セメント・コンクリート論文集
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72 巻, 1 号
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セメント化学
セメント硬化体・モルタルの物性
  • 酒井 雄也, Ivwananji SIKOMBE, 渡辺 圭子
    2018 年 72 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、飛翔体が高速衝突した場合にコンクリートに生じるミクロな変化を把握することを目的として、セメントペーストを対象とした高速衝突試験を実施した。検討の結果、衝突部分より深い領域が白く変化することが確認された。420m/sでの衝突時にはプラズマの発生を確認した。衝突により白く変化した部分では、そうでない部分と比較して空隙構造が粗大になっていることを確認した。一方で熱分析やX線分析の結果、両者には大きな違いが見られなかった。原因として、飛翔体が衝突した際に生じたごく短時間の熱による体積変化や、セメントペースト中の水分が瞬時に蒸発し、乾燥が生じたことに起因する可能性を指摘した。

  • 後藤 卓, 伊藤 貴康
    2018 年 72 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    高C3A型セメントをベースとして少量混合成分(石灰石、フライアッシュ、高炉スラグ)を10%添加したセメントについて、反応性骨材を用いたモルタルの高温高アルカリ(NaOH)溶液中での膨張特性(ASTM C1260に準拠)を評価した。モルタル膨張量は、高C3A型セメントをベースにフライアッシュを添加した系で小さくなる傾向がみられた。XRD/Rietveldや27Al MAS NMRによると、膨張量に差異の生じたNaOH溶液養生後7日から14日の間で、高C3A型セメントでは水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、C3Aおよびカトアイト等が減少し非晶質相が増加する変化が確認された。

  • 小出水 翔平, 高巣 幸二, 小山田 英弘, 陶山 裕樹
    2018 年 72 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    砕砂全量使用時におけるフレッシュ性状の改善を目的とし、JISで定めた範囲内で砕砂の粒度分布を調整した時のモルタルの流動性把握および細骨材の物性値、粒子形状などの指標を用いて粒度構成、異なるペースト性状におけるモルタルの流動性について検討を行った。砕砂の粒度調整に伴い変化するモルタルの流動性の評価として細骨材の実積率、吸水率、微粒分量および粒子形状を用いるのは困難であり、最も関係しているのは粒度構成であることが明らかになった。しかし、細骨材によって粒度構成が流動性に影響を及ぼす度合いが異なり、また、同一粗粒率においても粒度分布は複数存在するため、モルタルのフレッシュ性状の評価および予測は困難であり、今後の検討課題となる。

  • 西田 電, 齋藤 俊克, 出村 克宣, 我喜屋 宗満
    2018 年 72 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、再乳化形粉末樹脂を用い、ポリマーセメントモルタルの曲げ及び圧縮強さに及ぼすポリマー混入率の影響について検討している。その結果、水セメント比、ポリマー混入率、空気量及び細骨材セメント比を考慮したポリマーセメントモルタルの曲げ及び圧縮強さ影響因子を提案している。又、その影響因子とポリマー未混入モルタルの曲げ及び圧縮強さの積とポリマーセメントモルタルの曲げ及び圧縮強さとの間には高い相関性が認められ、ポリマー混入率を新規な調合要因として取り扱うことができることを明らかにしている。

  • 依田 侑也, 清村 俊介, 黒田 泰弘, 坂井 悦郎
    2018 年 72 巻 1 号 p. 106-113
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    混合セメントに使用される混合材の日常的な品質管理や選別に使用できる手法の構築を目的とし、伝導型熱量計を用いた簡易的なキャラクタリゼーション手法を検討した。本報告では、一般的に使用される混合材の中でも、混合材自らが反応する高炉スラグ微粉末およびフライアッシュの品質評価を行うため、50℃の高温養生と反応刺激材として水酸化カルシウム粉末を用いた促進試験法を提案した。促進試験法を用いて最短で材齢1日まで伝導型熱量計で実測を行うことで、混合材の活性度指数の違いを判断でき、品質評価に使用できることを示した。

  • 小島 真実, 佐々木 健太, 胡桃澤 清文
    2018 年 72 巻 1 号 p. 114-121
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    高炉セメントの利用や寒冷地における凍結融解抵抗性増進を目的としたAE剤の利用によって、コンクリートの初期強度が低下する。これを補うためにポリオール系と硫酸塩系を併用した併用型硬化促進剤が開発されており、高い硬化促進効果が得られている。しかしながらその硬化促進メカニズムは詳細には明らかにされていない。本研究では、併用型硬化促進剤混和による高炉セメント硬化体の初期強度発現メカニズムの解明を試みた。その結果、ポリオール系と硫酸塩系を併用することによりアルミネート相の水和反応が促進すること、併用型硬化促進剤が水酸化カルシウムを溶解し、高炉スラグ微粉末の反応を促進させる可能性があることを明らかにした。

  • 藤原 了, 二戸 信和, 丸岡 正知, 藤原 浩已
    2018 年 72 巻 1 号 p. 122-128
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    シングルミクロンの高炉スラグ微粉末は、初期強度改善目的などで補修関連のモルタル材料の混和材として利用されている。一方で、硬化体の収縮が大きくなるなどの課題がある。そこで、粒子の細孔構造の異なるシングルミクロン高炉スラグ微粉末を試作し、モルタルにおいてフレッシュ性状や圧縮強度などの比較を行うとともに、乾燥収縮と自己収縮特性の改善の可能性について検討を行った。その結果、同一粒径でもBET比表面積を小さくしたシングルミクロン高炉スラグ微粉末を用いることにより、圧縮強度は同等の特性を示し、収縮特性は改善できることが分かった。

  • 目黒 貴史, 佐伯 竜彦, 小柳 秀光, 斎藤 豪
    2018 年 72 巻 1 号 p. 129-135
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    フライアッシュのポゾラン反応における生成物は、主にC-S-H、C-A-HおよびC-A-S-Hであるが、フライアッシュの組成が反応生成物に及ぼす影響について検討した例はほとんどない。そこで本研究では、フライアッシュの組成が反応生成物に及ぼす影響を基礎的に検討するために、フライアッシュと水酸化カルシウムを混合したFA-CHペーストにおいて、反応に伴う水酸化カルシウムの消費量、結合水量および反応生成物を定量した。その結果、ガラス組成中におけるAl/Si比が0.33以上と高いフライアッシュでは、ガラス相からのAl/Si溶出量比が高く、結合水量が多いC-A-HやC2ASH8を生成しやすい傾向があることが明らかとなった。

コンクリートの試験・評価
  • 山之内 康一郎, 山口 晋, 伊藤 義也, 伊藤 康司
    2018 年 72 巻 1 号 p. 136-143
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    コンクリートの管内流動をコンクリートと管壁との間に存在する薄い水膜との2層流れと仮定すると、流量はBingham流量、滑りによるコンクリートの移動量及び水膜の体積で与えられる。本研究では、O漏斗試験装置の上部に試料容器を増設し、漏斗の流出管入り口の水頭差を3水準として流量を測定するとともに、加圧脱水試験を併用して、脱水量を基に管壁面に生じる水膜の厚さとコンクリートの滑り速度を計算してBingham流量を求め、これをBuckingham式に適用してレオロジー定数の概略値を推定する方法を検討した。さらに、この概略値に補正係数を乗じて予測した流量は、圧送試験装置による実測流量と比較的近似した値となり、簡易に流量予測ができる可能性が示された。

  • 井上 真澄, 崔 希燮, 須藤 裕司
    2018 年 72 巻 1 号 p. 144-150
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、硬化コンクリート中に含有する亜硝酸イオン量の分析方法を確立することを目的として、モルタル硬化体を用いて基礎的データの収集を行った。測定はJISおよびJCI規準を骨子として、試料の切断および微粉砕方法、温水抽出方法をパラメータとして分析用試料を作製し、イオンクロマトグラフ法により測定した亜硝酸イオン量を比較検討した。その結果、試料の微粉砕過程では、振動ディスクミルを用いた場合の方が鉄乳鉢よりも試料の粒度が細かく、亜硝酸イオン量が多く検出された。また、試料量に対して液量が多くなるほど亜硝酸イオンの抽出率は増加する傾向を示すものの、試料量と液量の割合が1:16になるとほぼ一定になることを確認した。

  • 伊藤 慎也, 保利 彰宏, 浴 陸真, 伊代田 岳史
    2018 年 72 巻 1 号 p. 151-157
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    塩素固定化材および膨張材を添加したコンクリートに関し、物理的特性および塩分浸透抵抗性について検証を行った。その結果、塩素固定化材と膨張材を併用することによる圧縮強度への影響はほとんどない一方、同一添加量であっても膨張材を単独添加した場合と比較して膨張ひずみが小さくなる傾向が認められた。また、浸漬試験および非定常状態の電気泳動試験において、塩素固定化材を添加することで塩化物イオンの浸透が抑制され、膨張材と併用した場合でも、導入される膨張ひずみが適正範囲内であれば塩分浸透抵抗性に影響がないことが確認された。

  • 室谷 卓実, 五十嵐 心一, 寺澤 佑丞
    2018 年 72 巻 1 号 p. 158-165
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    空気量の異なるコンクリートの気泡分布をASTMリニアトラバース法と画像解析法、および気泡を点で表した点過程法にて評価し、従来の気泡間隔係数と簡単に求められる気泡間隔特性値の対応を検討した。その結果、気泡間隔特性値はASTM画像解析法により求めた気泡間隔係数とほぼ一致し、点過程法の有用性が確認されたが、より簡便な評価を目的として低倍率のスキャナー画像を用いると、気泡間隔特性値と気泡間隔係数と最大で100μm程度の差を生じた。空気量が少ない場合はスキャナー像の点密度が空気量と対応しない場合があり、微小気泡の非検出が点間距離に及ぼす影響について検討が必要である。

  • 栖原 健太郎, 辻 幸和, 真下 昌章, 小竹 弘寿
    2018 年 72 巻 1 号 p. 166-172
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    膨張コンクリートの一軸拘束膨張試験方法のA法および一軸拘束膨張・収縮試験方法のB法について、JIS A 6202に規定されているダイヤルゲージ法だけでなくコンタクトゲージ法も併用し、A法およびB法のPC鋼棒とコンクリートとの付着が長さ変化率に及ぼす影響を実験的に検討した。その結果、A法では収縮率が-200×10-6程度まではB法と同様に収縮率が測定できることを、B法では収縮率が-300×10-6程度を超えるとPC鋼棒の転造ねじによる付着が端部で充分でなくなり、コンタクトゲージ法に比べて、ダイヤルゲージ法による収縮率の絶対値が小さくなることを、それぞれ明らかとした。B法における収縮率の適用範囲を限定する必要があること、およびA法にコンタクトゲージ法も併用すると、膨張コンクリートの一軸拘束状態の膨張率の測定を経た後の、拘束の無い収縮率も測定できる可能性を示した。

  • 胡桃澤 清文
    2018 年 72 巻 1 号 p. 173-180
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    サーモポロメトリーは空隙内部の水の凍結融解時に発生する熱量からセメント硬化体の空隙量を推定するものであり、著者らは少量の試料によって測定を行ってきたが本研究ではバルク試料に対してサーモポロメトリーの適用を行った。その結果、少量のサンプルでは測定できていなかったピークを検出でき、高炉スラグ混和による空隙の小径化を明らかにすることができた。また、塩化物イオンの拡散や電気伝導率に及ぼす空隙構造の影響は、サーモポロメトリーの凍結過程における-30℃までに凍結する水量と相関があることが示され、特に塩化物イオンの拡散係数とは非常に高い相関関係を示した。

  • 沢木 大介, 澤田 佳奈, 青山 一真
    2018 年 72 巻 1 号 p. 181-188
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    ビルの外壁にタイルを接着するモルタルに、ドライアウト現象を防止するための吸水調整材が塗布されているか否かを判定する方法を検討した。吸水調整材の代表的な市販品について、赤外分光分析を行い、スペクトル上の主な吸収ピークの帰属を決定した。これらを所定の割合で塗布したモルタルの表層を削り取り、赤外分光分析を実施した結果、1730cm-1付近に現れるC=O結合の伸縮による吸収ピークが、吸水調整材を検出するキーバンドであることが明らかとなった。さらに実際の構造物のタイル接着モルタルについて、赤外分光分析と走査型電子顕微鏡による二次電子像観察を行った結果、赤外分光分析で吸水調整材が検出されたモルタルでは、それが膜状の物質として観察されることを示した。

コンクリートの物性
耐久性
  • 伊代田 岳史, 中村 絢也, 後藤 誠史
    2018 年 72 巻 1 号 p. 225-232
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究ではセメント硬化体の炭酸化機構、特に実環境と促進環境のプロセスの違いを検討した。CHとC-S-Hを炭酸化対象とし、それらの溶解度積から、実環境ではCO2の供給が緩やかなため、まずCHが炭酸化しその後C-S-Hが炭酸化し、ともに消費されるとフロントが前進する。一方促進環境ではCO2の供給が速いため、CHおよびC-S-Hともに炭酸化し、粒径の細かいC-S-Hが炭酸化してしまうと、未炭酸化のCHを残したまま炭酸化フロントは前進する、と考えた。この考えに基づき高炉スラグ微粉末の置換率および養生条件を変えたモルタルの中性化速度係数を求めたところ、水和物が含むCaO量とよい相関があることが分かった。

  • 田中舘 悠登, 羽原 俊祐, 小山田 哲也, 五十嵐 数馬
    2018 年 72 巻 1 号 p. 233-239
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    ポンプ圧送によるスケーリング抵抗性の低下を明らかにするため、フレッシュ時に一時的に加圧を行ったモルタルのスケーリング抵抗性について検討した。加圧によりスケーリング抵抗性が低下する結果となった。特に加圧圧力が0.4MPaの場合でスケーリング抵抗性の低下が顕著となった。このことは、耐凍害性に有効な150μm以下の気泡が加圧により減少し、空気量の低下及び気泡間隔係数の増加により起こる。エントレインドエアと中空微小球を併用した場合では、エントレインドエア単独に比べ、加圧によるスケーリング抵抗性の低下は小さい結果となった。中空微小球の使用により、加圧による80μm以下の空気量の低下が小さいためと考えられる。

  • 田中舘 悠登, 羽原 俊祐
    2018 年 72 巻 1 号 p. 240-246
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    凍結防止剤溶液の凍結と融解過程がスケーリングに及ぼす影響を明らかにするため、NaCl水溶液の凝固点以下-40~-3℃において、様々な温度範囲で降温と昇温の繰り返し試験を行った。スケーリングが起こる温度条件は、NaCl水溶液の状態で説明することができる。-20~-10℃の範囲で降温と昇温、または、この温度範囲を降温と昇温時に通過する条件でスケーリングが起こった。この温度範囲において、氷と高濃度のNaCl水溶液が共存する状態である。氷とNaCl・2H2Oの2成分の固体状態である-40~-21℃の範囲での降温と昇温ではスケーリングは起こらなかった。温度変化に伴いNaCl水溶液の一部分が凍結と融解する現象によってスケーリングが起こると考えられる。

  • 小林 真理, 高橋 恵輔, 山中 寿朗, 牧田 寛子
    2018 年 72 巻 1 号 p. 247-254
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、深海底におけるセメントモルタルの流動特性や初期圧縮強さ、長期間深海底に暴露した硬化体の力学特性を測定し、水和生成物及び化学組成の分析から、深海底で圧縮強さや長さ変化等の物理的特性が変化した原因を考察した。その結果、長期間深海底で暴露したセメントモルタルの物理的特性は著しく変化し、その程度は結合材の種類によって異なることがわかった。深海底で暴露することにより、カルシウムの溶脱、マグネシウムと硫黄の浸入によるマグネシウム系水和物やエトリンガイトの生成、水和生成物の結晶の大きさや空隙の変化が生じたことが原因と考えた。

  • 安藤 陽子, 広野 真一, 片山 哲哉, 鳥居 和之
    2018 年 72 巻 1 号 p. 255-262
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    硬化コンクリート中で電子顕微鏡や粉末X線回折などによりエトリンガイトを同定することでDEFと判定することは、他の劣化要因を見落とす可能性があり、非常に危険であると考える。本論文では、コンクリートの劣化原因を偏光顕微鏡観察、電子顕微鏡観察およびEDS分析を相互に取り入れた岩石学的手法を用い判定したうえで、エトリンガイトの生成要因を中性化深さ、コンクリートの配合、養生条件、および環境条件なども考慮に入れ明らかにした。また、飛灰に接触したコンクリートの劣化診断について岩石学的手法を取入れ、本手法の適用性を検討した。

  • 昆 悠介, 羽原 俊祐, 小山田 哲也, 田中舘 悠登
    2018 年 72 巻 1 号 p. 263-269
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    前報では、JCI「マスコンクリートのひび割れ制御指針2016」のコンクリート中のアルカリ量、硫酸塩量による最高温度の限界値について、2種類のセメント(普通・早強)を使用し、アルカリ量及び硫酸塩量を広い範囲とした実験より、材齢200日までの結果が指針の提案を裏付けることを示した。本研究では、材齢600日超の結果を用いてDEF膨張が起こるかどうかを検討し、指針のアルカリ量、硫酸塩量による最高温度の限界値の信頼性を検討した。結果は指針の提案を裏付けたものの、最高温度70℃の場合、アルカリ量が多い場合に広い範囲で膨張が認められ、指針の65℃の領域に近接する外側でも膨張を示すことを見出した。

  • 齊藤 雅仁, 澤本 武博, 舌間 孝一郎, 樋口 正典
    2018 年 72 巻 1 号 p. 270-276
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、普通ポルトランドセメント(N)および高炉セメントB種(BB)を用いたコンクリート柱部材を作製し、脱型時期、養生方法および使用環境を変化させた場合の透気係数、含水率、圧縮強度および反発度の関係について検討した。その結果、透気係数を小さくするために、Nの場合は外部から水分を補給する湿布養生が、BBの場合は湿布養生に加えて乾燥を抑制する封かん養生および膜養生が効果的であった。また、セメントの種類や養生方法、使用環境が異なると、透気係数は圧縮強度および反発度と明確な相関性は見受けられなかった。そのため、コンクリートの耐久性は強度だけでは判断できず、透気試験のように物質の移動抵抗性を直接測定するのがよいと考えられる。

  • 榊原 直樹, 田中 泰司, 佐藤 和徳, 岩城 一郎
    2018 年 72 巻 1 号 p. 277-284
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    寒冷地の道路橋RC床版は冬期に凍結防止剤が散布されるため、近年、塩害、塩分環境下の凍害やアルカリシリカ反応(ASR)により、交通量の少ない地域であっても耐久性を損ねる劣化事例が報告されはじめてきた。そのため、RC床版自体の耐久性を高める必要性が指摘されている。本研究では、耐凍害性、遮塩性やASR抵抗性の高いコンクリートと防錆被覆鉄筋等を用いた多重防護の考えを導入し、その性能を発揮させる施工段階における性能評価までの検討手順を提案し、室内試験や現場試験に基づく入念な施工計画を立案し、実施工を行った。その結果、想定した性能を非破壊試験や耐久性試験で確認し、提案した検討手順の有効性を実証した。

  • 石川 嘉崇, 細川 佳史, 林 建佑, 曽我 亮太
    2018 年 72 巻 1 号 p. 285-292
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究では、2009年より日本各地に曝露し、経時的な耐久性を評価中のフライアッシュ(FA)コンクリート供試体を用いて、FAのポゾラン反応率と耐久性の関係について整理した。曝露供試体中のFAのポゾラン反応率は、曝露試験と同じFAを用いた模擬ペーストの解析に基づき、積算温度から間接的に推定した。その結果、FAのポゾラン反応率は、基準温度を13℃とした場合の積算温度と良い関係があり、この関係を用いて推定したポゾラン反応率と中性化速度係数の経時変化には良い相関関係が認められた。また、海洋環境に曝露した供試体では遮塩性に関する解析を加えており、FAコンクリートでは中性化を受けた場合にも、高い遮塩性を有することを明らかにした。

繊維補強コンクリート
補修・補強
  • 小笠原 健, 藤原 浩已, 丸岡 正知, 佐藤 公
    2018 年 72 巻 1 号 p. 322-327
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    下水道管の老朽化が進んでおり、下水道管更生工法が注目されている。この更生工法に用いられる裏込めモルタルに対する要求性能としては、既設下水道管と内側に挿入した更生管とが複合管としての剛性、更生管外側の凹凸間への充填性、圧入時の作業効率向上のために低密度・低粘度・材料分離抵抗性が必要になる。本稿で用いられた配合Cでは、圧送圧が高くなるという問題があった。このため、配合Dでは、0打モルタルフロー値の目安値を大きくすることで圧送負荷の低減を行い、要求性能を満たすことが出来た。しかし、配合Dにおいて水中不分離性が低くなり、今後検討する必要がある。

  • 欒 堯, 睦好 宏史, 房 捷, 川名 梨香子
    2018 年 72 巻 1 号 p. 328-335
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    コンクリートのひび割れの補修について、近年では微生物を用いた斬新な補修法が提案されている。本研究では、微生物系補修材の実用化を目的として、食品発酵用のイースト菌、土壌に多く存在する好アルカリのバチルス菌をそれぞれ用いて補修材を調製し、モルタルに生じた貫通ひび割れ、およびASR促進試験で発生したひび割れに対して補修を試みた。その結果、いずれの供試体においても、補修後ひび割れ中に炭酸カルシウムの析出が確認でき、補修前と比べ透水速度と吸水量が顕著に低下したことが明らかとなった。また、バチルス菌を用いた場合、ASRによるひび割れの補修後の吸水量はイースト菌と比べて低下し、補修効果は高くなることが明らかとなった。

  • 上田 隆雄, 谷口 沙耶佳, 飯干 富広, 江里口 玲
    2018 年 72 巻 1 号 p. 336-343
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    アミノ酸の一種であるアルギニンを混入したコンクリートは、海洋環境における魚類等の生物生息環境が改善できることや、コンクリート中の鉄筋腐食環境を改善することが報告されている。本研究では生態系への配慮も必要となる海洋環境で適用される断面修復材にアルギニンを添加した場合の補修効果を実験的に検討した。さらに、この断面修復材にフライアッシュと石膏を添加することによる自己治癒性能についても併せて検討した。この結果、特にアルギニンとフライアッシュを併用した断面修復材は、一般のポリマーセメントモルタルを用いた場合と比較して、打継部界面付近の鉄筋腐食速度が抑制されるとともに、自己治癒によるひび割れの閉塞が促進される傾向を示した。

  • 阿部 忠, 伊藤 清志, 小堺 規行, 小林 稔
    2018 年 72 巻 1 号 p. 344-351
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究は、RC床版を用いて輪荷重走行疲労実験による疲労損傷を与えた後、高弾性PCMおよび低弾性PCM、PCCを用いて2種類の接着剤を塗布した薄層補修法における補修効果を検証した。その結果、高弾性PCMを用いて直接補修した供試体に対して低弾性PCMを用いて2種類の接着剤を塗布して薄層補修した供試体は、1次、2次補修までの等価走行回数は1.69倍、また、低弾性PCMに小径骨材、6号砕石を配合した低弾性PCCの等価走行回数は2.01倍、2.19倍の補修効果が得られた。よって、低弾性PCM、PCCを用いた2種類の接着剤塗布型補修法は割れやはく離することがなく耐疲労性が向上し、実用的であると言える。

環境・リサイクル
  • 桐野 裕介, 新見 龍男, 星野 清一, 河合 研至
    2018 年 72 巻 1 号 p. 352-358
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    廃棄物・副産物の活用による環境貢献およびCO2排出による環境負荷の両影響を考慮した、簡便な構造物の環境影響評価手法の構築を目的に、セメント種類を変更した場合の橋梁の環境影響評価を行った。本研究で提案した統合化指標によって評価を行った結果、リサイクル活用の難しい廃棄物を多く使用しているポルトランドセメントの指標値が最も高くなり、リサイクル活用の比較的容易な副産物を多く使用している混合セメントは低い値となった。また、日本版被害算定型影響評価手法(LIME2)の統合化評価結果においても、ポルトランドセメントの評価値が最も高くなり、両手法による評価値は相対的に高い一致を示した。

  • 木山 直道, 鍋島 美咲, 堀口 至, 三村 陽一
    2018 年 72 巻 1 号 p. 359-365
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    ハイブリッドポーラスコンクリート(Hy-PoC)は、緑化性能に優れた牡蠣殻ポーラスコンクリートと力学特性に優れた砕石ポーラスコンクリートを組み合わせたコンクリートである。本研究では、Hy-PoCの緑化性能と強度特性に及ぼす締固め方法の影響について検討した。植栽試験結果より、締固めエネルギーが小さいジッギング法で作製したHy-PoCは締固めエネルギーが大きいバイブレータ法と比較して緑化性能が高く、特に混合率100%のHy-PoCが優れていた。また、湿潤状態の供試体を用いた改良揚水試験より、緑化性能に優れたHy-PoCが高い揚水性能を持つことが確認できた。しかし、ジッギング法で作製したHy-PoCの圧縮強度は低く、バイブレータ法と比較すると約1/3~1/4の値を示した。

セメント系新材料
  • 斎藤 豪, 横山 卓之, 佐藤 賢之介, 佐伯 竜彦
    2018 年 72 巻 1 号 p. 366-372
    発行日: 2019/03/29
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    新たな原料投入なしに再生可能なセメントを実現させるため、高活性β-C2SとC/S比2.0のC-S-Hの水和焼成サイクルの確立を目的として、本研究では固相反応であるメカノケミカル法によって、高活性β-C2Sを直接合成することを試みた。出発C/S比を1.0、1.5、2.0に調合した試料を粉砕時間が最大5時間になるまで遊星型ボールミルにて粉砕を行った結果、カルシウム源としてCaO、シリカ源としてアエロジルを用いた乾式メカノケミカル法を用いることにより、いずれの出発C/S比においてもC/S比が2.0であるβ-C2Sが合成可能であることが示された。また得られたβ-C2Sは、N2-BETの結果から通常のβ-C2Sよりも大きな比表面積を有しており、水和活性の高いβ-C2Sが合成可能であることが示された。

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