セメント・コンクリート論文集
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65 巻, 1 号
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セメント化学
  • 新 大軌, 山田 航士, 伊藤 昭則, 坂井 悦郎
    2011 年 65 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、モンモリロナイトが櫛形高分子系分散剤およびグルコン酸ナトリウムを添加したセメントの水和反応や流動性に及ぼす影響について検討を加えた。櫛形高分子系分散剤を添加した場合、セメントの初期水和反応の遅延作用および分散作用に及ぼすモンモリロナイトの影響は非常に大きく、グルコン酸ナトリウムを添加した場合は遅延作用に及ぼすモンモリロナイトの影響は櫛形高分子系分散剤に比較して小さいことを明らかとした。これは、櫛形高分子系分散剤の場合はモンモリロナイト添加によりセメントへの吸着量が激減するが、グルコン酸ナトリウムの場合はセメントへの吸着量変化が小さいためであると推察した。
  • 宇城 将貴, 三田 卓, 新 大軌, 坂井 悦郎
    2011 年 65 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、フライアッシュバルーンを用い水粉体比を低下させたセメント系軽量固化体の水熱合成について検討を行った。FABは密度約0.75g/cm3、50%体積平均径159μmの中空球状粒子であり、通常のフライアッシュと比べると、化学組成は同等であるが、構成化合物は、ガラス相が67%と大部分を占め、ムライトが26%と多く、α-quartzは2.4%と非常に少なかった。FAB-LHC系の水熱合成において、ペーストの流動性と材料分離抑制の両立はSF、分散剤、増粘剤の併用が有効であった。固化体の密度は0.85~1.05g/cm3程度で、圧縮強度は15~22N/mm2となった。FABの外殻は水熱反応後も残存しており、また、貫通細孔量が減少しており凍結融解抵抗性が高く物質透過性を低くすることで耐久性の向上が期待できる。
  • 神尾 哲治, 新 大軌, 丸屋 英二, 坂井 悦郎
    2011 年 65 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    セメント製造時の廃棄物処理量を増加する上で、アルミネート相(C3A)量を増大したセメントの流動性を制御する技術が重要である。本研究ではアルミネート相量を9%から12%に増大させたセメントに対して、遊離石灰量を変え、さらに石灰石微粉末を置換してC3A高含有セメントの流動性を解析した。その結果、C3A12%のセメントの遊離石灰量を1%にし、石灰石微粉末を5%置換することで、C3A9%のセメントと同等の流動性が得られた。この流動性改善効果は、C3Aの初期水和を抑制する効果によるとした。
  • 坂井 悦郎, 安斎 剛史, 新 大軌, 池尾 陽作
    2011 年 65 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    ポリカルボン酸系高性能AE減水剤を添加した際の初期水和性状を考慮し、無水セッコウ添加量、OPC量添加量、高炉スラグ微粉末の粉末度および石灰石微粉末の置換量などを変化させ、高炉スラグ高含有セメントの材料設計を実施した。また、それら組成の高炉スラグ高含有セメントの長期水和についても検討を行った。初期水和性状を改善するためには、BFSは比表面積6,000cm2/gとしOPC量は20~30%程度とするか、BFSの比表面積が4,000cm2/gの場合にはOPC量は30%程度とするかLSPによりセメントの一部を置換する必要がある。長期材齢での、これらのセメントの高炉スラグの反応は、粉末度の大きな場合やセッコウ量が少ない場合に大きな値を示したが、他の組成の影響は見られなかった。
  • 佐々部 智文, 新 大軌, 玉木 伸二, 坂井 悦郎
    2011 年 65 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、分子構造の異なる2種類の高分子系分散剤の高炉スラグ高含有セメントへの吸着、分散作用について検討を加えた。その結果、分散剤の官能基の量で高炉スラグ、OPCへの吸着傾向が変化することが判明した。官能基が多い場合、分散剤は高炉スラグ高含有セメント中の高炉スラグ、OPCの両方に吸着し分散させてセメントペースト全体の流動性を確保するので、添加効率が高い。官能基が少ない分散剤はOPCへの吸着は少なく、高炉スラグに吸着し分散させてペースト全体の流動性を確保する。後者の分散剤でも高炉スラグ高含有系では添加率を増加させれば流動性を確保できる。分散剤液相残存濃度が高いため流動性の経時保持に有利に働く可能性がある。
  • 依田 侑也, 大宅 淳一, 新 大軌, 坂井 悦郎
    2011 年 65 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、石灰石微粉末が大量に存在する場合の高炉スラグ高含有セメントの六価クロム固定化について検討を加えた。また、合成したCa3Al2O6を用いて、Ca3Al2O6-CaCO3-CaSO4・2H2O系水和生成物と六価クロム固定化との関連を整理し、モノカーボネートやヘミカーボネートへの固定化について検討を行った。その結果、高炉スラグ高含有セメントに石灰石微粉末を混和し、ヘミカーボネートやモノカーボネートが主要な生成物である場合でも六価クロムの固定化は可能であった。また、合成した水和物を用いた結果からヘミカーボネートやモノカーボネートでも六価クロム固定化は可能であるが、モノカーボネートによる固定化はモノサルフェートに比べて起こりにくいことが明らかとなった。
  • 小泉 公志郎, 梅村 靖弘, 露木 尚光
    2011 年 65 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    フライアッシュはポゾラン活性を有する良質な混和材料であり、近年ではフライアッシュを大量に混和したプレキャストコンクリート製品への応用も進んでいる。しかしながらポゾラン反応と一般的なセメントの水和反応の差異に関して、生成する水和物の観点から研究している例は少ない。本研究ではポゾラン反応により生成するケイ酸カルシウム水和物、特にシリケート相におけるシロキサン鎖の鎖長分布に着目して検討を行った。フライアッシュと水酸化カルシウムを混合したペーストにおいてシロキサン鎖の分布を分析したところ、反応初期に一旦長鎖化したシロキサン鎖はポゾラン反応の進行と共に短鎖長化に転じる傾向にあり、一般的なセメントの水和反応のケースとは全く異なる挙動を示すことが分かった。また、加温によるポゾラン反応への影響を検討したところ、反応温度が高いほどシロキサン鎖が短鎖長化に転じるのが速くなる一方で、C-S-Hゲルの生成量は増加する傾向にあることが確認された。
  • 服部 廉太, 湊 大輔, 後藤 卓, 名和 豊春
    2011 年 65 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究ではXRD/Rietveld法および29Si MAS-NMRを併用することで、水和反応過程にC-S-Hの前駆体として存在するintermediate phaseの定量法を提案した。また養生温度を変えることで、C3Sの溶出反応およびシリケートの重合反応における温度による影響を観察した。両者は共に温度依存性を示し、養生温度が高いほど反応率が大きくなる傾向を示した。しかしながら、それらを組み合わせて算出したintermediate phase量の経時変化は養生温度と相関を持たなかった。C3Sの溶出反応とシリケートの重合反応の温度依存性は反応初期においては前者が大きく、反応長期においては同様の傾向を示した。反応初期においてintermediate phase量を保持することが最終的にC3Sの水和反応を促進させる可能性が示唆された。
  • 岩浅 瑛大, 合田 義, 名和 豊春, Yogarajah ELAKNESWARAN
    2011 年 65 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    塩化物イオン拡散メカニズムの解明は構造物の耐久設計に重要である。塩化物イオンの拡散過程において、特にC-S-H表面への物理吸着の影響が支配的であるとされているが、C-S-H表面における電気的性質について明らかにされていない。そこで本研究では、C-S-H表面における反応基であるSiOH基の表面錯体反応を考え、SiOH基密度や表面錯体反応の平衡定数の算出を目的とした。算出においては表面錯体モデルを用い、SiOH基の電離やカルシウムの吸着をモデル化し、塩基滴定実験やカルシウム吸着実験の実験結果と照合することにより、Ca/Siの異なる合成C-S-Hの表面電荷密度および平衡定数の算出を行った。その結果、SiOH基密度と平衡定数がC-S-HのCa/Siに依存することが明らかとなった。
  • 湊 大輔, 平沖 敏文, 名和 豊春, 後藤 卓
    2011 年 65 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    セメント硬化体に対する乾燥収縮低減剤(SRA)の作用機構を解明する新たな知見を得るために、練混ぜ水に乾燥収縮低減剤を添加し、2H NMRを用いて3種の相対湿度(以下RH)条件下で乾燥した白色セメント硬化体中の、重水素原子の運動性について検討した。2H NMRスペクトルの解析結果から、キャピラリーの水分子はSRAの添加によって運動性が低下しているが、それによってキャピラリーからの水の逸散に変化はないこと、カルシウムシリケートハイドレート(C-S-H)中の3種の細孔であるinter layer、small gel pore、large gel poreのうち、SRAはlarge gel poreのみに存在することが示された。この結果はSRAがlarge gel pore内でC-S-Hの構造を保持することによって乾燥収縮を低減するとした説を支持するものである。
  • 山本 準紀, 高橋 眞兵, 名和 豊春
    2011 年 65 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    白色セメントを用いたセメント硬化体におけるアルミネート相の水和反応解析を行った。XRD・リートベルト解析およびTG-DTA、DSCの結果から考慮したAl元素の物質収支より、養生温度が高くなるとC-A-H中に含まれるAl量が多くなるということが確認された。また、既往のアルミナセメントの水和反応速度モデルをアルミネート相単独に適用した場合、第1ピークへの適用は可能であると判断できたが、第2、第3ピークへの適用に関しては検討の余地があることが示された。さらに、第1ピークの水和の停滞は、C3A表層にC-A-Hが生成されるためであり、養生温度が高くなると生成されるC-A-H量が多くなり、物質拡散を阻害するものと推察された。
  • 鈴木 保任, 野口 康成, 丸田 俊久
    2011 年 65 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    セメントや混合材は種類によって特定の色調を有している。色調の類似した材料は多く存在するが、工場や現場などでは材料が限定されるため、色調測定によりセメントの種別の特定や異物混入の有無を判定できると考えられる。そこで本研究では、現場で測定可能な汎用型色差計を製作し、実用性の検討を行った。その結果、普通セメント、中庸熱セメント、高炉セメントB種およびエコセメントの判別を容易に実施することができた。また、普通セメントに異物として添加した高炉スラグや石灰石の5%程度の差異を識別することができた。本装置による測定時間はわずか5分と迅速で、現場での品質管理に有効な手法であると言える。
  • Makio YAMASHITA, Hisanobu TANAKA
    2011 年 65 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    Decreasing the burning temperature of cement clinkers leads to a rational reduction of CO2 emitted from the cement industries. This study examines the use of CaF2 and CaSO4 as a mineralizer or flux. It was possible to reduce the burning temperature 100℃ below that of the current process(1450℃)by controlling the fluorine and sulfur trioxide in the clinker. The setting and hardening properties of the low-temperature cement equal those of ordinary Portland cement. It was also found that the coating effect of additional mineralizer components on the preheater was insignificant.
  • 杉本 賢三, 前田 直哉, 中村 明則, 加藤 弘義
    2011 年 65 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    セメントクリンカーの性状は、焼成温度、焼成時間、原料の組成や粒度などを含む反応性、さらには設備規模など様々な要因の影響を受ける。また、キルンコンディションを管理する指標としては、駆動負荷、ガス温度の測定など各種指標が挙げられるが、焼成において最も重要な条件の一つとして考えられるキルン内最高温度領域の直接的な温度情報を得ることは、困難である。本研究では、クリンカー解析手法として、クリンカー空隙に着目しクリンカーの被焼成温度の推定手法について検討した。その結果、クリンカーが受けた焼成温度を超える再焼成で変曲点が得られ、被焼成温度の推定が可能になることを見出した。
セメント硬化体・モルタルの物性
  • 小林 晋吾, 小澤 満津雄, 栖原 健太郎, 森本 博昭
    2011 年 65 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では仕事量一定則に着目し、膨張コンクリートによる導入応力算定の基礎的な資料を得るために、20℃、30℃、50℃の温度履歴を与え、膨張モルタルの一軸拘束試験を実施した。さらに、各材齢で熱分析・SEM観察を行い、膨張性能と水和生成物の生成状況との比較検討を行った。その結果、膨張性能に温度依存性が示唆され、高温環境下では膨張性能の低下が確認された。また、熱分析・SEM観察から20℃、30℃においては膨張の要因となるエトリンガイトの生成が確認されたが、50℃においてはエトリンガイトが減少する可能性が示唆された。これは、本研究では昇温速度が大きかったことが影響していると考えられ、温度依存性は水和生成物の生成のタイミングに影響することが示唆された。
  • 須田 裕哉, 土田 詩織, 佐伯 竜彦
    2011 年 65 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント系材料から生成されるC-S-Hの組成と比表面積との関係を明らかにするため、合成C-S-Hおよび合成エーライトから水和生成したC-S-Hについて検討を行った。また、C-S-Hに加え、水酸化カルシウムおよびカルシウムアルミネート系水和物等の比表面積も測定した。その結果、任意の湿度環境下においてC-S-HのC/S比とH/S比は直線関係であることを明らかにし、その結果を利用して、C-S-HのC/S比と比表面積の関係について新たな推定式を提案した。C-S-Hの比表面積の推定式およびC-S-H以外の水和物の比表面積を用いて、セメントペーストの相組成より硬化体の比表面積を推定し、提案式の妥当性を検証した。
  • 李 春鶴, 田中 佳宏, 横塚 清規
    2011 年 65 巻 1 号 p. 111-117
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、拘束が膨張モルタルの細孔構造および酸素拡散係数の変化に及ぼす影響について基礎的な研究を行った。膨張材の有無、拘束の有無のモルタルに対して、酸素拡散係数、連続空隙の概念を含む細孔径分布、膨張量などの計測をすることで、拘束が膨張モルタルの細孔構造や物質移動抵抗性へ及ぼす影響を明らかとした。拘束がある場合、膨張モルタルの連続空隙量は減少し、それに伴い酸素拡散係数が小さくなった。また、仕事量の概念を導入することで、拘束による膨張モルタルの物質移動抵抗性の評価を試みた。
  • 鏡 健太, 佐藤 正己, 梅村 靖弘
    2011 年 65 巻 1 号 p. 118-125
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、フライアッシュ(FA)を混和したプレキャストコンクリート(PCa)製品用セメントモルタルを蒸気養生した場合の養生工程における前置時間、昇温速度、最高温度継続時間、降温速度が水和反応に及ぼす影響についてXRD/リートベルト法とTG-DTAおよび選択溶解法を用いて検討した。その結果、C3SおよびFAの反応率と比較してC2Sの反応率は蒸気養生工程に影響され、特に最高温度継続時間と降温速度に大きく影響を受けることが明らかとなった。1日2サイクル製造の蒸気養生工程は、1日1サイクルの蒸気養生工程と比較し、材齢3日までのC3SとFAの反応率は低下したが、出荷材齢14日ではC3Sの反応率が同等となり、C2Sの反応率は材齢3日以降から大きく増進した。
  • 河合 研至, 菊地 博満, 高谷 隼人, 林 明彦
    2011 年 65 巻 1 号 p. 126-131
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    近年循環型社会への変遷に伴い、コンクリート分野でも廃棄物を有効利用する取り組みが行われている。一方で産業廃棄物を再利用したコンクリートには、重金属溶出といった二次的環境問題の発生が懸念されている。よって本研究では重金属種の中の鉛に着目し、鉛の長期的な予測手法の確立を目指すための第一段階として、まず鉛の溶出機構を明らかにすることを目的とし、セメント硬化体中における鉛の吸脱着特性、鉛の溶出挙動について実験的に検討した。その結果、溶媒をCaCl2・2H2O溶液とした場合の吸脱着特性は、溶媒が純水、NaCl溶液、KCl溶液、LiCl溶液の場合と大きく異なり、脱着量が非常に大きいことが明らかとなった。
  • 寺本 篤史, 五十嵐 豪, 丸山 一平
    2011 年 65 巻 1 号 p. 132-139
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    水セメント比が30%、40%、55%、骨材体積比が0%から60%の12調合のセメント硬化体及びモルタルを作製し、若材齢から縦波・横波伝搬速度試験を行うことでポアソン比と動弾性係数を得た。その結果、骨材量により速度は異なるが、全ての試験体でポアソン比は硬化に伴い減少し、ある値に収束した。ポアソン比の経時変化を考慮して、複合則理論によって動弾性係数の骨材量依存性を検討した結果、ポアソン比を考慮しない場合と比較して、骨材量が40%以上の領域で若材齢における推定精度が向上するものがみられた。一方、骨材量が60%のものは動弾性係数を過大に推定する結果となり、空気量の影響を考慮する必要があると考えられた。
  • 五十嵐 豪, 丸山 一平
    2011 年 65 巻 1 号 p. 140-145
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    合成したC-S-Hに関して、Ca/Siモル比の変化に伴う水蒸気吸着性状の変化について検討を行った。水蒸気吸着等温試験および熱分析により、C-S-Hの水蒸気吸着性状に関する実験値を取得し、Nonatらが提唱しているC-S-H溶解平衡モデルを基とした構造モデルおよび水蒸気吸着モデルを提案し、水蒸気吸着BET比表面積の予測を試みた。その結果、Ca/Siモル比の変化に伴う比表面積の変化をC-S-H表面の反応基の変化に基づき予測できるモデルが構築された。
  • 黒澤 利仁, 湊 大輔, 服部 廉太, 名和 豊春
    2011 年 65 巻 1 号 p. 146-152
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    乾湿繰り返しや乾燥による硬化セメントペースト中のカルシウムシリケートハイドレート(C-S-H)の構造変化について、細孔構造測定前試料を乾燥させない手法により検討した。DSCを用いたサーモポロメトリーの解析結果から、乾湿繰り返しや乾燥により直径数nm~10nmの細孔量が減少し、10~100nmの細孔量が増加することを示した。29Si MAS NMRの結果から、水中養生試料に比べ乾湿繰り返しや乾燥試料ではシリケートアニオン鎖の平均鎖長の伸展がみられ、それに伴うGlobuleの緻密化によりC-S-Hの構造が変化した可能性が示された。
  • 永谷 佳之, 名和 豊春, 栗山 広毅
    2011 年 65 巻 1 号 p. 153-160
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本論は、細孔中の水分の凍結・融解に伴い発生する潜熱-温度関係から熱力学的平衡式に基づき細孔半径との関係を求めるサーモポロメトリーを用いてセメント硬化体の細孔径分布を測定したものである。その結果、従来の理論式では正確な予測ができないことを明らかにし、未凍結水が細孔壁を濡らしている状態での熱力学状態式に基づいて正確な細孔径-融点降下式を提案した。次に、セメント硬化体の細孔構造をサーモポロメトリーで測定し、インクボトル型細孔の存在を明らかにするとともに、細孔径分布を高い精度で定量化できることを示した。さらに、従来の水銀圧入法では水和物組織が破壊され、正確な細孔構造が測定できていないことも明らかにした。
  • 青山 琢人, 胡桃澤 清文, 名和 豊春
    2011 年 65 巻 1 号 p. 161-167
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    硬化セメントペーストからのCa2+の溶脱に伴うC-S-Hの劣化を考慮した物質移動特性変化について基礎的な知見を得ることを目的とし、促進溶解試料を用いセメントペーストのCa2+溶脱に伴うC-S-HのCa/Siの変化、マイクロ弾性係数の変化より、C-S-Hの物質移動特性の変化について検討を行った。この結果、溶脱に伴うC-S-HのCa/Siの低下とマイクロ弾性係数の低下には相関関係があり、これより、C-S-HのCa2+溶脱に伴うCa/Siと拡散係数の変化の関係を構築した。またこの関係を用い、健全な試料から、Ca2+の溶脱を考慮した促進溶解試料の拡散係数の推定を行った結果、実測値に対し精度よく推定を行うことができた。
  • 斎藤 豪, 張 正菊, 李 允燮, 大即 信明
    2011 年 65 巻 1 号 p. 168-175
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、普通ポルトランドセメント(OPC)-高炉スラグ微粉末(BFS)-石灰石微粉末(LSP)-無水石こう(AH)系材料のMgSO4溶液による劣化機構を明らかにすること、BFS、AH、LSPがMgSO4抵抗性に与える影響を明らかにし、MgSO4抵抗性および、MgSO4とNa2SO4とを併せた総合的な耐硫酸塩性を向上させる材料設計を提案することを目的とした。その結果、MgSO4浸漬によりセメント系材料が初期に収縮し、その後膨張する挙動を示したのは、それぞれ、浸漬初期にCHが消失してそのスペースにMg(OH)2が生成したこと、二水石こうおよびエトリンガイトが生成・結晶成長したことに起因するものと考察した。またBFS置換率70%とした材料に、AHを5-10%およびLSPを5-20%併用混和することで耐硫酸塩性が向上することを示した。
  • 保木本 智史, 内藤 英晴, 石田 積, 大下 英吉
    2011 年 65 巻 1 号 p. 176-183
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、ゼオライトのイオン交換能によるNa、K金属の捕集効果に着目し、普通ポルトランドセメントに人工ゼオライトを混和材として混入した状態におけるアルカリイオン濃度の変化を観察するとともに、ひび割れ抵抗性の検討を行うことを目的とした。また、水和率の計測や細孔径分布の測定により、ゼオライトがセメントペーストの細孔構造に与える影響の確認を行った。その結果、ゼオライトを混入するとペースト中のアルカリ金属が捕集されることと、ひび割れ抵抗性が向上することを確認した。しかし、ひび割れ抵抗性はNa、Kイオンのアルカリ金属の影響だけでなく細孔構造や水和にともなう生成物質などが複合的に影響を及ぼしているものと推測される。
  • 浅野 博樹, 田中 久順, 中西 陽一郎, 山下 牧生
    2011 年 65 巻 1 号 p. 184-189
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    地球温暖化ガス削減による環境負荷の低減を目的に、高炉セメントのベースセメントの一部を石灰石粉と置換したセメント(高炉スラグ量は40%に固定)について研究を行った。その結果、粉末度が3,500cm2/gおよび5,480cm2/gの石灰石粉を、ベースセメントに対して10~30%置換することにより、現行の高炉セメントと同一の品質(流動性および強さ)となるモルタルが得られることが分かった。本モルタルの単位量当たりに使用されるベースセメント量(クリンカー量)は従来のものよりも少ないため、開発したセメントを利用することで、コンクリート構造物におけるセメント材料を起源とするCO2排出量の低減につながる。
  • 三隅 英俊, 丸屋 英二, 高橋 俊之
    2011 年 65 巻 1 号 p. 190-195
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    C3A量が12%のクリンカーを用いたセメントについて、断熱養生下でのクリンカー鉱物の反応率および水和特性を調べ、常温養生の試料と比較した。その結果、JISの溶解熱法から測定した水和熱は、C3A量12%と10%の試料を対象とした場合、C3A量が12%の試料の方が高まった。一方、終局の断熱温度上昇量に大差は認められず、この温度上昇量から求めた水和熱についても試料間の差は小さかった。各クリンカー鉱物の反応率を調べた結果、断熱養生におけるC3Aの反応率は、常温養生に比べて低下し、C3A量が多い試料ではその低下幅が大きくなった。このため、C3A由来の水和熱が低減され、セメント中のC3A量の差がそのまま断熱温度上昇量の差として表れなかったと考えられる。
  • 樋口 隆行, 吉野 亮悦, 盛岡 実
    2011 年 65 巻 1 号 p. 196-202
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    エトリンガイト石灰複合型膨張材と各種収縮低減剤(SR)を併用し、モルタル物性におよぼすSR種の影響を調査した。膨張材単独より膨張ひずみが大きくなるSRとやや小さくなるSRが存在した。膨張ひずみが大きくなったSR2とSR10は、SR添加率が0から2%では添加率が高いほど膨張ひずみが大きくなった。SR2やSR10は、膨張材の水和に与える影響は小さいが、セメントの水和を適度に抑制した。膨張材が効果的に膨張ひずみを導入できる有効膨張期間が長くなり、膨張ひずみが増加した可能性が示唆された。乾燥収縮ひずみはすべてのSRで膨張材単独より小さく、膨張材を混和したモルタルのさらなる収縮抑制に効果が認められた。
  • 茶林 敬司, 中村 明則, 加藤 弘義, 佐田 香織
    2011 年 65 巻 1 号 p. 203-208
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    セメント製造では原燃料として廃棄物が使用されているが、廃棄物由来の少量成分がクリンカー中に持ち込まれると、クリンカーの鉱物組成やセメントの物性に影響を及ぼすことが予想される。本研究では、クリンカー組成の異なる場合のTiO2が及ぼす影響について検討を行なった。その結果、TiO2がクリンカーの鉱物組成やセメントの物性に及ぼす影響はクリンカー組成に関わらず同様な傾向を示すことがわかった。また、初期水和や流動性への影響はリートベルト解析によるアルミネート相量で整理でき、強度発現性への影響は、リートベルト解析によるエーライト量で整理できることが確認された。
コンクリートの試験・評価
  • 半井 健一郎, 栗原 勇典, 橋田 浩, 辻埜 真人
    2011 年 65 巻 1 号 p. 209-216
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、鋼製軽量型枠を用いた膨張コンクリートの簡易評価手法について、仕事量の概念に基づく理論的考察を行った。膨張ひずみが700×10-6程度までは、簡易法で計測される鋼製軽量型枠の円周方向の膨張ひずみはJISのA法の一軸拘束膨張ひずみと線形関係にあり、同等かやや小さな値となった。これは、拘束条件と養生条件の違いに由来する仕事量の関係から説明された。また、仕事量一定則に基づき、鋼製軽量型枠の寸法が異なっても、JISのA法との関係を良好に推定できることを示した。一方で、膨張ひずみが700×10-6程度以上では、簡易法のひずみとの関係は非線形となった。
  • 川久保 政亮, 栁内 睦人, 金光 寿一, 渡部 正
    2011 年 65 巻 1 号 p. 217-224
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    サーモグラフィ法からコンクリートの内部診断を行う場合には、太陽光を利用したパッシブ法が効率的である。しかし、期待するコンクリートの表面温度は気象条件や内部欠陥の状態により大きく変動することになり、診断を誤らないためには気象条件が及ぼす診断時刻などの適切な判断が要求される。そこで、本研究では降雨後のコンクリート表面の水分状態が健全部コンクリート及び欠陥部の温度上昇にどのような影響を及ぼすのかを実験的及び熱伝導解析により検討した。その結果、例えコンクリート表面に滞水が見られても、南中時刻までに表面が乾燥すれば急激な温度上昇がおこり、表層部の水分が蓄熱量を高め診断に有効に働くことが明らかになった。
  • 蔵重 勲, 廣永 道彦
    2011 年 65 巻 1 号 p. 225-232
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    近年竣工時の簡便な非破壊品質評価法として注目されながらも、測定結果に対するコンクリートの含水依存性といった実用上の課題が指摘される表層透気試験についてその解決策を検討した。気温20℃、相対湿度60%などの雰囲気に曝露した水セメント比や脱型材齢等が異なる15種類のコンクリート供試体を対象に、材齢約1年までの表層透気係数の推移を把握し、乾燥の進展により長期にわたって測定結果が増大する、すなわち見かけ上品質が悪化するよう評価されてしまうことを確かめた。この問題は検査において危険側の判定につながる可能性があり、その解決法の一つとして乾燥に伴う電気抵抗率と表層透気係数の変化に着目した評価法を検討した。
  • 大野 吉昭, 桝田 佳寛, 鹿毛 忠継
    2011 年 65 巻 1 号 p. 233-238
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    コンクリートのひび割れの原因の一つである乾燥収縮を低減するための対策として、骨材の選定の他に混和材料の使用が試みられている。本研究は、コンクリートの乾燥収縮の低減効果の期待される膨張材と収縮低減材をとりあげ、それらを単独で使用した場合、および併用した場合の乾燥収縮への影響について実験的に検証したものである。実験の結果、日本建築学会「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説(2006)」の収縮ひずみの予測式に示されている低減効果と比較して、収縮低減材の場合は概ね同等であるが、膨張材の場合はより大きな低減効果があること、並びに併用した場合の定量的な効果について明らかにできた。
  • 澤田 巧, 小笠原 哲也, 内藤 英晴, 保木本 智史
    2011 年 65 巻 1 号 p. 239-245
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    フレッシュコンクリート中の単位水量はコンクリートの品質を左右する最も重要な因子の一つである。本研究では、アジテータ車のドラム内にあるフレッシュコンクリート中に棒状の中性子水分計を挿入することで単位水量を測定する手法の開発を目指した。開発にあたっては、アジテータ車のドラム内にある、単位水量を5水準に設定したフレッシュコンクリートに対して測定を行うことで、ドラムの回転状態による影響、γ線密度計による補正の必要性、測定に必要な時間を検証した。その結果、ドラムを低速攪拌回転状態で測定するのが良いこと、γ線密度計による補正は必ずしも必要ではないこと、測定は2分以上とするのが良いことを確認した。更に実工事では作業性も良好なことを確認した。
  • 君島 健之, 井ノ川 尚, 浅野 文男, 川島 恭志
    2011 年 65 巻 1 号 p. 246-253
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、コンクリート中にRFタグを埋設した場合の通信性能と、タグ埋設がコンクリートの物性に及ぼす影響に関して、実験的検討ならびに評価を行ったものである。その結果、タグ内部への水分滲入が通信性能低下の大きな要因であり、コンクリート中での長期防水性能を予め確認したタグを選定することが重要であることを明確にしている。さらに、寸法の異なるRFタグを円柱供試体内の種々の位置に埋設した圧縮強度試験を実施した。その結果、圧縮強度はRFタグの大きさや埋込位置の影響を受けるが、φ16mm以下のRFタグを用いて、円柱供試体の適切な位置に埋め込むと強度低下に影響を及ぼさないことを明確にした。
  • 田中 敏嗣, 鳴瀬 浩康, 小出 貴夫, 入内島 克明
    2011 年 65 巻 1 号 p. 254-260
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、シリカフュームの化学分析への蛍光X線分析方法の導入に向けて、最も重要な課題の一つである試料調製方法に関する基礎データを得ることを目的として、粉末加圧成形に着目し、実験的検討を行った。その結果、適切な試料調製条件で作製した粉末加圧成形試料を分析用試料として用いることで、ガラスビード試料において問題となる揮発成分の影響を受けることなく、シリカフュームの化学分析に蛍光X線分析を適用できることを確認した。
コンクリートの物性
  • 井上 真澄, 山崎 新太郎, 猪狩 平三郎, 岡田 包儀
    2011 年 65 巻 1 号 p. 261-267
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、各種粗骨材の品質がコンクリートの乾燥収縮特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、岩種および物性の異なる各種粗骨材を使用したコンクリートの乾燥収縮特性について実験的検討を行った。その結果、粗骨材の種類によりコンクリートの乾燥収縮ひずみは異なり、骨材粒子単体の乾燥収縮とコンクリートの乾燥収縮には高い相関が認められた。概して粗骨材の吸水率や総細孔量が大きいほど、コンクリートの乾燥収縮が大きくなる傾向を示すが、砂岩は他の骨材と傾向が異なり、吸水率や細孔量は比較的小さいもののコンクリートの乾燥収縮は大きい値を示した。また、鏡面研磨を施した骨材面のSEM観察を行い、骨材内部の微細空隙構造と骨材の収縮との関係性について考察を行った。
  • 尾上 幸造, 関戸 知雄, 中澤 隆雄, 中村 公生
    2011 年 65 巻 1 号 p. 268-275
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、宮崎県中央部10市町村で発生する一般廃棄物および産業廃棄物のうち、可燃ごみを焼却処理して得られる溶融スラグをコンクリート用細骨材として適用するための基礎的検討を行った。室内試験の結果、スラグ置換率25%までであれば、溶融スラグ細骨材を用いたコンクリートのフレッシュ性状、力学特性および耐久性は普通コンクリートと同等以上となること、また、スラグ置換率を大幅に高める場合にはフライアッシュの併用が効果的であることが明らかとなった。さらに、実工場にて溶融スラグ細骨材を用いたプレキャストコンクリート製品を試作し、スラグ置換率30%までの範囲で、その耐荷性能および環境影響に問題のないことを確認した。
  • 小澤 満津雄, 大橋 一樹, 山本 基由, 森本 博昭
    2011 年 65 巻 1 号 p. 276-281
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント系材料の収縮低減方法として天然繊維のジュート繊維を用いた内部養生効果に着目し、ジュート繊維の添加量と収縮低減効果およびフレッシュ性状と強度特性について検討を行った。その結果、繊維混入無し供試体の自己収縮ひずみ(温度上昇開始点から8日間)に比べて繊維混入率0.5、1.0vol%の自己収縮ひずみはそれぞれ12%と36%の低減効果を示した。すなわち、本論文の範囲において繊維混入率1.0%までは自己収縮ひずみの低減効果が確認できた。
  • 石田 聡史, 五十嵐 心一, 小池 祐輝
    2011 年 65 巻 1 号 p. 282-289
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    若材齢から中性化環境におかれたセメントペーストおよびコンクリートの組織変化を画像解析により明らかにし、電気伝導特性およびひび割れの治癒特性に関連付けながら論じた。表層から乾燥をともないながら中性化が進行することにより、中性化部分では内部に比べて多孔質な毛細管空隙構造が形成される。それにもかかわらず、促進中性化環境でのコンクリートの質量変化は小さく、表層部の水和度は気中養生よりも大きい。また、電気伝導率も促進中性化養生を行った場合には継続的な低下が観察された。中性化による微細な空隙レベルでの表層の緻密化が内部水分の逸散を妨げ、これが物質透過や微細なひび割れの治癒に影響を及ぼすと考えられる。
  • 細田 暁, 髙橋 智亮, HA Ngoc Son
    2011 年 65 巻 1 号 p. 290-297
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    高炉スラグ微粉末含有コンクリートについて、外部拘束を受ける場合のひび割れ強度と、同じ温度履歴を受けて無拘束の場合の直接引張強度を比較し、さらにAE法による微細ひび割れの分析をおこなった。拘束試験で得られたひび割れ強度は、無拘束の場合の直接引張強度の約0.7倍となった。拘束を受ける場合、より大きなエネルギーのAEが発生し、骨材界面での剥離とずれによると思われるせん断型のAEが発生した。ひび割れ強度の小さい場合は、AEエネルギーおよびAEイベント数が大きいという相関性が確認された。
  • 吉本 勝哉, 吉武 勇, 津田 久嗣, 井上 正一
    2011 年 65 巻 1 号 p. 298-303
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究の主な目的は、微粒分を多く含む石灰石粗骨材を用いたコンクリートの基礎的性状を調べることである。この論文では、石灰石粗骨材が最大30%までの微粒分を含有していることを想定して、その分の微粒分を石灰石微粉末で代用したコンクリートの断熱温度上昇量や熱膨張係数に加え、初期材齢から長期材齢までの圧縮強度・割裂引張強度性状を報告する。簡易断熱温度上昇試験の結果より、微粉末量による終局断熱温度上昇量への影響がないことを実験的に確認した。また、石灰石微粉末量の違いによる熱膨張係数の変化はほとんどみられないが、一般的なコンクリートより顕著に小さい結果となった。さらに、初期材齢における割裂引張強度は圧縮強度に比べ、石灰石微粉末による強度発現の割合が大きいことが明らかにされた。
  • 齋藤 尚, 堺 孝司, 鈴木 康範, 松家 武樹
    2011 年 65 巻 1 号 p. 304-311
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、フライアッシュおよび高炉スラグ微粉末の比較的少ない置換率の組合せが水結合材比0.30と小さいローカーボンコンクリートの圧縮強度、細孔径分布、自己収縮ひずみおよび収縮ひび割れ抵抗性に及ぼす影響を検討した。さらに、水結合材比の違いがCO2排出量の削減効果に及ぼす影響についても併せて検討した。その結果、材齢28日以降の圧縮強度は、養生条件および混和材料の組合せによらず、混和材無混入と同程度となった。また、CO2排出量の削減効果については、水結合材比による明確な差はみられないので、強度発現性に優れ、環境負荷の小さいコンクリートを製造するためには、適切な水結合材比の範囲があることがわかった。
  • 佐藤 良恵, 小田部 裕一
    2011 年 65 巻 1 号 p. 312-318
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究で対象としている自己治癒コンクリートは、ひび割れからの漏水防止を目的として、治癒能力を持つ混和材を混合したコンクリートである。本研究で用いた自己治癒材は水和を一部進行させ、活性を下げたセメント系材料であり、この材料の水和を利用してひび割れを閉塞するものである。さらに、短繊維および水和抑制材を混合することにより、ひび割れ閉塞の助長および治癒性能の温存が可能となった。この自己治癒材を用いたコンクリートの性能評価として、室内および屋外でひび割れ部からの漏水量の測定を実施したところ、透水開始初期に自己治癒によってひび割れ幅が減少し、漏水量が急激に低下することが確認された。
  • 佐々木 憲明, 後藤 貴弘, 高尾 昇, 鳴瀬 浩康
    2011 年 65 巻 1 号 p. 319-325
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    ビーライト(C2S)含有量が70%と76%のセメントを試製し、市販の低熱ポルトランドセメント(L、C2S含有量58%)と、コンクリートの各種物性を比較した。さらに、温度応力解析によりマスコンクリートの温度ひび割れ抵抗性を比較検証した。その結果、C2S含有量70%以上のセメントは、初期材齢における圧縮強度の低下が認められるものの、材齢91日ではほぼ同等の強度となることを確認した。断熱温度上昇量はLよりも低下し、温度ひび割れ抵抗性が向上することが判明した。ただし、C2S含有量70%と76%の温度ひび割れ抵抗性は同等で、C2S含有量が70%を超える領域では温度ひび割れ抵抗性の向上は認められなかった。
  • 島崎 泰, 泉尾 英文, 石中 正人, 審良 善和
    2011 年 65 巻 1 号 p. 326-333
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    3種類のポルトランドセメントおよび7種類の混合セメントの10種類のセメントを用い、鉄筋を埋設したコンクリート供試体を海洋環境(感潮および海浜)および飛来塩分の影響を受けない気中環境に10年間暴露し、コンクリートの各種物性と鉄筋の腐食状況を調査した。その結果、いずれのコンクリートも圧縮強度の増進が認められたが、その程度はセメントの種類および暴露環境で大きく異なった。また、混合セメントは、海浜および気中暴露環境下で中性化深さが大きいが、感潮暴露環境下で高炉スラグ微粉末およびフライアッシュを使用した混合セメントの鉄筋腐食抵抗性が高くなった。これらの各種調査結果をもとに評価してその原因を推察した。
耐久性
  • 山口 信, 村上 聖, 大谷 俊浩, 武田 浩二
    2011 年 65 巻 1 号 p. 334-339
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では、屋上緑化基盤材としての用途を想定したポーラスコンクリートの乾湿繰返し抵抗性について調べることを目的に、提案されている試験方法(案)よりも乾燥条件が緩やかで、尚且つ温度条件を厳しく設定した試験条件に基づいて乾湿繰返し試験を実施し、乾湿繰返しによるポーラスコンクリートの圧縮性状の変化について実験的検討を行った。その結果、ほぼ4年間にわたる比較的長期間の乾湿繰返しによっても、普通コンクリートと比較した場合、ポーラスコンクリートに特に有意な圧縮性状の劣化は認められなかった。但し、ポーラスコンクリートにおいては、普通コンクリートの場合と比較して試験条件の違いが試験結果に大きく影響することに注意する必要がある。
  • 櫨原 弘貴, 添田 政司, 大和 竹史, 橋本 紳一郎
    2011 年 65 巻 1 号 p. 340-345
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    フライアッシュの有効利用が求められているが、一般土木構造物においては、高炉セメントB種が用いられているにも拘らず、フライアッシュを混和した場合についての研究はあまりなされていない。本研究は、高炉セントとフライアッシュを混和したコンクリートの収縮ひび割れに対する抵抗性および諸特性について検討を行った。その結果、セメントの内割りとしてフライアッシュを使用した場合には、収縮ひずみが低減され、ひび割れ発生数は少なくなるが、貫通ひび割れになりやすいことを確認した。また、塩化物イオンに対する抵抗性の向上や高炉スラグ微粉末6000ブレーン使用した高炉セメントB種に混和した場合には、高炉スラグ微粉末4000ブレーンを使用した場合よりも初期強度および物質移動抵抗性が高くなる結果を示した。
  • 李 榮蘭, 唐沢 智之, 河野 政典, 桝田 佳寛
    2011 年 65 巻 1 号 p. 346-353
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル フリー
    仕上塗材によるコンクリートの中性化抑制効果は、本質的には二酸化炭素のコンクリートにおける拡散係数と仕上塗材における拡散係数との比で評価できる。しかし、コンクリートおよび仕上塗材の拡散係数を直接求めるのは困難である。本研究では、コンクリートの中性化進行を近似的に二酸化炭素が仕上塗材とコンクリート中を定常拡散し、水酸化カルシウムと瞬時に反応するモデルの理論的検討で得られる仕上塗材の拡散係数と中性化抵抗の関係ならびに既往の研究で得られた透気係数と拡散係数の関係を基に、仕上塗材を施した実構造物の透気係数の測定結果から中性化進行を予測する方法を検討したものである。そのため、仕上塗材を施した実構造物から採取したコアの促進中性化試験を行って中性化抵抗を求め、仕上塗材の劣化を考慮した中性化進行モデルを用いてシミュレーションを行い、予測値と実測値とがよく一致することを示した。
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