環境情報科学論文集
Vol.24(第24回環境研究発表会)
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  • 野々村 敦子
    p. 1-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    管理放棄された竹林が無秩序に拡大し,周囲の森林や農地が駆逐されるという問題が各地で報告されてきている。これまで竹林分布の把握は,主に空中写真や衛星画像の目視判読で実施されてきた。しかし,目視判読には時間がかかるため,竹林分布を広範囲において把握する際の手法としては最適な手法であるとは言えない。衛星データを用いた解析により竹林分布を自動的に判読する手法も開発されてきているが,手法の確立には未だ至っていない。そこで本研究では, 衛星データの解析に基づく竹林分布判読手法の開発の現状を明らかにした上で,ALOS/AVNIR-2 およびPRISM データを用いた竹林分布判別手法を提案する。
  • 藤居 良夫, 楊 磊
    p. 7-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    近年,急速な経済発展を遂げている中国の地方都市では,都市人口の増加及び市街地の拡大が急速に進み,スプロール化が深刻な問題となっている。快適な都市の形成のため,将来の土地被覆の変化を把握することは重要である。本研究では,河北省廊坊市の都市計画区域を対象とし,土地被覆変化の社会経済的要因を考慮して,マルコフ連鎖分析とセル・オートマトン分析を利用し,過去の衛星データから将の土地被覆の予測を行った。その結果,この予測手法は有用であること,将来,とくに都市周辺部における市街地に近い農地が市街地に変化することなどがわかった。
  • 加藤 哲, 宮下 清栄
    p. 13-18
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    衛星画像から得られる地表面の熱分布を表すデータを用いて土地被覆と地表面温度との関係性を分析した。緑地及び水面が集積するエリアを線的に抽出することで,東京都が主な取り組みの一つとして掲げている「環境軸の形成」について定量的な評価が行える可能性を示唆した。また,みどり豊かな多摩地域では東西方向の環境軸が多く抽出されたが,区部においては大規模公園が断続的に抽出されている以外は環境軸の分布は抽出されなかった。さらに,衛星画像を用いることで大規模な土地利用現況調査や気象観測を行うことなく広範囲な土地被覆と地表面温度分布を把握することができ,両者の関係を容易に分析することができることが示唆された。
  • 辻子 裕二, 河邑 眞, 辻野 和彦
    p. 19-24
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    2002 年4 月5 日岐阜県岐阜市芥見権現山において岐阜林野火災が発生した。地表の緑被が焼失することで時間の経過に伴い根系が腐朽し,斜面安全率を低下させることが危惧される。実効性の高い防災管理を行うには被災域における緑被再生プロセスを適切に把握する必要がある。本研究では,広域性,周期性等の面で有用な衛星画像を用い,時系列での緑被再生プロセスの監視方法について検討した。特に,斜面の侵食防止効果が期待できる初期再生プロセスにおけるLAI (葉面積指数)とNDVI(正規化植生指標)の関係を明らかにした。最終的にLAI NDVI の関係が被災プロセスと再生プロセスで異なることや,その適用限界を踏まえた上でNDVI を利用することが肝要であると結論づけた。
  • 堀川 真弘, 津山 幾太郎, 大藪 崇司, 守村 敦郎, 森本 幸裕
    p. 25-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    アラル海の縮小によるシルダリア下流域の湿地帯の衰退に対し,南北に分断されたアラル海の北側の湖の水位安定化にむけたダム建設が行われている。本研究では、現地調査と1999年から2006年の6シーンの衛星画像を用いて,湿地帯の変動とダム建設後の評価を行った。その結果1999年から2004年にかけて,面積・周囲長・平均NDVI・積算NDVI・隣接水域全ての指標が減少する傾向が見られたが,ダム建設後の2006年には,全指標が増加し,特に平均NDVIと隣接水域の増加が顕著であった。ダム建設による水位上昇により湿地生態系の修復が行われ,本地域の生物多様性の回復に貢献すると推定される。
  • 黒田 圭介, 黒木 貴一, 宗 建郎
    p. 31-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    カルスト台地平尾台のドリーネにおいて,特定の波長域をカットした反射率データをデジタルカメラで取得し,その画像からLANDSAT/TMデータのバンド3と4に近い反射率データをGISで抽出し,そのデータから,NDVIの算出と最尤法分類を行った。その結果,1)NDVIは現実的な分布を示す,2)デジタルカメラ画像にバンド4に近い反射率データを合成した画像による最尤法分類は,人工衛星データによるそれと同様に植物の反射率特性を反映している,3)NDVIも土地被覆分類図も実際の土壌特性を反映したもので,デジタルカメラによるリモートセンシングは環境調査に有効な手段となる,の以上3点を明らかにした。
  • 平田 富士男
    p. 37-42
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    近年のわが国におけるオープンガーデン活動の内容がかなり多様化しつつあることを前提に,その活動支援方策を検討していくうえにおいては,現在の活動がどのように多様化した内容・課題を持っているのか,それらの背景にはどのようなことがあるのか,を把握する必要があることから,兵庫県を対象地としてそこで活動するすべてのオープンガーデングループに対してヒアリングを行った。その結果,オープンガーデンの活動内容とともにその目的や課題にも多様なものがあることがわかった。そして,目的は活動が行われる地域の特性と一定の関連があり,その目的によって活動内容も変わるが,それぞれの活動が有する課題は,参加庭の数とイベントとしてのオープンガーデンを運営する事務局体制が庭主から独立して強固な体制を持っているかどうかによって異なるという関係があることなどがわかった。
  • 小木曽 裕, 伊藤 竜弥, 勝野 武彦
    p. 43-48
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    本研究では,団地内に水施設を有するビオトープの居住者意識や利用方法・管理実態を調査し,ビオトープの維持管理や整備への基礎データーを得ることを目的とした。その結果,ビオトープは位置や形態に関わらず,約9割が良い評価であることがわかった。ビオトープの利用は「通りすがりに眺める」が最も多く,他の利用方法の増加には啓蒙や休息施設の設置が必要であることが示唆された。ビオトープ管理は管理業者の継続を望む人は約半数であり,管理への参加の関心は高いが継続の懸念が伺えた。ビオトープ管理の評価は「生垣・樹木」「芝・野草」「流れ・池」の順に高く,定期的な管理の未実施の水辺では,抽水植物管理が重要であることがわかった。
  • 程 希平, 梅木 清, 本條 毅
    p. 49-54
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    中国華東地方の針葉樹二次林の優占種二種バビショウ(Pinus massoniana Lamb)とコウヨウザン(Cunninghamia lanceolata (Lamb) Hook) のサイズ分布・空間分布・直径-樹高関係を検討し,両種の生態学的特徴を明らかにした。バビショウは林冠木のみの一山型サイズ分布を持っていた。コウヨウザンは稚樹から亜高木層まで連続したサイズ分布を持っていた。バビショウは小さな空間スケールで一様な空間分布をしていた。コウヨウザンは集中分布をしていた。弱齢林のバビショウ小個体は,コウヨウザンと比べて,直径より樹高成長を優先させる傾向があった。バビショウはオープンサイトにおける成長速度が速い低耐陰性種,コウヨウザンは被陰下での死亡率が低い中耐陰性種であると考えられた。
  • 大藪 崇司, 尾関 由衣, 堀川 真弘, 澤田 佳宏, 山本 聡, 藤原 道郎
    p. 55-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    愛知県におけるカシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus) によるナラ類萎凋病被害は,2005年に初めて確認され,2007年には愛・地球博記念公園でも確認された。本研究では,当公園内におけるナラ枯れ被害の状況把握と,その対策としての薬剤費の試算を行った。その結果,コナラ・モンゴリナラ枯死率は,林床花園で17.0%,親林楽園で14.3%であった。また,公園全体での薬剤注入を行うべき対象樹木は587本あり,その費用は3394400円,伐採処理費3000000円と合わせ6394400円の初期費用が必要と試算された。公園内のコナラ・モンゴリナラ維持には,保存価値の高いモンゴリナラから薬剤注入を実施することが適当だと思われた。
  • 米村 惣太郎, 井原 寛人
    p. 61-66
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    タコノアシ(環境省レッドリスト準絶滅危惧種)は低地の泥湿地や河川敷を生育地とする湿生植物であり,絶滅危険性の主要因は河川開発が最も多いとされている。そこで河川敷でのタコノアシの保全に関する知見を得ることを目的として,継続的な生育が認められている筑後川下流域でタコノアシの生育状況と環境条件の調査を行った。また下流域の環境への適応性を検討するために沈水耐性や発芽への塩分影響,挿し木可能性の実験を行った。筑後川下流域では河口からの距離14.8~22.3km の範囲で生育が見られ,18km 以上では帯状群落を最も低水路寄りに形成していた。断片化した茎からの成長や沈水状態でも伸長できる性質が水辺の攪乱地での継続的な個体群の維持を可能にしていると考えられた。
  • 小川 直哉, 加藤 和弘
    p. 67-72
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    パッチ状生息地を取り巻く空間は,動物の移動経路や,補助的な生息地として機能し得ると言われており,その状態が生息地内の鳥類相に影響するとされる。生息地を取り巻く空間を動物が利用ないし移動するには,生息地との境界を越える必要があるが,鳥類はそれを嫌うとの報告がある。本研究では,生息地の境界を越えて移動する鳥類の個体数と,境界外接部の土地被覆との関係を調べた。その結果,境界外接部における落葉樹は都市的環境を嫌う鳥類種の境界を越える移動を促進する可能性が示唆された。都市の樹林地の鳥類相を検討する際には,生息地の境界の状態が境界を越える鳥類の移動に影響し得ることに,注意を払うべきである。
  • 渡邉 英一, 大藪 崇司, 澤田 佳宏, 橋本 啓史, 山本 聡, 藤原 道郎
    p. 73-76
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    本研究は,根系切断が樹木の成長に及ぼす影響を検証し,樹形との比較を通じて良好な街路空間の維持管理に繋げることを目的とした。2008年6月から9月にかけてハナミズキ40本を根系切断あり区と根系切断なし区にそれぞれ20本ずつ分け,最後まで生存した各区18本の樹高・枝の伸長量・根元直径・着葉数・光合成能を比較した。その結果,根系切断あり区は根系切断なし区と比べて,樹高が0.41cm低下する替わりに根元直径0.03cm増大した。また,着色剤を用いた吸水実験から切断した側の根が直上の枝に給水していることが確認され,根系切断による吸水障害により根系切断側の枝での着葉枚数が減少した。しかし,個葉レベルでは,一枚あたりの利用可能な水分量の上昇から光合成能が保持されていたことが確認された。以上から,根系切断することにより,街路樹の自然樹形を保持できる可能性が示唆された。
  • -滋賀県長浜市における野生鳥獣被害対策を事例に
    岸岡 智也, 橋本 禅, 星野 敏, 九鬼 康彰
    p. 77-82
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    近年,人間と野生動物の間の軋轢から生じる問題への国民的関心が高まる中で,鳥獣害対策に関する合意形成の重要性が高まっている。本研究では,野生動物被害対策において,野生動物の生息域からの距離による住民意識の空間分布に注目し,生息域からの距離と住民意識の関係について考察を行った。その結果,野生動物に関する知識や駆除への意識は,野生動物の生息域からの距離という空間的要素に従った傾向を示し,これらの傾向は獣種によっても変化することがわかった。鳥獣害対策に関する合意形成を進めるための普及啓発にはメディアの果たす役割が重要であると考えられたが,必要とされる情報の種類は多岐にわたることも示唆された。
  • 徳江 義宏, 大澤 啓志
    p. 83-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    都市近郊域の都市化によって孤立化した公園・保全緑地の樹林地を対象として,クロマドボタル幼虫の生息状況の把握と,地形や樹林地の規模等の環境条件の関係について検討した。鶴見川流域内で29地点の樹林地を調査した結果,6地点の樹林地において生息が確認された。生息の確認があったのは全て谷戸地形を有する樹林地であり,確認の有無と樹林地面積の関係をみると,最小8.7haの規模の樹林地から生息が確認された。またロジスティック回帰分析から,本種の安定的に生息に適した規模の樹林地の面積を予測した。本種の保存においては,谷戸地形と一定規模の樹林地を有する拠点的な緑地の保全が重要であることが示唆された。
  • 番匠 克二
    p. 87-92
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    日光国立公園の戦場ヶ原湿原シカ侵入防止柵には,柵を設置できなかった7箇所の開放部がある。これらの開放部から多くのシカが侵入すると,湿原を保全するという柵の機能が失われてしまう。本論文は,2006年から実施された開放部における侵入防止対策の実施過程を整理し,対策前後のシカの侵入状況から対策の有効性を評価したものである。その結果,河川における侵入防止ネット,道路におけるグレーチング設置と超音波装置設置の3つの対策がそれぞれ有効な対策であったことがわかった。この結果は,他の大規模なシカ侵入防止柵を検討する際に参考となると考えられる。
  • 相澤 章仁, 田代 順孝
    p. 93-98
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では管理計画の策定およびその実施から植生のモニタリングまでをひとつの市民団体が一体的に行っている根木内歴史公園を事例としてとりあげ,その管理システムを構築するまでの経緯を明らかにした。行政主導で市民参加型管理が導入された初期段階では,草刈りに関する意見の対立や,植生管理の手法についての疑問が原因となってメンバー間の意思疎通に障害がきたされていた。月に一度の定例会議を導入することでメンバーの意見交換は活発となり,さらにそこに植生モニタリングを加えることで植生の状況を随時メンバーに報告することのできるシステムが構築された。今後はより客観的なシステムを構築し,科学的側面から管理システムを強化していくことが必要である。
  • 村松 晶子, 勝永 健人, 井関 崇博, 原科 幸彦
    p. 99-104
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年,無作為抽出された市民から参加者を募集する討論会が各地で開催され,情報提供と討論を組み合わせて市民の意見を把握する新しい手法として注目されている。筆者らは地域の将来像選択をテーマに討論会を行い,この手法の特徴である参加者の多様性と熟議を検証した。多様性は母集団との一致性というよりは従来の参加者との違いの点で示された。熟議の結果として得られると考えられる市民意向を,意見変化および確信度から把握した。参加者の選択は,事前アンケートと討論会後で大きく異なり,討論会の効果が示された。また,参加者は確信を持って選択したわけではなく,選択は討論によって変化する可能性があることが分かった。
  • 弓削 龍, 畔柳 昭雄
    p. 105-108
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    本研究では,市民参加による河川管理を実施している地域の市民団体と河川管理者の関係性を明らかにし,今後の市民参加による河川管理のあり方を検討することを目的とする。そのため,市民団体が河川管理に参加している静岡県駿東郡清水町を流下する柿田川を対象にヒアリング調査を実施した。その結果,柿田川の水環境の状況や周辺環境の状況を把握し,関係する問題や課題の改善を図るために市民団体が積極的に活動を行っていることを明らかにした。また,柿田川では複数の市民団体が各々独自の活動を行い,河川環境の維持及び向上のための活動を行っていたが,各団体間で相互の連携体制が構築されてきていることが把握できた。
  • 西前 出, 吉川 郷主, 小林 愼太郎
    p. 109-112
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    地域活性化,情報発信を意図したホームページを開設する集落,自治会等が近年増加している。しかし,農村部等の過疎地域では,HP の運用に携わる人材を確保することが困難であること,また,集落住民の大半を占める高齢者のインターネット利用率が非常に低いことなど,実際の開設・運用における課題が多い。本研究では,京都府北部のN 集落を対象とし,マイクロブロギングサービスを利用したホームページを開設し,過疎集落における情報蓄積と地域活性化の可能性を提示した。ワークショップにおいて,マイクロブロギング利用を住民に紹介したところ,良好な反応が得られた。今後の地域活性化に向けた新たな動きが期待される。
  • -オーフス条約にみる市民参加制度
    大原 有理
    p. 113-118
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    ガバナンスについて論じられる時,市民参加の必要性が謳われてきた。しかし,これまで国家が中心アクターとされてきた国際政治の場において,市民参加は果たしてどの程度の役割を担い得るのだろうか。本稿では,グローバル・ガバナンス論の代表的な論者であるローズノーとヤングの議論をもとに,市民参加の位置づけを検討する。次にヨハネスブルグで行なわれた環境サミットでの市民参加条項交渉から,環境ガバナンスの場において,国家の意図により市民参加が困難となる点を明らかにする。最後に市民参加を促進するための環境条約であるオーフス条約を事例として,制度作りによって市民の主体的な参加が可能になることを示す。
  • -表明選好データとの比較
    藤栄 剛, 松下 京平
    p. 119-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    信頼,互酬性,ネットワーク等の総体であるソーシャル・キャピタルは無形であることから,その定量化が難しい。従来では,アンケートを通じた表明選好データからその資本量が計測されることが一般的であった。本研究の目的は,このように定量化されるソーシャル・キャピタルが経済実験-信頼ゲーム-で観察される個人の行動,すなわち顕示選好データをどの程度説明するかを明らかにすることである。分析結果からは,ソーシャル・キャピタルを構成する信頼および互酬性に関して,表明選好データおよび顕示選好データからそれぞれ定量化される信頼もしくは互酬性の間には乖離が存在することが示された。
  • -インドネシア・チダナウ川流域を事例として
    ヒダヤット グングン, 柿澤 宏昭
    p. 125-130
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    本研究では,インドネシア・チダナウ川流域を対象として,流域保全サービスに対する支払いを実行するうえでの課題を現場レベルに焦点を当てて明らかにした。チダナウ川流域では,取水を行っている水道会社が農民グループと契約を結び,上流域の森林再生・保全のための資金提供を行っている。当初二つのグループを対象に支払いを開始したが,ひとつのグループは違反行為を行い2年後に契約打ち切りとされた。二つのグループの組織・活動状況を検討した結果,適切なリーダーの選定とグループ内の信頼関係の形成が,グループが機能して資金活用による森林保全を実行させるために必要であった。
  • 吉田 晃子, 畔柳 昭雄
    p. 131-136
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    生活環境の快適性向上を図るため,水環境の価値の再認識や日常生活に密着した水利施設を維持するための取り組みが各地で実施されている。こうした水利施設を有する地域では水利用を通じて地域住民間に深い係わりが見られる。そこで本研究では,伝統的水利施設「マンボ」に着目し,水利用形態,水空間の特性及び水を介した住民生活を把握することで持続的な水環境形成に対する示唆を得ようと考えた。その結果,「マンボ」は規範意識の醸成,日常の住民同士の係わりを促す媒体として寄与しつつ,地域資源としても多面的に活用されていることを捉えた。
  • -三遠南信地域を事例として
    高橋 大輔, 戸田 敏行
    p. 137-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    本研究は,流域圏を形成する三遠南信地域を事例として,下流都市住民の上流中山間地への居住・滞在意向や中山間地の都市住民の受入実態等について,下流都市住民と上流中山間地集落へのアンケート調査から明らかにした。結果は次の通りである。上流中山間地集落への「移住」,「二地域居住」,「滞在」の意向を持つ下流都市住民の存在が確認された。中山間地集落では,都市住民の受入実績が確認され,今後の受入意向も高いことが明らかとなった。中山間地への都市住民の居住・滞在の促進には,都市と中山間地が近接している流域圏を枠組みとして取り組んでいくことが有効な方策と考えられる。
  • 木本 一宏, 赤澤 宏樹, 嶽山 洋志, 中瀬 勲
    p. 143-148
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,限界集落の集落移転について,1970年代に全国に先駆けて実施された和歌山県旧大塔村の事例検証を行った。その結果,行政は生活設備・資金の支援や移転事業計画上での工夫などハード面の役割を持ち,住民は共同体意識の醸成や円滑な合意形成を行うなどソフト面の役割と持ったことにより早期のコミュニティ形成に成功したことがわかった。一方で,集落移転のみで限界集落問題に取り組むことは困難であり,今後移転事業を実施する際には,集落の状況に応じて生活支援や活性化などの方策を選択する必要がある。
  • 黄 韜, 石 峰, 費 金玲, 谷川 寛樹, 井村 秀文
    p. 149-154
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    近年,中国は莫大なインフラ整備,特に鉄道や高速道路などの交通部門のインフラ整備を行っている。そこで本研究は,中国の交通インフラとして鉄道及び道路に着目し,1993年から2007年までのマテリアルストックを計算した。その結果,鉄道および道路の鋼鉄,セメント,砂及び砂利のストック量が明らかとなった。鉄道施設については,木材ストックは減少し,鉄鋼ストックは1.5倍,セメントのストックは2.1倍,砂利石材のストックは1.6倍に増加した。一方,道路施設については,鉄鋼ストックが18倍,セメントは2.8倍に増加したことが明らかになった。
  • 太田 絵里
    p. 155-160
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    本研究は,北東アジア地域における5つの環境協力体制の比較分析を行い,本地域における環境協力体制の包括的な現状を把握したものである。研究方法として,文献調査およびインタビュー調査を行った。その結果,5つの体制は独立して活動を実施しており,運営方法や意思決定方法等も体制ごとに異なり,体制間の連携が取れていない傾向がみられた。また,本地域の環境問題の規模と比較した場合,その解決に向けた域内国の実質的な協調的行動の規範の形成に及ぼす影響が未だ限定的であることが示された。さらに,異なる国が協力体制ごとに主導権を取り,参加国ごとに体制への貢献度が異なることが明らかとなった。
  • 佐藤 直樹, ロイ キンシュック
    p. 161-166
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    木質系資材は堆肥化過程において時間がかかるという問題が指摘されている。これまでに堆肥化装置の利用や大規模な堆肥化により時間の短縮をする研究が行われているが,普及という点で課題が残る。そのため本研究では,木材チップと落ち葉に,発酵鶏糞,米糠,菜種油粕を副資材として加えた原料に,発酵促進剤として木酢液や廃糖蜜を利用することで,小規模で機械を使わない木質系資材の堆肥化時間短縮の有用性を検討した。その結果,堆積物内の温度が堆肥化に必要な温度まで上昇した。また,発酵促進剤を加える事により温度が維持された。廃糖蜜を利用した区は,3ケ月でC/N比測定試験,4ヶ月で幼植物試験において完熟したと判定できた。
  • 松村 隆, 武田 雄志
    p. 167-172
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    水質事故情報の都道府県による公表状況を調査するとともに,今後の情報整備の方向性を検討した。47都道府県のうち74%の35自治体で水質事故に係る何らかの情報が公表されていた。しかし内容は限定的で,35自治体のうち4自治体では法制度の解説など概括的な情報に止まっており,残りの自治体でも地域住民に対する潜在的な環境リスク情報の公表が少なかった。水質汚濁防止法に基づく事故時の措置に関する届出数データと今回取りまとめた水質事故件数を比較すると,届出数の約3~70倍の水質事故が報告されており,工場事故の場合と同様に,利水被害などにつながる重大事故の背後に多数のヒヤリハット事例が存在していることが推測された。
  • 木科 大介, 高橋 岩仁, 小野 隆幸
    p. 173-176
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
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    2段階メタン発酵の効率化を目的に,酸生成過程から菌株の分離培養を行った。分離菌株は純培養したのち,増殖能力および代謝能力の比較から有用菌株の選定を行った。その結果,分離培養により酸生成過程から38株の分離菌が得られた。また,得られた分離菌株の純培養による比較結果から,No.24およびNo.28は他の菌株に比べ優れていた。以上のことから,この菌株は酸生成過程に適した有用菌株であると選定した。
  • 野本 哲也, 松橋 隆治, 吉田 好邦
    p. 177-182
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,アンケート調査を行い,消費者選好を把握することにより,カーボンオフセットに利用されるようなオフセットクレジットの価値決定要因(プロジェクト種類・地域、認証ラベル)について分析を行った。また,そのような価値決定要因に対して,消費者の属性および環境意識(省エネ意識,環境購買行動,環境情報感度)が,どのように影響を与えているのかについても評価を行った。これにより,環境購買行動の意識がカーボンオフセット利用に大きな影響を与えていることが確認された。また,国内対策プロジェクト推進を目的としたカーボンオフセット制度の普及可能性が期待できることを,消費者選好より確認することができた。
  • 孫 穎, 渡邉 雅士, 藤田 壮
    p. 183-188
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    地球環境問題が深刻化する中,中小企業による環境経営への対策が大きな課題となっている。本研究では,川崎市の中小企業を対象としたアンケート調査の結果に基づき,共分散構造分析を用いて,中小企業における環境配慮型経営の促進要因と実施の因果関係モデルを構築した。その上で,中小企業における環境配慮型経営の推進構造を検討した。その結果,中小企業の環境配慮型経営は,省・再資源に係る国内法規制および各種マネジメント施策の推進や世界的動向などによって促進されてきたことが明らかになった。また,中小企業の環境配慮型経営が,組織体制の変革やステークホルダーとの協力を通して,表面的・限定的対応から本質的かつ能動的なものに転換しつつあることが示唆された。
  • 栗林 美紀, 亀山 康子
    p. 189-194
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    企業における環境管理活動及び社員の雇用制度が企業の経営に及ぼす影響の有無,また影響がある場合には影響が及ぶ方向性を明らかにすることを目的として,一般機械器具製造業51社のデータで共分散構造分析を用いて分析した。その結果,環境報告書,環境会計などの環境情報の早期からの開示や充実した雇用制度の提供が,企業価値に対してプラスの因果関係を持つことが示された。また,この定量的な結果を定性的に説明するために,上記分析の対象企業の一部にインタビュー調査を実施した結果,環境会計まで取り組んでいる企業は,環境情報や雇用制度に関する情報の公開が,市場に評価されることを意識して取り組んでいることが分かった。
  • 武田 重昭, 西川 文香, 加我 宏之, 下村 泰彦, 増田 昇
    p. 195-200
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は居住者の緑地環境に対するマネジメント意識から,ニュータウン再生の方向性を探ることを目的とする。公園や緑道などの公的な緑と身近な住宅地の私的な緑が評価されており,それぞれの価値や効果を相補的に高めていくことが有効であると考えられる。また,地域の交流活動や文化活動の場として活用することや,多様な主体の協働によって,ハード的要素とソフト的要素の価値を相乗的に高め,新たな価値を生み出していくような緑地環境マネジメントが求められる。そのためには,緑地環境に対する積極的な関わり方を望む居住者層を中心に活動を誘発することによってマネジメント方法の多様性を高めていくことが有効である。
  • 高橋 岩仁, 木科 大介, 鈴木 紀裕
    p. 201-206
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,上水汚泥,下水汚泥や建設廃材などの廃棄物を屋上緑化の基盤材として有効利用することを目的とし,芝の生育状態の視的観測などから,それらの廃棄物の適応可能性を検討した。基盤材は,上水汚泥とコンポスト化した下水汚泥を主原料とし,これに土壌改良材として木炭,木材チップ,スギ皮および軽石を配合した。その結果,降雨時の排水の水質,さらに屋上緑化に重要な最大積載荷重など十分にクリアしており,廃棄物を用いた屋上緑化の基盤材としての有効利用の可能性を示した。特に,今回用いた土壌改良材の中には,木炭が良好であった。
  • 村上 一真
    p. 207-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    森林環境税の影響による,県別の森林ボランティア活動への参加状況の違いを明らかにするため,森林環境税が導入されている県の住民にアンケートを実施し,県別の森林ボランティア活動の意思決定に係る構成要素の水準の差を一元配置分散分析により明らかにし,その要因としての意思決定モデルの検証とパス係数の違いを,森林環境税の影響を踏まえ,構造方程式モデルの多母集団同時分析による検証した。そして,森林環境税が「関心→動機→行動」という意思決定プロセスに影響を与えるとともに,「動機→行動」の関係性の違いや森林環境税の影響力の違いが,県別の森林ボランティア活動への参加水準の差異につながることを示した。
  • -日本の産業部門における森林生態系サービス利用のマクロ分析
    ロバート ショー, 松井 孝典, 町村 尚, 加藤 悟, 盛岡 通
    p. 213-218
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,白然生態系と産業の生態系サービスを通じた結合のESU: Ecosystem Service Use フレームフークを紹介する。森林生態系を対象として,その結合を評価し,産業連関分析等との連携を行うことで目本の32産業部門ごとのESUの傾向を分析した。「パルプ・紙・木製品」部門以外,森林の調整サービスが供給サービスより上回り,第一産業やエネルギー関係部門が高い直接・間接なESU値を示せた。本分析により産業セクターが生態系に関連する意思決定を行う際に生態系との相互作用を評価することの重要性が示唆された。
  • ―予備的考察
    長谷川 路子
    p. 219-224
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    環境問題に取り組む企業に対する労働市場での評価が企業の自主的な環境配慮を促す可能性について考えることを目標に,本研究では,アンケート調査を行い,大学生が就職活動時に企業の環境配慮を考慮しているのか否か実態を把握することに努めた。その結果,企業の環境問題への取り組みが応募理由となった人,また,就職活動の途中までは企業の環境配慮に目を向けていたが応募理由とまではならなかった人の存在が確認された。そして,この二者の間では,環境問題に積極的に取り組んでいる企業であると判断した理由や環境問題に積極的に取り組んでいる企業から受けた印象などに違いのある可能性が示唆された。
  • 高橋 卓也
    p. 225-230
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    誘導的環境政策の手法として環境格付け融資を位置づけることができる。実際, 1990 年代よりいくつかの事例が日本においても見られるようになっている。しかし,融資を受ける側となる企業の実態は明らかになっていない。そこで,環境に配慮した金融活動が盛んであると考えられる滋賀県において,融資対象となる可能性のある一般企業を対象としてアンケート調査を行い,一般企業の環境格付け融資に対する見方(態度)を探った。その結果,一般的な認知度,および認知度・同融資利用希望の有無・金融機関への期待度と企業の類型との相関等が明らかになった。環境格付け融資を拡大するためには,特定の環境配慮行動への着目等の必要があることが示唆される。
  • -北海道のEMS導入企業を対象にした試み
    興村 美貴子, 松井 孝典, 町村 尚, 盛岡 通
    p. 231-236
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は中小企業のCSRの推進指針発見を目的とし,環境マネジメント規格を導入している北海道企業の内部統制とCSR取組み活動との関連性をアンケート調査で分析したところ,製造業と優良企業を除いて「内部統制と環境管理」との相関が認められた。製造業は「内部統制と環境面成果」との相関が認められたが,優良製造業ではそれが強い負の相関になった。業種間の違いを起こす要因は,「時間」「経費」「事業の方向性」であり,CSR成果に最も影響を及ぼすのは内部統制という結果を得た。
  • 吉田 登, 山本 祐吾, 盛岡 通
    p. 237-242
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,都市下水の処理に伴い安定的に発生する廃棄物系バイオマスである下水汚泥を対象として,下水処理場における下水汚泥由来の再生可能燃料に対する認識や受容性についてアンケート調査をもとに分析を行った。下水処理場の約半数が下水汚泥のエネルギー利用目標への認識,将来的なエネルギー利用を含めた検討意向の見通しを示した。汚泥のエネルギー利用に対する負担受容額は,処理場全体の加重平均で燃料価値の半分程度にあたる約1,100 円/脱水汚泥トンとなった。流域下水道を中心とする大規模な処理場において比較的高い受容性が認識されるなど,異なる認識構造が示された。
  • -路上放棄車処理協力会を事例に
    淺木 洋祐
    p. 243-248
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    路上放棄車処理協力会は,不法投棄された使用済自動車の撤去・処理を行う地方自治体に対して,自動車メーカーの負担に基づく寄付を行っている。本研究では,地方自治体に対するアンケート調査などから,これまで明らかにされてこなかった路上放棄車処理協力会の寄付の実態を分析した。実態分析を踏まえて,寄付制度を,汚染者負担原則や,ピグー税などの環境政策の観点から,効率性と公平性についてその評価・検討を試みた。その結果,路放協の寄付制度は,公平性と効率性についてより好ましい結果をもたらし,かつ,不法投棄の原状回復をスムースに進めている点で評価できる。
  • 恒見 清孝
    p. 249-254
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,日本,タイとフィリピンのそれぞれの国内の鉛のマテリアルフローと環境中への鉛排出量を定量的に示した。その結果,日本では廃棄された鉛含有製品の約7割が物質回収されているのに対して,タイとフィリピンでは約9割が物質回収されていることを明らかにした。また,各国で鉛精錬段階,市中ストックからの大気や水域への排出が主要な発生源であるが,特にタイでは不法セクターによる鉛精錬時の排出量が大きく,その地域でのヒト健康リスク評価の必要性があることを明らかにした。
  • 太田 貴大, 林 希一郎
    p. 255-260
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    サービスエリア(あるバンクのミティゲーションクレジットが販売可能な地域)の境界の決定は,バンク所有者の経済的要求と生物多様性保全政策の利害を左右する。本研究では,カリフォルニア州の53のコンサベーションバンクと135枚のサービスエリア地図を比較分析し,サービスエリアの現状と,その境界決定要因の分類を行った。また,B-S比(バンクの面積/サービスエリアの面積)という指標を用い,経済と環境の均衡状態を評価した。2003年の連邦ガイダンスに基づいて,保護増殖計画単位(Recovery Unit)が最大の決定要因だった。B-S比は2000年以降上昇していた。サービスエリアも含め,この値は,今後一定になると推測される。
  • 高井 亨
    p. 261-266
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    全国47都道府県について,1990年から2007年にかけての一人当たり二酸化炭素排出量変化率と一人当たり県民所得変化率を用いて,デカップリング状態の判別を行った。また恒等式を用いた要因分解を行い,一人当たり県民所得の変化率・エネルギー強度の変化率・炭素強度の変化率が一人当たり二酸化炭素排出量の変化率に及ぼす影響を評価した。そして,一人当たり県民所得の変化率・エネルギー強度の変化率・炭素強度の変化率がデカップリング状態に与える影響を明らかにした。分析の結果,″Absolute good decoupling″が生じていた県は4つあり,エネルギー強度の変化率と炭素強度の変化率はいずれもマイナスであった。
  • -消費者のリスク選好と時間選好に着目して
    松下 京平, 藤栄 剛
    p. 267-272
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年,農業分野において生産性向上と生物の生息環境の保全の兼ね合いが関心を集めている。本研究は,消費者のリスク選好・時間選好に着目し,それらが両者の兼ね合いに対する消費者意識に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。本研究では大学生を対象に確率付きクジを用いた経済実験を行い,被験者のリスク選好・時間選好に関するデータを入手した。さらにアンケート調査により被験者の個人属性を把握し,それら諸要因と農業のあり方に対する消費者意識との関係を検証した。時間選好およびリスク回避度と被験者の保全意識の間に有意な関係は見出されなかった一方,損失回避度と保全意識の間には正の相関が見出された。即ち,損失回避的な主体ほど農業の生産性向上よりもそれにより引き起こされる環境劣化に対して回避的な態度を示すことが分かった。
  • 永井 祐二, 永田 勝也
    p. 273-278
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    市民の環境配慮行動に経済的インセンティヴを付与するシステムとして,近年複数の自治体でエコポイントや環境活動に特化した地域通貨の導入などの事例が見られる。本研究では,北九州市・新宿区・高知県でのポイントや通貨を通じた環境負荷の削減の取り組みを基に,それぞれの行動によって付与された市民の経済的インセンティヴと,行動により期待される環境負荷の削減量との相関関係についての考察を行う。また,環境負荷削減効果の可視化の取り組みについて,その手法を報告すると共に,こうした取り組みを通じて,市民の環境活動が促進される仕組みの要点を整理する。
  • 島崎 光清
    p. 279-284
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    20世紀の環境史を足尾,日本,世界の区分ごとに配置して対比すると,歴史的変化に類似性がみられる。足尾の環境史も世界の環境史の影響を受けていることが分かる。歴史の進展に前進性と循環性があるが,環境問題の歴史の前進性として環境問題の空間の拡大がある。現在の環境問題の国際化に対応する。また環境問題の歴史の循環性として,産業革命時の鉱害問題とまったく同一ではないが発展途上国に鉱害問題が現存する。
  • 耿 欣, 高 若飛, 章 俊華
    p. 285-290
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,中国・燕京八景について,調査資料に基づき,燕京八景の各風景と8つのまとまりとしての見方がどのように変遷してきたかを分析し,その特徴の考察を行った。その結果,燕京八景は成立,発展,繁栄,衰退,再建の変遷課程を経てきたことがわかった。変遷では首都としての北京において,少数民族であった支配者が漢文化に傾倒し,王朝の交代と戦争を経て,遺跡と伝統文化の保全及び環境意識の変化と密接な関係を持ちながら変化したことがわかった。徐々に多様化してきた風景表現が燕京八景の存続に重要な役割を果たしたことがわかった。体験者,認識者及び風景の性格の変遷からは,最初の燕京八景は支配者階級が見出した風景文化であったものが,後には一般の庶民が体験,理解できるものになったことがわかった。
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