セメント・コンクリート論文集
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66 巻, 1 号
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セメント化学
  • 浅賀 喜与志
    2012 年 66 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    セメントペースト硬化体を粉砕して得られた粒子とシリカフュームや高炉スラグ微粉末を質量比1:1で混合し、W/S=0.8のペーストを20℃で1週間から10年間養生してポゾラン反応させた。セメント硬化体中に生成していた水酸化カルシウム結晶が減少、消失していく過程と反応中に起こる形態の変化を検討し、以下の結果を得た。セメント硬化体とシリカフューム系試料ではポゾラン反応の進行に伴って、水酸化カルシウムが消失し、水酸化カルシウム結晶の存在した場所は空隙になっていく。さらに反応が進行すると空隙に水和物が析出する。セメント硬化体とスラグ微粉末系試料では、10年養生でも水酸化カルシウムは消失せず、結晶の周囲に大きな空隙は認められない。
  • 齊藤 美来, 新 大軌, 中澤 拓也, 坂井 悦郎
    2012 年 66 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    粗粒フライアッシュ(FA)の有効利用は、環境負荷低減のために重要である。本研究では、低熱セメントの一部をFAとシリカフュームで置換し、充てんシミュレーションを用いて配合を最適化し、充てん性と流動性および水熱反応の関係について検討を加えた。FA置換率が25%以下の領域では、FAが多く充てん性が高いほど流動性は改善した。しかしFAには形状の悪い粒子が存在するため、置換率が25%を超えると流動性は低下した。粗粒FAの置換率を20、25%としたペーストは、水粉体比0.14においても良好な流動性を示し、水熱合成後の硬化体の空隙構造についても実用されている高強度セメントと同等のものが得られた。
  • 大宅 淳一, 新 大軌, 三五 弘之, 坂井 悦郎
    2012 年 66 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    Afm相による六価クロムの固定挙動を明らかする目的で、六価クロムを固定したAFm相に炭酸カルシウムを添加した場合、およびモノカ-ボネート水和物にクロム酸カルシウムを添加した場合における六価クロムの挙動を調査した。前者の場合では、固相はいずれもほぼ変化せず、液相のクロム濃度は炭酸カルシウム添加比に関らず約3.3×10-3mol・dm-3とほぼ一定であった。一方後者では、モノカ-ボネート水和物に対するクロム酸カルシウム添加比が1.0未満ではモノカ-ボネート水和物が残存し、液相のクロム濃度は4.2×10-3mol・dm-3未満であった。また、同比が1.0以上ではクロム濃度がそれ以上に上昇し、モノカ-ボネート水和物は消失し、カルサイトとクロム酸イオンを含むAFm相およびAFt相が生成した。
  • 新 大軌, 山田 将人, 宮内 雅浩, 坂井 悦郎
    2012 年 66 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    スラッジ水中に含まれる残存セメント分を有効活用するため、グルコン酸ナトリウムを用いて水和反応を制御したスラッジ水中に残存しているセメント量を迅速に評価する方法を確立することを目的として検討を加えた。XRDより定量した残存エーライト量と熱量の測定結果から推定した残存エーライト量には相関関係が確認された。また、硝酸マグネシウム及び熱量計を用いてスラッジを模擬したセメントペースト中の残存エーライト量を評価できることを明らかとした。硝酸マグネシウムがグルコン酸ナトリウムにより遅延されたセメントの水和を開始するメカニズムとしては液相に残存しているグルコン酸ナトリウム濃度を低下させるためであると推察した。
  • 新 大軌, 玉木 伸二, 宮内 雅浩, 坂井 悦郎
    2012 年 66 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    分子構造の異なる櫛形高分子系分散剤を用いて高炉セメントへの吸着・分散作用、高炉スラグ置換率が流動性に及ぼす影響について検討を加えた。櫛形高分子系分散剤の分子構造が異なるとセメント、高炉スラグへの吸着特性が大きく異なることを明らかとした。また、セメントへの吸着性が低い櫛形高分子系分散剤を添加した場合は高炉スラグ置換率が増大しても流動性が低下しないこと、セメントへの吸着性が高い櫛形高分子系分散剤を添加した場合は高炉スラグ置換率が増大すると流動性が低下することを明らかとした。セメントへの吸着性が低く高炉スラグへの吸着性が高い櫛形高分子系分散剤が高炉セメント系の分散剤として有効である可能性を指摘した。
  • 久我 龍一郎, 森 寛晃, 小川 彰一
    2012 年 66 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    CaCl2による化学的劣化の一要因と考えられている3CaO・CaCl2・15H2Oについて、セメント硬化体における3CaO・CaCl2・15H2O生成におよぼすCaCl2溶液濃度、および環境温度の影響を、実験的検討と熱力学的相平衡計算から検討した。CaCl2溶液へのセメント硬化体の浸漬では、より高い濃度CaCl2溶液への浸漬と、より低い温度環境で、Ca(OH)2は消失し3CaO・CaCl2・15H2Oが生成した。熱力学的相平衡計算から求めた構成相の変化は実験結果と概ね一致し、計算結果から3CaO・CaCl2・15H2O生成に伴って水和物の総体積が増大した。セメント硬化体の浸漬試験から、3CaO・CaCl2・15H2O生成が体積膨張の原因と推定した。
  • 荻野 正貴, 新 大軌, 坂井 悦郎, 丸屋 英二
    2012 年 66 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    現在セメントの生産量は減少傾向にあるが、他産業からの廃棄物の受け入れ量は増加していく必要がある。しかし廃棄物はセメントと比較してアルミナ成分が多く、廃棄物使用量の増加時には、セメントペーストの流動性悪化が問題となる。本研究では3CaO・Al2O3と4CaO・Al2O3・Fe2O3を増加させたセメントクリンカーに対し、石灰石微粉末やセッコウの添加量を調製し、流動性を改善した。その結果、石灰石微粉末量を10%、SO3量を4%とした際、セメントの初期の水和反応が抑えられ、既存のセメントペーストと近い流動性となることが分かった。
  • 粟村 友貴, 黒澤 利仁, 名和 豊春, 湊 大輔
    2012 年 66 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究では初めに、既報により提案したhydrated monomer(HM)定量に関する新手法1)の定量性を検証した。1H-29Si CP MAS-NMRを用いて算出したHM量と新手法により算出したHM量は、C3Sの材齢7日、28日試料においてよい一致を示した。次に新手法を用いてC3SおよびC2S、C3S+C2S混合物の水和反応におけるHM、C-S-Hを定量した。その結果、水和初期において鉱物は溶解してただちにC-S-Hを生成せずにHMとして存在することが確認された。また、シリケート鉱物の種類が異なると、鉱物の溶解率に対するC-S-Hの生成挙動も異なることが示唆された。さらにC2Sにおいて、C3S+C2S混合物の水和反応ではC2S単体の水和反応と異なるC-S-H生成過程が認められた。
  • 森田 大志, 後藤 卓, 名和 豊春
    2012 年 66 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    化学構造の異なるポリカルボン酸系分散剤(以下、PC)の炭酸カルシウム(以下、CC)への吸着挙動をCC表面のカチオンサイト(>CO3Caサイトおよび>CaOH2サイト)密度に着目して調べた。Ca(NO32の添加によりカチオンサイト密度を変えたCCの懸濁液を用いてPCの吸着量Adの変化を測定した。一方、CCの表面錯体反応を考慮することで、実験に用いた溶媒条件におけるカチオンサイト密度を理論的に計算した。Adの測定値とカチオンサイト密度の計算値との比較を行った結果、PCの飽和吸着時においてPC1分子が占有する面積内に存在するカチオンサイト数Nはカチオンサイト密度に因らず一定と推定された。またNとPCの分子構造には相関が見られ、NはPCの主鎖長に比例する結果となった。
  • 黒澤 利仁, 湊 大輔, 名和 豊春, 服部 廉太
    2012 年 66 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究ではXRD/Rietveld法および29Si MAS-NMRを併用することによるintermediate phaseの定量法を用いて、セメント水和反応過程における水和シリケートモノマーの役割を検討した。水和シリケートモノマーは養生条件により変化し、水中養生においてカルシウムシリケート鉱物の溶解率40%から約30%に保持されることが示された。また、保持された水和シリケートモノマーは高湿度湿空養生や高温養生によりC-S-Hに遷移し、C-S-Hの平均鎖長が増加することが示された。2H NMRの測定によるセメント細孔中の準吸着水層の水層厚さの検討により、細孔内の乾燥により水和シリケートモノマーの遷移が促進される可能性が示唆された。
  • 橋本 敦美, 伊藤 靖, 佐藤 道生, 羽原 俊祐
    2012 年 66 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    硬化セメントペーストを構成する水和生成物であるC-S-H(ケイ酸カルシウム水和物)、エトリンガイト、モノサルフェート水和物ならびに水酸化カルシウムの4種類を単独で合成し、それぞれをCr(VI)、As、Se、B、F及びAlの微量元素を含む溶液中に分散・振とうさせ、振とう後の溶液中の各元素の残存量より、セメント水和生成物による固定化率を求めた。その結果、微量成分毎に、セメント水和生成物への固定化率が異なる特徴があることが分かった。C-S-Hは、Alを固定化しやすく、エトリンガイトはSe、F、モノサルフェート水和物はCr(VI)、Se、B、F、水酸化カルシウムはAs、Se、F、Alの固定能に優れていた。
  • 森 寛晃, 久我 龍一郎, 小川 彰一, 久保 善司
    2012 年 66 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント硬化体をCaCl2溶液に浸せきし、CaCl2劣化に及ぼすセメント種類や水セメント比の影響を検討した。また、劣化を生じたOPCセメントペースト硬化体を用いて反応生成物と変質部の詳細な分析を行った。その結果、硬化体の劣化はCa(OH)2から膨張性の3CaO・CaCl2・15H2Oが生成することで生じ、その劣化程度は3CaO・CaCl2・15H2Oの生成量と硬化体中の空隙量とのバランスによって異なると推察した。そして、溶液作用面から少し内部で生成する3CaO・CaCl2・15H2Oの体積増加が浸透面に沿ったひび割れを引き起こし、セメントペーストと3CaO・CaCl2・15H2Oが交互に積層する層状のひび割れが形成されると推察した。
  • 大野 麻衣子, 黒川 大亮, 平尾 宙
    2012 年 66 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    ニューラルネットワークを利用したセメント品質予測システムを開発した。本システムは既往のデータを用いて、セメントのキャラクターからプロパティーを予測する。模擬的な関数を用いた検証により、本システムの有効性と実運用の方向性が示された。XRD/リートベルト法分析結果等のセメント品質データを本システムに適用することで、既往の知見と一致する傾向の予測結果、及び、従来手法同等以上の予測精度が得られた。本システムの継続的運用及び更なるデータ追加により、これまで以上の品質の安定化、リサイクル原単位向上、及び製造プロセスの最適化が可能となる。
セメント硬化体・モルタルの物性
  • 浅本 晋吾, 加藤 優典, 牧 剛史, 蔵重 勲
    2012 年 66 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究では、既往の実験手法を改良し、乾燥区間に収縮ひび割れを効果的に発生させる実験手法によって、高炉スラグ微粉末やフライアッシュを混入したモルタルの収縮ひび割れ抵抗性を、養生温度(20、60℃)に着目し比較評価した。その結果、常温養生では、無置換のものに比べ、収縮ひび割れ抵抗性は、フライアッシュ置換した場合は同程度、高炉スラグ微粉末では低下するという既往の研究と同様の傾向が得られた。高温養生を施すと、混和材を置換した供試体の収縮ひび割れ抵抗性は、常温養生に比べさほど違いがない、もしくは内部拘束による表層マイクロクラック発生によって大きく低下する可能性が示唆された。
  • 蒋 海燕, 佐藤 嘉昭, 大谷 俊浩, 上田 賢司
    2012 年 66 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    コンクリート部材に発生する乾燥収縮ひび割れを低減するにはコンクリートの剛性を小さくすることが必要であると考え、5種類の骨材(混合砂、石灰砕砂、コーラルサンド、パーライト、シラスバルーン)を使用し、強度レベルを同一としたモルタル供試体を用いて、内部鉄筋拘束による簡易な乾燥収縮ひび割れ実験を行った。その結果、石灰砕砂にはひび割れが発生せず、コーラルサンドのひび割れ発生も遅かったが、吸水率が大きく密度の小さいパーライトおよびシラスバルーンは、ヤング係数が小さくなるが乾燥収縮ひずみが大きく、混合砂と同様に早期にひび割れが発生した。次いで、有効ヤング係数法による応力解析を行い、ひび割れ発生時期について検討した。
  • 石垣 邦彦, 胡桃澤 清文, 名和 豊春
    2012 年 66 巻 1 号 p. 111-118
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    コンクリートの材料分離現象であるブリーディングは、硬化後のコンクリートの物性に影響を与えるが、その微細構造に関して定量的な解明は進んでいない。本研究ではブリーディングが発生した硬化セメントペースト(HCP)の空隙構造について、電子顕微鏡と低温DSCを用いて定量的に評価し、空隙構造の特性を電気伝導度から検討した。その結果、ブリーディングによって打設方向上部にかけて増加する空隙は毛細管空隙であり、それ以下の径の空隙形成にはほとんど影響を及ぼさないことが明らかとなった。また、HCP中の空隙量と電気伝導性にはブリーディングや水セメント比及び材齢に依らず相関が見られ、空隙の連続性は空隙量のみに依存することが示された。
  • 栗山 広毅, 黒澤 利仁, 後藤 卓, 名和 豊春
    2012 年 66 巻 1 号 p. 119-126
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本論文では、細孔内水分の凍結過程と融解過程での挙動の相違から、セメント硬化体中のインクボトル細孔の構造を定量する方法を提案した。まず、セメント硬化体を40℃で28日間養生後に、70%、85%、98%の各相対湿度条件で静置することで、細孔空隙中の水分の存在比率を変化させた。次に各試料の細孔内水分の凍結・融解時の熱量を低温DSCを用いて測定し、サーモポロメトリーによって試料の空隙量と細孔径分布を算出、比較を行なった。その結果、入口細孔径が1.8nm、2.6nm、5.2nmのインクボトル細孔がセメント硬化体中に存在することを定量的に明らかにした。さらに、細孔の連結性やフラクタル構造について考察し、従来提案されてきたC-S-Hのコロイドモデルの妥当性を実証した。
  • 胡桃澤 清文, 名和 豊春
    2012 年 66 巻 1 号 p. 127-134
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    セメント硬化体の空隙構造を正確に測定することは物質移動特性を把握する上で非常に重要である。物質移動特性を把握するためにACインピーダンス法が簡便な手法として提案されており、普通ポルトランドセメントを用いた場合にはその有用性が報告されている。しかし、非常に高い塩分浸透抵抗性を有す高炉スラグを混和したセメント硬化体にもその手法が適用可能かどうかは明らかにされていない。そこで本研究では高炉スラグセメントペーストの電気伝導率により塩分浸透性と微細構造について検討を行った。電気伝導率を測定するためにACインピーダンス法を用い、空隙構造を測定するために反射電子像及び水銀圧入法を用いた。高炉スラグ混和率にかかわらず塩分浸透深さと電気伝導率には非常に高い相関がみられ、空隙量と電気伝導率の間にはArchieの法則によって表されるべき乗の関係がみられた。
  • 伊藤 義也, 山口 晋, 鵜澤 正美
    2012 年 66 巻 1 号 p. 135-142
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    筆者等はエトリンガイトの脱水に着目して、水銀圧入測定用試料の真空凍結乾燥法の乾燥条件を提案し報告を行った。本研究は提案した乾燥法と一般的に行われているD-dry法で乾燥した普通ポルトランドセメントおよび超速硬セメント硬化体試料の細孔性状を水銀圧入法によって測定し、乾燥法の相違が水銀圧入法による細孔性状測定結果におよぼす影響について比較検討をしたものである。その結果、提案を行った乾燥法による乾燥試料はD-dry法による乾燥試料に比して0.2μm~0.015μm間の細孔が増加し、0.15μm~0.0037μm間の細孔が減少した。また、全細孔量は提案を行った乾燥法による試料に対し、D-dry法による乾燥試料は1.04~1.41倍に増加し、細孔性状は提案した乾燥条件とD-dry法で乾燥した場合と異なる測定結果が示された。
  • 鏡 健太, 佐藤 正己, 梅村 靖弘
    2012 年 66 巻 1 号 p. 143-150
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究は、フライアッシュを混和したプレキャストコンクリート製品用セメントモルタルを蒸気養生した場合の養生工程の短縮がセメント硬化体の水和反応と細孔構造に及ぼす影響について、XRD/リートベルト法と水銀圧入式ポロシメータを用いて検討した。材齢7日以降の細孔構造は、常温養生に比較して、1日1サイクル工程の蒸気養生では材齢7日以降から殆どの細孔径で細孔量が減少した。1日2サイクル工程の蒸気養生では材齢28日までは殆どの細孔径で細孔量が多いが、材齢91日では同等となった。細孔構造と圧縮強度には養生条件ごとに相関関係が認められた。毛細管空隙である細孔直径0.03~0.3μmの範囲の細孔量とC-S-H生成量に高い相関関係が認められた。
  • 松井 久仁雄, 小川 晃博
    2012 年 66 巻 1 号 p. 151-158
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    軽量気泡コンクリート(ALC)と、多孔質ガラス、稚内層珪藻頁岩焼成建材の3種の多孔体について、飽水状態からの水分脱着と、引き続く吸着時の体積変化を測定した。いずれも相対湿度60~90%において、水分脱着に伴う体積変化の極小値と引き続く膨張が観察された。さらに同湿度領域での吸着過程との間で顕著な長さ変化のヒステリシスが見られた。一方、相対湿度10~50%の領域では、わずかな水分変化でヒステリシスを伴わない体積変化を示した。毛管凝縮と表面エネルギーを重ね合わせたモデル、およびインクボトル細孔モデルを用いて、これら体積変化挙動と空隙構造との関係を考察した。
  • 須田 裕哉, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2012 年 66 巻 1 号 p. 159-166
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究では、各種セメント硬化体の相組成が圧縮強度に及ぼす影響について検討を行った。検討を行う際には、水和物の物理的性質から決定される空隙率やゲル空隙比を算出し、それらと圧縮強度の関係を評価した。硬化体の相組成を評価した結果、混和材の置換により長期材齢の空隙量が減少した。これは長期的に水和物の生成量が増加すること、またC-S-Hの密度が低下し水和物体積が増加するためである。また圧縮強度は、空隙率やゲル空隙比と概ね同一線上で評価することが可能であることを確認した。より高精度な評価を行うためには、空隙構造の変化も考慮に入れた検討が必要と示唆された。
  • 須田 裕哉, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2012 年 66 巻 1 号 p. 167-174
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント系硬化体の水蒸気吸着量を評価するため、各種水和物およびセメント硬化体の相対湿度0%~97%の範囲の水蒸気吸着量について検討を行った。その結果、合成C-S-Hおよび合成エーライトから水和生成したC-S-Hは、任意の湿度環境下においてCaO/SiO2モル比とH2O/SiO2モル比が直線関係となることを明らかにし、C-S-Hの水蒸気吸着量をその組成に基づいて推定する式を提案した。また、C-S-H以外の水和物であるカルシウムアルミネート水和物の水蒸気吸着量を測定し、C-S-Hの水蒸気吸着量の推定式およびC-S-H以外の水和物の水蒸気吸着量を用いて、セメントペーストの相組成より硬化体全体の水蒸気吸着量を推定した。
  • 土田 詩織, 須田 裕哉, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2012 年 66 巻 1 号 p. 175-181
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    セメント系硬化体中における主要な水和物であるC-S-Hは、その組成の変化がコンクリート中のイオンの移動や収縮といった物理化学的性質に大きく影響する。本研究では、C-S-Hの物理的性質である比表面積の変化について把握するため、ビーライトから生成されるC-S-Hの比表面積を測定し、エーライトから生成されるC-S-Hの比表面積と比較検討した。結果として、エーライトおよびビーライトからそれぞれ生成されるC-S-Hの比表面積はほぼ変わらないことが明らかとなり、両者がR.H.11%において保有するゲル水量が一致したことからも、結果の妥当性が示された。以上より、本研究の範囲内では、C-S-Hの比表面積はC/S比には依存するものの、生成起源の違いによる影響を受けないものと考えられる。
  • 金沢 貴良, 菊地 道生, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2012 年 66 巻 1 号 p. 182-188
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    セメント系硬化体中の空隙表面電位は、イオンの拡散性状に影響を及ぼすと考えられている。本研究では、空隙表面電位を近似的に表すことのできるゼータ電位に着目し、細孔溶液組成、水和物の種類と生成量、溶液温度がセメント系硬化体に及ぼす影響について検討を行った。また、各硬化体の細孔溶液を抽出し、そのイオン組成を模擬した溶液中で硬化体を構成する各種水和物のゼータ電位の測定し、実際のセメント系硬化体のゼータ電位を推定することを試みた。その結果、セメント系硬化体を構成する各種水和物の生成量、比表面積、ゼータ電位を積算することにより、実際のセメント系硬化体のゼータ電位を精度良く推定することが可能となった。
  • 菊地 道生, 金沢 貴良, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2012 年 66 巻 1 号 p. 189-196
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    セメント系硬化体の電気抵抗率は、電気化学的非破壊検査の精度や電気化学的補修工法の効果に影響を及ぼす。このため、硬化体電気抵抗率を定量的に評価する手法が必要とされているが、その現象メカニズムや影響因子に着目し検討を行った研究例は少ない。そこで本研究では、電気化学的理論に基づく硬化体電気抵抗率と各影響因子の関係式に、実験より定量した各影響因子を用い硬化体電気抵抗率の推定を行った。その結果、硬化体電気抵抗率の測定値と推定値の差がイオン強度と強い相関を示したことなどから、両者の差は細孔溶液中イオンと細孔表面間における電気化学的現象に起因していると推察された。
  • 寺戸 政成, 須田 裕哉, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2012 年 66 巻 1 号 p. 197-204
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究ではカルシウムアルミネート系水和物を考慮したセメント硬化体の比表面積の推定方法の検討を目的とし、合成アルミネート相を用いて水和反応の検討を行い、カルシウムアルミネート系水和物の影響を考慮したセメント硬化体全体の比表面積の推定を行った。その結果、C3AH6生成量とアルミネート相の反応率には水結合材比によらず一定の関係があることがわかった。また、セメント硬化体中のカルシウムアルミネート系水和物の比表面積の推定では、アルミネート相の反応率とC3AH6生成量のみを把握すればよいことを明らかにし、各水和物を定量した場合と同等の精度でセメント硬化体全体の比表面積を推定することが可能となった。
  • 串橋 巧, 盛岡 実, 伊代田 岳史, 檀 康弘
    2012 年 66 巻 1 号 p. 205-210
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    有機-無機複合型塗膜剤(CP)を材齢1日で脱型した高炉セメント硬化体に塗布して基礎物性を調べた。その結果、以下の実験結果を得た。①質量変化率は材齢7日まで封緘養生を行ったものと同等であった。②圧縮強度は材齢7日まで封緘を行ったものと同等以上であった。③中性化抵抗性は材齢14日まで封緘養生を行ったものよりも良好であった。④結合水量や水酸化カルシウムの生成量は材齢7日もしくは材齢14日まで封緘養生を行ったものと同等以上であった。CPは高炉セメントの水和を適切に進行させることを確認した。⑤細孔径分布は材齢7日まで封緘養生を行ったものと同程度であった。
  • 茶林 敬司, 中村 明則, 加藤 弘義, 佐田 香織
    2012 年 66 巻 1 号 p. 211-216
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    セメント製造では原燃料として廃棄物が使用されているが、廃棄物由来の少量成分がクリンカー中に持ち込まれると、クリンカーの鉱物組成やセメントの物性に影響を及ぼすことが予想される。本研究では、MgOとTiO2の含有量の異なる原料を焼成して検討を行なった。その結果、TiO2とMgOがクリンカーの鉱物組成に及ぼす影響は逆の傾向を示し、TiO2が及ぼす影響はMgO含有により相殺されることがわかった。セメントの強度発現性に及ぼす影響はTiO2およびMgO共に含有量増加に伴い、低下傾向を示した。その要因はTiO2はエーライト量の減少によるもので、MgOはエーライトの反応性の低下によるものと推定された。
  • 茶林 敬司, 永田 宏志, 中村 明則, 加藤 弘義
    2012 年 66 巻 1 号 p. 217-222
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    セメント産業はエネルギー多消費型産業であり、環境面等の観点から省エネルギー技術の開発が求められている。本研究では、鉱物組成の調整によるクリンカーの焼成温度低減を目的として各鉱物の易焼成および強度発現性を検討した。その結果、各鉱物が易焼成に与える影響はC4AF>C3A>C2S>C3Sであることを確認した。また、C3Sを固定し、C4AFを増加させ、その代わりにC2Sを減らすことで、1,350℃焼成した場合においても易焼成および強度発現性を維持できることがわかった。この結果から鉱物組成の調整において現行よりもクリンカー焼成温度を100℃程度低減できる可能性が確認された。
  • 田中 俊光, 古澤 貴治, 藤井 隆史, 綾野 克紀
    2012 年 66 巻 1 号 p. 223-229
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    コンクリートを硫酸に浸漬した場合、硫酸浸漬期間と硫酸濃度の積と侵食深さの間には、線形関係が成り立つ。この関係が明らかなモルタルを硫酸環境で曝露し、一定期間で侵食された深さが分かれば、見かけの硫酸濃度を推定することが可能である。そのためには、硫酸浸漬期間と硫酸濃度の積と侵食深さの関係が材齢による変化の小さいものを用いることが重要である。本研究では、使用材料、配合および養生方法が、モルタル等の硫酸による侵食速度に及ぼす影響を調べ、硫酸の濃度推定に適切なモルタルについて検討を行った。その結果、細骨材に砂岩砕砂を用いたモルタルで、脱型後28日以上水中で養生を行うことが望ましいことが分かった。
  • 畠山 葵, 山本 準紀, 名和 豊春, 金橋 康二
    2012 年 66 巻 1 号 p. 230-236
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    C3A-Gypsum系において、XRD・リートベルト解析および27Al MAS-NMR測定により水和解析を行った。その結果、非晶質量はAFtが消失するまでほぼ一定量で推移し、AFtの消失と同時に急激に増加することが示された。XRDより得られた結果から非晶質物質の組成を決定した。また、NMRスペクトルをAlの化学シフト値で分離することで、非晶質物質中の鉱物量を算出した。その結果、非晶質物質中にアルミナゲルが存在する可能性が示唆された。材齢初期における非晶質物質は硫酸イオンを含むC-A-Hであることが示唆された。材齢後期では、AFt様のゲル状水和物からAFm様のゲル状水和物を経てAFmを生成する可能性が示唆された。
  • 原田 匠, 田中 久順, 山下 牧生, 中西 陽一郎
    2012 年 66 巻 1 号 p. 237-242
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    半導体工場で発生する汚泥はSiO2、Al2O3を多く含有することから、セメント工場で処理することが期待されている。しかし、汚泥は同時に酸化セリウム(CeO2)も含有しており、クリンカーおよびセメント物性の変化が危惧される。そこで、本研究ではCeO2を最大で3.13%含有するクリンカーおよびセメントを作製し、各種物性に及ぼす影響を調べた。その結果、CeO2の含有量の増加とともに焼成反応性は若干向上した。試験範囲内ではクリンカーの鉱物組成は同等であったが、セメントの凝結は遅延し、圧縮強さは低下した。これは、CeO2がクリンカー鉱物へ固溶し、水和反応性が低下したためである。
  • 小出 貴夫, 岸 利治, 安 台浩
    2012 年 66 巻 1 号 p. 243-250
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    漏水を伴うひび割れを自己治癒させることを目的とし、陸砂および高炉スラグ細骨材をコアとして自己治癒材料を骨材表面に付着させた造粒物を作製し、モルタルに混和して諸物性を検討した。陸砂には、膨潤性粘土鉱物等を含む自己治癒材料を付着させて造粒物とし、高炉スラグ細骨材には、スラグ刺激材となるセメント材料を付着させて造粒物とした。これら造粒物は、細骨材置換でモルタルに60~240kg/m3混和した。その結果、これら造粒物を混和したモルタルは、自己治癒材料を粉末状態で混和したモルタルあるいはプレーンモルタルと比較してフレッシュ性状が改善され、漏水量が減少することを確認した。
コンクリートの試験・評価
  • 佐藤 あゆみ, 石山 智, 山田 寛次
    2012 年 66 巻 1 号 p. 251-258
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物に生じる打継ぎ界面では、付着性能(強度と靱性)を向上させることが重要な課題である。本研究では、その付着性能向上に向けた検討を深めるために、界面の処理目的として周知の脆弱層除去と凹凸による嵌合強化以外にはないのか、改めて検討した。打継ぎ界面近傍のEPMA観察と破壊靱性試験を行った結果、先打ち部の界面処理による凹凸は、嵌合の強化と同時に後打ちで生じる脆弱層の分散にも寄与して、付着性能向上に役立つことを明らかにした。また脆弱層の観察手法に関する新たな提案を行うと共にそれを用いて脆弱層の形成機構の考察を行った。さらに界面における付着性能を得るために必要な目荒し深さの定量的な根拠を示した。
  • 松田 充, 徳重 英信, 川上 洵, 鈴木 弘実
    2012 年 66 巻 1 号 p. 259-265
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究では天然ゼオライトを骨材や混和材に用いたポーラスコンクリートに対して、吸着性能と配合の関係を明確化するために、基礎的検討としてメチレンブルーを用いた吸着性能試験を行った。吸着性能測定方法として分光光度計を用いた吸光度測定結果と簡易評価法としてのRGB値での測定結果との比較、供試体の前吸着処理の影響、さらに被吸着物質量の試験結果に及ぼす影響について検討を行った。RGB値は簡易測定法として有効であること、適切な前吸着処理が必要であること、被吸着物質量は吸着性能評価に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。
  • 金橋 康二, 相本 道宏
    2012 年 66 巻 1 号 p. 266-272
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    無機酸化物材料中のエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)を、固体27Al NMRを用いて定量する新たな方法を確立した。27Al核は四極子核(I=5/2)であるが、エトリンガイト分子中のAl周りの対称性が良いため、非常に先鋭な6配位Alピークを示した。また、NMRの静磁場強度や試料回転周波数を最適化することによって、エトリンガイトのピークをマトリクス(高炉スラグ)由来の4配位Alピークから完全に分離できるため、適当な内標準物質(例えば硫酸カリウムアルミニウム12水和物)と共存させることによって、エトリンガイトの迅速な定量が可能となった。さらに、測定対象となるマトリクスの種類によらず、本手法が高い定量精度を持つことを実証した。
  • 杉山 友明, 新 大軌, 宮内 雅浩, 坂井 悦郎
    2012 年 66 巻 1 号 p. 273-278
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    水銀圧入法に代わる細孔構造の測定方法として、サーモポロメトリーに注目し、細孔中で凍結した水とシクロヘキサンの融解挙動について検討を行うとともに、セメント硬化体の細孔構造を測定する方法として、水とシクロヘキサンのそれぞれの測定結果を組み合わせる方法を水銀圧入法と比較し、提案した。異なる細孔を有する多孔質シリカを用いた検討により、15nm未満の細孔半径の測定には、溶媒として水が、それ以上の細孔半径にはシクロヘキサンが適していることを見出し、双方の測定結果を組み合わせる方法によりセメント硬化体の細孔の解析が可能であることを示した。また、硫酸の侵食により脆弱化した硬化体の細孔の測定例を示した。
  • 林 和彦
    2012 年 66 巻 1 号 p. 279-286
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    鉄筋コンクリート内部の異形鉄筋の節から発生する内部ひび割れに対して、既存のインク可視化手法を改良し、繰返し載荷後にも適用できる真空置換を用いた簡易な可視化手法を開発した。本手法の特徴は、圧力と時間を制御して、連続したひび割れ部および近傍にはインクが浸入し、それ以外のコンクリート部分にはインクが浸入しないという状態を作り出すことにある。その可視化手法を用いて、ひび割れ抵抗性に優れると認識されている膨張コンクリートの内部ひび割れを可視化させた。その結果、膨張コンクリートは普通コンクリートと比較して、内部ひび割れの長さおよび繰返し載荷に対する長さの増加が抑制されることがわかった。
  • 山口 聖治, 堺 孝司, 岡田 卓也, 石井 光裕
    2012 年 66 巻 1 号 p. 287-294
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント少量混合成分としてフライアッシュを用いる場合のコンクリートの基本的性能について、フライアッシュを細骨材代替材として用いる場合との組み合わせ効果も含めて、検討した。その結果、フライアッシュを少量混合するとAE減水剤の使用量を低減することができること、細骨材代替を含む混合率15%で、かつ材齢91日で少量混合成分無混入の場合と同程度の圧縮強度を得ることができるが、10%以下の混合率においては少量混合成分無混入の場合の強度を下回ること、等が明らかになった。しかし、長さ変化、凍結融解抵抗性、中性化深さについては、石灰石及び高炉スラグ微粉を含む少量混合成分の有無の影響は少ないことも明らかになった。
  • 周藤 将司, 緒方 英彦, 石神 暁郎, 金田 敏和
    2012 年 66 巻 1 号 p. 295-302
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    注入工法は、コンクリートのひび割れ補修工法として広く用いられている。本研究では、まず凍害劣化の進行しているRC開水路のL型ブロックの部材内部に生じている層状ひび割れの発生形態を確認するために、実際に切断した断面を観察することで、層状ひび割れが連続して生じていることを明らかにした。連続している層状ひび割れは、注入工法によって注入材の充填を行うことが可能であることも確認した。また、層状ひび割れの生じているL型ブロックに対して注入工法による注入材の充填を行い、充填前後の超音波伝播速度の測定を行うことで注入材の充填部の把握が可能であることを明らかにした。
  • 西尾 壮平, 上田 洋, 岸 利治
    2012 年 66 巻 1 号 p. 303-310
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    鉄筋コンクリート構造物の耐久性に大きく影響するコンクリート表層部の物質移動抵抗性に関する非破壊評価の重要性が高まっている。本研究では、実構造物の検査への適用が容易な簡便性に優れた手法として、コンクリート表面へ意図的に少量の水を散水した際の表面色の変化および鉛直面における水の流下現象に着目した方法を考案した。散水後の吸水・乾燥過程で生じるコンクリート表面における明度の経時変化特性、ならびに、鉛直面への散水時に観測される水の流下距離は、各種品質のコンクリート試験体で大きく異なることを明らかにした。本手法で得られる複数の指標により、表層部の物質移動抵抗性を非破壊で簡易に評価できる可能性がある。
コンクリートの物性
  • 青山 琢人, 胡桃澤 清文, 名和 豊春, 村上 祐翔
    2012 年 66 巻 1 号 p. 311-318
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    Ca溶脱に伴うセメント硬化体の変質を考慮したセメント硬化体中のイオン移動予測モデルを構築した。予測モデルではNernst-Plank式、電気的中性条件、Debye-Huckel式に基づくイオン移動式を用いた。これより、セメント硬化体中の複数イオンの移動を経時的に追跡でき、複数イオンの濃度分布を予測することが可能である。また、セメント硬化体のCa溶脱機構はBuilの固液平衡モデルに従うとし、Ca溶脱に伴う拡散性能の変化は、セメント硬化体の3次元空間配置イメージによる拡散係数予測モデルを用い形状係数を定義することにより考慮した。構築を行ったイオン移動予測モデルの妥当性を検証するため、Ca溶脱率、また塩化物イオンの浸透量の予測値と実測値の比較を行った。
  • 舌間 孝一郎, Yura NYAMDORJ, 岡村 雄樹, 辻 幸和
    2012 年 66 巻 1 号 p. 319-325
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    多軸拘束下における膨張コンクリートのケミカルプレストレスやケミカルプレストレインの特徴を把握することを目的として、同心円状に配置された外鋼管と内鋼管の二重鋼管で拘束された膨張コンクリートの膨張性状を評価する研究成果は報告されているが、内鋼管の偏心設置の影響については、報告例が極めて少ない。本研究では、肉厚の異なる鋼管を用い、さらに内鋼管を外鋼管に対して偏心させて配置した二重鋼管により膨張コンクリートを拘束した実験を行い、膨張コンクリートの膨張性状および膨張コンクリートが鋼管に及ぼす応力度の影響を明らかにした。
  • 栖原 健太郎, 岡村 雄樹, 辻 幸和, 吉野 亮悦
    2012 年 66 巻 1 号 p. 326-331
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    有効高さのみを145mmと185mmに変化させた鉄筋コンクリート梁(RC梁)と膨張コンクリートを用いた鉄筋コンクリート梁(CPC梁)の曲げ載荷実験を行い、引張鉄筋のひずみと曲げひび割れ幅の関係を検討した。併せて、土木学会コンクリート標準示方書の曲げひび割れ幅の算定式と対比した。その結果、引張鉄筋のひずみが同一の場合、RC梁およびCPC梁ともに、梁の有効高さが大きいものほど曲げひび割れ幅が大きな値となる傾向が認められた。また、この傾向は、曲げひび割れ幅の最大値、ならびにCPC梁よりもRC梁においてより顕著となることを確認した。
  • 溝渕 麻子, 小林 利充, 近松 竜一, 一瀬 賢一
    2012 年 66 巻 1 号 p. 332-337
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究は、CO2排出量を大幅に削減した低炭素型のコンクリートを対象とし、混和材を高含有したコンクリートの強度発現性に及ぼす養生条件の影響を把握することを目的に、実験的に検討した。その結果、混和材を高置換することで、通常のコンクリートよりも強度発現に対する温度依存性が大きくなること、長期的な強度の増進を確保するためには材齢初期に十分な湿潤養生を実施する必要があることなどを明らかにすることができた。
  • 谷田貝 敦, 二戸 信和, 宮澤 伸吾, 坂井 悦郎
    2012 年 66 巻 1 号 p. 338-345
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    高炉セメントの性能改善を目的として、C3S量を59~71%の範囲で調整したクリンカーを用いて高炉セメントA種を試作し、コンクリートの諸特性について普通ポルトランドセメント(OPC)と比較検討した。その結果、C3S量が高いクリンカーを用いた場合、所要のスランプを得るための単位水量は、高炉スラグを混入することにより低減でき、OPCの場合と同等となった。C3S量を65%以上に増加させることにより、高炉セメントA種の初期強度は、特に低温条件下で改善され、高炉セメントA種の圧縮強度および乾燥環境下における収縮特性は、OPCと同等となった。また、C3S量の増加に伴う中性化速度の改善は認められなかった。
  • 亀島 博之, 中村 士郎, 鈴木 宏信, 岡本 英明
    2012 年 66 巻 1 号 p. 346-352
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    現行では5%以下となっている普通ポルトランドセメントの少量混合成分を15%まで増加した場合のコンクリートの諸性状を検討した。石灰石微粉末と高炉スラグ微粉末を15%まで混合した混合成分増量セメントは、コンクリートの打設温度、養生温度が変化しても、流動性、強度発現は普通ポルトランドセメントと同等であった。混合成分増量セメントは、普通ポルトランドセメントに比べて中性化抵抗性はやや劣り、塩化物イオン拡散係数は石灰石微粉末のみを増加した場合はほぼ同等となり、高炉スラグ微粉末を増加した場合は小さくなった。
  • 三隅 英俊, 丸屋 英二, 高橋 俊之
    2012 年 66 巻 1 号 p. 353-358
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    廃棄物等の処理、品質確保およびCO2削減という観点から、高C3A型混合セメントを対象に、耐久性を含めたコンクリート物性を調べた。その結果、流動性および強度へのC3A量の影響は小さいことがわかった。また、乾燥収縮、促進中性化、凍結融解抵抗性および塩分浸透性は、基準セメントと比較して問題となる差は認められなかった。水和解析の結果、混合材添加量の増加やC3A量の増加により、ヘミカーボネートの生成が活発になることがわかった。また、細孔径分布は小さい方に移動した。本検討の範囲において、高C3A型混合セメントは実用上、問題ないと考えられた。
  • 富山 潤, 須田 裕哉, 佐伯 竜彦, 佐藤 道生
    2012 年 66 巻 1 号 p. 359-366
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/12/02
    ジャーナル フリー
    近年、施工性、生産性、品質管理および工期短縮等の面からプレキャストコンクリート部材の需要が高まっている。この部材の製作に際しては、早期に所定の強度が要求されるため、蒸気養生を施すのが一般的である。本研究では、この部材製作時にコンクリートの性能向上に係わるフライアッシュの活用を考慮し、異なる蒸気養生の条件下におけるフライアッシュコンクリートの温度抑制効果、強度発現特性、およびフライアッシュの反応性等に関する検討を行った。その結果をフライアッシュコンクリートの強度発現特性およびセメント硬化体の相組成としてまとめ、フライアッシュコンクリートのプレキャスト部材への活用の可能性を示している。
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