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―三重県伊賀市を事例に
本田 恭子
p.
1-6
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本稿は三重県伊賀市K
集落を事例に,中山間地域における小規模な農業水利施設の維持管理の変容を明らかにした。その結果,水需要と農業者数の減少に伴い用水管理組織の機能が失われていること,および(
ⅰ)
管理区間の長さに比しての維持管理作業参加者の少なさ,(
ⅱ)
複数の管理区間の維持管理作業への参加,(
ⅲ)
作業への機械導入の困難さ,(
ⅳ)
水利施設の修繕費の負担問題を背景に,維持管理作業にかかる農業者の負担が増加していることを明らかにした。また,農地や水利施設の持つ景観・防災機能の評価の向上,あるいは維持管理作業と地域行事との一体化によって,農業者以外の住民の作業への協力を促せる可能性があることを指摘した。
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松本 剛, 原 祐二, 三瓶 由紀
p.
7-12
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
近年,都市郊外商業施設においても緑化空間創出が進んでいるが,それらの存在意義や利用者が緑地へ求める機能の検証は少ない。本研究は和歌山市郊外の商業施設緑化空間を対象として,設計者へのインタビューにより設計段階で期待された機能・効果ならびに,アンケートにて利用者の行動・効果の認知度を明らかにし,両者の関係性の把握を行った。その結果,設計者が緑化空間に設計段階で期待した眺望を楽しむ・散策などの機能は,利用者の実際の行動として発現していた。土地の自然環境を配慮したデザインについては,利用者の認知度は低く,これは設計者側の自然イメージが和歌山県域に一般化されていたことも一因であると考えられた。
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-藤沢市における自然環境実態調査を事例として
島田 正文, 葉山 嘉一, 大澤 啓志, 間野 伸宏, 岩野 秀俊
p.
13-16
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究は,藤沢市で行われた「藤沢市自然環境実態調査」を事例に,地域の生物に関する専門知識を有する市民と研究機関,行政の協働による調査の有効性について実証的に追求したものである。その結果は以下のようにまとめられる。協働の各主体は,調査方法や調査結果の解析・評価に至る全般に渡って関わった。特に,日本大学などの研究機関は,生物の分類群ごとの意見調整から調査全体のとりまとめに至るまで,各主体間の合意形成への中心的役割を果たした。本研究では,組織された3 種類の会議体を通じて,調査方法や結果の活用方法等が主体間で共有化されるなど本調査方法の有効性,調査の持続性等に関わる今後の課題が把握された。
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宮地 俊作, 馬谷原 武之, 對馬 孝治, 笹田 勝寛, 河野 英一
p.
17-22
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
カタクチイワシの栄養段階(TL
)を炭素・窒素安定同位体比(δ
13C
・δ
15N
)を用いて推定した。本種のδ
15N
は外 洋域で低く,相模湾(
沿岸域)
で高かった。δ
15N
とTL
の試料内変動は沿岸域で大きく,外洋で小さかったが,沿岸と 外洋で平均TL
はそれぞれ3
で変わらなかった。しかしながら,外洋域と沿岸域ではδ
13C
に有意差があった。したがって,両者は食物網の起点が異なると判断され,食物網構造にも違いが生じたと考えられた。さらに,相模湾は回遊魚である本種の沖合個体群が来遊することで複雑な食物網構造を示した。
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伊藤 政博, 馬場 慎一
p.
23-28
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
東北地方太平洋沖地震津波が浸水した宮城県の海岸林を対象に,津波による海岸林樹木の被災(立木と倒木),津波浸水深,樹径,年輪および樹高などを現地調査した。この調査結果に基づいて,海岸林内の津波浸水深,海岸林の樹径と樹高,立木あるいは倒木,および海岸林の生育の度合いについて相互の関係を検討した。その結果,津波に対して倒れることなく生育していた海岸林樹木の樹径と樹齢が明らかになった。
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小島 仁志 , 黒田 貴綱, 島田 正文, 勝野 武彦
p.
29-32
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では,希少湿生植物であるミズニラの生育地の確保を目的に,流水環境下への移植の検討とその生育・発芽特性について調査した。その結果,本研究において移植を行った湧き水を水源とする流水環境への移植が可能であった。また移植地における環境条件および管理有無毎の生育・発芽状況では,流水環境において50%遮光環境が好適であり,さらに対照とした滞水環境との比較から,綿密な管理作業がなくとも生育・発芽が確保されることが示唆された。流水環境が移植地として,さらに管理軽減の観点からも有用な本種の移植地の一つであることが推察された。
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高山 範理
p.
33-36
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
環境がもたらす主観的な活力感の向上効果を簡便に調べるため,SVS
(Subjective Vitality Scale;
活力感指標)の日本語版(SVS-J
)の開発を研究目的とした。オリジナルのSVS
(英語版)を翻訳後,計168
名を被験者として,室内実験(実験①)および屋外実験(実験②)を実施した。実験①では,室内にて123
名の被験者を,約15
分の森林環境を記録した動画に曝露した。曝露前後でSVS-J
への回答を求め,集計後に信頼性・構成概念妥当性を検討した。実験②では,屋外にて45
名の被験者を,約30
分実際の森林環境に曝露し,その前後でSVS-J
を含む数種類の調査票への回答を求めた。集計後に他の調査票との相関を調べることでSVS-J
の基準連関妥当性の検証を行った。検討の結果,SVS-J
の妥当性・信頼性が確認されたことで,今回開発したSVS-J
は,単に簡便なだけでなく,実用に耐えうる調査票であることが示された。
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金 睿麟, 大野 暁彦, 三谷 徹
p.
37-42
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究は,韓国別墅庭園からの眺望景観の特性を,可視領域の把握と分析を通して明らかにすることを目的とする。湖南地方の5 庭園に対し,現地調査,GIS 分析および景観シミュレーションを行い,庭園視点場の別墅建築主軸方向の可視領域とその景観の特性を定量的に分析する。その結果, 以下の知見を得る。(1) 既往研究が指摘する外園より広い可視領域が庭園景を形成する,(2) 景観特性要素の特徴から「山岳仰観型」と「平野俯瞰型」が認められる,(3) 山岳が重なり合い囲繞する山容景観が共通する特徴として認められる。以上の景観特性は別墅庭園において定量的に認められるものであり,この特性を与える可視領域の山容景観の保全が求められる。
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高橋 富美, 松浦 由布子, 武田 重昭, 加我 宏之, 増田 昇
p.
43-48
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究は,大阪府八尾市でアンケート調査を行い,各種団体の都市農地の活用意向を明らかにし,都市農地の新たな担い手となる可能性を探った。学校・社会福祉法人は自然学習等の教育や福祉の場として利用する意向が高く,特定非営利団体・市民活動団体は,各団体の活動内容や目的に応じて利用意向の内容が多岐にわたる傾向にあること。株式会社は一部であるが,福利厚生の場に加えて新規農業分野への参画や社会貢献活動の一貫としての活用意向が存在することが明らかとなった。今後は,団体種別に応じて意向や活用形態が異なることから,ニーズに応じたベストマッチングを図るなど,多角的な都市農地の保全・活用方策の展開の必要性が示唆された。
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―寺院茶の歴史を有する茶産地の文化的景観に関する研究
楊 真, 下村 彰男
p.
49-54
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究は寺院起源と言われる茶産地の京都府宇治市を研究対象として,明治中期以降の土地利用および茶生産量の変化を分析し,宇治市の茶畑の変遷過程の解明および寺院茶を起源とする茶産地における文化的景観の特質について考察することを目的とした。その結果,(1)明治23 年から平成18 年にかけて宇治市の茶畑面積は顕著な減少が見られた。(2)昭和30 年を境に,茶畑の分布位置は大きな変化があったことが確認された。(3)各時期により,茶畑と周辺土地利用の関連も変化したことが明らかになった。 以上より,宇治市の文化的景観を保全する際に,要素の選択についても再検討していくことが求められる。
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-滋賀県高島市の森林資源活用事例を対象に
木村 道徳, 熊澤 輝一, 岩見 麻子, 松井 孝典
p.
55-60
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
地域活性化やまちづくりにおいては,地域資源を有効に活用するために,地域住民と地域資源のこれまでのかかわりを把握する必要がある。本研究では,滋賀県高島市を対象に,森林資源を活用する団体に対して半構造化インタビューを実施し,記録したテキストデータを,自己組織化マップ手法と対応分析を用いて可視化することを試みた。その結果,各団体が持つ関心テーマを特定することができ,活動内容などによって関心テーマが異なることがわかった。
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野田 萌, 薗部 礼, 谷 宏, 王 秀峰, 小林 伸行
p.
61-66
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
合成開口レーダ(SAR
)によって取得した複数の偏波データを活用して散乱成分を分解する手法が提案されている。本研究ではTerraSAR-X
によって取得された2
重偏波データ(HH/VV
)にm-chi Decomposition
を適用することにより,散乱成分を3
種類に分解した。そのうち2
回反射成分を用いることによって,移植栽培の稲作付地に対しては0.79
,直播栽培の水稲作付地に対しては0.60
,両方をまとめた場合は0.70
の決定係数で自然草高を推定するモデルを作成することができた。多くの植物において,主要な散乱パターンとして認識されている体積散乱成分と自然草高間の決定係数は0.32
から0.48
であり,2
回反射成分ほど良好ではなかった。これはX
バンドマイクロ波に対するイネの応答特性を示すものである。
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小林 伸行, 薗部 礼, 谷 宏, 王 秀峰
p.
67-70
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
マイクロ波リモートセンシングを用いると農地に関する多くの情報を収集することが可能であり,関連した技術が農業分野における土地や水資源の管理のために活用されている。さらに,受動型センサと異なり,合成開口レーダ(SAR
)は大気や天気による影響を受けないため,多時期のデータの解析に向いている。本研究では,作付体系が異なる2
種類の水稲作付地及び小麦作付地(計3
パターン)の抽出を目的に生育期に観測された6
時期のTerraSAR-X
二重偏波データを使用した。k-means
法によるクラスタリングによって,作付状況を確認した99
筆の圃場に対して,90.0%
の全体精度でこれら3
パターンを識別可能であることを明らかにすることができた。
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淺野 悟史, 西前 出
p.
71-76
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究の目的は,植物体の変化量を非破壊的に推定する上で,SfM-MVS
システムによって出力されるDSM
と,これを用いた植物体の体積の推定における課題を明らかにすることである。アラカシの伐採萌芽株を3D
モデル化した実験により,高精度のDSM
データを得ることができた。これを用いてサーフェスの体積を推定したが,形状の特徴によって過大評価を招くことが明らかになった。3
次元データの出力形式の多様化が望まれる。
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鈴木 哲也
p.
77-82
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
コンクリート構造物の詳細な性能評価は,力学特性に代表されるコンクリート物性により評価される。本研究では,X線CT 法を用いてコンクリート中に発達したひび割れ損傷の特性について検討した結果を報告する。供試したコンクリート・コアは,既設の農業用コンクリート製開水路から採取したものであり,凍害損傷の影響が顕在化していた。実験的検討では,1mm 間隔でのX 線CT 計測を実施し,空間統計指標である集中度指数を用いて評価した。検討の結果,評価指標はコンクリート中に内在するひび割れ損傷と密接に関連していた。このことから,X線CT 計測によるコンクリート損傷の検出が可能であることが示唆された。
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山口 創
p.
83-88
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では,
在来品種を地域資源として活用する方策を考えるため,
薦池大納言,
ハリマ王にんにく,
ひめじえび芋の3
事例を調査対象とし,
在来品種の顕在化プロセスを明らかにした。結果,
第一に顕在化は生産者の組織化がおこなわれ地域ぐるみで取組む場合と,
個人生産者が取組む場合で展開プロセスが異なること,
第二に,
顕在化は在来品種の活用に興味をもった外部者との交流がきっかけとなって始まること,第三に,種子管理体制の構築,販路確保が要因となり生産者数や栽培面積が拡大していくことが示された。さらに,事例間の比較から地域資源として活用する上での要点や課題も示された。
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大石 卓史
p.
89-94
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では,因子分析およびクラスター分析を用いて,生物多様性に配慮した農業に対する都市住民の価値認識とその特徴について分析を行った。因子分析により,生物多様性に配慮した農業への理解の高さを示す因子や支持・協働の意思を示す因子,商品購入時の配慮型行動を行う意向を示す因子等,計 6
つの因子を抽出した。また,クラスター分析により,回答者を5
つのクラスターに分類した後,クロス集計及び独立性の検定を行い,各クラスターの間で様々な差異があることを明らかにした。生物多様性に配慮した農業の取り組み進展のためには,取り組みを支持する可能性が高いと思われる層を中心に,効率的・効果的なマーケティングを展開することが重要である。
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島本 由麻, 鈴木 哲也
p.
95-100
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では,トマトの道管内での流況をAE
法により計測した。AE
法による作物の水分状態計測の精度向上を目的とし,減衰特性を考慮した気泡運動モデルにより算出される周波数分布と検出波の周波数分布とを比較した。検討の結果,検出波の周波数において,実測値と減衰を考慮して算出した解析値とが類似することが明らかになった。このことから,減衰を考慮することでAE
計測の精度が向上することが示唆された。
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鈴木 朝道, 松本 文子
p.
101-106
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
現在,農村地域においては,中山間地域を中心とした過疎化および高齢化の進行に伴い,農地・農業用水路等の地域資源の維持保全が困難に陥っており,農作物の生産や,地域資源のもつ多面的機能の発揮に影響を及ぼしている。本研究の対象とする兵庫県東条川地域では,大規模な疏水ネットワークの歴史を背景に,疏水を地域資源として活かすアートツアーを実施することで,疏水について人々の興味関心を喚起し,認知度の向上を目指している。本研究では質問紙調査によってその効果の分析を行った。その結果,疏水への興味が疏水の維持管理意識において,重要な要因であることが明らかになり,疏水への興味を高めるアートツアーの有効性が具体化された。
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宮守 代利子
p.
107-110
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
安曇野の里山農業地帯に廃棄物の中間処理施設が出現した。地域住民は大気汚染や水質汚濁などによる環境悪化を恐れて反対運動を開始し,住民の一部は,県や市に操業の許可取消を求める行政訴訟, 業者に不法行為にもとづく損害賠償と人格権および財産権を根拠とする操業の差止めを求める民事訴訟を 提起した。運動の趣旨は環境保護の主張であり,住民の多くは先祖から承継した里山農業環境を次世代に 引き渡す義務があると考えている。しかし,裁判では正面から環境権を主張できない。安曇野の里山農業 環境と住民の自然観にもとづいて,環境権や自然の権利と里山農業環境を持続させる権利との関係につい て考察する。
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包 薩日娜, 星野 敏, 鬼塚 健一郎
p.
111-116
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では,中国北京近郊農村地域を事例として,インターネット利用者を対象に,インターネットの利用内容や満足度とそれらの関連性について検討した。その結果,事例地区の農村地域住民が「検索」や「オンラインショッピング」を利用している特徴が明らかになり,インターネット利用の満足度について,「仕事改善」や「生活質改善」が重要であるが,満足度が低いことが明らかになった。また,利用内容と満足度が関連していることが明らかになった。
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小林 舞, レカ チェトリ, 深町 加津枝, 柴田 昌三
p.
117-122
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
何世代にも渡りブータンの農家は,森を管理し落ち葉を集めて農業に利用してきた。これは畑作-
畜産複合システムにおける重要な肥料資源で,今日も続いている。増産と作物多様化への試み,有機農業政策,森林の所有権・使用権に関する法の改正が,落ち葉集めの伝統に影響を与えている。 本研究では2014
年1
月から3
月と10
月の二回,社会経済的条件と農業の特性の異なるブータン西部 3
地域で世帯単位のアンケート調査を実施し,落ち葉収集,化学肥料の使用,農耕地の増減に関する農家の意識を分析した。その結果,農家がどのように増産,土壌の肥沃度管理に対処しているかに地域の特性が見られた。またそこから,伝統的資源利用の今日の変遷も展望できるだろう。
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時任 美乃理, 西前 出, 淺野 悟史
p.
123-128
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
ベトナム社会主義共和国では,ベトナム戦争後大規模に行われた少数民族の定住化政策や森林分配事業によって土地利用形態が大きく変容しており,中部山岳地域では多くの少数民族農村においてアカシア林業のモノカルチャー化が進んでいる。本研究では,少数民族農村を対象とした世帯単位での悉皆聞き取り調査と統計分析によって,住民の生業構造の特徴を精緻に抽出し,生活の困窮化や生業の脆弱化といった課題を検討した。その結果,アカシア林業に特化した土地利用を行っている構造と,それによって住民が抱えている潜在的リスクが明らかになった。さらに,自家消費用作物の不足やアカシア林業に依存した副次的な生業活動の存在が明確化された。
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樊 磊, 今西 純一, 深町 加津枝, 柴田 昌三
p.
129-134
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
中国吉林省の朝鮮族村落では、1981
年の「吉林省東部山間部の生産と建設の促進に関する決定」により、集体林以外からの薪材採集が禁じられ、琿春市では伝統的な薪材利用システムが変わった。本研究は朝鮮族村落の薪材利用を再び満足するために、薪材利用の現状と集体林の現在の役割を解明することを目的とした。薪材利用の現状に関する聞き取りとアンケート調査、薪材採集の場所に関する参与観察、および利用可能な集体林に関するマッピングの分析を行った結果、労働人口の不足、モンゴリナラの利用傾向、近隣の森林からの薪材採集、国有林の保全、の四つの要因をふまえ、集体林の中に公共的な薪材林を新たに設置する必要性が考察された。
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石田 純也, 阿部 直也, Pandyaswargo Andante Hadi
p.
135-140
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
電気自動車(EV)普及を検討する際,寒冷地や山間地では,低温と高温による空調機器利用の増大や急な傾斜の道路における走行により消費電力が増大し,普及阻害要因の一つである航続距離の短さが強調されることが想定される。これら気温や土地の傾斜は政策によって変更できない要因である。本研究は,市区町村単位における分析の結果,気温が低くなることでEV の普及が阻害されている可能性を確認できたが,傾斜の普及状況に対する影響に関しては統計的な有意性を得ることができなかった。この結果より,例えば補助金によるEV の普及政策について気温による地域性を考慮する場合,全国一律的にEV 普及を図ることが望ましいわけではないことが示唆された。
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田中 孝典, 徳安 達士, 松本 慎平
p.
141-146
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
歩行空間の快適性およびユニバーサルデザイン等への配慮から,デザインや色彩等に工夫を施した舗装が歩道に用いられているが,歩行者の歩きやすさに影響を及ぼす歩道舗装における路面の硬さについては明確な数値的基準は示されていない。本論文では,歩行者の足首関節周りに作用する衝撃加速度の測定値および被験者の意識調査から,路面の硬さの違いによる加速度波形について比較・検討を行った。 その結果,測定した加速度波形および被験者の意識調査から歩道路面の硬さを感知している被験者の加速度波形には特徴がみられた。
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長谷川 卓也
p.
147-152
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
燃料電池自動車(FCEV)
は,電気自動車(BEV)
に続く次代のゼロエミッションビークル(ZEV)
として近年注目を集めている。しかしその商業化は容易ではなくまだ大きな成功を収めるには至っていない。 本研究では,イノベーションに関するSchumpeter
理論を援用・拡張することによって過去の破壊的イノベーションが新商品の経済発展に必要なイノベーションを停滞・欠落させるメカニズムを提案した。また,ここから予想される過度の期待を定量化するため,学術論文を対象としたメタアナリシスを実施し個々の将来予測に関わる前提を分析した。その結果,FCEV
の普及年を特定した学術論文が2006
年頃から急激に増加することが明らかになった。この結果から学術論文に関する産業界の認識ギャップについて考察した。
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尾﨑 平, 盛岡 通
p.
153-158
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
神戸市内の家庭用燃料電池システムが導入された戸建て住宅世帯に対して導入前後の電力,ガス消費量に関する調査を行い,比較対照として,同システムが導入されていない世帯も調べ,同システムの導入による一次エネルギー消費量,二酸化炭素排出量の削減効果を検討した。結果,最も削減量が少ない 8
月でも二酸化炭素排出量を13%
削減できることを確認した。さらに年間のCO
2削減量を推定し,オフセット・クレジット制度に基づく貨幣価値と比較した結果,導入補助費用以上の効果があることを示した。
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菱沼 竜男
p.
159-164
発行日: 2015年
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
豚肉生産システムの環境側面を定量的に評価するために,LCA 手法を用いて温室効果ガス排出量を推計した。特に,肥育豚の生産段階だけでなく,と畜・加工,小売を含めた流通段階をシステム境界として豚肉生産システムの評価を行った。温室効果ガス排出量は,肥育豚1 頭(110kg)当たり599.4kg-CO2e,豚肉(精肉)1kg 当たり11.12kg-CO2e と推計された。各プロセスの温室効果ガス排出量に対する寄与率は,飼料生産が21%,飼養管理が12%,ふん尿処理が35%,と畜・加工が2%,小売が30%であった。
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小澤 暁人, 吉田 好邦
p.
165-170
発行日: 2015年
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では家庭用燃料電池CGS
を対象に,電力・給湯需要の不確実性を考慮した場合の最適運転モデルを開発した。確率動的計画法によって運転計画を2
通りの運転状態(最小出力・電力追従)の組み合わせで表現し,24
時間後までのエネルギーコストの期待値の総和が最小となるように運転計画を決定する。異なる種類の燃料電池による年間コスト・CO
2 排出量を比較した。 さらに既往研究モデルとの比較から,需要の不確実性による影響を示した。
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白井 浩介, 栗栖 聖, 齊藤 修, 荒巻 俊也, 花木 啓祐
p.
171-176
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
離島は閉鎖性,隔絶性により独自の特性があると考えられるため八丈島をケーススタディとしてマテリアルフローを調査することでその特性を定量的に把握することを目的とした。用いる数値は統計資料だけでなく,各事業所への直接の聞き取りを行った。結果は,砂浜維持のための砂利・砂等の鉱産物により重量で約10 倍の移入超過であり,一人一日当たりごみ排出量も1,394(g)と全国の値975(g)と比べ大きかった。汚泥,建築廃材はほとんどが循環利用されているが,一般廃棄物については島内にリサイクル施設が存在せず,資源ごみはすべて島外へ移出されていた。以上より八丈島は物質循環性が低くなってしまっていることが明らかとなった。
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伊坪 徳宏, 正畠 宏一
p.
177-182
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
PET ボトルのライフサイクルを対象として,日本に流通するバイオPET ボトルの生産,充填に関わる一次データに基づき,ブラジルのサトウキビ由来のエタノールから生産したエチレンと,それを石油由来のエチレンで置き換えた場合,廃棄時のリサイクル率を変化させた場合の気候変動及び化石資源枯渇の環境影響に関する検討を行った。日本のように高いリサイクル率を達成している地域においても,石油由来の PET をバイオPET に置き換えることでPET ボトルのライフサイクル全体でGHG 排出を約10%削減,化石資源消費量を約18%削減させる効果が見込まれた。
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日野 良太, 和田 安弘, 江種 伸之
p.
183-188
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
紀の川における栄養塩類が関わる問題として,藍藻類が発生する2-
メチルイソボルネオール(2-MIB)
による水道水の異臭味がある。既存の水質観測データでは,全リン(TP)
濃度が0.02mg/L
を超過した場合に2-MIB
濃度が高くなる傾向が認められた。そこで,物質負荷量解析と河川水質解析を実施し,TP
濃度の上昇を抑制する対策案を検討した。その結果,産業系の排出負荷量を抑制するために水質汚濁防止法の排水量の裾下げ規制を適用することで,約50%
の負荷量削減効果があることが示された。また,河川水質解析より0.015mg/L
程度までTP
濃度を低下させることができ,2-MIB
濃度の上昇抑制につながることが示唆された。
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山本 清龍
p.
189-194
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では,富士山を事例として取り上げて,①実際の登山者の属性と登山特性について把握すること, ②登山者がインターネットを通して提供,強化を望む情報について把握,整理すること,③登山者管理の観点から情報提供のあり方について考察すること,の3
点を目的とした。アンケート調査の結果,20
,30
代の若年層,初めて富士登山に挑戦する登山者層が多く,富士山の頂上付近に登山目的が集中していること,登山者は登山方法や危険,混雑に関する情報の提供,強化を期待していることが明らかとなり,登山者によって期待されている情報は来訪者管理に積極的に活用すべき情報と考えられた。
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-「てくペコチャレンジ」を事例として
山口 純, 武田 史朗, 赤池 直樹
p.
195-200
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
環境デザインにおいては、環境における人々の実際の行動パターンからデザインへのフィードバックが重要である。そこで本論では,歩行環境を歩行者のGPS ログからボトムアップ的にネットワークとしてモデル化し,このモデル上の情報として歩行者の行動パターンを分析する手法を提案する。ケーススタディーとして,この手法を用いて,大学キャンパスにおけるウォーキングイベント「てくペコチャレンジ」における歩行者の行動を分析する。その結果,この手法によって歩行者の行動パターンの特徴を可視化することができた。
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吉田 謙太郎
p.
201-206
発行日: 2015年
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
世界自然遺産(屋久島,白神山地,知床,小笠原諸島)と文化遺産(富士山)を対象とし,PES
の 一類型である入域料への支払意志額とその規定要因について計量分析を行った。入域料の中央値WTP
は1125
~1569
円,平均値WTP
は2200
~2890
円であった。また,訪問経験を有する回答者のWTP
は自然遺産について統計的に有意に高かった。入域料徴収目的としては動植物の保護が高く評価され,WTP
を高める要因となった。入場者数抑制についても回答者は重要性を認識し,島嶼地域においてWTP
を高める要因となった。入域料徴収のためのゲート方式の導入は,フリーライドを回避する効果のあることが示された。
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豊嶋 尚子, 武田 重昭, 加我 宏之, 増田 昇
p.
207-212
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
大阪市内の場の提供型と交流型の4つのマルシェにおいて利用者の属性と利用内容および利用意識を明らかにすることによって,それぞれのタイプのマルシェの今後の課題と方向性を探った。その結果,農産物販売の場の提供を目的としているマルシェでは,日常生活の消費の場として定着しつつある側面も見られたが「農」への関心へとつなげることが課題であること。一方,交流性を目的としているマルシェでは,農業や農村との交流への関心が一定高まっているものの,リピート率が低い点や集客のためのイベント的色彩がやや強くなるといった点が課題であり,それぞれのタイプに応じた今後の方向性が見出だせた。
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松浦 健治郎
p.
213-218
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では、三重県名張市つつじが丘地区を対象として、公園の再整備における住民参加の状況や空間像を整理した上で公園づくりへの住民参加と利用・愛着との関連性の解明を目的とする。明らかになったことは、1)受託団体による公園の計画に団体メンバー以外の住民が直接関わることは少ないこと、2)公園の再整備内容はベンチ・テーブル・遊具の設置が多く見られること、3)維持管理の内容は市との委託契約している除草作業・公園の清掃・樹木の剪定の他にイベントを開催している団体が見られたこと、4)住民主体による再整備が進んでいる公園では利用頻度・愛着が共に高くなること、5)活動を認知し、実際に参加したことがある人は公園の利用が多くなり、且つ愛着度も高くなること、である。
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菅原 遼
p.
219-224
発行日: 2015年
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では,大岡川下流域における河川利用の利用実態を捉え,大岡川桜桟橋における組織・団体間の関係性とその特徴を捉えることを目的に,文献調査及び市民団体に対するヒアリング調査を実施した。その結果,大岡川下流域に整備されている接岸施設は,平成23
?25
年度の期間で利用者数が約3.1
倍に増加しており,季節的利用に関しては,「春型」「夏型」「秋型」の季節変動による利用が見られた。また,地域主導により整備された大岡川桜桟橋は,管理体制における組織・団体の役割から「発足期-増加期-発展期」に分類でき,発展期においては,地縁型組織とテーマ型組織が連携することで円滑な河川利用が図られることで,多種多様な河川利用者の受け皿となっていることを明らかにした。
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本田 裕子
p.
225-228
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
本研究では,兵庫県豊岡市および新潟県佐渡市の住民を対象に実施されているアンケート調査を参考に,新潟県佐渡市で同様のアンケート調査を実施し,比較することで,住民意識にどのような変化があるのかを分析した。コウノトリやトキのためという本来の野生復帰の趣旨から,地域活性化への希求によってコウノトリやトキが地域資源化され,野生復帰を肯定的に捉える背景へと変容していた。地域住民の理解と協力がなければ成功できないことを考えれば,地域資源化は野生復帰が成功するためのプロセスの1
つとして位置づけられる。今後,新たな放鳥地が生まれることを考えれば,地域資源化されたコウノトリやトキの変容を注視していく必要がある。
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胡 笳
p.
229-234
発行日: 2015年
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
近年,中国における環境政策の形成過程における市民参加が導入され,中国型環境ガバナンスが整備されてきたと言われている。しかし,
市民参加の実際の効果は明らかでなく,市民参加や環境ガバナンスの制度的フレームワークも明確ではない。本研究は,PM2.5
などの大気汚染問題が深刻な首都・北京で, 2013
年から2014
年にかけて審議・決定された「北京市大気汚染防治条例」のプロセス(政策形成過程)における市民参加に着目し,行政資料と関係者へのインタビュー調査に基づき,修正過程を四段階に分け,市民参加と条例修正の関係を分析した。その結果,市民参加が情報公開規定など条例修正に正の効果があったことを明らかにした。
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-M市における風力発電事業の事例
尾形 清一
p.
235-240
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
日本では再生可能エネルギー導入促進のために固定価格買取制度が導入された。しかしながら,再生可能エネルギーの量的拡大は,地域社会との関係で様々な課題があり,この課題に対応する政策が重要となっている。そこで,本稿では,風力騒音問題と地域社会との関係に焦点をあてる。 現在,風力発電事業計画は,騒音問題のために中止されているケースが増えている。そのため,本稿では風力発電に関連する騒音苦情の実態調査を実施するべく,風車騒音苦情が継続するM 市の風力発電事業について考察した。
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小林 昭裕, ジョーンズ トマス
p.
241-246
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
遭難防止に率先的に取り組む長野県警の協力を得て,山岳遭難事故データの解析を行った。その結果,遭難の 態様は空間次元(山域,気象),時間次元(年,月,時刻),登山者属性(性,年齢,構成人数)と密接な関係があることが判明した。また,白馬岳と槍穂高山域でのアンケート調査から,山岳遭難に関する情報を得た割合は半分に満たず,ケガやヒヤリとした主要因を利用者は外的要因(自然環境)というより,自身の内的要因(精神的・肉体的)と認識していた。遭難実態と意識分析の結果を総合すると,遭難事故データの記載項目の見直しや,山岳遭難実態分析から得た知見情報提供を通じて,登山者の危機意識や備えを高めうると考えられた。
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羽生 一予, 森澤 建行, 田村 憲司
p.
247-252
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
生態系における土壌の重要性が一般に知られていない。小学生の土壌に対する関心は低く,子どもが幼少期や児童期に土壌にどう接したかということが,土壌に対する考え方や見方やイメージ形成に大きな影響を及ぼすことから,小学校での土壌教育は重要である。文部科学省(2014)により土曜日の豊かな教育活動が推進され,いわき市で「土曜学習」が始まった。そこで,土壌教育プログラムを実施し,学習前後で児童の土壌教育プログラムの満足度をフェイススケールにより評価した。さらに,アンケートによって土壌に対する意識を調査した。その結果,土壌教育プログラムは高い満足度を示し,土壌教育後に土壌に対する好意的な意識が示された。
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黒田 貴綱, 笹田 勝寛, 河野 英一, 島田 正文
p.
253-256
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
生物多様性の保全・管理の基礎知識や技術を有する人材の育成を目的として,初学者の大学生を対象に,農村の整備や自然環境の保全に関する野外実習を行い,意識調査によりその教育効果を把握した。 実習を行うことで,環境保全に対して十分な興味を抱かせることができ,今後の学習や将来の仕事に繋げる事端となり得ることが確認された。実習プログラムを実施する上では,適切な時間設定と講師の力量が不可欠であり,適度に難しさと専門性を伴うプログラムの実施が,今後の学習意欲を抱かせる上で効果的と推察された。プログラム間の連携,復習や関連した学習の機会を設けるなどの実習・教育方法のさらなる検討が必要と考えられた。
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高橋 正弘, 本田 裕子
p.
257-262
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
2014 年と2015 年に佐渡市および対馬市の住民に対して行った,野生復帰事業に関するアンケート調査を分析した。それぞれの自治体で行われている野生復帰事業をめぐる住民意識と環境教育・意識啓発への志向性を比較した結果,野生復帰事業の進展状況や野生復帰の対象種の違いは,住民の意識にほとんど違いをもたらさなかった。住民の環境教育・意識啓発については,対象・内容・方法において,ほぼ同じ傾向であることが明らかになった。しかし野生復帰事業そのものに対して判断を留保している住民は,環境教育・意識啓発に比較的ネガティブな考えを持つことが明らかになった。
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木村 健一郎 , 米田 令仁
p.
263-266
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
ラオスの農山村の一般的な燃料は薪炭であり,森林から採取して利用している。持続的な森林利用を計画するため,地域住民の森林利用実態を明らかにし,日常的に利用される薪消費量と薪消費量から推定される森林資源量を明らかにした。その結果,対象村ではCratoxylum sp.
とPeltophorum dasyrachis の2
種類の樹木が利用全体の6
割を占めていた。平均すると各世帯は約2
千kg
の薪を年間消費しており,村全体では271
千kg
の薪消費量であった。これは,村の休閑林の約16ha
に相当する森林資源量に相当した。
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-バリクパパン市の事例
村瀬 憲昭, 村山 武彦, 錦澤 滋雄
p.
267-272
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
インドネシアでは複数の都市でごみ銀行が有価物回収を行っているが,その活動実態は十分に明らかになっていない。本研究では,質問紙調査などにより,バリクパパン市のごみ銀行の活動実態を整理し,ごみ銀行に対する住民の認知状況や意識,活動との関連を分析した。その結果,ごみ銀行の利用により,ごみ銀行周辺の住民のごみ分別などに関する意識が高まっており,行動に変化が生じていることが推察された。また,ごみ銀行周辺住民の分別行動の関連を分析した結果により,廃棄物問題への関心・認知や分別行動の認知が分別行動の評価,実践,周囲への働きかけと関連があり,ごみ銀行による取り組みがその流れを促進している可能性が示唆された。
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山下 潤
p.
273-278
発行日: 2015/11/25
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
様々な国際機関や国で,持続可能な発展指標(SDIs)の理論的な枠組みとしてテーマ別枠組みが採用されている。しかしテーマ別枠組みには,持続可能な開発へ向けた全体的な方向性を把握しにくいという短所がある。本研究では,日本の環境基本計画で使用されたSDIs を用いて,持続可能な発展に向けた方向性を包括的に評価することを目的とした。結果として,Eurostat(2014)が示した評価方法を用いて,持続可能な発展に向けた方向性を包括的に評価できることを明らかにした。加えて,この評価方法で,実用性という視点から閾値を0.5 か1に設定することが妥当であることも明らかにした。
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升本 潔
p.
279-284
発行日: 2015年
公開日: 2015/11/25
会議録・要旨集
フリー
経済発展と環境保全が両立しうるとするエコロジー的近代化理論は,欧州を中心に広く支持されている。本研究では二酸化硫黄(SO
2)を対象に,この考え方が先進国のみならずそれ以外の国・地域においても適用可能なのかについて分析した。地域ごとの経済成長とSO
2排出量のトレンドを比較し,その変化の要因分析を行った結果,非先進国においても一部地域はデカップリングが進んでいること,大部分の地域においてSO2
対策が継続的に進んでいるとみられることから,エコロジー的近代化は非先進国においても進んでいる可能性があることが分かった。他方,SO
2排出量の大きなアジアでの今後の推移が,世界的な動向を決定づけるカギとなる。
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