セメント・コンクリート論文集
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64 巻, 1 号
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セメント化学
  • 服部 廉太, 湊 大輔, 後藤 卓, 名和 豊春
    2010 年 64 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    水和反応初期におけるC-S-Hの構造形成挙動をXRD・リートベルト法、トリメチルシリル化法、29Si MAS-NMRを用いて検討した。その結果、セメント鉱物から溶出したシリケートアニオンはただちに二量体以上に重合しC-S-Hを形成するのではなく、常にある一定量単量体として存在し続けることが示された。また、初期において検出されるC-S-H中のシリケート鎖の平均鎖長は、カルシウムシリケート鉱物の反応率が50%を越えたとき長期において検出される平均鎖長とほとんど同値となることが明らかとなった。
  • 小泉 公志郎, 佐藤 正己, 梅村 靖弘, 露木 尚光
    2010 年 64 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    高強度コンクリートでは一般的に、セメントに微小粒径のポゾラン材料と高分散性の減水剤を併用した材料配合により水粉体比を極限まで低減させることが可能となる。しかしながら極めて低い水比ゆえにセメント自体の水和に大きな影響を及ぼすと考えられる。本研究では水比が30%以下の環境におけるセメントの水和反応に及ぼす影響、特にシリケート相におけるケイ酸アニオンの鎖長分布に着目して検討を行った。低熱ポルトランドセメントにシリカフュームを混合した系でシリケート相の水和挙動を検討したところ、水比が低いほど水和の進行が不安定になるケースが確認された。また、細骨材の吸湿(吸水)によってもシリケート相の水和に影響を及ぼすことが分かった。
  • 中森 寛, 白神 達也
    2010 年 64 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    ダイナミックTGを用いて軽水和物との脱水温度の比較を行うために、重水を用いて重水素化したポルトランダイトおよびエトリンガイトを合成した。合成した試料はXRDで結晶相の同定を行い、SEMを用いて粒径を評価した。また、ATR-IRを用いてO-H振動とO-D振動の吸収ピークの大きさより、重水素置換率のおおよその検討を行った。XRDおよびATR-IRによる評価から、ポルトランダイト及びエトリンガイトの重水素化物の合成に成功したことが確認された。ダイナミックTGによる脱水温度の比較では、ポルトランダイト、エトリンガイトともに、重水素化物の方が低い脱水温度を示した。
  • Makio YAMASHITA, Hisanobu TANAKA, Katsuhiko ICHIHARA
    2010 年 64 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    The cement industry has been required to reduce energy consumption to help control global worming. Recently, our Yokoze plant introduced a high-efficiency clinker cooler for better heat recovery. This high-efficiency clinker cooler increased the heat recovery rate by 13% and decreased kiln heat consumption by 8% compare to a conventional clinker cooler. However, this higher cooling rate might affect clinker quality and cement performance. This study evaluated the cooling rate of the clinker and investigated the influence on the cement quality before and after introducing the clinker cooler. The cooling rate at 1300℃ was estimated from the b-axis lattice parameter of the ferrite phase in the clinker determined by Rietveld method of powder X-ray diffraction. The clinker cooling rate was found to increase 300℃/min to 400℃/min(by 150℃), and this increase had little effect on cement quality before and after the high-efficiency clinker cooler was introduced.
  • 盛岡 実, 山本 賢司, 取違 剛, 横関 康祐
    2010 年 64 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    比較的純度の高い石灰石とケイ石を選定すれば、ロータリーキルンの焼成でγ-C2Sを得ることができる。焼成後に得られたサンプル中のAl2O3は約1.7mass%でFe2O3は約0.1mass%だった。焼点温度は1450~1500℃であった。また、冷却過程で特別な操作を行わなくてもγ-2CaO・SiO2を得ることができた。石灰石とケイ石からγ-C2Sを製造するときのCO2排出量は695.6kg-CO2/tとなり、普通セメントの場合より小さい値となった。CaO原料を工業的に副生した水酸化カルシウムに替えてもγ-C2Sを焼成できた。原料の脱炭酸によるCO2排出量がないため、石灰石を用いた場合と比べて、γ-C2Sの製造に係るCO2排出量を159.3kg-CO2/tと大幅に低減できる。
  • 大宅 淳一, 山本 賢司, 三五 弘之, 坂井 悦郎
    2010 年 64 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    モノサルフェート水和物(AFm相)によるクロム酸イオン(六価クロム)の固定化、および六価クロムと硫酸イオンを含むAFm相からの六価クロムの溶出挙動について検討した。AFm相とCaCrO4・nH2Oとの水和反応では、CaCrO4・nH2O/AFm相の混合モル比が0.50以下のとき、液相に溶出した六価クロムは硫酸イオンとの陰イオン交換反応によりAFm相に固定され、液相のクロム濃度は1.0×10-4mol/L以下に抑えられた。一方、CaCrO4・nH2O/AFm相の混合モル比が0.75以上では六価クロムを含むエトリンガイトが生成し、液相のクロム濃度は1.0×10-3mol/L以上の値を示した。また、六価クロムと硫酸イオンを含むAFm相の溶出試験では、六価クロム含有量の増加とともに液相のクロム濃度は増加した。さらに、硫酸イオンを5mol%以上含むAFm相は、5mol%未満の硫酸イオン濃度のAFm相と比較して液相のクロム濃度が1/4以下となり、六価クロムの固定効果が大きかった。
  • 依田 侑也, 大場 陽子, 坂井 悦郎
    2010 年 64 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    高炉スラグを主成分とする高炉スラグ-無水セッコウ-OPC系のセメントについて、様々な組成について六価クロムの固定化実験を行い、生成物との関連について検討を加えた。また、高炉スラグ-無水セッコウ-OPC系のセメントの水粉体比を変化させた場合や石灰石微粉末を加えた際の六価クロム固定化能や生成物についても検討を加えた。この結果、この系のセメントにおける六価クロムはAFm(SO42-)相あるいはヘミカーボネートに固定化されていることを明らかにした。
  • 安齋 剛史, 西川 真, 池尾 陽作, 坂井 悦郎
    2010 年 64 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    高炉スラグを70%以上含有する、高炉スラグ-無水セッコウ-OPC系のセメントについて、無水セッコウとOPCの添加量を変化させた試料について材齢半年程度までの水和反応について検討を加えた。その結果OPC3%程度の場合は高炉スラグの反応は初期からほとんど進行しないが、OPC15%の場合は高炉スラグの反応は長期にわたり進行し、初期の水和発熱量と相関関係があることを明らかにした。またOPCを15%とし高炉スラグと無水セッコウの比を95:5とした場合には長期においても高炉スラグの反応は増加し、また無水セッコウの残存が無いため長期安定性に優れているという結論を得た。
  • 丸屋 英二, 一瀬 龍太朗, 坂井 悦郎
    2010 年 64 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント製造時における廃棄物利用の拡大とCO2削減を両立させるうえで、アルミネート相量を増加し少量の混合材を置換したセメントの材料設計は重要である。本研究では、アルミネート相量を12%まで増加させたセメントを試製し、混合材として高炉スラグ微粉末や石灰石微粉末を置換した場合の流動性と水和挙動を検討した。その結果、高炉スラグ微粉末と石灰石微粉末の混合比率により、ペーストの流動性は変化した。また、アルミネート系水和生成物の種類が系統的に変化し、六価クロム等の固定化能にも影響することが示唆された。
セメント硬化体・モルタルの物性
  • 茶林 敬司, 中村 明則, 加藤 弘義, 佐田 香織
    2010 年 64 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント製造においては、産業系廃棄物を原燃料として使用しており、様々な廃棄物由来の少量成分がクリンカー中に持ち込まれることが予想される。クリンカー中の少量成分はクリンカーの鉱物組成やセメントの物性に影響を及ぼすことが知られている。本研究では、同様な傾向を示すとされているTiO2とP2O5の比較検討を行なった。その結果、含有量増加に伴うエーライト量の減少は同様な傾向を示すもののP2O5の方が顕著にその傾向を示し、それに伴い強度発現性もP2O5の方が顕著に低下傾向を示した。また、TiとPではクリンカー中の存在状態が異なることも確認された。
  • 青山 琢人, 胡桃澤 清文, 名和 豊春, 大和田 仁
    2010 年 64 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメントペーストの反射電子像の画像解析から未水和セメント、水酸化カルシウム、粗大空隙の各相の自己相関関数を求め、セメントペーストの3次元イメージモデルの構築を行い、その3次元イメージモデルから塩化物イオンの拡散係数の推定を試みた。その結果、混和材を混入していないセメントペーストでは実測値に対し2分の1程度での推定を行うことができた。また、健全な試料の3次元イメージモデルからCa2+の溶脱を考慮し人工劣化試料の塩化物イオンの拡散係数の推定を行った結果、人工劣化試料の実測値に対し同一オーダーでの推定を行うことができた。
  • 福島 浩樹, 石森 正俊, 胡桃澤 清文, 名和 豊春
    2010 年 64 巻 1 号 p. 74-81
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント硬化体の乾湿繰り返し時の収縮・膨張要因を明らかにし、その要因に基づいた収縮低減剤の収縮低減効果を解明するため、乾湿繰り返し試験を行った。乾湿繰り返し前後の細孔径分布から、SRA無添加供試体は20℃RH40%ではC-S-H一次粒子の凝集・分散が乾湿繰り返し時の収縮・膨張の要因であり、40℃RH40%では半径6.0nm以下のC-S-Hゲル空隙が重合により収縮後非回復になることで顕著に構造が粗大化し、新たな粗大空隙を形成するC-S-H粒子群の凝集・分散が収縮・膨張要因であることが示唆された。一方、収縮低減剤を添加することで、C-S-Hゲル空隙が保持され収縮を低減していることが確認された。
  • 湊大 輔, 平沖 敏文, 名和 豊春, 後藤 卓
    2010 年 64 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント硬化体の主成分であるカルシウムシリケートハイドレート(C-S-H)の構造と養生環境の関係を解明するために、2H NMRを用いて4種の相対湿度(以下RH)条件下で乾燥した、重水を用いて作成した白色セメント硬化体中の重水素原子の運動性について検討した。2H NMRスペクトルの解析結果から、セメント硬化体内の重水素はRigid成分とMobile成分に区分されることを示した。また、温度を変えた2H NMRの解析結果から、Mobile成分は表面吸着水と準表面吸着水とに分離されることを示した。さらに、表面吸着水と準表面吸着水の存在比率から細孔表面に存在する水が形成する層の厚さ、すなわち細孔径を算出しC-S-H中の水の動的存在状態の詳細な解析が可能であることを明らかにした。
  • 丸山 一平, 岸 直哉, 五十嵐 豪
    2010 年 64 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    高炉スラグ微粉末を混和したセメント硬化体の長さ変化等温線、脱着・吸着等温線、ヤング率・ポアソン比、および密度を実験的に取得し、著者が提案したDerjaguinの水和親力に基づく水和圧理論に基づき、高炉スラグ微粉末を混和したセメント硬化体の乾燥収縮性状および表面の親水性について考察した。その結果、高炉スラグ微粉末を混和したセメント硬化体の親水性は、普通ポルトランドセメントのそれよりも大きく、表面と水との相互作用力の減水定数が大きくなる結果となり、このことが、高炉スラグ微粉末を用いたセメント硬化体の保水性および大きな乾燥収縮性状につながるものとわかった。
  • 丸山 一平, 五十嵐 豪
    2010 年 64 巻 1 号 p. 96-102
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント硬化体の吸着等温線が何に支配されているか、あるいは乾燥プロセス中に任意温度・相対湿度条件下でどれだけの含水状態で平衡となるのかに関する支配的要因を明らかにすることを最終的な目的として、まずは、ヒステリシスが生じるメカニズムを考察した。セメント硬化体の吸着等温線試験を行いそこで生じる現象について既往の文献も含めて考察を行った結果、乾燥条件下、および乾燥後の吸湿プロセスの極初期ではC-S-Hが化学的に反応し、Si-O-Si結合が増加して比表面積が減少するものと考えられた。このメカニズムを検証する目的で、合成したC-S-Hの異なる乾燥条件時の赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定し、乾燥条件下でSi-O-Si結合が増加することが定性的に確認された。
  • 五十嵐 豪, 丸山 一平
    2010 年 64 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    普通ポルトランドセメントを用いた水セメント比0.40、0.55の初期高温履歴を受けたセメント硬化体の比表面積の経時変化について検討を行った。吸着等温線、粉末X線回折/リートベルト解析の結果から、セメント硬化体の比表面積、C-S-H量およびC-S-HのCaO/SiO2モル比の同定を行い、比表面積との関係を評価し、併せて、合成C-S-Hとの比較を行った。その結果、初期高温履歴の影響により、長期的な比表面積の増進が停滞すること、C-S-Hの平均CaO/SiO2モル比が増大すること、セメント硬化体の比表面積とC-S-H量は、水セメント比、温度条件によらず一つの曲線で評価されることが明らかとなった。
  • 上原 丈児, 李 春鶴, 半井 健一郎, 石井 祐
    2010 年 64 巻 1 号 p. 111-118
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    炭酸化による細孔構造や物質移動抵抗性の変化に関する検討は、高CO2濃度の促進環境での研究事例が多い。本研究は、CO2濃度に着目し、実環境相当の低濃度環境での炭酸化よる変化を高濃度環境と比較分析した。水セメント比や高炉スラグ微粉末の有無が異なるセメント硬化体を用いて、実環境を模擬した低CO2濃度環境とCO2濃度が5%の促進環境にて若材齢から炭酸化させることで、細孔構造や酸素拡散係数に及ぼすCO2濃度の影響を検討した。その結果、異なるCO2濃度や炭酸化程度により、炭酸化生成物の総量・生成由来・結晶構造および水和進行に違いが生じ、細孔構造や酸素拡散係数に異なる影響を及ぼし得ることが明らかになった。
  • 大塚 拓, 三田 卓, 矢島 典明, 坂井 悦郎
    2010 年 64 巻 1 号 p. 119-124
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究では、フライアッシュバルーンの有効利用方法を見出すことを目的に、水熱反応によるフライアッシュバルーン(FAB)を用いたケイ酸カルシウム水和物系固化体の合成について検討を行った。FABは密度約0.76(g/cm3)、50%体積平均径127(μm)の中空球状粒子であり、通常のフライアッシュと比べると、化学組成は同等であるが、構成化合物は、ガラス相が67.1%と大部分を占め、ムライトが26.2%と多く、α-quartzは2.4%と非常に少なかった。OPC-ケイ石微粉末-FAB-水系の水熱合成において、固化体の密度はFAB、水量によって調整でき、FABを粉体中で40-60%用いることで密度が0.60-0.84(g/cm3)程度で、圧縮強度6.5-15.6(N/mm2)の軽量固化体を合成することができた。FABの外殻は水熱反応後もしっかりと残存していた。また、材料分離の抑制には増粘剤の使用が有効であった。
  • 中沢 拓也, 杉山 友明, 黒川 大亮, 坂井 悦郎
    2010 年 64 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメントクリンカーの粒度分布を制御して充てん性を向上させることで、低水粉体比において優れた流動性を持つ粒度調製セメントを作成することができる。本研究では、粒度調整セメントに対しシリカフュームを混和し、その流動性と水熱反応について検討を行った。シリカフュームを混和した粒度調整セメントは、低水粉体比においても良好な流動性を示した。また水熱合成を行った硬化体において、シリカフュームを混和した粒度調整セメントでは、セメント中のCHとシリカフュームのSiO2が反応しC-S-Hを生成することによって40-100nm程度の径の細孔が減少し、全細孔量も減少することが明らかとなった。加えて全細孔量に対する貫通細孔の割合も著しく減少した。
  • 小川 由布子, 宇治 公隆, 上野 敦
    2010 年 64 巻 1 号 p. 131-138
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    副産物利用および二酸化炭素排出量削減の観点から、フライアッシュの有効利用が望まれている。本研究では、セメントに対するフライアッシュの置換率を変化させたモルタルの圧縮強度について基礎的に検討し、モルタルの圧縮強度に対するフライアッシュの結合材としての性能を、セメント有効係数k値で評価した。さらに、混和量や成分により変化するフライアッシュの結合材としての性能を材料選定および配合設計において考慮可能とすることを目的として、フライアッシュ中のSiO2とセメント中のC3Sの比に着目し、既往の研究データを加え、k値との関係を整理した。この結果、SiO2/C3Sによる材齢91日におけるk値の評価の可能性を示した。
コンクリートの試験・評価
  • 丸山 一平, 淺原 良浩, 南 雅代, 吉田 英一
    2010 年 64 巻 1 号 p. 139-146
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    本検討では、名古屋市内の構造物のコア試験体に対して、放射性炭素に関する分析を行い、コンクリートの中性化現象について考察を行った。その結果、コンクリートの中性化現象について14C濃度を評価した結果、表層で濃度が高く、内部で低くなる傾向が得られた。また、14C濃度の経年変化プロファイルを参照することで、建設年代の情報があれば、中性化の進行プロセスを推定できる可能性があることがわかった。また、14C濃度は、フェノールフタレインの呈色反応によって評価される中性化フロントよりもかなり奥まで高い数値を保持しており、この値は、材料由来か、あるいは深部までCO2が到達したことによると考えられた。
  • 山本 準紀, 川上 博行, 名和 豊春, 西田 朗
    2010 年 64 巻 1 号 p. 147-153
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    フレッシュコンクリート中のフライアッシュ量を推定するために、フレッシュモルタルに選択溶解法および重液分離を適用してフライアッシュの回収を試みた。その結果、これらの手法を組み合わせることでモルタルからフライアッシュを回収できることが判明した。また、フライアッシュの回収率は、塩酸で溶解してしまうフライアッシュ量および重液分離で沈降し、回収することのできないフライアッシュ量が既知であれば、それらの値を用いて補正を行うことで100%に近い値を示すことが判明した。さらに、フレッシュコンクリートに本手法を適用した結果、フライアッシュ置換率を誤差3%で推定できるということが示された。
  • 半井 健一郎, 森田 卓, 辻 幸和
    2010 年 64 巻 1 号 p. 154-161
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    仕事量一定則の概念に基づく膨張コンクリートの膨張挙動の推定手法は、工学的有用性が高いが、A法一軸拘束供試体の拘束鋼材に対してなす仕事量を基準とするため、内部拘束の影響などが変動すると一定則は成立しない。内部拘束の影響が相対的に大きい低鉄筋比領域では、拘束鋼材に対してなす仕事量を下方修正する手法が提案されている。本研究では、仕事量の修正による推定精度を向上させることを目的に、仕事量の修正値の再計測を行い、低鉄筋比領域における膨張コンクリートがなす仕事量を精度よく測定した。その結果、低鉄筋比領域のみならず、引張剛性の小さいFPRを補強材としたCPC部材においても、膨張ひずみの推定精度が向上した。
  • 椿 龍哉, 中澤 正典
    2010 年 64 巻 1 号 p. 162-168
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物の下面補修や側面補修に用いる断面修復材について、振動作用下で硬化する場合のコンクリートとの付着強度発現を調べるための簡易試験方法を検討した。既往の付着強度試験方法には、大きな供試体を用いて、供試体に直接振動を与えるものや供試体を実構造物に取り付けて調べる方法があり、これらは通常の実験室では実施が困難であった。著者らは小型直方体供試体に断面修復材を吹き付けたものに直接振動を与える試験方法を提案し、その有効性をすでに検討している。本研究では、さらに小型の円柱供試体を用いる試験方法の可能性について検討した。
  • 松村 仁夫, 黒井 登起雄
    2010 年 64 巻 1 号 p. 169-176
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究は、供試体表面仕上げ方法のキャッピング材料の種類、厚さとコンクリートの圧縮強度との関連性を平面度および圧力測定フィルムによる圧力分布の測定によって検証すること、キャッピング材料自体の強度と変形性状の関連性、およびその際のコンクリートの圧縮強度との関連性を平面度、変形性状および圧力測定フィルムによる圧力分布の測定によって検証することを目的とした。その結果、表面仕上げ方法の違いにより、平面度は、0.05%以上になるものもあり、圧縮強度は、平面度0.05%以下に比べ、小さくなる。キャッピング材料の強度とコンクリートの圧縮強度および変形性状は、キャッピング材料の種類によって相違が認められる。圧力測定フィルムによる圧力分布と圧縮強度の関連性についても明らかになった。
  • 木全 博聖, 小塩 達也
    2010 年 64 巻 1 号 p. 177-183
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    摩擦型ひずみゲージをコンクリート構造物のひずみ測定に適用するための検証を行なった。はじめに三等分点曲げ試験を行ってコンクリートの引張ひずみを測定し、従来型ひずみゲージ(ポリエステル箔ひずみゲージ)と摩擦型ひずみゲージが示す数値を比較した。次に供用中の橋梁に発生する引張ひずみを測定し、摩擦型ひずみゲージの測定精度について検証を行った。その結果、摩擦型ひずみゲージは従来型ひずみゲージとほぼ同等の精度でコンクリートの引張ひずみを測定することができることが明らかとなった。
  • 石 東昇, 桝田 佳寛, 李 榮蘭
    2010 年 64 巻 1 号 p. 184-189
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究は、3銘柄の高炉スラグ細骨材を使用した高強度コンクリートの強度について力学特性を実験的に検討したものである。高炉スラグ細骨材を使用したコンクリートは、水セメント比を小さくすると川砂の場合と同様に圧縮強度の増進が認められ、100N/mm2の強度を得られることができる。高炉スラグ細骨材を使用したコンクリートの圧縮強度および引張強度は、川砂を使用した同じ調合のコンクリートに比べて小さく、骨材を混合して使用した場合は、各々単独で使用した強度の中間の値を示す。高炉スラグ細骨材は粒形が悪く、川砂と比べて破砕値が大きく、このことが強度特性に影響している。
  • 大野 吉昭, 桝田 佳寛, 鹿毛 忠継
    2010 年 64 巻 1 号 p. 190-195
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    日本建築学会「鉄筋コンクリート構造物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説(2006)」の収縮ひずみ予測式は、調合・使用材料の影響と湿度等の環境による影響を考慮した実験式である。既往の研究は、供試体を温湿度20℃/60%RH環境下における報告が多く、乾燥収縮ひずみの湿度による影響の検証報告は少ない。また、粗骨材が乾燥収縮ひずみへ影響することが報告されている。 
    本研究は、乾燥収縮ひずみへの影響が大きい調合・使用材料と相対湿度が乾燥収縮ひずみに及ぼす影響を検証した。予測式は、コンクリートの調合に関する係数(K1)、乾燥開始材齢に関する係数(K2)、相対湿度に関する係数(K3)の影響を考慮しており、ここではK3に関し定量化を試みた。
  • 澤本 武博, 藤原 翼, 湯浅 昇, 笠井 芳夫
    2010 年 64 巻 1 号 p. 196-202
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    著者らは、コンクリートの塩分浸透深さを調べる簡易な方法として、硝酸銀噴霧法とドリル削孔粉を用いたコンクリートの中性化深さ測定方法を組み合わせた方法を開発し、検討を行っている。本研究では、現場での作業性を考え、ドリル径を20mm、1回の削孔深さを10mmとした場合について新たに検討を行い、ドリル削孔粉を試料として用いた場合の最も確認しやすい変色境界は、コンクリート割裂面に硝酸銀を噴霧した場合の0.6倍程度となることが明らかとなった。また、簡易にコンクリート構造物の塩分浸透深さを測定できるため、構造物のモニタリングのための試験方法にも適用できると考えられる。
  • 蔵重 勲, 西田 孝弘, 廣永 道彦
    2010 年 64 巻 1 号 p. 203-210
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    低レベル放射性廃棄物の余裕深度処分施設への適用が検討されている低熱ポルトランドセメント-フライアッシュ系材料を対象に、適切な養生による品質確保方法を提示することを目的として、脱型材齢が強度発現や中性化抵抗性に及ぼす影響を実験的に評価した。その結果、脱型材齢が7、14、28日の順に圧縮強度および静弾性係数が向上し、材齢28日まで型枠を存置した場合、脱型材齢7日に対して中性化速度係数をおよそ半減できることが分かった。また、表層透気係数は脱型材齢の異なる低熱ポルトランドセメント-フライアッシュ系材料についても中性化速度係数との強い相関が認められ、施工後品質検査の一指標として有用であることを示した。
  • Giang Hoang DANG, 五十嵐 心一
    2010 年 64 巻 1 号 p. 211-218
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント硬化体組織に対して実際に取得される反射電子像では、グレーレベルヒストグラムに現れる濃淡情報が、本来対応すべき平均原子番号位置と必ずしも線形的に対応しない。この点に着目して、そのグレーレベル位置のずれ(シフト量)を、画素寸法以下の空隙の存在によるものと考えた。特定の構成相のシフト量から画素寸法以下の微細な毛細管の空隙率を求め、これとPowers&Brownyardのモデルを組み合わせることにより、硬化セメントペーストの水セメント比が非常に高い精度で推定できることが明らかとなった。
  • 後藤 貴弘, 中村 俊彦, 高尾 昇, 鳴瀬 浩康
    2010 年 64 巻 1 号 p. 219-224
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント工場で粘土代替原料として利用されている石炭灰、汚泥、建設発生土等の産業廃棄物にはAl2O3が多く含まれている。そのため、使用量を増やすとクリンカー中のC3A量が増加する。今後、これら廃棄物の利用拡大を目指すには、C3A量の増加がセメントおよびコンクリートの品質に及ぼす影響を把握しておく必要がある。そこで、C3A量を12%まで高めた普通ポルトランドセメントを実機で製造し、その品質を評価した。その結果、C3A量の多いセメントは、一般的に言われているように耐硫酸塩性は低下するが、コンクリートのフレッシュ性状、圧縮強度、収縮性状に与える影響は認められず、実用上の問題は無いと判断された。
  • 宮薗 雅裕, 勝山 正彦, 鈴木 宏信, 岡本 英明
    2010 年 64 巻 1 号 p. 225-230
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    粒度、粒形が同一な石灰石砕石に骨材の製造過程で発生する砕石粉を添加する方法を用いて、微粒分量がコンクリート性状に及ぼす影響を検討した。骨材の調整は、2.3節に記す方法により石灰石砕石の表面に所定量の微粒分を付着させることが可能であった。コンクリートの試験要因は、水セメント比と微粒分量とし、水セメント比が55、45、40、35、30、25%の配合において、砕石粉を粗骨材の内割りで、0、1、3、5%添加した。試験の結果、微粒分量の増加に伴い、スランプの低下や粘性の増加による施工性の低下や自己収縮量が増加する傾向や、ブリーディング量の抑制や圧縮強度が材齢初期から増加する傾向が認められた。
  • 竹津 ひとみ, 加形 護, 鈴木 徹, 冨吉 末広
    2010 年 64 巻 1 号 p. 231-237
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物の更新に伴い発生する再生骨材の用途展開およびコンクリート舗装の普及を目的とし、再生骨材を用いた転圧コンクリート舗装(RCCP)を検討した。使用した再生粗骨材中の原骨材は、川砂利が多く含まれており、転圧時に骨材の跳ね上がり現象等が起こることが懸念された。そこで、再生粗骨材の混合率を変え、施工性への影響について室内試験および試験施工にて比較検討を行った。その結果、本実験範囲内では、砕石を用いた配合と同等の施工性が確認された。
  • 沢木 大介, 小林 久美子, 野口 康成, 坂井 悦郎
    2010 年 64 巻 1 号 p. 238-243
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    硬化コンクリート中のセメントの化学組成は、著者らが確立したEPMAマッピング分析による方法により、高い精度で求めることができる。本論文では、こうして求めたセメントのCaO含有率を、セメント協会法による配合推定に適用することを提案した。年代が古く、使用されたセメントの化学組成が不明のコンクリートについて、EPMAマッピング分析により、使用されたセメントのCaO含有率を求めた。この値を用い、セメント協会法により推定した水セメント比は、普通セメントとして一般的なCaO=65%とした場合の推定値より0.1近く低かった。この水セメント比を基に予測した中性化深さは実測値ときわめて近く、水セメント比の推定値が妥当であることを示した。
コンクリートの物性
  • 宮澤 伸吾, 横室 隆, 藤原 浩已, 鯉渕 清
    2010 年 64 巻 1 号 p. 244-250
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    一般のコンクリート構造物に広く適用されることを目標とした高炉セメントA種を開発する。すなわち、化学成分を調整することによって収縮ひび割れ抵抗性の改善を図った高炉セメントA種を用いたコンクリートの基礎性状について、実験によって検討を行った。その結果、試作した高炉セメントA種は、OPCおよび従来の高炉セメントA種と比較して収縮ひび割れ抵抗性に優れていることが分った。また、低温での強度発現性について配慮が必要であるものの、通常の使用ではOPCと同等の強度特性を示し、単位水量および高性能AE減水剤使用量の低減および断熱温度上昇特性の改善効果が認められた。
  • 木村 順哉, 上野 敦, 宇治 公隆, 梶尾 聡
    2010 年 64 巻 1 号 p. 251-256
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    資源循環の観点から、普通エコセメントや再生骨材の使用が要請されている。普通エコセメントを積極的に使用するためには、アルカリ量、塩化物イオン量などの面から考えて、セメント量を減じることが有効となる。また、再生粗骨材を用いる場合の乾燥収縮増大は、セメントペーストを密にして、その体積を顕著に減じることで改善に向かう。このような観点から、本研究では、エコセメントおよび再生粗骨材の適用先として、舗装用超硬練りコンクリートを対象とし、基礎的な特性を検討した。この結果、舗装用超硬練りコンクリートが、両材料の適用先として極めて有効であることが明らかになった。
  • 徳重 英信, 亀島 博之, 川上 洵, 鈴木 弘実
    2010 年 64 巻 1 号 p. 257-264
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    天然ゼオライトを混和した植栽ポーラスコンクリート平板の実用化を目的として、その曲げ強度向上の手法について検討を行った。その結果、天然ゼオライト混和ポーラスコンクリート平板をセメントモルタル平板と積層化することによって、植栽コンクリート平板としてのJIS要求強度を確保することが可能となることが明らかとなった。一方、植栽時の植物の根酸による劣化を想定したクエン酸水溶液浸漬試験を行った結果、曲げ強度の低下は10%程度であり、植栽時の根酸が強度性能低下へ及ぼす影響は大きくないものと考えられる。
  • 藤原 浩已, 横室 隆, 鯉渕 清, 小山田 邦弘
    2010 年 64 巻 1 号 p. 265-271
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント分野における地球温暖化問題の対策の一環として、製造時に温室効果ガスの主要因とされる二酸化炭素を多量に排出するセメントクリンカーの使用量を減じることは非常に効果的な手法であると考えられる。本研究では、環境負荷低減を目指しながらも、従来の普通ポルトランドセメントと同等以上の物性を有し、さらに高付加価値を有する“低収縮型高炉セメントA種”を開発し、その硬化性状、ひび割れ抵抗性について検討した。その結果、低収縮型高炉セメントを用いたコンクリートは普通コンクリートと比較して、圧縮強度が同等であっても、ひび割れ抵抗性が向上することが分かった。
  • 佐藤 あゆみ, 山田 寛次, 石山 智
    2010 年 64 巻 1 号 p. 272-279
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    スラグ細骨材を混入することにより、コンクリート強度(バルク部)と同様に打継ぎ界面の力学特性値が向上する理由について、破面解析的考察を行い、下記の三つのメカニズムによることを明らかにした。
    (1)スラグ細骨材が潜在水硬性を有するため、スラグ細骨材の付着力を向上させる。また混練時に破砕したスラグ微粉末が水/粉体比を下げると共にCH(水酸化カルシウム)を消費する。
    (2)スラグ細骨材の機械的アンカー効果が高く、破壊エネルギー向上に寄与する。
    (3)後打ちコンクリートの打設後に、ブリーディング水が先打ちコンクリート面を伝って、上昇するため打継ぎ界面にCH層が生じるが、スラグ細骨材の潜在水硬性が有効に作用する。
  • 山田 和夫, 瀬古 繁喜, 関 俊力, 神谷 隆
    2010 年 64 巻 1 号 p. 280-287
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究では、アンカー筋によって補強された外側耐震補強コンクリート接合部のせん断耐力に及ぼすアンカー筋の埋込み深さと既存・補強接合面の凹凸形状の影響について検討を行った。その結果、補強部の浮き上がり量は、接合面に凹凸がある場合はアンカー筋の埋込みが浅くなるに従って増大するが、接合面がフラット面の場合はアンカー筋の埋込み深さと明確な相関を示さないこと、接合部のせん断耐力に及ぼすアンカー筋の埋込み深さと接合面の凹凸形状の影響は、式[1]~[4]によって比較的良く説明できること、接合面がフラット面の場合は全体的に延性的な荷重-滑り量関係を示すこと、などが明らかとなった。
  • 桜井 邦昭, 近松 竜一
    2010 年 64 巻 1 号 p. 288-294
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    収縮ひずみを考慮した配合設計を行うためには、配合条件が収縮ひずみに及ぼす影響を把握するとともに、各種の収縮制御対策による効果を定量的に把握する必要がある。そこで、配合条件を変化させた場合、ならびに各種の収縮低減対策を講じた場合について長さ変化試験を行った。その結果、収縮ひずみは、単位水量が10kg/m3増加すると20μ程度増加すること、収縮低減機能を有する減水剤を使用するとそれを用いない場合に比べ15%程度減少すること、および養生期間を長くして乾燥の開始材齢を遅らせると収縮ひずみが低減されること、などが明らかになった。
  • 松家 武樹, 鈴木 康範, 堺 孝司, 福留 和人
    2010 年 64 巻 1 号 p. 295-302
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究は、フライアッシュおよび高炉スラグ微粉末の組合せによるコンクリートの一般性能および環境性能の最適化を図るための基礎的な情報を得るために、上記の混和材の利用が土木用コンクリートと建築用コンクリートのフレッシュ性状および強度・物理特性ならびに中性化に及ぼす影響と環境負荷低減効果について明らかにすることとした。その結果、フライアッシュおよび高炉スラグ微粉末の併用は、混和材無混入と比べて初期強度を低下させるが、材齢28日のコンクリートの強度やフレッシュ性状ならびに耐久性は同等程度の性能であること、および1N/mm2あたりの圧縮強度を得るために排出されるCO2量を減少させることが明らかとなった。
  • 小田部 裕一, 中村 士郎
    2010 年 64 巻 1 号 p. 303-308
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    乾燥収縮ひずみは時間の経過に伴って増加し、その発現は数年先まで継続する。その過程において、短期材齢から長期材齢に至るまでの乾燥収縮ひずみの伸び率(経時変化特性)を議論することは長期の乾燥収縮ひずみを予測する上で非常に重要である。著者らは、その乾燥収縮ひずみの経時変化特性がコンクリートの単位水量、水セメント比、使用骨材の吸水率といった基本的な配合・材料特性に依存することを見出し、それらをパラメータに設定することで乾燥収縮ひずみの経時変化特性を表現した。更に、その経時変化特性を既往の乾燥収縮ひずみ予測式に組み込むことによって短期材齢における実測ひずみから長期のひずみを高精度に予測することができた。
  • 齋藤 尚, 西 元央, 鈴木 康範, 小林 哲夫
    2010 年 64 巻 1 号 p. 309-315
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究では、高炉スラグ分量を比較的少なくすることによって強度発現性の向上が期待でき、高炉スラグを少ない量ながらも広い範囲に使用することによってCO2の削減に寄与できると考え、この高炉セメントを使用したコンクリートの強度特性、収縮特性、ひび割れ抵抗性などの各性状を、普通コンクリートを対象に比較検討した。スラグ分量20%の試製高炉セメントの自己収縮ひずみは、水セメント比が55%では普通セメントと同程度であったが、水セメント比が45%より小さくなると、高炉セメントB種と同等に大きくなった。また、その他の性状は普通セメントと高炉セメントB種の中間に位置付けられることがわかった。
  • 栖原 健太郎, 辻 幸和, 吉野 亮悦, 芦田 公伸
    2010 年 64 巻 1 号 p. 316-322
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    膨張コンクリートを用いたCPC(Chemically pre-stressed concrete)部材の優れた力学性状については、多くの報告がなされているが、構造体としての評価事例は少ない。本稿では、仕事量一定則の概念を考慮した積層モデルによる断面解析とマトリクス構造解析とを組み合わせた評価方法を提案し、曲げモーメントと軸方向力およびせん断力とが作用するボックスカルバートを対象とした載荷実験の結果と対比して、その適用について検討した。その結果、仕事量一定則の概念によりケミカルプレストレスおよびケミカルプレストレインを評価し、これを積層モデルに考慮することで、CPCボックスカルバートの頂版、底版および側壁に作用する断面応力度を適切に評価でき、設計に採り入れられることを明らかにした。
  • 吉本 徹, 佐藤 良一
    2010 年 64 巻 1 号 p. 323-330
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    コンクリートの曲げ強度の寸法効果は古くから知られており破壊力学的な観点からそのメカニズムも解明されている。一方、コンクリート舗装の設計は曲げ疲労から版厚を求めており、このとき用いる設計曲げ疲労曲線は、供試体寸法が150×150×530mmによる実験結果から求めている。しかし、実際のコンクリート舗装の版厚は250~450mm程度と実験に用いた供試体より版厚が厚いのが現状である。本研究ははり高さが150mmと450mmの2種類の供試体を用いて曲げ疲労試験を実施し、寸法効果の確認を行った。その結果、版厚が厚くなると疲労破壊回数が増加することが分かった。さらに、曲げ疲労破壊の寸法効果のメカニズムを破壊力学の観点から明らかにした。
耐久性
  • 長谷川 拓哉, 千歩 修, 中野 佑樹
    2010 年 64 巻 1 号 p. 331-337
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    低水セメント比コンクリートは、乾燥や乾湿繰返しを受けると耐凍害性が著しく低下するものがあることが報告されている。本報告では、そのメカニズム解明の基礎データとするため、乾燥を受け、含水率分布を生じたコンクリート断面の凍結融解時の水分状況を検討するとともに、乾燥日数により含水率を変えた試験体の耐凍害性について検討を行った。その結果、凍結融解時の試験体は、内部の凍結水量は小さいが、乾燥の影響を受けた試験体表面から10mmの凍結水量は大きいこと、内部から表層へ水分が移動する場合があること、乾燥日数の増加に伴い体積含水率が低下すると、凍害劣化が大きくなる傾向があること、同じ含水率でもその分布によって凍害劣化が異なること等の知見を得た。
  • 岩浅 瑛大, 名和 豊春, 福島 浩樹, Y. Elakneswaran
    2010 年 64 巻 1 号 p. 338-345
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    近年、セメントペースト中の物質輸送メカニズムは耐久性に関する問題として大きな注目を集めている。水和セメント表面が電気二重層(EDL)を形成することは知られているが、本研究では、EDLの影響を考慮した物質輸送予測の研究を行った。熱力学的平衡論に基づく地球科学コードPHREEQCによる表面錯体モデルを用いて物理吸着反応における平衡定数の算出を行い、C-S-H表面への塩化物イオンの物理吸着計算を行った。また、イオン拡散の計算に相平衡モデル、表面錯体モデル、多種イオン拡散モデルを総合的に用いた拡散係数の予測を、PHREEQCを用いて行った。モデルの検証の結果、物理吸着量及び塩分浸透量ともに実験結果と良い相関が得られた。これらの結果より、多種イオン拡散のモデル化が可能となった。
  • 菊地 道生, 須田 裕哉, 佐伯 竜彦
    2010 年 64 巻 1 号 p. 346-353
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    セメント系硬化体中のイオン移動性状に影響を与える要因として、空隙構造および細孔表面の電気的性質が挙げられる。本研究では、酸素の拡散係数により空隙特性である屈曲度を求め、C/S比によるC-S-Hの物理的性質が屈曲度に及ぼす影響について検討した。その結果、C/S比ごとのC-S-H比表面積の違いにより、空隙構造が変化していると考えられた。また、塩化物イオン実効拡散係数から求めた屈曲度と、酸素拡散における屈曲度の比較を行った。細孔直径6nm以下の空隙量が多いほど、塩化物イオン拡散における屈曲度と酸素拡散における屈曲度の比、即ち塩化物イオン拡散経路の延長度が増大する傾向を示した。
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