セメント・コンクリート論文集
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67 巻, 1 号
セメント・コンクリート論文集
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セメント化学
  • 小泉 公志郎, 佐藤 正己, 梅村 靖弘, 露木 尚光
    2013 年 67 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    石炭火力発電により副産するフライアッシュの有効活用の観点から、近年ではフライアッシュを大量に混和したプレキャストコンクリート製品への応用が進んでいる。この際、フライアッシュのポゾラン反応促進を目的として蒸気養生による加温が施されるのが一般的であるが、セメントの水和反応とフライアッシュのポゾラン反応が同時並行で起こるため、その水和反応解析は極めて複雑である。本研究ではトリメチルシリル誘導体化法を用いてシリケート相を構成するシロキサンオリゴマーの鎖長分布を検討することで、熱養生を施したフライアッシュセメントの詳細な水和反応解析を試みた。分析によって得られたシロキサンオリゴマーの鎖長分布から未反応のセメントクリンカー化合物由来の成分を除いて検討を加えたところ、フライアッシュのポゾラン反応では二量体のシロキサンオリゴマーが優勢的にケイ酸カルシウム水和物として供給されることが分かった。また、反応によって生成したシロキサンオリゴマーの単量体/二量体の構成比は反応系中のCaO/SiO2比と相関がある可能性が示唆された。
  • 松井 久仁雄, 小川 晃博, 松野 信也, 名雪 三依
    2013 年 67 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    結晶性ケイ酸カルシウム水和物であるトバモライトの生成機構を解明することを目的に、CaO-SiO2-H2O系におけるγ-Al2O3および石膏の添加効果とその作用メカニズムを、in situ XRDと固体NMRを用いて検討した。γ-Al2O3および石膏ともにトバモライトの生成を促進するとともに、同時添加において著しい促進効果が認められた。これらのメカニズムとして、Al3+イオンは珪石溶解抑制により、SO42-イオンはCa2+イオンの平衡濃度を高めることにより、トバモライト生成前に存在しているC-S-HのSi四面体鎖の平均鎖長の増大とcross link(Q3)の生成を抑制したと考えられた。27Alおよび29Si固体NMR解析から、両添加物によるC-S-Hの構造変化も認められ、トバモライト生成への影響が推察された。
  • 小川 晃博, 松井 久仁雄, 松野 信也, 名雪 三依
    2013 年 67 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    結晶性ケイ酸カルシウム水和物であるトバモライトの生成機構を解明することを目的に、CaO-SiO2-H2O系における原料珪砂の粒径と、水/固体比がトバモライト生成に及ぼす影響を、in situ XRDと29Si固体NMRを用いて検討した。昇温過程で生成する非晶質C-S-Hは、擬結晶C-S-Hが生成する系ではシリケートアニオンの鎖長が長くQ3が多く生成した。一方、トバモライトが生成する系ではその鎖長はほぼ一定でQ3はわずかしか生成しなかった。この非晶質C-S-HのCa/Si比がほぼ同一であるのに関わらず、異なった構造を有するのは、昇温過程において生成する液相中のシリケートアニオンの鎖長が5程度の非晶質C-S-H濃度が関係していると推察した。
  • 兵頭 正浩, 緒方 英彦, 佐藤 周之, 野中 資博
    2013 年 67 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    セメントに含まれる六価クロムの溶出量が環境基準値を超える可能性があるが、現状ではこのような事例は少ないことから抜本的な対策は講じられていない。そこで本研究では、簡易な予防保全的対策として酸化還元電位を調整した水を練混ぜ水として用いることにより、六価クロムを三価クロムへ還元することが可能か検討した。その結果、普通ポルトランドセメントおよび高炉セメントに含まれていた六価クロムは三価クロムに還元され、練混ぜ水の酸化還元電位低下に伴い六価クロムの溶出量が減少することを確認した。また、酸化還元電位を調整した練混ぜ水を使用してもセメントの安定性、強度特性に影響を及ぼすことは確認されなかった。
  • 茶林 敬司, 中村 明則, 加藤 弘義, 佐田 香織
    2013 年 67 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    セメント製造工程では原燃料として廃棄物が使用されているが、廃棄物由来の少量成分がクリンカー中に持ち込まれると、クリンカーの鉱物組成やセメントの物性に影響を及ぼすことが予想される。本研究では、TiO2とMnOの含有量の異なる原料を焼成して検討を行った。その結果、TiO2とMnOがクリンカーの鉱物組成に及ぼす影響はシリケート相では同様の傾向を示し、間隙相では逆の傾向を示すことがわかった。セメントの強度発現性に及ぼす影響はTiO2およびMnOを含有することによるエーライト量の変化で概ね整理でき、流動性に及ぼす影響はアルミネート量の変化で整理できることがわかった。
  • 高橋 一誠, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦, 菊地 道生
    2013 年 67 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、普通ポルトランドセメント(OPC)とケイ石微粉末および、製鋼スラグ等の産業副産物に含有するCa-Mg-Si系材料を用い、水中養生およびオートクレーブ(AC)養生を行った供試体の硫酸塩抵抗性を、反応生成物や結晶構造と関連付けて考察し、耐硫酸塩性に優れた高耐久コンクリートの材料設計の提案を目的とし検討を行った。その結果、水中養生では、OPCをCa-Mg-Si系材料により40%置換することで硫酸塩抵抗性の向上が認められた。AC養生では、Ca-Mg-Si系材料の混和のみによって更に硫酸塩抵抗性が向上した。これは、Ca-Mg-Si系材料の混和とAC養生によって供試体中に化学的安定性を有するトバモライトや、トバモライトと同様のSi構造を有する化合物が生成したためと考察した。
  • 新 大軌, 神尾 哲治, 相川 豊, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究はスラッジ水中に含まれる残存セメント分を有効活用するため、グルコン酸ナトリウムを用いて水和反応を制御したスラッジ水中に残存しているセメント量を迅速に定量評価する方法を確立することを目的とした。伝導型熱量計を用いて24時間における水和発熱量を測定することで、スラッジ水中の残存セメント分を簡便に推定することを可能とした。また、硝酸マグネシウムを用いてグルコン酸ナトリウムにより水和制御されたセメントの水和を再開させることが可能であることを確認した。さらに水和反応速度シミュレーション法を構築し、10時間程度までの水和発熱速度を測定することでスラッジ水中の残存セメント量を推定することを可能とした。
  • 門田 浩史, 新 大軌, 堀口 賢一, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では高炉スラグ-Na2CO3系の反応機構と固化について検討を加え、アルカリ刺激剤としてNa2CO3でも固化できることを明らかとした。アルカリ刺激剤にNa2CO3を用いると、発熱反応が緩やかになる期間が存在して、その後に大きな発熱反応が確認された。これはゲイリュサイトの生成と関連するものと推定された。フライアッシュで高炉スラグを置換する場合、1週間で固化するためには、フライアッシュの置換率は15%が限界であった。高炉スラグをフライアッシュで置換すると反応は遅延した。遅延の原因はゲイリュサイトの生成と、生成したC-S-HのCa/Siが下がることに原因があると推定された。
  • 松澤 一輝, 新 大軌, 宮内 雅浩, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    分子構造が異なるポリカルボン酸系分散剤を添加したセメントペーストの流動性に及ぼす硫酸イオンとフッ化物イオンの影響について検討を加えた。K2SO4またはKFを添加すると、ペーストの見かけ粘度と分散剤吸着量は増大した。K2SO4を添加した際は、グラフト鎖長が長い分散剤より短い分散剤で見かけ粘度が小さい値を示した。一方、KFを添加した際は、グラフト鎖長が短い分散剤より長い分散剤で見かけ粘度が小さく、著者らがこれまでに明らかにしているCaCO3ペーストでの挙動とは異なる傾向を示した。K2SO4またはKFを添加した際は、いずれもグラフト鎖が長い分散剤より短い分散剤で吸着量が大きい値を示した。
  • 中川 裕太, 新 大軌, 荒木 昭俊, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    既設構造物直下の液状化対策として微粒子球状シリカ(SiO2)スラリーと微粒子水酸化カルシウム(CH)スラリーからなる注入材を用いた地盤注入工法が検討されている。本研究ではナフタレンスルホン酸系分散剤(β-NS)とポリカルボン酸系分散剤(P-34)を用いてCHとSiO2スラリーの分散の安定性や反応性について検討した。CHスラリーはβ-NSを4mass%、P-34を1mass%添加することで分散が安定した。一方SiO2スラリーは分散剤無添加でも分散が安定していた。両者の混合系では高流動性を得るのにβ-NSでCHに対して10mass%、P-34で4~5mass%が必要であった。また分散剤の添加率により反応制御が可能であり、またナフタレン系分散剤の方が分離抵抗性が高いことを明らかにした。
  • 粟村 友貴, 名和 豊春
    2013 年 67 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    セメントと水はトポ化学的に反応するため、その反応速度と反応生成物であるC-S-Hの性状とは密接な関係にある。しかしマクロな水和現象とミクロなC-S-Hの化学組成や平均鎖長の変化との関連性は不明な点が多い。そこで本研究では、純水で水和させたエーライト(C3S)と水和促進剤であるCaCl2を添加したC3Sの水和挙動の変化をXRD、29Si MAS NMR、TG/DTAを用いて検証した。その結果、CaCl2はごく初期のC3Sの溶解を促進するが、CaCl2濃度が大きい程、早期に水の拡散律速段階へと移行し、溶解速度が減少することが確認された。また、CaCl2の影響はジェナイト型C-S-Hの生成などのC-S-Hのナノサイズの構造変化に伴うC-S-Hゲルの空隙構造の変化と密接に関連していることが示唆された。
  • 畠山 葵, 黒澤 利仁, 粟村 友貴, 名和 豊春
    2013 年 67 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    C3A-Gypsum系の水和反応について、XRD・リートベルト解析および27Al MAS-NMR測定により定量的解析を行った。その結果、XRD、NMRの解析によって、多量に生成する非晶質物質の組成を決定できた。さらに、地球化学コードPHREEQCを用いて熱力学的平衡論によりC3Aの水和反応モデリングを試みた。相平衡モデルと表面錯体モデルを組み合わせることで、鉱物の析出場を拡散二重層と液相とに分離することができた。C3A粒子表面ではゲル状物質が生成し、Ettringiteは液相で生成することが示唆された。C3A-Gypsum系の水和反応によって生成されるAFm相はC-A-HとMonosulfateの固溶体であることが示唆された。
  • 玉岡 洋裕, 白神 達也
    2013 年 67 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    重水を用いて重水素化したポルトランダイトおよびエトリンガイトを合成した。合成した試料はXRDで結晶相の同定を行い、SEMを用いて粒径を評価した。また、ATR-IRを用いてO-H振動とO-D振動の吸収ピークの大きさより、重水素置換率のおおよその検討と、合わせてTG測定からその理論重量減少率との比較を行い、その精緻化を図った。ダイナミックTGによる脱水温度の比較では、ポルトランダイト、エトリンガイトともに、重水素化物の方が低い脱水温度を示したが、TGを用いた小澤法による活性化エネルギーの測定では、どちらも重水素化物の方が高い活性化エネルギーを示した。
  • 羽原 俊祐, 小山田 哲也, 菅野 華果, 中村 大樹
    2013 年 67 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    小片凍結融解試験法は、スケーリング劣化の早期判定が可能であり、小型供試体を使用するため、供試体の状況をそのまま観察できるという有効性がある。本研究では、小片凍結融解試験法の改良を行ったうえで、11種の凍結防止剤を用い、それぞれの濃度(1、3、6mass%)において、スケーリング劣化に及ぼす影響を検討した。マグネシウムを含む凍結防止剤を使用した場合、他の凍結防止剤に比べて、スケーリング劣化は小さい。この原因は、硬化体表面に新たに水酸化マグネシウムが析出し、スケーリングの保護層の役割を果たすことによると判明した。
  • 宇城 将貴, 新 大軌, 川上 宏克, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    分子量を変化させた分散剤を用い、低水粉体比におけるLHC-溶融シリカ系ペーストの流動性について検討した。W/P=0.32、0.24ではいずれの分散剤においても分散剤が粒子表面に吸着し粒子が分散することで見かけ粘度が減少し、流動性が向上するものと考えられた。一方、W/P=0.16のような低水粉体比のペーストにおいては吸着している分散剤の粒子分散効果のみでは流動性が向上している理由を説明できず、残存高分子が粘度の低下に影響を与えることが推察された。また、粉体表面と液相に十分な量の分散剤を添加した際にも、分子量の減少に伴い見かけ粘度が低下することから、分散剤の構造により異なる液相残存高分子の形態の更なる検討が必要であると考えられる。
  • 大野 麻衣子, 黒川 大亮, 平尾 宙
    2013 年 67 巻 1 号 p. 108-115
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    前報1)にて、セメント品質を予測するシステムの構築を行い、セメントキャラクターからそのプロパティーを予測することに成功した。本報告では、システムの実運用の結果、キャラクターとプロパティーをより良く関係付けるためには、工場単位でシステムを運用するべきとの結論を得た。また、さらなる予測精度向上のためにシステムを拡張し、プロセスデータ、キャラクターおよびプロパティーを相互に関連付けることを可能とした。これにより、キャラクターのみならず、プロセス条件から、プロパティーを制御することが可能になり、これまで以上に品質の安定化が達成される見込みを得た。
  • 依田 侑也, 寺本 篤史, 黒田 泰弘, 新 大軌
    2013 年 67 巻 1 号 p. 116-122
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では海外で製造されたセメントの簡易な品質評価手法を開発するため、化学組成、鉱物組成を分析ののち、物理試験と水和発熱量測定を行い、物理特性と水和発熱量の相関について検討を加えた。その結果、石膏の種類、混合材の種類が異なる海外のセメントにおいて、初期の圧縮強さと総発熱量、圧縮強さ比とSiO2量の間には相関があることが明らかとなり、材齢初期の水和発熱量を測定することで、初期から長期の圧縮強さが予測できる可能性が示された。
セメント硬化体・モルタルの物性
  • 原 啓史, 森 泰一郎, 樋口 隆行, 盛岡 実
    2013 年 67 巻 1 号 p. 123-128
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    硫酸アルカリが急硬性セメント組成物の物性に及ぼす影響を検討した。その結果、①モルタルフロー値は、硫酸アルカリの添加率や種類によって、大きくなる場合や小さくなる場合があった。②可使時間は短くなる傾向があった。③初期材齢の圧縮強さは、やや高くなったが、材齢7日以降の圧縮強さは、低くなった。④膨張率は大きくなった。⑤硫酸アルカリが急硬性セメント組成物中に存在すると、エトリンガイトの生成反応が促進されることを確認した。
  • 樋口 隆行, 江口 政孝, 盛岡 実, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 129-136
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    エトリンガイト石灰複合型膨張材を高温炭酸ガスで処理し、モルタルに混和して物性を評価した。モルタルの膨張ひずみは、未処理に比べ材齢1日まで小さくなったが、材齢1日以降に大きくなり、材齢7日では未処理品に対して23%増加した。水和反応解析の結果、注水から約6時間、膨張材の水和が抑制され、特に遊離石灰の反応が抑制された。材齢6時間以降の遊離石灰の反応率は未処理品と同程度であった。高温炭酸化処理に伴い、カルサイト含有量が増加し、カルサイトは遊離石灰の表面に厚さ約0.2μmの被膜として生成した。セメントの水和組織が形成される前に反応する遊離石灰が減り、膨張に寄与する割合が増え、膨張ひずみが増加することが示唆された。
  • 胡桃澤 清文, 村上 祐翔, 石垣 邦彦, 名和 豊春
    2013 年 67 巻 1 号 p. 137-143
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    硬化セメントペーストからのカルシウム溶脱に伴うC-S-Hの劣化を考慮した物質移動特性変化について基礎的な知見を得ることを目的とし、促進溶脱試料を用いセメントペーストのカルシウム溶脱に伴うC-S-HのCaO/SiO2の変化、Si鎖の化学状態及びC-S-Hの塩化物イオン吸着能力の変化について検討を行った。この結果、溶脱に伴うC-S-HのCaO/SiO2の低下と吸着能力には相関関係があることが確認できた。また、この相関関係を用い、異なるCaO/SiO2のC-S-Hの塩化物イオン吸着量を推定できる式を提案した。
  • 原田 匠, 田中 久順, 山下 牧生
    2013 年 67 巻 1 号 p. 144-150
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    半導体工場で発生する汚泥はSiO2、Al2O3を多く含有することから、クリンカー原料としての活用が期待されている。しかし、この汚泥には酸化セリウム(CeO2)や酸化ランタン(La2O3)が含まれており、これを原料として用いるクリンカーおよびセメント物性への影響が懸念される。本研究ではLa2O3を最大で2.98%含有するクリンカーおよびセメントを試製し、その各種物性を調べた。その結果、La2O3が焼成反応性および・被粉砕性に及ぼす影響は認められなかった。La2O3量が増加するにつれクリンカー中のアルミネートが増加し、フェライトが減少した。また、La2O3量が増加に伴ってセメントの凝結は遅延し、圧縮強さは低下した。これは、La2O3がシリケートに固溶することで水和反応性が低下したためである。また、La2O3とCeO2がセメントの諸物性に及ぼす影響は互いに類似していた。このことから、セメント中のLa2O3とCeO2は、La2O3eq(La2O3+CeO2)で取扱うのが適当である。
  • 古賀 博章, 新見 龍男, 中村 明則, 加藤 弘義
    2013 年 67 巻 1 号 p. 151-156
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    高炉スラグ含有セメントの凝結、初期強度等の物性改善を目的に、ポルトランドセメントに対して凝結、初期水和促進効果を、高炉スラグに対してアルカリ刺激剤として反応促進効果を発揮することが考えられる水酸化カルシウム微粉末を添加し、物性、水和性状の評価を行った。その結果、水酸化カルシウム微粉末の添加により凝結、初期水和は促進され、強度発現性は水酸化カルシウム微粉末の添加により、高炉セメントA種相当において材齢初期に、高炉セメントB種相当において長期に改善する傾向がみられた。また、高炉セメントB種相当における高炉スラグの反応は水酸化カルシウム微粉末の添加による影響を受け、強度発現性との関連が示唆された。
  • 須田 裕哉, 佐伯 竜彦, 斎藤 豪
    2013 年 67 巻 1 号 p. 157-164
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント硬化体中で主要な水和物であるC-S-Hの組成と密度に対して、環境条件である温度や湿度が及ぼす影響について検討を行った。検討を行う際には、C/S比の異なる2種類のC-S-Hを作製し、温度・湿度変化に伴うC-S-Hの水蒸気吸着量と密度の測定を行った。その結果、各湿度における水蒸気吸着量は、C/S比の低い試料ほど多く、同一のC/S比のC-S-Hにおいては、前処理条件の違いによらず高湿度においてH/S比が一致した。また、C-S-Hの密度は、低C/S比のC-S-Hほど各湿度における密度は低い値を示した。さらに、C-S-Hの密度をH/S比を用いて整理した結果、H/S比が3程度のときC-S-Hの密度が最大となり、これらは含水状態の違いによるC-S-Hの構造変化が要因として示唆された。
  • 森 裕克, 佐々木 玲, 丸屋 英二, 高橋 俊之
    2013 年 67 巻 1 号 p. 165-170
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    ポルトランドセメント(PC)-アルミナセメント(AC)-無水石膏-高炉スラグ微粉末の四成分系セメント材料の長さ変化の温度依存性に及ぼすPC/AC比の影響を確認した。低温(5℃)、高PC/AC比の条件が重なることで、膨張量は著しく大きくなることが分かった。膨張量が大きかった試料では、膨張量が小さかった試料と比較して微細なエトリンガイトが生成され、一部は粒子の周りに生成されていた。水和解析の結果、低温(5℃)、高PC/AC比では、AC由来のモノカルシウムアルミネートの反応が遅延し、PC由来のエーライトの反応が促進することが膨張量増大の原因であると推察された。
  • 桑原 寛司, 五十嵐 心一, 横田 光一郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 171-178
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    超吸水性ポリマー(SAP)および軽量骨材(LWA)を用いて等量の内部貯水を保持させたモルタルの収縮挙動を比較し、これらの内部貯水粒子の空間分布の相違が、内部養生に及ぼす影響について実験的に検討した。軽量骨材粒子の方が互いに近接した配置になるが、個々の粒子のもつ内部水量が少なく、また、放水は遅いと考えられ、このため内部水を若材齢にて放出するSAP粒子よりも自己収縮抑制効果は小さくなると考えられる。しかし、その一方にて、SAPによる初期の放水はマトリックス中の水量を増大させて乾燥収縮を大きくするが、軽量骨材を用いると、その放水特性のために乾燥収縮はSAPを用いたものよりも小さくなる。
  • 横田 光一郎, 五十嵐 心一
    2013 年 67 巻 1 号 p. 179-186
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    内部養生材として使用される超吸水性ポリマー(SAP)の空間分布を点過程統計量によって定量的に評価した。その結果、セメントペースト供試体中のSAP粒子は粒径にかかわらずほぼランダムな分布であるのに対して、モルタル供試体中では凝集性を有した配置となった。凝集性を示す距離範囲はSAPの粒径によって異なり、小径のSAPの方がより近距離で凝集性が現れる。また、この凝集性により定常ポアッソン過程という帰無仮説は棄却されることがシミュレーションにより示された。これより、骨材粒子の存在はSAP粒子の分布を単純にランダムに制限する以上の効果を持つと考えられる。
  • 細田 暁, 渡辺 優樹, 樋口 隆行, 盛岡 実
    2013 年 67 巻 1 号 p. 187-194
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    クリンカ細骨材をモルタルに用い、モルタルの緻密化と、微細ひび割れを導入した後の自己治癒性能を検討した。収縮-逸散水量関係を用いた分析により、クリンカ細骨材の界面領域が緻密になることを推察し、反射電子像による分析で検証した。クリンカ細骨材モルタルは、普通細骨材モルタルより逸散水量が大幅に低減し、収縮量は同程度以下であった。短繊維を混入したモルタルに圧縮載荷で導入した微細ひび割れの幅は0.02~0.1mm程度であり、クリンカ細骨材を用いた場合に治癒効果が卓越した。微細ひび割れの治癒を収縮-逸散水量関係、EPMA、吸水抵抗性の観点から確認した。
  • 浅本 晋吾, 松井 久仁雄, 加藤 恭介
    2013 年 67 巻 1 号 p. 195-202
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント硬化体に様々な乾燥を与えた後、各種液体に浸漬したときの体積変化を既往の収縮理論に基づき検討し、現象の把握を試みた。水以外の液体はセメント硬化体に対する吸着力が小さいことが浸漬熱より示唆され、絶乾による収縮は水以外の液体に浸漬させてもさほど回復しなかった。セメント硬化体を水中養生後有機溶媒に浸漬させると大きく収縮し、微細空隙内の水分抽出による分離圧の低下及び表面エネルギー増大、一部の結合水の抽出によるC-S-Hゲル自体の収縮を要因に挙げた。また、常温で一定の乾燥を施した後、極性、非極性液体に浸漬させるといずれも収縮が即座に回復し、毛細管張力の低下、分離圧の増加が要因として考えられた。
  • 上中 一真, 斉藤 忠, 藤井 隆史, 綾野 克紀
    2013 年 67 巻 1 号 p. 203-209
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究は無機化合物による凝結遅延効果についてモルタルを用いて検証を行ったものである。本研究では、無機化合物として試薬の酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、酸化銅(Ⅰ)、酸化銅(Ⅱ)、塩基性炭酸銅を用いた。その結果、酸化亜鉛と塩基性炭酸銅を質量比で2対1の割合で同時に添加することによってモルタルの凝結が10日程度まで遅延すること、また、凝結遅延させたモルタルを練直すことによって遅延時間が短縮されることがわかった。凝結遅延剤を添加したモルタルおよびそれらを練直して得たモルタルの圧縮強度は無添加のものと比較して材齢7日までは低いものの、材齢28日では同等であった。
  • 伊藤 将志, 半井 健一郎, 林 明彦, 河合 研至
    2013 年 67 巻 1 号 p. 210-215
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所の事故により、広範囲に拡散した大量の放射性物質を適切に除染するとともに、汚染された災害廃棄物を適切に処理、処分することが求められている。そこで本研究では、モルタル中でのセシウムの吸着、浸透、溶出挙動を把握することを目的とした。実験結果から、セメントや各種細骨材にセシウムは吸着しにくく、飽水処理したモルタル供試体では、供試体表面および内部ともに80%ものセシウムは可溶性として存在していた。一方で乾燥させた供試体の表面付近では60%のセシウムが非可溶性であり炭酸化の影響が示唆された。
  • 三浦 泰人, 佐藤 靖彦
    2013 年 67 巻 1 号 p. 216-223
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、硫酸溶液に浸漬したモルタルの物理化学的性質の経時変化を評価可能な解析手法を提案するものである。本解析手法では、硫酸による劣化を硫酸イオンの拡散および硫酸イオンと水和物との反応によってモデル化するとともに、pHを閾値としたエトリンガイトと二水セッコウの析出条件を導入した。また、実験値から回帰的にモルタル中の水和物量を求めることで、水和物量と析出物量に伴う固体体積の増減から空隙率を算出した。最終的に、空隙率の変化量を変数としたパラメトリック解析を行い、本解析手法の妥当性を検討した。
  • 内田 美夏, 高田 龍一, 野中 資博, 佐藤 周之
    2013 年 67 巻 1 号 p. 224-230
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    廃ガラスのコンクリート二次製品への応用を想定し、廃ガラスの反応性骨材としての特性について、混入率、粒度ならびに初期養生条件の観点から評価した。結果として、単一粒度の廃ガラスを一定量置換して比較した結果から、廃ガラスの粒度ペシマムが存在することを確認した。廃ガラスは、混入率が40%以上になると無害でない膨張反応を示し、混入率80%付近にペシマムが存在することが明らかとなった。初期養生条件のうち、蒸気養生ではASR抑制効果は見られなかったが、圧力養生ではASR抑制効果を発揮した。さらに、圧力養生は、蒸気養生に比べて圧縮強度等に与える影響が小さいが、養生時間が強度発現に影響を及ぼすことが明らかとなった。
  • 白川 敏夫, 花井 伸明
    2013 年 67 巻 1 号 p. 231-236
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    ポリマーセメントモルタルは、ポリマーフィルムの形成により緻密性に優れ、建物の補修などに使用されている。しかし、施工上十分な養生を行うことが困難な場合も多い。そこで本研究は、温度20℃、相対湿度60%の環境下におけるポリマーセメントモルタルの気体拡散係数へのポリマー量やセメントの水和の影響を明らかにすることを目的に、実験検討を行った。その結果、本研究のポリマー量0~60kg/m3において、ポリマー量が0から20kg/m3まで増加しても気体拡散係数はほとんど変化しないものの、それ以上増加すると比例して減少した。また、材齢初期の湿潤養生期間が長くなるほどセメントの水和は進行し、気体拡散係数は小さくなることが明らかとなった。
  • 栗山 広毅, 後藤 卓, 名和 豊春
    2013 年 67 巻 1 号 p. 237-243
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本論文は、収縮低減剤が混和されたセメント硬化体の凍結融解劣化機構を解明するため、ギブス自由エネルギーの差によって働く低温吸水ポンプ作用と未凍結水移動の駆動力の増大によって気泡に隣接する毛細管空隙が断裂するという仮説を立て、凍結融解時の細孔構造変化及び長さ変化測定によって検証を行ったものである。その結果、収縮低減剤を混和したセメント硬化体において未凍結水の移動による毛細管空隙の収縮と比較的早いサイクルでひび割れが内部まで伝播したことを確認し、前述した仮説の妥当性を裏付けるとともに、収縮低減剤の種類によっては凍結融解抵抗性を損なわないことが確認された。
  • 蒋 海燕, 上田 賢司, 佐藤 嘉昭, 大谷 俊浩
    2013 年 67 巻 1 号 p. 244-251
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    改質フライアッシュを混入したモルタルの乾燥収縮ひび割れに対する抵抗性について、混合砂と石灰砕砂を使用し、内部拘束型による一軸拘束試験を行った。その結果、混合砂はすべての供試体においてひび割れが発生したが、石灰砕砂にはひび割れが発生しなかった。また、フライアッシュがひび割れ発生に及ぼす影響については明確な結論を得ることが出来なかった。さらに、筆者らが行った既往の研究で得られたコンクリートの実験結果と比較を行った。その結果、コンクリートに比べモルタルは割裂引張強度が大きく、ひび割れ発生時の拘束応力も大きくなることが分かった。
コンクリートの試験・評価
  • 平野 正幸, 吉武 勇, 平岡 照規, 稲川 雪久
    2013 年 67 巻 1 号 p. 252-258
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    トンネル覆工コンクリートの側壁部には表面気泡が発生しやすく、且つ点検通路の目線位置にあるため、覆工コンクリートの出来映え(美観性)の評価に与える影響が大きい。そこで本研究では側壁部に生じる表面気泡の低減を目的とし、その基礎的検討として表面気泡の定量評価方法を考案した。特に、型枠材質および打設角度の影響を調べるため、覆工型枠(セントル)の側壁部を模擬した型枠内にコンクリートを打設し、表面気泡の発生状況を調べた。圧力測定フィルムを用いた画像解析により表面気泡面積や発生数を求めたところ、型枠の角度が15°以上では、セラミック塗装鋼板型枠よりも鋼型枠の方が表面気泡は発生しやすいことを示した。
  • 尾崎 秀夫, 堺 孝司
    2013 年 67 巻 1 号 p. 259-265
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント代替少量混合成分としてフライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末を用いたときのコンクリートへの影響に加えて、フライアッシュを細骨材として併用した場合のコンクリートの基本的性能について検討した。その結果、石灰石微粉末以外の少量混合成分を用いると強度の低下がみられたが、フライアッシュを細骨材として加えると強度が増加した。また、コンクリート1m3製造する際のCO2排出量は、少量混合成分を混合することで約12kg抑制することができた。加えてフライアッシュを細骨材として加えると単位強度当たりのCO2排出量を低減でき、少量混合成分とフライアッシュ細骨材代替材を併用することの有効性が明らかになった。
  • 二宮 祐希, 黒岩 義仁, 高尾 昇
    2013 年 67 巻 1 号 p. 266-273
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    コンクリート舗装で使用実績が少ない石灰石砕石を用いたコンクリートの舗装コンクリートへの適用性を評価した。さらに、石灰石微粉末(LS)混合セメントを用いて配合設計を行い、CO2排出量を検討した。その結果、石灰石砕石を使用した舗装コンクリートのすりへり抵抗性、すべり抵抗性は、硬質砂岩砕石を用いたものと同等であった。また、コンクリート舗装の最大ひび割れ間隔を計算した結果、石灰石砕石を用いた場合、硬質砂岩砕石を用いたものの1.5~2倍大きくなった。LS混合セメントを用いたコンクリートのCO2排出量は、単位セメント量とLSのバランスで最小値が存在し、本試験では10%混合においてCO2排出量が12%削減できる試算結果となった。
  • 菊田 弘之, 澤本 武博, 篠崎 徹, 森濱 和正
    2013 年 67 巻 1 号 p. 274-281
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、100×100×100mmのCube型(立方体)のボス供試体を考案し、従来から使用されているボス供試体とのコンクリートの充てん性および圧縮強度について比較検討を行った。その結果、100×100×100mmのCube型ボス型枠の開口部が65×80mmで、いずれのスランプにおいても概ね95%以上の粗骨材の占有率があり、コンクリートが材料分離することなく充てんされると考えられる。また、実物大壁試験体で実験を行った結果、従来から使用されているボス供試体と同様にCube型ボス供試体の割取り面は平滑で、圧縮強度の標準偏差も小さく、立方体供試体として十分活用できると考えられる。
  • 崔 亨吉, 辻埜 真人, 野口 貴文, 北垣 亮馬
    2013 年 67 巻 1 号 p. 282-289
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    コンクリートのひび割れ抑制対策として利用されている膨張材を用いたコンクリートを対象として、その基本特性の把握および実構造物レベルでの膨張材の効果に対して検討を行った。実機プラントを利用して検討した結果、膨張材によるコンクリートの乾燥収縮および自己収縮の低減効果が認められた。一方、膨張材を用いたコンクリートの擬似完全拘束条件下での引張応力強度比は低い値で推移し、膨張材による引張応力の低減効果が確認できた。実構造物の外壁およびスラブにおいても、膨張材を用いることで、初期材齢において膨張に伴う圧縮応力が有効に導入され、コンクリートの引張応力を低減することができた。さらに、長期材齢におけるひび割れを評価した結果、膨張材を用いたコンクリートのひび割れ面積は、普通コンクリートの約35%で、膨張材のひび割れ低減効果が確認できた。
コンクリートの物性
  • 三隅 英俊, 丸屋 英二, 高橋 俊之
    2013 年 67 巻 1 号 p. 290-295
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    廃棄物処理、品質確保およびCO2削減という観点から、クリンカーのC3A量を約13%、C4AF量を約11%まで高めるとともに混合材を10%に増量した高間隙相型混合セメントについて、耐久性を含めたコンクリート物性を調べた。その結果、流動性、乾燥収縮、促進中性化、凍結融解抵抗性および塩分浸透性は、混合材量および間隙相組成の影響を受けなかった。強度は、混合材量を増加した方が材齢に関係なく高くなったが、間隙相組成の影響は小さかった。水和生成物を調べた結果、高間隙相型混合セメントでは、モノカーボネートおよびヘミカーボネートの生成が認められ、強度発現性に寄与していると考えられた。
  • 谷田貝 敦, 二戸 信和, 宮澤 伸吾, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 296-303
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    高炉セメントの性能改善を目的として、C3S量を68%程度で調整したクリンカーを用いて高炉セメントA種を試作し、コンクリートの諸特性について普通ポルトランドセメント(OPC)と比較検討した。その結果、C3S量を68%程度に増加させることにより、高炉セメントA種の初期強度は、特に低温条件下で改善され、高炉セメントA種の圧縮強度および乾燥環境下における収縮特性は、OPCと同等となった。また、C3S量の増加に伴う促進中性化深さはOPCに近く、クリンカー中の遊離石灰の含有による効果が示唆された。高炉スラグの比表面積の増加により圧縮強度がさらに増加した。
  • 細川 吉晴, 千賀 年浩, 安部 明彦
    2013 年 67 巻 1 号 p. 304-310
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    南九州に産する火山灰の有効利用の観点から、保水性インターロッキングブロックの製造に新燃岳や桜島の降灰をどの程度まで混入できるのかを実験的に検討した。その結果、3.0MPa以上の曲げ強度を満足する火山灰混入率は新燃岳が30%まで、桜島が20%までであった。非常に細粒な火山灰を多く混入するほど透水は悪くなるが、保水量は高まる傾向があった。また、ブロックの表面色調は、桜島火山灰は色が濃いために混入率が高くなるほど暗くなり彩度も悪くなるが、新燃岳火山灰は褐色系で明るいため、火山灰未混入ブロック面と大差ないほどであった。
  • 澤本 武博, 望月 昭宏, 舌間 孝一郎, 樋口 正典
    2013 年 67 巻 1 号 p. 311-317
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    コンクリートの強度発現と初期の湿潤養生期間の関係として、1951年に米国でWalter. H. Priceが発表した論文が世界的に用いられ、現在でも多くの文献や教科書に採用されている。本研究では、現在のコンクリートについてPriceの論文と同じ養生条件で強度試験を行った。その結果、Priceの実験結果と同様に、水中養生から気中養生に切り替えると、一旦圧縮強度が増加しピークを迎え、その後緩やかに低下する現象は見受けられた。しかし、材齢180日において絶えず水中養生した場合と強度比較すると、初期の水中養生期間が3日間では80%程度、28日間では100%程度となり、Priceの実験結果より大きい値となった。また、引張強度は初期の水中養生期間を長くしても100%までは届かなかった。
  • 西田 卓矢, 千歩 修, 長谷川 拓哉
    2013 年 67 巻 1 号 p. 318-324
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    高炉スラグ細骨材(BFS)を用いたコンクリートについて、ブリーディングの大きいコンクリートに対して効果的と考えられる打込み後の再振動及び透水型枠の使用が耐凍害性に及ぼす影響について検討した。実験により、透水型枠を使用することで、コンクリート内部の気泡に影響を与えていたブリーディングが減少するため、内部の気泡組織が粗大化しないこと、余剰水の排出により組織の緻密化を図れることがわかった。また、BFSを用いたコンクリートに30~90分の間で再振動を行うと組織は緻密化するが耐凍害性は低下し、これは気泡間隔係数だけでは説明できないという結果を得た。
  • 岡田 秀敏, 山田 高慶, 佐藤 嘉昭, 大谷 俊浩
    2013 年 67 巻 1 号 p. 325-332
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究ではW/C50~35%程度の比較的高い強度を有する改質フライアッシュ(CfFA)コンクリートの特性の把握を目的に実験を行った。その結果、材齢28日のCfFA強度寄与率k値は単位セメント量の増加に伴い大きくなり本実験の範囲で0.2~0.7程度であること、簡易断熱養生時の温度上昇はCfFAコンクリートの強度増進に効果的であること、材齢28日強度が同等となるように調合設定したCfFAコンクリートの場合にS値は0N/mm2に設定できる可能性があること、CfFAコンクリートの乾燥収縮ひずみは同じW/Cで比較すると若干減少する傾向にあること、自己収縮ひずみはほぼ同等であることがわかった。
耐久性
  • 杉山 友明, 田原 和人, 盛岡 実, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 333-339
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    下水道施設では硫酸によるコンクリートの劣化が問題となっている。耐硫酸性を有する補修材料としてアルミナセメントとポリマーエマルションの複合化機構について検討を行うとともに、硫酸と塩酸に対する耐久性の評価を行った。3種のポリマーエマルションを混和したところ、セメント粒子への吸着量が少ないエマルションを混和した場合に、水和の遅延が少なく、耐酸性が向上した。EPMAにより、このポリマーセメントでは、セメント粒子表面ではなく、水和生成物間にエマルションが濃縮していた。
  • 小川 彰一, 細川 佳史, 山田 一夫, 坂井 悦郎
    2013 年 67 巻 1 号 p. 340-347
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    高炉スラグ微粉末を置換したセメントの硫酸塩溶液浸漬による膨張のメカニズムを、物質移動と熱力学的相平衡とを組み合わせた連成モデルを用いた解析によって検討した。解析結果は実験結果をよく表し、解析から得られた構成鉱物の体積変化率と硫酸塩浸漬による膨張量とはよい相関を示した。解析の結果、高炉スラグ微粉末中のアルミニウムは、硫酸塩の浸透に伴ってエトリンガイトとなり、また、石灰石微粉末の添加やセメントのSO3量増加による膨張抑制は硫酸塩の浸透を抑制するとともに体積変化率を低下させるためであり、さらに、石膏の生成は硬化体中の水酸化カルシウム量に依存し、石膏の生成も膨張に寄与すると考えられた。
  • 佐藤 賢之介, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦, 菊地 道生
    2013 年 67 巻 1 号 p. 348-355
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、普通ポルトランドセメント(OPC)に高炉スラグ微粉末(BFS)-無水せっこう(AH)-石灰石微粉末(LSP)、フライアッシュ(FA)-シリカフューム(SF)、およびBFS-SFを用いたセメント系材料について、硫酸塩種および温度条件が硫酸塩劣化機構に及ぼす影響を明らかにし、Na2SO4とMgSO4、さらに高温条件を考慮した総合的な耐硫酸塩性に優れた材料設計を提案することを目的とした。その結果、硫酸塩種の違いは硫酸塩溶液のpHに影響を及ぼし、さらには水和生成物が変化することで劣化形態が異なるものと考察した。温度条件もpHを変動させる要因となり、高温条件下では劣化が激しくなると考えられた。またBFS置換率70%とした材料に、AH5~10%およびLSP10%を併用混和することで耐硫酸塩性が向上した。
  • 新枦 雄介, 栗山 広毅, 後藤 卓, 名和 豊春
    2013 年 67 巻 1 号 p. 356-362
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究はセメント硬化体の処女乾燥・再吸着時の乾燥収縮量を予測するために、従来用いられてきたセメント硬化体の細孔形状を円筒形と仮定されて構築された円筒形細孔モデルと、セメント内部の一部分を二つの平板が成すスリット状細孔と考え、熱力学的アプローチからスリット状細孔モデルを構築し、それらを組み合わせることで乾燥収縮のヒステリシスループを再現することが出来た。また乾燥収縮量の詳しい値に乖離が見られたためパラメータ等を吟味し、精度を上げることで改善されると考える。
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