。そのため、野生哺乳類と住民との経済的、精神的対立関係のリスク評価が合意形成の際に重要であると考えられる。
  • 大野 智彦
    p. 247-252
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    1997年に改正された河川法は、河川整備計画策定過程に「関係住民意見の反映」の手続きを定めたことで注目されている。しかし、上位計画である河川整備基本方針の段階で参加手続きが制度化されていないことに対しては批判がある。本稿ではこの批判について一級河川を対象に検討する中で、(1)実際には策定済みの河川整備計画の77.4%が河川整備基本方針よりも早く策定されていること、(2)そのうち98.6%は都道府県知事が河川管理を行う指定区間についての計画であること、(3)指定区間においては、整備計画の策定を先行させた場合、直轄区間との調整が十分でなければ限られた参加になる可能性があることが明らかになった。
  • 三番瀬円卓会議を事例として
    金 潔華, 原科 幸彦
    p. 253-258
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    近年、地域環境計画づくりの住民参加において、円卓会議方式が注目されている。しかし、会議の委員として参加できる住民の数は限定されており、それを補完する仕組みが必要である。このような視点から、本研究は評価枠組みを設定したうえで、三番瀬再生計画検討会議を事例に、住民参加における広範な住民意見を計画に反映させる仕組みについて検討を行った。その結果、本事例では、広範な参加と広い意見の取り入れがなされたが、それは、代表者による参加の欠点を補う仕組みが存在していたためと考えられる。特に、傍聴参加の仕組みは、委員以外の人々の広範な参加を可能にし、地域社会と円卓会議の双方向コミュニケーションを一定程度実現した、と判断される。
  • 田村 孝浩, 小池 修
    p. 259-264
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    本報では、ほ場整備を契機に環境共生型水路の計画づくりを行った宮城県田尻町北小塩地区の取り組みを事例に、受益農家の参画に基づいた計画手法とその策定プロセスについて考察を行った。その結果、1)策定された計画が、既存生態系の保全と効率的な生産活動の推進を実践可能なかたちで具体化されていること、2)策定過程における受益者の主たる関心は、除草を中心とした維持管理作業の省力化にあることなどが明らかとなった。また、受益者の参画に基づく計画策定活動においては、3)多様な主体が参加したうえで検討課題を段階的に整理していくアプローチの有用性が示された。
  • 海岸風景における風車群の俯瞰景を対象として
    越後屋 雄士, 安藤 昭, 南 正昭, 赤谷 隆一
    p. 265-270
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    ウィンドファーム建設の際には、重要な視点場からの景観を損なわないように考慮する必要がある。本研究は、海岸風景において風車群を俯瞰する場合の風車群の配置形態による錯綜度と景観評価との関係を明らかにすることを目的としている。本研究では、物理的指標として風車群の視軸に対するプロペラの角度を考慮した風車群の配置形態の錯綜度に情報量指標を適用し、心理的指標としてこれらについての景観破壊度を一対比較法による実験により求め、錯綜度と景観破壊度の関係を検討しようとするものである。
  • 嶋 栄吉, 堤 聰
    p. 271-274
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    現在、農業地域の特性を考慮した生態系の保全と美しい景観との調和が求められている。その中で近年、農林地域の湿原における農地開発等が水と植生の環境に影響を及ぼし、その環境悪化が大きな問題となっている。湿原は、水資源の涵養機能、洪水防止機能、気象の緩和機能、生物種の保存機能、水質の浄化機能、環境教育機能などの多様な機能を持っている。それゆえ、湿原は生態系として高い評価を受けている。そこで、本研究では、青森県の田代湿原における地下水と植生を調べた。その結果、湿原における地下水と植生ならびに保全対策等が明らかになった。
  • 大澤 啓志, 勝野 武彦
    p. 275-278
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    平野部の農村の生物相の保全・回復に向け、平野水田のカエル類の分布状況から集居集落の生息パッチとしての生態的機能を考察した。新潟平野南部を事例調査地として、ベルト・トランセクト調査によりカエル類の平野水田への分布状況を把握した。その結果、ニホンアカガエルとシュレーゲルアオガエルの生息が、平野水田内に点在する集居集落近傍において複数箇所で確認された。この2種の生息に必要なまとまりのある草原・樹林環境を集居集落は提供してきたものと推察され、集居集落が両種の生息パッチとして機能してきたことが示された。
  • 芝池 博幸, 植竹 朋子, 楠本 良延, 矢野 初美, 井手 任
    p. 279-284
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    「身近な生きもの調査(環境省、2001)」によって全国から収集されたタンポポについて解析した結果から、形態的にセイヨウタンポポと見なされる個体の85%が、セイヨウタンポポと日本産タンポポの間で形成された雑種であることが知られている。本研究では環境指標としてのタンポポ属植物の位置づけを再検討する観点から、関東平野から採集された雑種性タンポポ(4倍体雑種および3倍体雑種)を対象として、雑種個体を遺伝的に識別し、得られたクローンの分布様式を検討した。その結果、関東平野のタンポポの43%を占める4倍体雑種の93%が遺伝的に同一な遺伝子型を持つクローンから構成され、それらの分布域が関東平野全域に及んでいることが示された。
  • 岡 浩平, 吉崎 真司
    p. 285-290
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/28
    会議録・要旨集 フリー
    神奈川県湘南海岸の砂浜を対象として、植生調査と土壌及び微地形などの立地要因調査を行った。二次元指標種分析(TWINSPAN)及び除歪対応分析(DCA)による解析の結果、対象地の植生は砂防柵の有無によって大きく異なることがわかった。砂防柵内では出現種数が増加するものの、帰化植物の侵入が確認された。また砂防柵設置による飛塩や飛砂の減少によるNa+の減少やNO3-の増加などによって、土壌の化学性が変化し、それに伴うと考えられる植生の変化が認められた。今後は、砂防の観点だけでなく海浜植生を考慮にいれた、砂防柵の設置及び管理を行っていく必要がある。
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