セメント・コンクリート論文集
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69 巻, 1 号
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セメント化学
  • 名和 豊春, 粟村 友貴, 朴 埈範, 森永 祐加
    2015 年 69 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究ではXRD-Rietveld法および29Si NMR法を用いてエーライト(C3S)の水和反応におけるHydrated silicate monomer(HM)生成量を求め、Livingstonらが報告した共鳴核反応解析によるシリケートイオンの深さ方向の分布との関係について検討を行い、HMは表層近傍のCaが溶脱したシリケートゲル中のシリケートイオンであることを明らかにした。また、相平衡論からHMの存在形態を考察し、溶脱層の存在を示すとともに、CaCl2を添加したC3Sの水和挙動においてHMの急激な変化がC3S水和の加速期の開始点と一致していることを示し、ナノオーダーの保護膜の存在を裏付ける結果を示した。
  • 中川 裕太, 新 大軌, 平尾 宙, 坂井 悦郎
    2015 年 69 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、遊離石灰(f.CaO)量を変化させた高エーライトセメントを用いて混合セメントの流動性や注水直後の初期水和へのf.CaOや混合材の影響について検討した。f.CaO量が増加すると流動性は低下した。これは、主にf.CaOの水和により生成した水酸化カルシウムにより比表面積が増大し、同一添加量において単位面積当たりの分散剤吸着量が減少したためと推察した。混合材を混合することでその希釈効果により流動性が向上し、特にf.CaO量が多い系ではフライアッシュを混合したときに流動性が大きく改善した。また流動性の観点からf.CaO量には上限があり、本研究の範囲では2%程度であった。
  • 中川 裕太, 新 大軌, 平尾 宙, 坂井 悦郎
    2015 年 69 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では低環境負荷型汎用セメントの材料設計を目的として、遊離石灰(f.CaO)量を変化させた高エーライト(C3S)セメントと、混合材にフライアッシュ(FA)と高炉スラグ微粉末(BFS)を用いた混合セメントの水和反応に及ぼすf.CaOや混合材の影響について検討した。C3Sを70%程度含むセメントを用いることで混合材を20%混合しても初期材齢において普通セメント(N)と同等の発熱量と細孔量が得られ、Nと同等の初期強度が得られると推察した。またC3Sやf.CaOを増加させることで混合セメントでもNと同程度のCa(OH)2生成量が得られ中性化抵抗性の改善も期待できることを明らかとした。さらにf.CaO量を増加すると初期におけるBFSの反応が促進され、またFAの反応も促進される傾向を示した。
  • 大澤 典恵, 白濱 暢彦, 山下 牧生, 田中 久順
    2015 年 69 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    酸化りん(P2O5)を1%まで高めた高ビーライト系クリンカーを電気炉で試製し、クリンカーおよびセメントの諸物性に及ぼす影響を調査した。クリンカー中のP2O5の増加に伴いエーライト量は減少し、ビーライト量は増加した。また、P2O5の増加によるエーライト、ビーライトの変化量は既往の研究における普通ポルトランドセメント(N)クリンカーの変化量や、P2O5の全てがC3Pとしてビーライトに固溶することを仮定した場合の計算値と一致した。このことから高ビーライト系クリンカー中のP2O5は、Nクリンカーと同様にビーライトへの固溶が生じていることが示唆された。セメントの色および凝結に及ぼす影響は小さかった。P2O5の増加に伴い材齢28日までの圧縮強さと水和熱は低下した。また、P2O5の含有量とセメントの圧縮強さおよび水和熱の変化は対応していた。本研究を通して得た知見は、高ビーライト系セメントの品質の維持および管理に活用できる。
  • 植田 晃平, 森永 祐加, 名和 豊春, 畠山 葵
    2015 年 69 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究ではC3A-Gypsum系の水和反応が相平衡反応と表面錯体反応で起こっていると考え、地球科学コードPHREEQCを用いて水和物生成モデルの構築を行った。さらに、AFm相中のMonosulfateとC-A-Hの固溶体の存在、C3A粒子表面のゲル状のC-A-Hの生成と、その拡散二重層による影響を考慮し、モデルの更なる高度化を試みた。その結果、水粉体比2.0のC3A-Gypsum系では相平衡反応のみによって反応が進行していることが示唆された。水粉体比0.6のC3A-Gypsum系の反応初期では相平衡反応と表面錯体反応が起こっていることが、また反応後期では従来から提案されていたEttringiteと未水和C3Aの反応によるAFm相の生成だけでなく、C3A表面のゲル状のC-A-Hが溶解しEttringiteと反応することで、AFm相が生成していることが示唆された。
  • 須田 裕哉, 河野 伊知郎, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2015 年 69 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究はC-S-Hの水蒸気吸着量および比表面積に及ぼすAlの影響に関して、合成したC-S-Hより検討を行った。その結果、同一Ca/Siモル比において合成時のAl/Siモル比が大きいC-S-Hほど、各湿度における水蒸気吸着量が多くなった。また、比表面積も同様に合成時のAl/Siモル比が大きいC-S-Hほど比表面積が大きくなる傾向を示した。さらにAlがC-S-Hの比表面積の変化に及ぼす影響について更なる検討を行うため、セメント硬化体中のC-S-Hの比表面積に着目した。その結果、セメント硬化体中のC-S-Hの比表面積も合成C-S-Hと同様にAlの影響に加え、アルカリの影響を受けることが示唆された。
  • 名和 豊春, 小林 創, 齋藤 聖也, 安藤 雅将
    2015 年 69 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリートの劣化の一因として、塩化物イオンが拡散侵入し鉄筋が腐食する塩害が問題となっている。塩害を考慮する上でコンクリート中の塩化物イオンの拡散挙動、特にC-S-Hにおける物理吸着量を正確にモデル化することが重要である。物理吸着はC-S-HのSiOH基で起きる。SiOH基にはシラノール基とシランディオール基の2種類が存在しているが、これらのSiOH基は区別することが出来ていない。そこで本研究では29Si MAS-NMR、27Al MAS-NMRスペクトル解析及びζ電位測定実験を行い、Ca/Si比及びAl置換による表面電位への影響を観察することで2種類のSiOH基を区別した。また、これらのSiOH基の区別をモデルに組み込み、C-S-Hへの塩化物イオンの吸着量予測の向上を行った。
  • 湊 大輔, 渡邊 禎之, 原澤 修一, 山田 一夫
    2015 年 69 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    セメント系材料とCsの相互作用を評価するために、セメント系材料の主成分であるカルシウムシリケート水和物(C-S-H)やC-S-HにAlが固溶したC-S-H(C-A-S-H)を合成し、Alの固溶がCsの収着特性に与える影響を評価した。特に微細構造の変化に着目し、29Si、27Alおよび133Csを対象に核磁気共鳴(NMR)測定を行った。Cs収着前後の27Al MAS NMRのスペクトル変化からはAlがC-A-S-H中のSiO4にブリッジングしたことが示された。ブリッジングしたAlはCsを帯同すると考えられ、これがC-A-S-Hに対するCs収着メカニズムの一つであると示唆された。
  • 松井 久仁雄, 坂本 直紀, 渡邉 次郎, 松野 信也
    2015 年 69 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    放射光X線散乱とラボラトリーにおけるX線散乱のプロフィールを統合して、トバモライト生成過程のC-S-H構造とトバモライト結晶化の関係を検討した。本研究ではトバモライト生成促進作用があるγ-Al2O3および二水石膏添加効果を検証した。SEM観察から、C-S-H粒子はγ-Al2O3ではディスク状粒子、二水石膏添加ではロッド状粒子が主体であったが、いずれの散乱プロフィールも解析モデルから良好にフィッティングできた。算出された等価球半径は添加物によりいずれも小さくなり、トバモライト生成挙動との相関が見られた。これら等価球半径は、29Si固体NMRから算出されたSi四面体鎖の平均鎖長と対応しているという興味ある事実が得られた。
  • 宮原 茂禎, 岡本 礼子, 武田 均, 坂井 悦郎
    2015 年 69 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    CO2排出量の削減を目的として、ポルトランドセメントを使用せずに高炉スラグ微粉末を炭酸ナトリウムで硬化させるスラグコンクリートの研究を行っている。本研究では、そのペーストの水和物の化学組成をエネルギー分散型蛍光X線元素分析器を装備した走査型電子顕微鏡を用いて分析した。スラグセメントの水和生成物は、ハイドロタルサイト、AFm相、C-S-Hであり、ハイドロタルサイトのMg/Al比は1.45と理論値である3よりも顕著に低く、主に内部水和物として生成していた。C-S-Hは高炉セメントB種のものと大きく組成が異なり、Ca/Si比が1.1程度と低く、AlおよびNaの固溶量が顕著に多くなった。
  • 石川 玲奈, 名和 豊春, 佐川 孝広
    2015 年 69 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    筆者らは試料を加熱処理し高炉セメント硬化体中の未反応スラグを結晶化させることで、X線回折─リートベルト法によりスラグ反応率を測定することが可能であることを報告している。本研究では広範なスラグ混合率の高炉セメント硬化体を対象として、本手法の妥当性を検討した。同一の高炉セメント硬化体に対し、本手法並びに標準添加法を用いてスラグ反応率を測定し比較した。その結果、両手法により求めたスラグ反応率がよい一致を示したことから本手法の妥当性が示された。
  • 白濱 暢彦, 原田 匠, 山下 牧生, 田中 久順
    2015 年 69 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    高速半導体検出器と高温加熱アタッチメントを組み合わせた高温X線回折を用いて、クリンカー鉱物の生成プロセスをその場観察した。その結果、これまで単相でのみ確認されてきた各クリンカー鉱物の高温相の生成状況を、クリンカー原料の加熱によりその場観察することに成功した。高温下におけるクリンカー原料鉱物の反応や各クリンカー鉱物の生成や消滅は、既往の研究と一致していた。各クリンカー鉱物の高温相の生成温度は既往の研究と類似しており、高温相の相転移温度に対する共存クリンカー鉱物やクリンカー原料の組成による影響は小さいと考えられた。
  • 安藤 雅将, 名和 豊春, 中谷 香織, 坂本 登
    2015 年 69 巻 1 号 p. 88-95
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    Caを添加することによってα-Al2O3粒子表面上のカチオンサイト(主に>AlOCaサイト)密度を変化させ、化学構造の異なるポリカルボン酸系分散剤(以下PC)の吸着挙動について検討を行った。各溶媒条件におけるα-Al2O3の表面錯体反応を考慮することでカチオンサイト密度を理論的に算出し、PC吸着量との関係について調べた。その結果、PC飽和吸着時において、PC1分子が占有する面積内に存在するカチオンサイト数Nはカチオンサイト密度の増加と共に減少し、PCがα-Al2O3の表面に局所的に吸着していることが示唆された。また、吸着に寄与するPCのカルボン酸数Xはカチオンサイト密度が増すと減少し、この結果からPCが多分子層を形成していることが示唆された。
  • 安藤 雅将, 小林 創, 上仲 壮, 名和 豊春
    2015 年 69 巻 1 号 p. 96-103
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリートの塩害を防止する上で塩化物イオン拡散メカニズムの解明は重要であり、種々の塩化物イオン拡散モデルが提案されている。塩化物イオンの拡散係数には空隙構造の屈曲度や、細孔壁面の表面電荷が影響を及ぼす。しかし、両者は個別に評価されることが多く、表面電荷の影響を考慮した屈曲度の定量的な評価が必要とされている。本研究では空隙構造(空隙径・空隙量)を変化させた試料を用いて塩化物イオン拡散モデル値と実測値との検証を行った。その結果、全空隙量に占める5nm以下の空隙径の割合が増加するにつれて、塩化物イオン拡散モデルの屈曲度が増加した。
  • 太田 亨, 新 大軌, 大宅 淳一, 坂井 悦郎
    2015 年 69 巻 1 号 p. 104-109
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリートの塩害対策として塩化物イオンの固定が重要である。C3Aの水和によりAFm相が生成し塩化物イオンの固定が可能であるが、水和発熱量が大きい問題がある。本研究では発熱量が比較的少ないC4AFによる塩化物イオン固定について明らかにすることを目的に、4CaO・Al2O3・Fe2O3-CaSO4・2H2O-CaCl2系の水和生成物における塩化物イオンおよびFeの挙動について検討した。水和生成物としてモノサルフェート、Kuzel塩、Friedel塩といったAFm相が確認され、C4AF水和生成物による塩化物イオン固定の可能性が明らかになった。FeはおもにCa-Fe系のゲル状水和物として存在した。ゲル状水和物中の塩化物イオン濃度はAFm相と比較して小さく、塩化物イオン固定への関与は小さいと思われる。
  • 針貝 貴浩, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦, 佐藤 賢之介
    2015 年 69 巻 1 号 p. 110-117
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究ではC4AFと二水石膏をケイ石微粉末と共にセメントに置換し、オートクレーブ(AC)養生を実施した試料について二水石膏添加がトバモライト生成機構に及ぼす影響について検討し、また硫酸塩抵抗性をAC養生後の反応生成物と関連づけて考察することを目的とした。その結果、C4AFと二水石膏を同時に用いてAC養生を実施することでトバモライト生成量の増加がみられ、且つ高い硫酸塩抵抗性を示した。これは、低置換率においてはトバモライトを多量に生成したことにより、高置換率においてはトバモライトと同等の高い重合度を持つ低C/S比のC-S-Hを生成したことによるものと考察した。
  • 栗原 諒, 丸山 一平
    2015 年 69 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    収縮低減剤(SRA)の作用機構は、過去の研究では気液界面の表面張力の低下によって同一湿度における含水率が小さくなり、毛細管張力機構における含水率の低下により乾燥収縮が低減されると説明されている。本研究ではSRAの使用濃度および異なる湿度乾燥下での長さ変化と質量変化の測定を行い、SRAの作用機構に関する考察を行った。その結果、SRAによる収縮低減効果は、毛細管凝縮の起こらない低湿度域においても、SRAの使用濃度への依存性をもって発揮された。また、SRAの作用機構は、毛細管張力機構における表面張力の低下のみによるものではなく、別の機構を含んだものであることが確認された。
  • 茶林 敬司, 新見 龍男, 永田 宏志, 加藤 弘義
    2015 年 69 巻 1 号 p. 124-130
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    セメント産業はエネルギー多消費型産業であり、環境保護の観点から省エネルギー技術の開発が求められている。本研究では、鉱物組成を調整した低温焼成型クリンカーの実機キルンによる焼成試験を実施した。その結果、実機キルンにおいても低温焼成型クリンカーが焼成可能であり、キルン内でのクリンカーの被焼成温度も同条件で試製したOPCクリンカーと比較して100℃程度低下していることが推定された。熱量原単位を試算した結果、試製OPCクリンカーよりも5%程度の削減効果が確認された。また実機仕上げミルにより試製したセメントの凝結性状、モルタル圧縮強さおよびコンクリート性状は試製OPCと同程度であることが確認された。
  • 安藝 朋子, 黒川 大亮, 吉光 涼, 平尾 宙
    2015 年 69 巻 1 号 p. 131-138
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    普通ポルトランドセメント(以下NC)製造エネルギーの削減を目標に省エネ型セメントの開発を行った。前報1)では、NCクリンカーよりもC3Aを4%増加させた省エネクリンカーに混合材を5%増加することで、品質を維持しつつセメントの製造エネルギーを削減できる可能性を示した。本報では実機を模擬した小規模プラントにて試験製造し、省エネセメントの製造エネルギーおよび物性・耐久性を評価した。その結果、セメント製造エネルギーは試製NCに比べ8.5%の低下が認められた。物性および耐久性は概ね試製NC同等であった。さらにコンクリートの打設実験を行い、試製NCと同等の施工性能であることを確認した。
セメント硬化体・モルタルの物性
  • 陶山 裕樹, 小山 智幸, 高巣 幸二, 小山田 英弘
    2015 年 69 巻 1 号 p. 139-145
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本論文は、使用材料の粒度がモルタルの物性に与える影響について検討したものである。骨材を粉砕・分級して製造したPowder-Aggregate Material(PAM)を用いて使用材料の粒度を操作した実験を行い、次の知見を得た。(1)細かいPAMを混合したモルタルのフロー値はプレーン調合より低く、フロー値は充填率と正の相関関係にあった。(2)PAMを混合したモルタルの圧縮強度はプレーン調合より高く、圧縮強度は充填率と負の相関関係にあった。(3)使用材料の粒度は静弾性係数に影響をほとんど与えなかった。(4)微粒分(75μm以下の粒子)を含有することで乾燥収縮が大きくなった。(5)PAMの粒径が小さいほど促進中性化が深くまで進行した。中性化深さは充填率と負の相関関係にあった。
  • 室谷 卓実, 古東 秀文, 五十嵐 心一
    2015 年 69 巻 1 号 p. 146-153
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    モルタル中の気泡の空間分布構造を点過程として定量的に評価した。さらに、点過程に対する間引きシミュレーションによって再現した気泡の空間分布と実際のモルタル中の空間分布の比較を行い、骨材による分布の制限が実際の分布に及ぼす影響および、空間分布の再現可能性について検討した。セメントペースト中の気泡はランダムに分布するが、骨材の存在するモルタル中の気泡は骨材による分布の制限によって、凝集側の分布を示すことが確認された。また、間引きシミュレーションによって実際のモルタル中の気泡分布の特徴および点間距離が再現可能であることが示唆された。
  • 原 啓史, 森 泰一郎, 樋口 隆行, 盛岡 実
    2015 年 69 巻 1 号 p. 154-160
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    超速硬セメントとして、ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネート系の急硬材、カルシウムサルフォアルミネートセメント(SAC)をそれぞれ用いたモルタルの基礎性状を調査した。その結果、モルタルフローは急硬材混和の配合で高い値を示した。これは、急硬材混和の配合で併用した遅延剤の減水効果が影響したと考えられる。2時間強度は急硬材混和の配合が高く、1日以降の強度はSACを用いた配合が高い値を示した。急硬材混和の配合でのみ膨張挙動を示した。SACを用いた配合は中性化の進行が速かった。
  • 高橋 恵輔, Thomas Bier
    2015 年 69 巻 1 号 p. 161-168
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では混練やポンプ圧送等の施工により生じる撹拌作用がセメントモルタルの水和挙動や硬化物性に与える影響を測定し、その原因及びメカニズムの解明を行った。撹拌時間の延長に伴って水和反応が促進・増進した結果、早期の圧縮強度が高くなり、自己収縮が大きくなった。撹拌作用により水和反応が促進・増進するメカニズムは、凝集粒子の分散に着目した既往理論に加えて、セメント粒子表面に形成される保護層の破壊により溶解に対する活性領域が増大するという拡張水和理論を用いて説明できる。
  • 宮本 慎太郎, 稲田 晴香, 皆川 浩, 久田 真
    2015 年 69 巻 1 号 p. 169-175
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究ではセメントクリンカーの細骨材としての使用がモルタルの物性に及ぼす影響について検討した。その結果、細骨材に対するクリンカーの質量置換率が増加するほど、圧縮強度は増加した。また、塩化物イオン実効拡散係数は、細骨材の一部をクリンカーで置換した場合でも大幅に低減したが、クリンカーの質量置換率との間に相関は確認できなかった。さらにクリンカーの粒径がモルタルの物性に及ぼす影響について考察し、クリンカーは粒径が0.15mm以下のものは結合材として、0.15mm以上のものは細骨材として振舞い、前者はセメントペースト部の、後者は遷移帯の緻密化が生じ、塩化物イオン実効拡散係数が向上したと推察した。
  • 寺本 篤史, 丸山 一平, 樋口 隆行, 盛岡 実
    2015 年 69 巻 1 号 p. 176-182
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    高温履歴を有する高炉セメントペーストは、水和に伴う線膨張係数の経時変化によって温度ひずみが収縮側に推移し、温度ひび割れリスクが高まる可能性が指摘されている。本研究では自己乾燥に起因する線膨張係数の増大を抑制する手法として、複数の収縮低減剤を使用した実験的検討を行った。その結果、収縮低減剤の種類によっては線膨張係数の抑制に寄与しないものも見られたが、最高到達温度60℃の温度履歴を受ける場合には、収縮低減剤の種類によらず温度ひずみ、自己収縮ひずみが低減され、温度ひび割れのリスク低減にはいずれの収縮低減剤も有効であることが確認された。
  • 宮本 正紀, 胡桃澤 清文, 名和 豊春
    2015 年 69 巻 1 号 p. 183-190
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    セメント系材料の物性を空隙構造から予測することが求められているが、現在広く用いられている水銀圧入法は、前処理における乾燥や高圧力による内部構造の変化が指摘されている。そこで水銀圧入法の問題点を改善しているとされるサーモポロメトリーに基づく低温DSC測定から空隙構造を取得し、物性評価に用いることが可能かを検証した。低温DSC測定と水銀圧入法の結果を比較することにより水銀圧入法の乾燥と圧力による内部構造の変化の可能性を示し、低温DSC測定から取得できる総空隙量が水銀圧入法と同様の精度で物性を評価できることが明らかになった。また、取得した細孔径分布から塩化物イオン拡散に及ぼす影響が大きいしきい径が7nm以上であることを示した。
  • 依田 侑也, 相川 豊, 新 大軌, 坂井 悦郎
    2015 年 69 巻 1 号 p. 191-198
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、研究用セメントにフライアッシュ、石灰石微粉末、無水石膏を含む高炉スラグ微粉末をそれぞれ所定の割合で混合した混合セメントを試製し、水和発熱量、圧縮強度、全空隙率の測定を行い、圧縮強度の発現に及ぼす水和反応と全空隙率の影響を考察した。その結果、混合材の種類によって全空隙率や積算発熱量が同じでも圧縮強度は異なることを示した。一方、積算発熱量と全空隙率の間には、混合材の種類に関わらず高い相関関係があることから、混合材由来の水和物の圧縮強度はポルトランドセメント由来の水和物と比較して異なることを示し、その違いを補正係数とすることで水和発熱量を用いて圧縮強度を求める事を可能とした。
  • 酒井 雄也, 中谷 正生, 竹内 昭洋, 岸 利治
    2015 年 69 巻 1 号 p. 199-206
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    高圧環境下でのコンクリート変形機構の理解を目的として、セメントペーストを対象に高圧三軸試験を実施した。その結果、延性変形中の強度に封圧依存性がほとんど見られなかった。また試験後にサンプルを切断し、イオンミリング法により断面作製して内部のSEM観察を実施したところ、試験前と比較して反射電子像のコントラストが暗くなっていた。以上の結果より、三軸試験において水和物に結晶塑性のような分子レベルの構造変化が生じたものと解釈した。また高圧三軸試験によりサンプルの空隙量は減少しており、特に400MPaの封圧で実施した場合には極端に減少する結果となった。
  • 胡桃澤 清文, 名和 豊春
    2015 年 69 巻 1 号 p. 207-213
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリート中の物質移動特性の非破壊検査手法として比抵抗測定法があげられる。しかし、細孔内溶液組成が比抵抗測定結果に及ぼす影響は明らかではない。そこで本研究では各種電解質溶液を練混ぜ水として作製した硬化セメントペーストを用いて検討を行った結果、水銀圧入法によって得られた総空隙量と塩化物イオンのみかけの拡散係数の相関は低かった。一方、ACインピーダンス法によって得られた硬化セメントペーストの電気伝導率と塩化物イオンのみかけの拡散係数は線形関係にあることが示された。このことから細孔構造及び細孔内溶液組成が異なる場合においても、電気伝導率測定によって塩化物イオンの拡散係数の推定を行うことが可能であることが示された。
  • 森 裕克, 新 大軌, 宮内 雅浩, 坂井 悦郎
    2015 年 69 巻 1 号 p. 214-220
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    OPC-AC-CS系の圧縮強さおよび初期膨張に及ぼす養生温度の影響を3水準のOPC/AC比で確認し、OPC/AC比で養生温度の影響が異なることを明らかにした。圧縮強さ発現は空隙率と相関があるものの、空隙率に対する依存度は養生温度によって異なり、主要鉱物の反応率をもとに行った相組成解析より、養生温度およびOPC/AC比で水和物の種類および生成量が異なることが原因であると推察した。また最大膨張は、OPC/AC比が高く、養生温度が低いほど大きくなる傾向があり、エトリンガイトの形状およびC-S-Hの生成量から、緻密な組織が形成された後にエトリンガイトが生成されたことが原因と推察した。
  • 伊藤 慎也, 盛岡 実, 伊藤 孝文, 伊代田 岳史
    2015 年 69 巻 1 号 p. 221-227
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    塩素固定化材および膨張材を低熱セメントに添加することで、水和物としてエトリンガイト、モノサルフェートおよびハイドロカルマイトが生成した。また、それらの生成量にはSO3/Al2O3モル比に応じた差が認められた。塩素固定化材と膨張材を添加したセメント硬化体を塩水浸漬した場合、硬化体が緻密化し、塩化物イオンの拡散が抑制された。これは、フリーデル氏塩の生成により塩化物イオンを固定化した化学的な作用と、細孔量を減少させる物理的な作用によるものと考えた。また、セメントの種類によって効果が異なり、低熱セメントは普通セメントと比較して塩素固定化材および膨張材の添加による中性化抵抗性と耐塩性の効果が小さいことが確認された。
  • 李 春鶴, 亀井 健史, 長納 央樹
    2015 年 69 巻 1 号 p. 228-234
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究は、産業廃棄物・副産物である高炉スラグ微粉末、フライアッシュおよび廃石膏ボードから再生した廃石膏を有効利用して、高性能コンクリートの開発を目的としている。具体的には本研究で対象とした複合リサイクル材料を細骨材の一部分と置換したモルタルの供試体に対して、圧縮強度試験、曲げ強度試験を行い、その強度特性を検討した。また、同供試体に対して長さ変化測定試験を行い、その収縮膨張性能も解明した。さらに、複合リサイクル材料の添加に伴う内部構造の変化をSEMにより観察した。その結果、本研究に用いた複合リサイクル材料の添加に伴い、強度増進、収縮緩和の効果を実証している。
コンクリートの試験・評価
  • 吉田 亮, 水野 浩平, 岸 利治, 梅原 秀哲
    2015 年 69 巻 1 号 p. 235-242
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    モルタル硬化体において水銀漸次繰返し圧入法で得るインクボトル空隙と連続空隙の実態を把握するため、他の空隙分析手法を用いて下記の検証を行った。インクボトル空隙に関しては、空気泡の量と寸法を調整した試料を用いてリニアトラバース法で得る空気泡との間における量的関係を検討した。また連続空隙に関しては、セメント・混和材種類の異なる試料を用いた吸水・乾燥過程の質量変化との関係について定量的に検討を行った。インクボトル空隙は空気泡の量との間に強い相関関係を確認できた。また連続空隙は、吸水・乾燥開始直後から数時間の間に観察される急激な質量変化(1時間の吸水量、3時間の乾燥量)との間に強い相関関係が確認できた。
  • 緒方 英彦, 兵頭 正浩, 小林 哲夫, 竹津 ひとみ
    2015 年 69 巻 1 号 p. 243-250
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、寒冷地において空隙中に水が浸透する環境条件下にあるポーラスコンクリートを対象に、空隙の飽和・不飽和状態が熱拡散率に及ぼす影響について考察を加えた。その結果、空隙が飽和状態のポーラスコンクリートの熱拡散率は、常温において普通コンクリートとほぼ同じになり、空隙率との間に線形関係があることを明らかにした。また、空隙が飽和状態のポーラスコンクリートにおいて低温から常温の間で連続的に測定した温度には、空隙中の水あるいは氷の状態変化(潜熱)の影響で融点一定区間が見られ、この融点一定区間の時間は空隙率との間に線形関係があることを明らかにした。
  • 齋藤 俊克, 出村 克宣
    2015 年 69 巻 1 号 p. 251-256
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、ポーラスコンクリートの圧縮性状に及ぼす全空隙率及び水セメント比の影響、並びに圧縮強度、静弾性係数及び動弾性係数の関係を明らかにすることを目的としている。その結果、水セメント比にかかわらず、ポーラスコンクリートの圧縮強度、静弾性係数及び動弾性係数は、全空隙率の増加に伴って減少する傾向にある。一方、全空隙率にかかわらず、ポーラスコンクリートの動弾性係数は静弾性係数に比べて20%程度大きい値を示す。又、ポーラスコンクリートの動弾性係数及び静弾性係数と圧縮強度の間には高い相関性が認められ、普通コンクリート同様に、圧縮強度を因子としてそれらを推定することが可能である。
  • 高市 大輔, 須藤 俊幸, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2015 年 69 巻 1 号 p. 257-263
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では長期供用されたコンクリート構造物におけるセメント水和物に着目した分析を実施した。また、コンクリートの分析を行う際に骨材の影響を排除するために、骨材とセメントペーストを分離する骨材分離の手法を確立し、本手法を用いて、大正時代に建設され長期間供用された鉄道橋コンクリートの分析を実施した。その結果、本鉄道橋のコンクリートにおいては水酸化カルシウム生成量が極端に少なく、主にC-S-Hの炭酸化が生じる結果となった。また表層部においては炭酸化及び日射等による乾燥の影響が生じ、炭酸カルシウムと脱水縮合した非晶質シリカの生成が確認され、ペースト部の比表面積の低下が生じる結果となった。
  • 秀坂 直幸, 椿 龍哉
    2015 年 69 巻 1 号 p. 264-271
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    塩害を生じさせるコンクリートの表面塩化物イオンは、高圧洗浄や降雨による洗い流しによって除去することが可能であり、塩害抑制に有効である。本研究では塩害抑制に寄与する高圧洗浄や降雨による洗い流しに際して、その効果に影響を与える要因と程度を明らかにすることを目的とし、表面の緻密さ、ひび割れ幅、塩化物の付着性状をパラメータとして塩化物の水流に対する移動抵抗性を検討した。その結果、表面が緻密なほど、ひび割れ幅が小さいほど塩化物の移動量は増加傾向にあることが明らかとなった。加えて、塩水による付着は潮解による付着より2~4倍程度移動量が多くなる傾向も確認した。
  • 橋本 紳一郎, 平川 恭奨, 南 浩輔, 中島 良光
    2015 年 69 巻 1 号 p. 272-278
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、コンクリートの圧送性を施工現場で直接確認できる方法として振動加速度計を用いたコンクリートの圧送性評価を提案している。これまでの検討からコンクリートの圧送性の違いを確認できることを示唆しているが、様々な配管条件や計測結果の評価方法について十分な検討が行われていない。そこで本研究では、実際の施工現場で4種類の異なる配管条件でコンクリートを圧送し、振動加速度計で粗骨材によって生じる配管の振動を計測し、その計測結果から評価手法を検討した。その結果、配管条件と測定位置によって加速度の値が全く異なることを確認した。また、加速度の値から圧送性を判定するための閾値を定めた。
  • 岸田 政彦, 岸 利治, 副島 直史, 山本 照久
    2015 年 69 巻 1 号 p. 279-286
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    軽量コンクリートの圧送性は普通コンクリートに比べて劣ることが知られており、施工前には圧送試験を行うなどして十分な検討を行うこととされている。連続らせん羽根ミキサで製造した軽量コンクリートと二軸強制練りミキサで製造した軽量コンクリートの圧送性を比較したところ、二軸強制練りミキサの方が良好であることを確認した。軽量骨材は普通骨材に比べて軽いため、練混ぜの機構と骨材の密度との兼ね合いによりコンクリートを構成する全ての材料を一体化させる練混ぜ効率、特にセメント粒子と練混ぜ水を微視的に一体化させる練り効率が異なり、内部に水を含まないセメント粒子の塊(強固な凝集体)がコンクリート中に残存したことが圧送性低下の一因と推察した。
  • 蔵重 勲, 山田 一夫, 小川 彰一
    2015 年 69 巻 1 号 p. 287-294
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究は福島第一原子力発電所の事故により発生した指定廃棄物の最終処分に関し、処分施設で主要構成部材となる鉄筋コンクリートのより信頼性の高い品質管理や定量的な品質確認の方法を構築することを目的に、非破壊試験の活用法を検討したものである。近年、研究のみならず実務においても活用例が増加しているTorrent法表層透気試験であるが、試験に及ぼすコンクリート中水分量の影響が十分に解明されておらず、絶対的な品質評価には課題が残っている。これに対し本論文では、同試験によって評価される物性が乾燥により増大する開放空隙量であることを示すとともに、非破壊測定可能な表層透気係数と電気抵抗率を組み合わせた品質評価の可能性を示した。
  • 飯塚 豊, 辻 幸和, 森田 俊哉, 岡野 素之
    2015 年 69 巻 1 号 p. 295-302
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    実物のプレキャスト部材同士を鋳鉄製カップラー接合具を用いて垂直に接合した効果を、接合部材の静的力学的性状と低サイクル疲労性状に基づいて検討した。主要因は、アンカー鉄筋の径と底版におけるアンカー鉄筋の定着方法である。折り曲げずに垂直に下ろしてプレートで定着させた方法では、D25シリーズおよびD38シリーズとも一体型と同程度以上の耐力を示した。主鉄筋の上側で折り曲げて定着させた方法では、D25シリーズでは一体型供試体と同程度以上の耐力を持たせることはできなかったが、D38シリーズでは同等以上の耐力を示した。D25とD38シリーズのいずれの定着方法においても、低サイクル疲労性状では高い靭性率を示した。分割型供試体の接合面での開口幅の主な部分は曲げひび割れ幅であり、一体型よりも大きくなった。なおアンカー鉄筋が接合面で降伏した後に、接合部材は破壊した。
コンクリートの物性
  • 宮澤 伸吾, 横室 隆, 坂井 悦郎, 二戸 信和
    2015 年 69 巻 1 号 p. 303-310
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、一般のコンクリート構造物に幅広く適用可能なフライアッシュセメントを提案することである。Bogue式によるエーライト量を約70%に増加させた高エーライトセメントを実機プラントで試作し、これを用いたフライアッシュセメントについて、コンクリートの強度発現性に及ぼすフライアッシュの置換率や養生温度の影響、収縮特性、収縮ひび割れ抵抗性等について検討した。高エーライトセメントの使用によってフライアッシュセメントの強度発現が促進され、10℃養生においても普通ポルトランドセメントに比べて初期強度が大きくなった。また、拘束応力試験の結果から優れた収縮ひび割れ抵抗性を有することが示唆された。
  • 浦野 登志雄, 松田 学, 松本 康資, 久野 俊文
    2015 年 69 巻 1 号 p. 311-318
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では混和材としてフライアッシュや高炉スラグ微粉末をそれぞれ用いたプレキャスト部材用コンクリートについて、設計基準強度ならびに養生方法を実験因子として、力学的特性ならびに塩分浸透性について調べた。本実験の結果、圧縮強度の発現性状は、普通セメント単味のコンクリートと比較して同等以上の強度発現が示されたが、蒸気養生は標準養生に比べて長期強度の増進が小さくなった。また、フライアッシュや高炉スラグ微粉末を混和材として用いた場合、塩化物イオンの浸透に対する抑制効果が認められ、これは浸漬期間が長くなるほど、深さ方向に対して明らかな差が認められた。
  • 船本 憲治, 田中 利光, 渡辺 勝, 松藤 泰典
    2015 年 69 巻 1 号 p. 319-326
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    フライアッシュ(以下FA)と水を事前混合したスラリーを用い、FAを120kg/m3セメント外割使用した高強度・高流動コンクリートに関し、強度発現および発熱特性を実験的に検討し、下記の知見が得られた。1)標準養生圧縮強度は、同一水セメント比では、FAの有無で材齢7日では差がないが、FA有の方が材齢28日で5N/mm2、材齢56日で10N/mm2、材齢91日で15N/mm2程度大きくなる。2)構造体強度補正値28S9156S91は、同一コア強度では、FA有の方が小さくなる。3)単位セメント量当りの温度上昇は、標準期・夏期でFA有の方が多少大きい傾向にあるが、FAは温度上昇に大きく影響しない。
  • 佐藤 成幸, Muzafal KAYONDO, 岸 利治
    2015 年 69 巻 1 号 p. 327-334
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本論文はコンクリート中のひび割れにおける、通水開始初期の大幅な通水量抑制の主要因として考えられる気泡成長のメカニズムに関して、土質分野の既往研究で指摘されている供給水の過飽和という平衡論の観点から実験的に検証するとともに、気泡の成長速度に着目して、速度論の観点から実験的考察を行い、気泡の周りを水が流れることで気液界面を通じた気体分子の移動速度が加速され得ることを示した。さらに気泡成長の要因となる供給水の過飽和を解消することによって、流路断面を減少させるような巨視的な気泡の発生を排除した通水試験についての検討を試みた。その過程で通水量抑制には巨視的な気泡の発生による流路断面の減少だけでなく、別のメカニズムも存在する可能性が示唆された。
  • 井川 秀樹, 横室 隆, 橘高 義典, 江口 秀男
    2015 年 69 巻 1 号 p. 335-340
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    放射性物質格納容器に用いる重量コンクリートの自己治癒性能に着目し、調合強度50~70N/mm2程度の重量コンクリートをベースとして、自己治癒性能の高い混和材の調合について検討を進めた。実験内容は、予め割裂した角柱供試体の両端に0.2mmのプラスチック板を挟み込み、模擬ひび割れを作製し、浸せき後所定の日数での自己治癒性能を評価した。なお、評価方法は透水試験により透水速度を求めて定量評価とし、マイクロスコープで目視観察した。実験の結果、膨張材およびフライアッシュをそれぞれ単体で混入した調合では自己治癒性は少なかったが、膨張材とフライアッシュを同時混合した調合によって自己治癒性が最も高くなる事が判明した。
  • 三谷 裕二, 石井 祐輔, 谷村 充, 丸山 一平
    2015 年 69 巻 1 号 p. 341-348
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    ひび割れの分散性を評価できる拘束ひび割れ試験により、収縮低減剤および膨張材を単独使用あるいは併用したコンクリートと普通コンクリートのひび割れ性状を比較し、各材料の収縮ひび割れ低減効果を定量化するための検討を行った。その結果、収縮低減剤や膨張材にはひび割れ本数・ひび割れ係数を明確に低減する効果があること、各材料のひび割れ低減効果を無拘束試験体で測定する乾燥収縮ひずみに対応させると、収縮低減剤は普通コンクリートの乾燥収縮ひずみに対する低減量、膨張材は普通コンクリートの乾燥収縮ひずみに対する低減量に初期の膨張ひずみ分として100~150×10-6程度の低減量を加味すること、併用した場合には各材料を単独で使用した場合の効果を足し合わせること、で概ね評価できる可能性があることを示した。
  • 小川 浩太, 丸山 一平
    2015 年 69 巻 1 号 p. 349-354
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリートのポアソン比と乾燥収縮による内部損傷度合の相関性を体系的に検討するため、収縮量の異なる2種の粗骨材を用いたコンクリートを異なる湿度環境下で乾燥させ、1軸圧縮試験によりポアソン比を測定した。その結果、収縮量の大きい粗骨材を用いたコンクリートではポアソン比は乾燥条件によらず、さほど変化がなかったのに対し、収縮量の小さい粗骨材を用いたコンクリートでは乾燥条件が厳しくなるほどポアソン比は減少した。この結果からコンクリートのポアソン比は乾燥収縮による内部損傷と相関性があることが明らかとなった。
  • 泉尾 英文, 小梁川 雅, 梶尾 聡, 加藤 学
    2015 年 69 巻 1 号 p. 355-362
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、空隙率および水セメント比が舗装用ポーラスコンクリートの骨材飛散抵抗性に及ぼす影響について検討した。評価は、ポーラスコンクリートのカンタブロ試験方法(ZKT-214)を用いた。ZKT規格では試験温度を定めていないが、アスファルト材料では低温(-20℃)で評価することがあるので、試験温度の影響について確認した。その結果、舗装用ポーラスコンクリートのカンタブロ試験では、試験温度の影響に有意な差は無かった。骨材飛散抵抗性は、水セメント比よりも空隙率やモルタル粗骨材空隙比(Km)の影響が大きく、空隙率またはKmが小さいほど骨材飛散抵抗性が高かった。この結果は圧縮強度との関連性が高かった。
  • 李 柱国, 流田 靖博, 杉原 大祐
    2015 年 69 巻 1 号 p. 363-370
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究ではコンクリートの加熱後の質量(M)、長さ(L)、動弾性係数(Ed)および超音波伝播速度(Vu)の変化を実験的に考察し、加熱温度、加熱前の強度、冷却方法、再養生方法と期間がこれらの性能変化に及ぼす影響を検討した。結果として、1)加熱後の水中再養生によって供試体のM、L、EdおよびVuは、加熱直後より大幅に増加するが、空気中再養生の場合、これらの増加は僅かである。2)再養生によるこれらの性能変化は、水中再養生の場合には最初の1ヶ月に、空気中再養生の場合には最初の1週間に主に発生する。3)加熱温度または加熱前の強度が高いほどM、EdおよびVuの低下率は大きいが、水中再養生による増加は多い。しかし、長さ増加は高強度コンクリートの方が少ない。4)空気冷却に比べ、水急冷却はEdとVuを大幅に低下するが、空気中再養生の場合の性能回復に大きな影響を与えない。
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