セメント・コンクリート論文集
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70 巻, 1 号
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セメント化学
  • 野澤 里渚子, 斎藤 豪, 佐藤 賢之介, 佐伯 竜彦
    2016 年 70 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究はDEF膨張の発生メカニズムと関連して、エトリンガイト自体の脱水・再水和に着目し、水分子の挙動とそれに伴った構造的変化を検討することを目的とした。その結果、80℃12時間以上の加熱によって構造中のSO42-と結合する水分子が脱離し、XRDにおける非晶質化(メタエトリンガイトへの変化)が生じた。また、メタエトリンガイトを再水和した際には、R.H. 15%前後で水蒸気脱離曲線が急落し、再水和後に生成したエトリンガイトの水和物密度の低下が生じた。このことからメタエトリンガイトの再水和後に生成したエトリンガイトにおいては、構造中に層状構造あるいはnmスケールのインクボトル型および閉塞された空隙が存在する可能性が示唆された。

  • 松澤 一輝, 宮内 雅浩, 坂井 悦郎
    2016 年 70 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    遅延剤とKFを添加したOPCペーストの水和発熱量、粉体比表面積、遅延剤吸着量を測定し、遅延剤の効果に対するフッ化物の影響を検討した。KF添加でスクロースの遅延効果は低減したが、グルコン酸ナトリウム、デキストリン、K3PO4の遅延効果は増大した。KF添加で粉体比表面積と有機系遅延剤吸着量が増大した事から、微粒子状の物質が生成し、微粒子に遅延剤が吸着したと推察される。KF添加に伴うスクロースの遅延効果低減は、微粒子状物質への特異吸着に伴いセメント粒子への吸着量が減少した事によると推察される。他の3種の遅延剤は特異吸着では説明できず、遅延剤の効果とKF自体が持つ遅延効果の相乗作用を考慮する必要があると推察される。

  • 堀江 諒, 森永 祐加, 名和 豊春
    2016 年 70 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文はセメント硬化体の凍結融解作用によって発生する内部応力に対し、内部構造の違いがどのような影響を生じるかを検証し、考察することを目的とした。水セメント比を変化させた試料に対し凍結融解時に発生するひずみを測定し、精密に最大主ひずみ、最小主ひずみを求め、それより内部応力を算出した。また、内部構造の違いによるひずみ・応力の傾向についての考察を行った。その結果、水セメント比が高い構造が粗である試料ほど凍結融解作用による影響が大きくなることが明らかとなり、脆さを確認することができた。また、水セメント比が低い試料、高い試料においては、打設時の方向の影響が少なく、異方性が小さい事を示した。

  • 小山 達也, 名和 豊春, 森永 祐加, 朴 埈範
    2016 年 70 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではC3Sの水和反応におけるショ糖添加の影響を、XRD-Rietveld解析、29Si MAS NMR、カロリーメーターを用いて解析し、C3Sの水和反応機構を検討した。その結果、ショ糖はC3Sの誘導期へ影響を与え、Hydrated silicate monomer(以下HM)の生成を遅延させることが確認された。この原因についてC3Sを焼きなましした試料の解析を行い、ショ糖がC3Sの粒子表面へ影響を及ぼすと考察した。また、各手法から算出した水和率とSiの重合度の比較より、HMはC-S-Hの前駆体であることが確認された。さらに水和発熱挙動と水和率、Siの重合度の比較から、C3Sの水和反応がC3SからHMが溶出する反応とHMからC-S-Hが析出する反応の二段階であることを確認した。

  • 安藝 朋子, 久我 龍一郎, 平尾 宙, 坂井 悦郎
    2016 年 70 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    鉱物組成および粉末度の異なるセメントに石灰石微粉末を添加したセメントを基材として調製した。これらのセメントを用いたフライアッシュセメントの圧縮強さおよび凝結時間の評価と水和解析を行った。エーライトやフリーライムが多く、粉末度の大きいセメントを用いることで主にエーライトの水和が促進され、初期強度が増進した。石灰石微粉末の添加によりフライアッシュの反応率が増加し、特に長期強度が増進した。結果として粉末度、エーライト、フリーライム、および石灰石微粉末を適量増加した基材を用いたフライアッシュセメントは、基材の設計変更のみで普通ポルトランドセメントと同等の強さおよび凝結時間を発現した。

  • 樋口 隆行, 盛岡 実, 相川 豊, 坂井 悦郎
    2016 年 70 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    エトリンガイト─石灰複合型膨張材の遊離石灰と、単独合成した遊離石灰の高温炭酸化反応を比較した。膨張材の遊離石灰は処理直後にCO2量が増加したが、その後の炭酸化は緩やかとなった。一方、単独合成した遊離石灰はCO2量が継続的に増加した。膨張材の遊離石灰は緻密な組織を有し、一部が炭酸化しない無水石膏で被覆されていた。このため膨張材表面に露出した遊離石灰のみ反応が進行し、過度な炭酸化が抑制されたと考えられる。遊離石灰の高温炭酸化反応を友澤理論でモデル化し、風化抵抗性や膨張性能の向上に必要な反応率の前後において実測値に近い解析値が得られ、最適な炭酸化処理条件を提案できることが確認された。

  • 毛利 真明, 山本 崇人, 森永 祐加, 名和 豊春
    2016 年 70 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では硝酸型Ca-Al層状複水酸化物(LDH)のインターカレーション特性を明らかにするためにポリカルボン酸系分散剤(PC)を用いた吸着、及び共沈実験を行った。吸着実験よりCa-Al-LDH合成後にPCを添加しても層間に取り込まれないことが明らかになった。共沈実験からは、PCは硝酸イオンが共存しなければ層間に取り込まれ、微量でも硝酸イオンが共存すると取り込まれないことが明らかになり、収着競合は硝酸イオンの方がPCよりも優位的であることが示唆された。また、側鎖長の異なる2種類のPCが収着したCa-Al-LDHの層間距離が等しく折りたたまれた状態で層間に収着していることが示唆された。

  • 依田 侑也, 黒田 泰弘, 新 大軌, 坂井 悦郎
    2016 年 70 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では普通ポルトランドセメントに、無水石膏を含む高炉スラグ微粉末を所定の割合で置換した混合セメントを試製し、流動性試験、凝結試験、水和発熱量測定、水和生成物の確認を行い、流動性や凝結性状の変化に及ぼす結合材の組成と水和反応の影響を検討した。その結果、流動性に関しては水和生成物以外の影響も考慮する必要があること、凝結性状に関してはエーライトの反応による水和生成物との関連性が大きいことを示した。また、間接的に水和物の生成量を示す水和発熱量を用いることで、概ね凝結性状を評価できることを示した。

  • 大野 麻衣子, 新島 瞬, 黒川 大亮, 平尾 宙
    2016 年 70 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    鉱物組成と粉末度はセメントの品質に大きく影響を与える。一方、高ビーライトセメントでは、これら2要因以外に鉱物の活性の影響も大きい。近年の研究でビーライトの活性は固溶する少量成分に大きく依存することが分かっている1)。本研究ではC2S固溶体及び高ビーライトクリンカーの解析を通じ、固溶少量成分とビーライトの活性の関係を調査した。対象とした少量成分は現実的な商用製造を念頭にMgO、SO3、及びP2O5の3種とし、一部の交互作用も評価した。この結果、MgOを2%以上含むがゆえに水和活性の低い高ビーライトクリンカーでも、SO3を0.6%程度まで増加させることで品質改善を達成できることを明らかにした。

  • 佐藤 正己, 小泉 公志郎, 梅村 靖弘
    2016 年 70 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    フライアッシュ(FA)は、ダムコンクリートなどの水和発熱によって内部温度が上昇するマスコンクリートや蒸気養生を施すプレキャストコンクリートに用いられ、60~80℃程度の熱履歴が加わる。しかし、熱履歴を受けた際の検討は、FAセメントとしての検討が多いがFAのポゾラン反応に及ぼす影響を検討したものは少ない。そこで本研究ではポゾラン反応の基本反応であるFAとCa(OH)2の反応に着目し、作製したFAペーストに20、40、60、80℃の熱養生温度履歴を受けた際のFAの反応率や生成された水和物量、C-S-HのCaO/SiO2モル比に及ぼす熱養生の影響を検討した。

  • 小林 創, 吉田 慧史, 森永 祐加, 名和 豊春
    2016 年 70 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    コンクリート構造物の早期劣化の一因として塩害が問題となっている。塩害は塩化物イオンの拡散により生じるため、耐久性の正確な予測には塩化物イオンの拡散及び固定化機構の解明が求められる。一般にセメント硬化体中の塩化物イオンの固定化において、C-S-H表面のSiOH基への物理吸着が支配的である。C-S-HはCa/Si比の増加に伴い、SiOH基を持つbridging位のSiO4四面体が欠落することが知られている。またAl存在下では、AlがC-S-H中のSiと置換する形で取り込まれたC-A-S-Hが生成され、物理吸着量が増加することが知られている。そこで本研究では、Ca/Si比及びAl添加率を変化させ、それに伴うC-(A)-S-Hの構造変化と表面電荷への影響を観察することで、C-(A)-S-H表面の電気的性状の解明を試みた。

  • 森 泰一郎, 石井 泰寛, 田原 和人, 盛岡 実
    2016 年 70 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    耐塩害用混和材として知られるCaO・2Al2O3の低温焼成化を目的に、Fe2O3を添加した時に生成するCaO・(2-n)Al2O3・nFe2O3連続固溶体化合物(CA2-nFn)の焼成温度と生成量の関係を調べた。その結果、CA1.5F0.5とCA1.0F1.0を除き、カルシウムアルミノフェライト系やカルシウムフェライト系の化合物は副生せず、Fe2O3成分はCaO・2Al2O3相に固溶することがわかった。原料仕込み組成がCaO・1.8Al2O3・0.2Fe2O3の時、CA2に比べて200℃低い1,400℃の低温焼成で、CaO・2Al2O3構造を保持しつつCA2-nFn系化合物のほぼ単一相が得られることがわかった。Fe原子はCaO・2Al2O3中のAl原子と置換して置換型固溶体を形成していると推察される。

  • 森 泰一郎, 藏本 悠太, 荒野 憲之, 盛岡 実
    2016 年 70 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    CaO・2Al2O3構造を持つCaO・(2-n)Al2O3・nFe2O3連続固溶体化合物(CA2-nFn)について、ハイドロカルマイトの生成を想定して水酸化カルシウムと組み合わせた時の水和挙動に与えるFe2O3固溶量の影響を調べた。その結果、CA2-nFnはCaO・2Al2O3に比べて水和初期の反応率が高いこと、また、その水和生成物として初期にハイドロガーネットを生成した後にハイドロカルマイトが生成することがわかった。ハイドロカルマイトの生成量はFe2O3固溶量と負の相関にある。Fe2O3はハイドロカルマイトやハイドロガーネットに取り込まれることなく未反応粒子に残存するか、もしくはCA2-nFnからCa2+イオンとAl3+イオンが溶脱して生成するCaO-Al2O3-Fe2O3-H2O系ゲル状水和物中に含まれるものと推察された。

  • 白濱 暢彦, 山下 牧生, 田中 久順
    2016 年 70 巻 1 号 p. 98-103
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    セメント工場では多種多様な産業廃棄物を処理しており、今後処理量が増加することにより焼成プロセスが不安定になる可能性がある。そこで本研究では、クリンカー原料の焼成反応性に及ぼす成分や粒度の影響を総合的に評価できる手法を開発するために、高温X線回折を用いた焼成反応性評価の可能性を検討した。試験には焼成反応性が異なることを知られている原料として、結晶子径が異なる調合原料と鉱化剤を添加した調合原料を用いた。その結果、高温X線回折を用いることで調合原料の焼成反応性を評価できることが判明した。また、高温X線回折を用いることで、湿式分析による焼成反応性評価方法では得られなかった高温下における結晶性など多くの情報を得ることができることが判明した。

  • 石川 玲奈, 名和 豊春, 植田 晃平, 梶尾 知広
    2016 年 70 巻 1 号 p. 104-110
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    C3A-Gypsum-Portlandite系の水和反応について、地球化学コードPHREEQCを用いて水和物の生成機構を推定することを目的とし、表面錯体モデルによってC4AH13の生成過程の検討を行ったほか、C4AH13の定量値を導入した水和生成物量予測を行った。解析の結果、水和ごく初期に硫酸イオンの影響によりC3Aの表面電位が低下することでC4AH13が生成することが示唆された。また、C4AH13の接水即時の生成を考慮せずに予測した水和生成物量は実験値と大きく乖離した値を示し、XRDおよびNMRによって定量したC4AH13量を導入することで生成量をうまく推定することができた。しかし、Gypsumの全量溶解後は予測値に乖離がみられ、EttringiteとMonosulfateを端成分とする固溶体が生成する可能性が示された。

  • 梶尾 知広, 植田 晃平, 名和 豊春, 森永 祐加
    2016 年 70 巻 1 号 p. 111-118
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではC3A-Gypsum-Ca(OH)2系での水和反応について、XRD・Rietveld解析と27Al MAS-NMR測定を組み合わせることにより、非晶質物質中の化合物組成を明らかにし全水和生成物の定量を行った。27Al MAS-NMR測定におけるC3A水和試料のスペクトル分離には、合成C4AH13のNMRスペクトルより得た化学シフトを用いた。XRD及びNMRにより求めた非晶質物質中の化合物組成が、物質収支法により算出したものと概ね一致したことから、本研究で用いた水和生成物の定量方法が妥当であると示された。また、定量の結果、本系における水和試料は非晶質のC4AH13やMonosulfate、Ettringiteが約60~70mass%を占め、中でもC4AH13が非晶質物質全体の約40~80mass%という高い割合を示すことが確認された。

セメント硬化体・モルタルの物性
  • 坂井 悦郎, 相川 豊, 西村 幸恵, 二戸 信和
    2016 年 70 巻 1 号 p. 119-126
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    無水セッコウを添加した高炉スラグ高含有セメントの水和反応に及ぼす養生温度や無水セッコウやLSP添加量および遅延剤の影響について検討した。養生温度が20℃ではAFtを主に生成する無水セッコウの添加量5%でも、30℃の場合にはAFm相が生成した。この場合、無水セッコウ量を7%と増加することや石灰石微粉末の少量添加によりAFtが主に生成した。また、遅延剤は種類により、AFmの生成を抑制する効果を示すものも見られた。なお、遅延剤の添加により養生温度30℃での材齢28日の高炉スラグの反応率は増加した。さらに普通ポルトランドセメントの水和反応モデルに基づき予測した水和発熱量と高炉スラグ高含有セメントの実測値から、高炉スラグの反応率を推定する方法について検討した。

  • 向 俊成, 二戸 信和, 平尾 宙, 坂井 悦郎
    2016 年 70 巻 1 号 p. 127-133
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    低炭素型汎用セメントの開発を目指し、高C3Sセメントを使用したフライアッシュ(FA)セメントの水和反応やC-S-Hゲルの組成などの微細組織について検討を行った。高C3Sセメントを混和したFAセメントの初期水和発熱量は、普通ポルトランドセメント(OPC)よりわずかに小さい値であるが、OPCを用いたFAセメントよりは大きな値を示した。また、FAの混和により全てのセメントでC3Sの反応は促進された。高C3Sセメントを用いたFAセメント硬化体のC-S-HのCa/Si比は、材齢91日で1.39であり、OPCを混和したFAセメントの1.38とほぼ同等の値を示した。高C3Sセメントを使用したFAセメント硬化体では、水酸化カルシウム生成量はOPCを使用したFAセメントに比べて増加した。

  • 宮本 正紀, 杉山 卓也, 胡桃澤 清文, 名和 豊春
    2016 年 70 巻 1 号 p. 134-140
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    放射性廃棄物処理の充填材としてセメント硬化体の利用が検討されているが、地下環境においてはセメント硬化体のカルシウムが溶脱しその吸着性能の低下に伴い拡散性が変化することが想定される。フライアッシュを用いた混合セメントの利用が考えられるが、溶脱後の吸着量に関しての検討が少ない。本研究では硝酸アンモニウム水溶液を用いた浸漬法によってカルシウム溶脱を促進させたフライアッシュセメント硬化体に対して、塩化物イオン吸着量の定量と既往の吸着量予測式を基に吸着量予測式の構築を試み、Ca/Si比の減少およびAl/Si比の増加に応じた吸着量低下を表現することができた。

  • 小川 由布子, Bui P. Trinh, 河合 研至, 大田石 和貴
    2016 年 70 巻 1 号 p. 141-147
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではフライアッシュのポゾラン反応の活性化が期待される硫酸塩刺激について、その活性化メカニズムを微視的に把握することを目的とした。硫酸塩刺激が内部から持続的にフライアッシュセメントペーストへ供給された場合の影響とその範囲についてビッカース硬度を用いて微視的に検討した。この結果、硫酸ナトリウム溶液および硫酸カリウム溶液を内部から供給すると、材齢1日においてエトリンガイトの生成を促進することにより、遷移帯の硬度を高くし、その領域を小さくする効果があることが明らかとなった。材齢7日以降の硬度は低下したが、遷移帯の領域は硫酸塩刺激をしない場合より小さく、骨材周りの細孔構造も緻密化していることが明らかとなった。

  • 藏本 悠太, 原 啓史, 盛岡 実, 丸山 一平
    2016 年 70 巻 1 号 p. 148-153
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、カルシウムアルミネートを細骨材として利用した場合のモルタル物性に及ぼす影響について調査した。その結果、圧縮・曲げ強さは珪砂、川砂、石灰砂と同程度であった。一方、モルタルのフロー値は他の細骨材と比較して小さくなる傾向が確認された。その原因として骨材の実績率による影響に加えて、骨材表面にてカルシウムアルミネート系水和物が生成したことに起因すると推測した。また、水中養生下では膨張性を示した。一方で乾燥収縮は他の骨材と比べて大きくなり、物性をコントロールする上では、初期養生条件に配慮する必要があることも明らかとなった。

  • 須田 裕哉, 河野 伊知郎, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2016 年 70 巻 1 号 p. 154-161
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、セメント硬化体の水蒸気吸着等温線で生じる低圧部ヒステリシスと等温線上で確認されるスキャニングループを評価できる手法の構築について検討した。本研究ではC-S-Hが保有する水分を層間水、表面水、ゲル水と分離し、それぞれの水分の挙動について評価を行うとともにC-S-Hの組成変化に伴う水分量変化についても評価を行った。その結果、C-S-Hの組成変化に基づき水蒸気の吸着量と脱離量を評価できるモデルを提案した。提案モデルによってセメント硬化体の水蒸気吸着等温線を評価した結果、水蒸気の吸着性状に対し、C-S-Hの組成、吸着試験の前処理条件、硬化体の養生や乾燥条件などが影響を及ぼすことが示唆された。

  • 新杉 匡史, 新 大軌, 樋口 隆行, 坂井 悦郎
    2016 年 70 巻 1 号 p. 162-168
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    低熱ポルトランドセメント(LHC)と膨張材(CSA)を併用した高耐久セメント系材料が提案されているが、塩化物イオン固定能が乏しく塩害環境における利用が課題とされていた。本研究ではこの系にCaO・2Al2O3(CA2)を混和することで、塩化物イオン固定化が可能なAFmを生成する配合を見出した。また、表面を炭酸化させたLHC-CA2-CSA系セメント硬化体のカルシウムイオン溶脱抵抗性と人工海水に浸漬した際の塩化物イオン浸透抵抗性が、湿潤養生させた場合より著しく向上することを明らかにした。これは表面における炭酸化による緻密な組織の形成と溶解度の低いCaCO3の生成に起因していると推定した。

  • 伊藤 慎也, 盛岡 実, 伊藤 孝文, 伊代田 岳史
    2016 年 70 巻 1 号 p. 169-176
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    CaO・Al2O3を主成分とする骨材は、セメント水和物である水酸化カルシウムとともに水和反応することでハイドロカルマイトを生成し、塩化物イオンが作用する場合にはフリーデル氏塩を生成する。本研究において、CaO・Al2O3骨材を用いたコンクリートはセメントの種類によって強度特性が異なり、低熱セメントよりも普通セメントと組み合せることで塩化物イオンの浸透抑制効果が大きくなることが確認された。また、塩水浸漬後のコンクリートにおいてCaO・Al2O3骨材近傍の塩化物イオン濃度が高くなっており、一部フリーデル氏塩として固定化している可能性が示唆された。

  • 内藤 大輔, 五十嵐 心一
    2016 年 70 巻 1 号 p. 177-184
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    シリカフュームを混入したセメントペーストにおいて、反射電子像から観察される粗大な毛細管空隙の空間構造に及ぼす養生温度の影響を空間統計量の変化から論じた。その結果、低温養生および標準養生の場合には、経時的に均質化するように粗大毛細管空隙構造は変化するのに対して、高温養生ではその空間分布はより不均質になる。また、普通セメントペーストに比べてシリカフュームを混入した方が、より径の大きな空隙が離散的に残存して、粗大毛細管空隙の空間分布の不均質性は拡大するが、その一方で粗大な空隙間の組織は緻密化していることが示唆された。

  • 宇内 大樹, 佐伯 竜彦, 斎藤 豪
    2016 年 70 巻 1 号 p. 185-192
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    電気化学的方法を用いた鋼材腐食の非破壊検査は、コンクリートの等価回路モデルを仮定する必要があるが、材料・配合と等価回路の関係は明らかになっていない。そこで種々の材料・配合のペースト供試体を用いて、空隙構造と細孔溶液組成が硬化体の等価回路の各成分に及ぼす影響を検討した。抽出した細孔溶液の電気抵抗率と、硬化体中における細孔溶液の電気抵抗率は異なり、その差異は空隙構造および細孔溶液組成によって評価できることが示唆された。電荷移動抵抗および電気二重層容量は液相-鉄筋界面の面積と細孔溶液組成の影響を受け、液相-鉄筋界面の面積を空隙構造から求めることで評価可能となることを示した。

  • 福山 智子, 岡本 祐輝, 長谷川 拓哉, 千歩 修
    2016 年 70 巻 1 号 p. 193-200
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    複合物質の電場に対する周波数応答を利用した非破壊内部解析法である誘電緩和測定をコンクリートに適用し、粗骨材に接する細孔溶液やセメントマトリクスの誘・導電特性を変化させた試験体の電気容量とコンダクタンスの測定を行った。この結果から各パラメータと応答周波数域の相関を明らかにし、粗骨材界面に形成されるキャパシタの評価を試みた。モルタル試験体とコンクリート試験体の電気容量とコンダクタンスの比較から、誘電緩和に及ぼす粗骨材の影響を定性的に示し、粗骨材/セメントマトリクス界面とセメントマトリクス内部のそれぞれにキャパシタが形成されることを示した。

  • 福山 智子, 岡本 祐輝, 長谷川 拓哉, 千歩 修
    2016 年 70 巻 1 号 p. 201-208
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    誘電緩和測定は複合物質の非破壊解析法として広く用いられている。誘電緩和特性(電気容量とコンダクタンス)測定からコンクリートの微細構造解析を可能とすることを最終的な目的とし、本報では各種混和材料が誘電緩和特性に及ぼす影響を明らかにするために実験を行った。普通ポルトランドセメントや高炉スラグ、フライアッシュといった材料を用いてペースト試験体を作製し、混和材料の種類やセメントペーストの細孔容積が試験体の電気容量やコンダクタンスの周波数特性に及ぼす影響について実験的な検討を行い、その結果を示した。

  • 宇城 将貴, 樋口 隆行, 荒野 憲之, 盛岡 実
    2016 年 70 巻 1 号 p. 209-214
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    セメントに急硬材を混和し、主要な水和生成物をエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)とした超速硬セメント硬化体にγ-C2S、あるいは珪石粉を混和した場合の炭酸化挙動を比較検討した。急硬材には非晶質カルシウムアルミネートとせっこうからなるものを用いた。γ-C2Sの混和により硬化体の炭酸化深さが抑制され、炭酸化養生下でも強度の発現に優れた硬化体となった。γ-C2Sを混和した配合では炭酸化養生した場合の空隙率が封緘養生した場合よりも小さくなっており、γ-C2Sの炭酸化により緻密化効果が、エトリンガイトの炭酸化による多孔化以上に作用することが明らかとなった。この効果により炭酸化抵抗性や強度発現性が向上すると推察される。

  • 庄司 慎, 盛岡 実, 横関 康祐, 今本 啓一
    2016 年 70 巻 1 号 p. 215-221
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    セメントペーストを強制的に炭酸化し、加熱に伴う変化を検討した。封緘養生したセメントペーストは400℃以上に加熱すると水酸化カルシウムが分解し、0.1μm程度の空隙が増加した。一方、強制炭酸化養生を施したセメントペーストは600℃まで加熱しても相組成の変化や空隙構造に大きな変化は見られなかった。700℃に加熱すると、0.01μm程度の空隙が増加した。また、水硬性に乏しく炭酸化に活性が高いγ-C2Sを結合材の一部として使用したところ、加熱後の空隙量は減少した。

  • 伊藤 貴康, 三隅 英俊, 高橋 俊之
    2016 年 70 巻 1 号 p. 222-229
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    TiO2、MnO、Na2OおよびK2Oを添加したCaO-Al2O3-SiO2-MgO系スラグを電気炉試製し、活性度指数に及ぼす化学成分の影響を調査した。その結果、JISで規定される塩基度式ではCaOとAl2O3およびMgOは等価で扱われているが、Al2O3やMgOはCaOに比べて活性度指数への影響が小さかった。また、TiO2やMnOの増加は活性度指数を低下させることを確認した。これらの結果に基づき、過去に提案されたTiO2・MnO補正塩基度をベースにして各成分の係数を見直した結果、Al2O3とMgOの係数を小さくし、TiO2とMnOで補正することで活性度指数を精度良く予測できることがわかった。なお、各成分が活性度指数に及ぼす影響は、スラグの化学構造や反応性よりも水和物構成の違いによるものである可能性が推測された。

  • 胡桃澤 清文, 名和 豊春
    2016 年 70 巻 1 号 p. 230-235
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    コンクリートの耐久性は、その物質透過性能に大きく依存しているため物質透過性能を適切に評価することが必要である。物質透過性を評価する手法として透水試験や透気試験、電気泳動試験などがあげられるが簡便に測定できる手法として交流インピーダンス法による電気伝導率測定があげられる。そこで本研究では、本手法がフライアッシュを混和したセメントペーストにも適用可能かを検討した。その結果、拡散性に及ぼす空隙率の影響はフライアッシュ混和量によって異なる関係を示したが、電気伝導性と塩化物イオンの拡散性には非常によい相関が見られた。したがって電気伝導性を測定することによってフライアッシュを混和したセメント硬化体の物質透過性能を評価することが可能であることを示した。

  • 寺本 篤史, 丸山 一平
    2016 年 70 巻 1 号 p. 236-243
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    比較的水セメント比の小さいセメントぺーストにおいて若材齢に生じる水和に伴う線膨張係数の経時変化について、セメント硬化体の収縮理論の一つである水和圧理論を用いて現象の説明を行った。その結果、水和圧理論において比表面積が温度によって変化するという仮定を導入することによって線膨張係数の自己乾燥による増大傾向を再現可能であることが分かった。また、収縮低減剤の混和により、水和圧曲線の形状が変化すること、比表面積が低減されることを考慮することによって、線膨張係数の増大抑制を再現可能であることが示された。

  • 高橋 恵輔, Thomas Bier
    2016 年 70 巻 1 号 p. 244-251
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では微粒分を多く含む高強度モルタルや自己充填モルタルで問題となる初期収縮に着目して、撹拌作用や混和剤の添加が初期収縮挙動に及ぼす影響を測定し、そのメカニズムの解明を行った。撹拌時間の延長に伴って水和促進や流動性低下が生じ、初期収縮量が大きくなった。初期収縮を説明するためには毛細管張力に加えてモルタル中の水分の移動を考慮する必要がある。また、親水性が高く微細なミセルを形成する収縮低減剤の添加や流動化剤の増量は、初期収縮の抑制に効果的であることが示唆された。

  • 中山 英明, 坂庭 大輔, 野口 貴文, 丸山 一平
    2016 年 70 巻 1 号 p. 252-259
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    4種類のポルトランドセメントを用いて養生期間の異なるセメント硬化体の収縮ひずみを評価した。その結果、収縮ひずみは、セメント種類では低熱ポルトランドセメント(L)が最も大きく、次いで中庸熱ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントの順となった。また、Lは乾燥開始材齢が7日および28日の場合に、収縮ひずみの挙動が他のセメントと異なった。この理由として、乾燥期間中の水和の進行に拠り硬化体組織が変化し、これが収縮ひずみに影響を及ぼすことが示唆された。

  • 山田 高慶, 佐藤 嘉昭, 大谷 俊浩
    2016 年 70 巻 1 号 p. 260-267
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では大分県安心院産の黒曜石発泡パーライトを用いた軽量モルタルにおいて、筆者らが提案した材料設計法の妥当性の検証実験と、船舶艤装床材への適用性の検討を目的に、その性能評価試験を模擬した簡易耐火試験を実施した。その結果、材料設計法の適用範囲内で設計した調合のものは単位容積質量、圧縮強度および曲げ強度ならびに熱伝導率の各値が設計値を満足し、材料設計法の妥当性を明らかにすることができた。しかしながら適用範囲外で設計した調合は若干設計値から外れる結果であった。また、耐火試験では単位容積質量が小さい調合の方が、温度上昇が遅く、耐火性が優れていることがわかった。

  • 岩屋 希, 石田 哲也
    2016 年 70 巻 1 号 p. 268-274
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    超臨界二酸化炭素環境による炭酸化への知見は未だに少ない。本研究では異なるW/Cにおける封かん養生を基準とした強度増加率に着目し、成分分析によって炭酸化メカニズムを検討した。常温常圧の中性化促進環境ではW/Cの増加に伴い強度増加率が上昇するが、超臨界二酸化炭素環境では逆に低下するという炭酸化環境によって異なる現象が生じた。この要因を成分分析から検討した結果、促進環境における強度変化は、未水和セメントの水和促進が大きく影響していると示唆された。一方、超臨界二酸化炭素環境における強度変化は、C-S-Hの炭酸化、CaCO3の多形が大きく影響している可能性が示唆された。

コンクリートの試験・評価
  • 陶山 裕樹, 高巣 幸二, 小山田 英弘
    2016 年 70 巻 1 号 p. 275-281
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではフレッシュコンクリートの簡易な凝結試験法として新たに錘埋設試験を提案した。錘埋設試験とは、モルタル試料に錘を埋設し、錘を吊るした糸に発生する張力を継続的に測るものである。糸の張力の履歴には変化量に特異点(張力変化時間)が現れた。この張力変化時間は、試料の貫入抵抗値が0.1~3.5N/mm2に達した時間と正の相関関係を示し、ブリーディングが認められなくなる時間およびミニスランプフローが急激に減少する時間と比較的高い正の相関関係を示した。張力変化時間は、コンクリートの凝結時間の推定および施工管理における打上がり面の仕上げ開始時期の判断に活用できると考えられる。

  • 古東 秀文, 室谷 卓実, 五十嵐 心一
    2016 年 70 巻 1 号 p. 282-289
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    コンクリート中の気泡の空間分布を点過程として取り扱い、汎用ソフトウェアRを用いた評価と簡易なシミュレーションを行い、耐凍害性の判断に必要な気泡間距離を推定する方法の提案を行った。その結果、骨材の存在によって分布が大きく制限される気泡の空間分布は、ポアソン分布に従う点発生シミュレーションによって容易に再現できることが明らかとなった。また、再現された気泡の点間距離は、気泡間隔係数と良い相関性を有することも確認された。Rの既成汎用パッケージでも適切に利用すれば、より高度な画像解析を簡単に行え、気泡構造評価の実務への適用も容易であると考えられる。

  • 齋藤 俊克, 出村 克宣
    2016 年 70 巻 1 号 p. 290-296
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、ポーラスコンクリートの空隙率及び圧縮強度に及ぼす型枠のせき板効果の影響を明らかにすることを目的としている。そこで、寸法φ15×20cmの成形供試体の空隙率、その供試体からφ10×20cmにコア抜きしたコア供試体の空隙率及び圧縮強度、並びに寸法φ10×20cmの成形供試体の圧縮強度について検討している。その結果、成形供試体、コア供試体及び型枠近傍の連続空隙率間に高い相関性が認められるが、連続空隙率は型枠近傍において大きいことを明らかにしている。一方、成形供試体とコア供試体の圧縮強度間にも高い相関性が認められるが、同一寸法の供試体において、コア供試体の圧縮強度は成形供試体のそれよりも小さい傾向にある。

コンクリートの物性
  • 井元 晴丈, 榊原 直樹, 田中 泰司, 佐藤 和徳
    2016 年 70 巻 1 号 p. 297-304
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    C-S-H系早強剤を用いたフライアッシュコンクリートの冬期施工性について、室内試験と実機練り試験施工により確認した。また、試験施工で作成した模擬床版試験体の表層品質評価も行った。C-S-H系早強剤の添加により、流動性保持性能は無添加と大きな相違は認められない、強度発現性を向上させる、細孔径分布が小径側にシフトすることを確認した。フライアッシュコンクリートの冬期施工に関して、C-S-H系早強剤の凝結促進効果が試験施工において確認され、左官工の仕上げ完了時間の短縮効果も確認した。表層品質試験では養生条件により測定結果に影響を及ぼすものの、今回作製した模擬床版はいずれも表層品質が高いことを確認した。

  • 趙 騰, 宮澤 伸吾, 横室 隆, 坂井 悦郎
    2016 年 70 巻 1 号 p. 305-312
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は一般のコンクリート構造物に広く適用できる低炭素型の汎用セメントを提案することである。実機プラントで試作したC3S量65~72%、C2S量0~7%の高C3Sセメントを用いたフライアッシュセメント(FAセメント)の強度発現及び耐久性について検討した。その結果、C3S量とC2S量を調整することによって、FAセメントの圧縮強度は材齢7日以前でOPCより高く、材齢28日以降でOPCと同等になりうることが分かった。FAセメント中のSO3量を調整することにより収縮ひび割れ抵抗性を改善できることが示唆された。凍結融解抵抗性はOPCや従来のFAセメントと差異は無く、また促進中性化試験によると中性化速度は従来のFAセメントと同等であり、OPCより速い結果となった。

  • 石田 征男, 佐藤 嘉昭, 大谷 俊浩, 上田 賢司
    2016 年 70 巻 1 号 p. 313-320
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    セメントおよび品質が異なる2種類のCfFAを用いたセメントペーストの流動性について、粉体特性および高性能AE減水剤(SP)の影響を明らかにするとともに、その評価指標について検討した。その結果、ペーストフロー値はCfFA混入量が多いほど大きくなった。SP無添加の場合は平均粒径が小さい粉体の場合を除き、余剰水膜厚理論により流動性を評価できた。SPを使用した場合はSP添加量やJIS Ⅰ種に適合するCfFAの使用によって異なる関係を示した。JIS Ⅰ種に適合するCfFAを用いた場合は、SP量が少ない場合でも高い粉体分散効果が得られる可能性があることが明らかになった。

  • 上田 隆雄, 河野 惇平, 飯干 富広, 江里口 玲
    2016 年 70 巻 1 号 p. 321-327
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    アミノ酸の一種であるアルギニンを混入したコンクリートは、海洋環境においてコンクリート表面への藻類の付着が促進され、魚類等の生物生息環境が改善できることや、高い塩基性によりコンクリート中の鉄筋腐食環境を改善することが報告されている。本研究ではフライアッシュコンクリートや高炉セメントを用いたコンクリートにアルギニンを添加した場合の自己治癒性能について実験的に検討を実施した。この結果、特にフライアッシュコンクリートでは、圧縮載荷によって発生した損傷の自己治癒性能が、アルギニンを添加することによって向上する傾向を示した。

  • 丸岡 正知, 藤原 浩已, 菅原 岳美, 川戸 陸也
    2016 年 70 巻 1 号 p. 328-335
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    主材料を高炉スラグ微粉末とフライアッシュを用い高強度発現性と耐久性を有する環境負荷低減コンクリートについて、特に耐凍害性の向上を図るための検討およびフレッシュ性状の改善について実験的な検討を行った。その結果、普通ポルトランドセメントを使用した同程度の圧縮強度および空気量のコンクリート硬化体と比較して耐凍害性は低くなった。このため空気量の増加および粗大気泡の除去を施し、アルカリ刺激材に普通ポルトランドセメントまたは乾燥スラッジ粉末を粉体質量の15%使用することにより目標とする耐凍害性を示す条件を見いだした。また、フレッシュ性状ではダイラタンシー性を低減する方法について検討した。

  • 三谷 裕二, 大野 拓也, 石井 祐輔, 丸山 一平
    2016 年 70 巻 1 号 p. 336-341
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    収縮低減剤を使用したコンクリートについて、体積表面積比および鉄筋比を変化させた一軸拘束試験により収縮低減効果を検討した。さらに拘束試験の結果に対して、クリープの重ね合わせの原理に基づくstep-by-step法を用いた逆解析を行い、クリープ係数を評価した。その結果、収縮低減剤を使用したコンクリートの収縮ひずみは、体積表面積比や鉄筋比によらず普通コンクリートより明確に小さく、その低減率は無拘束下の収縮ひずみと拘束下の収縮ひずみで概ね同程度であった。また、収縮低減剤を使用したコンクリートの引張クリープは普通コンクリートより大きくなる可能性を示した。

  • 酒井 雄也, 岸 利治
    2016 年 70 巻 1 号 p. 342-348
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    高炉スラグのさらなる活用を目的として、高炉スラグ微粉末や高炉スラグ細骨材を用いたセメントペーストおよびモルタルの、拘束圧下での変形挙動を検討した。三軸試験を実施した結果、拘束圧が増加するほど、高炉スラグ微粉末を用いたセメントペーストは、より靭性的な挙動を示した。またモルタルにおいても、拘束圧が増加するにつれて、高炉スラグ微粉末や高炉スラグ細骨材の置換率の高い供試体が、より高い強度を示した。試験後の断面観察結果から、拘束圧下では硬化体の損傷が抑制されるために、これらの置換率の増加により強度や変形性能が向上したものと推察した。

  • 酒井 雄也, 岸 利治
    2016 年 70 巻 1 号 p. 349-354
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    セメントペースト表面のミクロな表面電位の分布を把握することを目的として走査型プローブ顕微鏡(SPM)による検討を実施した。SPMが適用可能な緻密な硬化体を得るため、セメントペーストを高圧下で養生し、養生中にスライドガラスに接していた面を測定対象とした。測定の結果、走査型電子顕微鏡で7,000倍に拡大しても表面に孔は見られず、またSPMにより得られた表面粗さは4nmであった。養生から2日後にSPMで測定した場合、表面電位は測定領域内でほぼ一様であった。一方で養生から1か月経過した場合、斑点状に表面電位の低い領域が見られた。経時により炭酸化が進行し、水和物に変化が生じたことに起因すると推察した。

耐久性
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