セメント・コンクリート論文集
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73 巻, 1 号
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セメント化学
  • 三森 耀介, 斎藤 豪, 加藤 福將, 佐伯 竜彦
    2019 年 73 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではAlやMgがトバモライトの生成や結晶構造に及ぼす影響を検討するため、出発Ca源及びSi源にAl系添加物であるゲーレナイト、Mg系添加物のオケルマナイト、またそれらの固溶体を添加し高温高圧条件でオートクレーブ(以下AC)養生、80℃で水和養生を施した。その結果、高温高圧養生下ではAl系物質を添加した試料に関して、Al置換型1.1nmトバモライトの生成が確認された。またゲーレナイト中のAlはAC養生によってbridging siteに存在するSiO4四面体中のSiに多量に置換することも確認された。一方80℃水和養生下では、Al系添加試料において生成した1.4nmトバモライト中のSiにAlが置換し、強い乾燥を施さなくとも1.1nmトバモライトに近づく傾向が確認された。

  • 加藤 福將, 斎藤 豪, 松井 久仁雄, 佐伯 竜彦
    2019 年 73 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではMgやアルカリを添加して合成した1.4nmトバモライトの構造変化に着目し、乾燥条件が与える影響について検討するために80℃の水和反応後にRH=11~88%で長期乾燥した試料の分析を行った。その結果、高RH条件下で不安定であった1.4nmトバモライトの構造がRH=11%においては安定化し、結晶性の向上が示された。また各条件で乾燥した試料に共通して1.4nmトバモライトは前処理乾燥により層間が1.1nmへと変化するものの、N2吸着等温線は全く異なる挙動を示し、メソポア、マクロポア領域における凝集体構造の明瞭な違いが生じることがわかった。また、MgOは80℃養生により1.4nmトバモライトの生成を促進し、Mgはトバモライト層間のSi鎖を架橋するものと考察した。

  • 林 良祐, 斎藤 豪, 佐藤 賢之介, 佐伯 竜彦
    2019 年 73 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、モノカーボネート配合量および養生温度の違いがエトリンガイトおよびソーマサイトの生成に及ぼす影響を把握することを目的とした。純合成したモノカーボネートに対してソーマサイト生成に必要な材料を配合し、反応懸濁液として水和させて、エトリンガイトおよびソーマサイト生成挙動の検討を行った。その結果、ソーマサイトの安定生成条件から外れるモノカーボネートを多量に配合した場合、および高温で養生した場合には、エトリンガイト生成量が増加することが実験的に示された。上記のエトリンガイト生成には、CHの溶解および、試料中でのC-A-S-Hの形成が大きな影響を及ぼしているものと考えられた。

  • 坂井 悦郎, 梅津 真見子, 二戸 信和, 久我 龍一郎
    2019 年 73 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    エーライト含有量や遊離石灰量を高めた基材セメントを用い、石灰石微粉末(LSP)を少量添加し、普通ポルトランドセメント(N)と同等のモルタル強さを発現するフライアッシュ(FA)の置換率を18%としたフライアッシュセメント(AFC)の水和反応と水和物について、Nと通常のFAセメント(NF)と比較して検討した。FAの反応は長期に継続し、NFではモノサルフェートが生成するがAFCではAFtとモノカーボネートが生成した。また、SEM-EDSや固体NMRの分析により水和したAFC中のC-A-S-Hでは、Nの場合よりC-A-S-HのCa/Si比は小さいが、NFの場合より大きく、C-A-S-Hの架橋部のAlO4やSiO4も少ないことが明らかになった。

  • 中川 裕太, 黒川 大亮, 内田 俊一郎, 平尾 宙
    2019 年 73 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    セメントは製造後の輸送や貯蔵の工程で周囲の温度や湿度等の環境条件の影響を受け、品質が変化することがある。保管環境条件とセメントのキャラクター変化およびプロパティー変化の関係を調査するために温度・湿度が異なる環境でセメントを保管し、セメントの品質変化を評価した。高湿度環境では、温度によらず吸湿により熱重量減少率が増加し、強さ低下、凝結遅延が発生した。高温低湿度環境では、未風化時の半水化率が低いセメントにおいて半水化率が大きく上昇し、凝結遅延が発生した。セメントの保管においては、保管環境のみならずセメントのキャラクターも大きく風化に影響を及ぼすことが確認された。

  • 後藤 誠史, 中村 絢也, 伊代田 岳史
    2019 年 73 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    コンクリートの主要水和物であるCHとC-S-Hを主な対象とし、その量、CO32-との反応性、代表的な粒径を考慮し、炭酸化プロセスを検討した。CHとC-S-Hの粒子系の反応速度がJander式に従うとすると、炭酸化フロントではまずCHが反応し、CO32-の供給量がJanderの反応予測量より大きくなるとC-S-Hも反応し始め、CHとC-S-Hの反応予測量より供給量が多くなるとフロントは前進する。この時、CHの炭酸化率はCO32-の供給速度すなわち環境CO2濃度によって異なり、促進条件下では未炭酸化率が増える。炭酸化速度係数はC-S-HとCHの量とCHの重み付けにより解釈できることが分かった。

  • 大﨑 修也, 新 大軌, 宋 玄眞, 須藤 裕司
    2019 年 73 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    高炉スラグの水和反応に及ぼす亜硝酸カルシウムの影響について検討するために、Ca(OH)2─高炉スラグペーストを作製し、石こう添加の影響と比較した。併せて高炉セメントの水和反応に及ぼす亜硝酸カルシウムの影響も検討した。石こう添加では材齢14日目以降反応は停滞し、主要な水和生成物としてはAFtが確認された。これに対して、亜硝酸カルシウム添加では高炉スラグの水和反応は促進され、AFm(NO2)が生成した。またC-S-H生成量も増加した。高炉セメントに対しても亜硝酸カルシウムは高炉スラグ及びセメントの水和反応を促進させることから、亜硝酸カルシウムは高炉セメントの初期強度改善剤として期待できることが示唆された。

  • 坂井 悦郎, 植田 由紀子, 相川 豊, 二戸 信和
    2019 年 73 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    高炉スラグ高含有セメント(HVBFSC)の水和反応や圧縮強さに及ぼすジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)の影響や亜硝酸カルシウムとの併用効果について検討した。両者を併用した場合には、材齢7日と28日ではHVBFSC中のエーライトの反応率は無添加とほぼ同等かわずかに小さいが、HVBFSC中のBFSの反応率は無添加より大きな値を示した。無添加より圧縮強さが大きいのは、この影響であり、材齢56日では、エーライトの反応率は無添加より増加した。Ca(NO2)2単独添加に比べて、DEIPAとの併用ではBFSの反応促進による初期の強度増進とエーライトの長期の反応率の増加による長期強度増進も期待される。

  • 宋 玄眞, 新 大軌, 細川 佳史, 宮川 美穂
    2019 年 73 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    初期強度を改善したFAセメントの材料設計のため、初期強度増進剤として3種類のアルカノールアミンがFAセメントの初期水和反応に及ぼす影響を検討した。全てのアルカノールアミンを添加したFAセメントで強熱減量及び水和発熱量は増加した。クリンカー鉱物中のC4AFの反応率が大きく増加し、C3S及びFAの反応性に及ぼすアルカノールアミンの影響は小さいことを確認した。また、アルカノールアミンを添加したFAセメントではAFmの生成が促進された。アルカノールアミンを添加したFAセメントは水和初期からセメントの水和反応が促進され、初期強度が増加すると推察された。

  • 坂井 悦郎, 梅津 真見子, 松澤 一輝, 久我 龍一郎
    2019 年 73 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    静電ベルト式分離方式により処理したフライアッシュ(FT)の化学的性質や物理的性質を未処理のフライアッシュ(F)と比較するとともに、それらを異なる基材セメントと組み合わせて調整したフライアッシュセメントにおける水和特性について検討した。FとFTでは化学組成や鉱物組成とくにガラス相量については大きな変化はなかったが、FTの強熱減量が1%以下となり、大きな異形状の粒子が減少した。FTの利用により、分散剤を添加したペーストの見かけ粘度はFの場合より小さな値を示した。また、FAセメント中のFAや基材セメントの反応については、FTを用いた方がFの場合より大きな値を示した。

セメント硬化体・モルタルの物性
  • 須田 裕哉, 富山 潤, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2019 年 73 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、セメント硬化体の炭酸化に及ぼす相対湿度の影響を評価する目的で、20℃環境下のもと相対湿度11%、43%、66%、85%における炭酸化による収縮挙動と組織構造の変化に着目し検討を行った。その結果、乾燥時の相対湿度の違いにより炭酸化収縮の進行程度は異なり、相対湿度43%において収縮量が最も大きくなった。一方で炭酸化による水酸化カルシウムの残存量は相対湿度66%が最も少なく、炭酸カルシウム生成量と収縮量の関係は炭酸化時の湿度によって異なる傾向を示した。この傾向を明らかにする目的で、粉末X線回折、窒素吸着試験および熱力学的相平衡計算を実施した結果、炭酸化時の湿度の違いにより水酸化カルシウムとC-S-Hの炭酸化挙動が異なることが明らかとなった。

  • OTSUKA SAKATA HERLY NICOLAS, 佐藤 賢之介, 齊藤 成彦
    2019 年 73 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、硫酸塩がセメント硬化体に作用した場合における、硫酸塩劣化前後の物質移動性状の経時変化を把握するための第一段階の検討として、硫酸ナトリウムに短期間浸漬した硬化体の酸素の移動性状を評価することにより空隙構造の変化を明らかにし、またその際の水和物の変化との関連性を検討することを目的とした。その結果、硫酸ナトリウムに浸漬したセメント硬化体の酸素拡散係数は、イオン交換水に浸漬した場合と比較して低下する傾向が確認された。これは硫酸ナトリウムの作用を受けることによってセメント硬化体内部でエトリンガイトが生成し、直径20nm以上の空隙が充填されて空隙構造が複雑化したことに起因すると考えられた。

  • 藤原 了, 小菅 太朗, 丸岡 正知, 藤原 浩已
    2019 年 73 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    コンクリート構造物の耐硫酸性を向上させる手法のひとつとして、高炉スラグ微粉末およびポゾラン系の混和材料を用いた耐硫酸性セメント系材料を使用する方法がある。一方で耐硫酸性セメント系材料は初期強度の改善が要求されている。そこで、シングルミクロンの高炉スラグ微粉末やフライアッシュを用いた耐硫酸性セメント系材料の検討を行った。異なる粒度の高炉スラグ微粉末の組み合わせと、フライアッシュと高炉スラグ超微粉末との組み合わせは同等の耐硫酸性となり、異なる粒度の高炉スラグ微粉末の組み合わせの方が初期強度の改善が大きかった。さらに、高炉スラグ砂と高炉スラグ微粉末を組み合わせることにより耐硫酸性が大幅に向上した。

  • 出村 克宣, 齋藤 俊克, 武田 昌也
    2019 年 73 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではポリマーセメントモルタルの耐透水性及び耐久性に及ぼすポリマー混入率の影響について検討している。その結果、水セメント比、ポリマー混入率、空気量及び細骨材セメント比を考慮したポリマーセメントモルタルの透水量、中性化深さ及び塩化物イオン浸透深さ影響因子を提案している。これらの影響因子とポリマー未混入モルタルの透水量、中性化深さ及び塩化物イオン浸透深さの積から、ポリマーセメントモルタルの透水量、中性化深さ及び塩化物イオン浸透深さが推定でき、その一般式を提案すると共に、ポリマーセメントモルタルの新規な調合要因としてポリマー混入率を取り扱うことができることを明らかにしている。

  • 山田 優也, 胡桃澤 清文
    2019 年 73 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    セメント製造時のCO2排出量削減のため高炉セメントの利用が推進されているが、寒冷地において初期強度の低下やスケーリング劣化が懸念される。硬化促進剤や凍害抑制剤を混和することにより対策可能であるが、それらの併用によって初期強度発現が抑制されないか検討がなされていない。また、硬化促進剤及び凍害抑制剤が高炉スラグの反応に及ぼす影響は明らかでない。そこで本研究では、硬化促進剤や凍害抑制剤を混和させたセメント硬化体に対して強度試験や相組成分析を行い、高炉セメント硬化体の強度発現メカニズムを解明した。その結果、硬化促進剤によりC3S、C3A反応率が上昇し、凍害抑制剤はその反応を阻害しないことを明らかにした。

  • 胡桃澤 清文
    2019 年 73 巻 1 号 p. 111-117
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    北海道などの寒冷地においては冬季にコンクリートを打設する際には適切な養生を行う必要がある。しかしながら高炉セメントを使用した場合には普通ポルトランドセメントを使用する場合より長い養生を必要とする。そのため高炉セメントを積極的に使用するためには初期強度発現の改善が必要である。そこで本研究では高炉スラグ微粉末の反応性に及ぼす各種硬化促進剤の影響を明らかにすることを目的とした。その結果、亜硝酸系の硬化促進剤を用いた場合、高炉スラグ─水酸化カルシウム固化体において初期材齢から強度増進が見られ高炉スラグの反応が促進していることが明らかとなった。また、水和物として亜硝酸型のモノサルフェートが生成されていることを確認した。

  • 小野本 憲人, 高巣 幸二, 小山田 英弘, 陶山 裕樹
    2019 年 73 巻 1 号 p. 118-125
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    フライアッシュ(以下FAと称す)の供給拡大に向け、JIS規格品に限らず品質が比較的ばらつきやすいJIS規格外の企業発電灰を浮遊選鉱法により改質し、改質の前後で性状に違いが生じるかを確認するとともに改質FAが持つ特性を明らかにすることを目的とした。材齢91日の圧縮強度において、FAの違いによらずに大きな差は認められなかった。養生温度80℃の供試体を除くとFA混合の有無及び違いによらず積算温度による圧縮強度推定式で評価できることが確認された。改質FAのC3Sの反応率はJIS Ⅱ種FAと同水準を示し、CH量についてはFA混合が無混合より少なかったが改質による差は見られなかった。供試体の細孔量も改質による差は見られなかった。

  • 伊藤 洋介, 河辺 伸二, 井上 裕太, 田口 陽貴
    2019 年 73 巻 1 号 p. 126-132
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    建築空間内における電波利用機器同士の電波干渉を防ぐためには電波吸収体が有効である。骨材の一部を電気炉酸化スラグで置換したモルタル(以下スラグモルタルという)は電波吸収性能を有し、従来の電波吸収体に比べて安価に製造できる。しかし、スラグモルタルのスラグの置換量が電波吸収性能に及ぼす影響について体系的に検討されていないため、スラグモルタルの電波吸収体は設計が難しい。本研究はスラグの置換量が複素比誘電率と複素比透磁率に及ぼす影響から電波吸収のメカニズムを明らかにし、スラグの置換量とモルタルの厚さを調整することで、任意の周波数の電波を吸収するスラグモルタルの設計手法を見出した。

  • 井上 陽太郎, 松永 久宏, 髙橋 克則
    2019 年 73 巻 1 号 p. 133-140
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    骨材に製鋼スラグ、主な結合材に高炉スラグ微粉末を用い、鉄筋を埋設した鉄鋼スラグ水和固化体を干満帯に曝露させ約10年後に評価した。圧縮強度は平均で30.5N/mm2であり標準養生28日より約1.5倍に上昇した。表面から深くなるほど小径側の細孔が多かった。平均中性化深さは2.0~2.2mmであり中性化速度係数は海域に曝露させたコンクリート以下であった。見掛けの塩分拡散係数は0.052~0.060cm2/年であり高炉セメントコンクリート以下であった。埋設鉄筋の腐食度は0.174mddと小さかった。結合材中の高炉スラグ微粉末比率が高いことが、長期の強度増進や耐海水特性に影響したと推察される。コンクリートと同様にフリーデル氏塩の生成とSO3の内部への濃縮現象を確認した。

  • 島崎 大樹, 森 泰一郎, 笹川 幸男, 坂井 悦郎
    2019 年 73 巻 1 号 p. 141-147
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    アルミン酸カルシウムを主成分とするアルミナセメントは、ポルトランドセメントに比べて早強性、耐火性、そして化学抵抗性に優れている。一方で養生温度により水和物のコンバージョンが起こり強度低下することが指摘されている。本研究では材齢50年が経過したアルミナセメントコンクリートのブロックからコア供試体を採取して、その特性を調査した。アルミナセメント単味のコンクリートとフライアッシュを混和したコンクリートを比較すると、後者のほうが経時による強度低下が抑えられていた。フライアッシュを混和することで安定なストラトリンジャイトが生成し、コンバージョンが抑制されたものと考えられる。

コンクリートの試験・評価
  • 沢木 大介
    2019 年 73 巻 1 号 p. 148-154
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    外壁タイルの接着用モルタルに、ドライアウトを防ぐための吸水調整材が塗布されているか否かを、TG-MSにより判定する方法を検討した。エチレン/酢酸ビニル(EVA)系およびアクリル/スチレン(ASt)系の吸水調整材各1銘柄についてTG-MS測定を行い、それらの熱分解挙動を把握した。熱分解によりEVA系ではm/zが60の酢酸が、ASt系ではm/zが104のスチレンが発生し、それらがそれぞれを特徴づける物質であることが判明した。各吸水調整材を所定の割合で塗布したモルタルの表層についてTG-MS測定を実施した結果、ASt系では単独での測定と同様にスチレンが発生するが、EVA系では酢酸に加えアセトンが発生し、これらがそれぞれの吸水調整材の存在を立証することを明らかにした。

  • 金森 藏司, 関 俊力, 瀬古 繁喜, 山田 和夫
    2019 年 73 巻 1 号 p. 155-162
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、コンクリート造建築物の経年劣化を評価対象とした空中超音波法の適用性を確認するための基礎的研究として、経年劣化の原因となるひび割れおよび鉄筋・PC鋼棒の腐食劣化に影響するコンクリート充填不良部の探査精度について実験的検討を行った。その結果、空中超音波法を適用することによってコンクリート表面に投影されるひび割れの投影面積、鉄筋周りの幅4.5mm以上の充填不良部およびシース管位置の評価は可能であるが、ひび割れの角度、鉄筋位置およびシース管内部のグラウト充填不良部を評価することは、内部探査に用いる評価指標に関わらず困難であること、などが明らかとなった。

  • 武田 昌也, 齋藤 俊克, 出村 克宣
    2019 年 73 巻 1 号 p. 163-169
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では水セメント比22.5~30.0%のセメントモルタルを結合材とし、静弾性係数の異なる硬質砂岩及び石灰岩を粗骨材として用い、目標空隙率10~30%のポーラスコンクリートを1d湿空養生後、27、55又は83d水中養生して製造し、その圧縮強度及び静弾性係数を明らかにした上で、ポーラスコンクリートの静弾性係数推定への日本建築学会(AIJ)New RC式の適用性について検討している。その結果、本研究で製造したポーラスコンクリートにおいては、各材齢において同一の圧縮強度とした場合、長期材齢における静弾性係数が若干大きくなる傾向にあるものの、ポーラスコンクリートの静弾性係数推定式としてAIJ-New RC式が適用できるものと推察される。

  • 伊藤 慎也, 保利 彰宏, 中村 絢也, 伊代田 岳史
    2019 年 73 巻 1 号 p. 170-175
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    塩素固定化材および膨張材を添加したコンクリートに関し、物理的特性および塩分浸透挙動について検証を行った。塩素固定化材および膨張材を添加したコンクリートは、無混和の場合と比較して力学的性質に影響を及ぼさないことを確認した。また、塩化物イオンの浸透挙動として、濃度勾配を駆動力とする浸せき法においては塩素固定化材の添加により塩化物イオンの浸透が抑制されたが、電気を駆動力とする促進試験においては浸透挙動が過大となった。電気泳動法による実効拡散係数から見掛けの拡散係数へ換算する場合、塩素固定化材のようなイオンを化学的に固定化する材料においては、換算係数の設定方法や電気による促進試験評価の妥当性検証が必要であることが示唆された。

  • 榊原 直樹, 冨塚 翔太, 子田 康弘, 岩城 一郎
    2019 年 73 巻 1 号 p. 176-183
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ではフライアッシュⅣ種で管理されるがⅡ種の品質規定も一部満足する未利用の石炭灰を対象に、コンクリート用混和材としてセメントの20%質量を外割り添加したコンクリートの品質・性能評価を行った。その結果、本石炭灰はセメントと細骨材を補間する粉体としてワーカビリティーを阻害せず、コンクリートの空気連行性を確保できることが確認された。この結果を踏まえ、生コンの実用化に向け、使用する石炭灰の品質範囲を提案した。さらに、実際の場所打ちPC床版への適用性の検討を行った。フレッシュ性状と硬化性状を満足し、十分な塩分浸透抵抗性とアルカリシリカ反応抵抗性を有するコンクリートが製造可能なことを示した。

  • 飯塚 豊, 岡野 素之, 森田 俊哉
    2019 年 73 巻 1 号 p. 184-191
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    プレキャスト部材同士の接合の合理化を目的とした拘束型重ね継手を提案し、重ね長さとスパイラル鉄筋のピッチ(補強筋比)に着目し、継手単体の引張試験を行った。そして接合部にこの拘束型重ね継手を用いた部材の曲げ実験とせん断実験を行った。その結果、主鉄筋径がD25シリーズでは、主鉄筋の重ね長さを主鉄筋径の9倍、主鉄筋径がD13シリーズでは8倍とし、スパイラル鉄筋の補強筋比を6.2%とすることで、SD345の鉄筋継手としての性能を発揮することがわかった。また、この継手を用いて接合した分割型試験体は、一体型試験体と同程度の曲げ性能およびせん断性能を有することがわかった。

コンクリートの物性
  • 酒井 雄也, 上原 真一
    2019 年 73 巻 1 号 p. 192-199
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、拘束圧下でのセメントペーストの変形挙動を支配する水和物の理解を目的として検討を実施した。合成水和物と試薬を混合して圧縮成形した試料は、粉砕後に圧縮成形したセメントペーストより小さな応力指数を示した。粉砕したセメントペーストの成形体を観察した結果、成形条件によって100μmを超える水酸化カルシウムの結晶が確認され、成形中の圧力により水酸化カルシウムが接着する可能性が示唆された。セメントペーストの微粉砕やカルシウム分を溶出させた場合にも小さな応力指数を示した。以上の結果から、拘束圧下におけるセメントペーストの変形挙動には水酸化カルシウムが重要な役割を果たしている可能性を指摘した。

  • 芦澤 良一, 溝渕 利明, 泉 宙希
    2019 年 73 巻 1 号 p. 200-207
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    温度応力解析では、クリープの影響はヤング係数に低減係数を乗じた有効ヤング係数による剛性低下として考慮される。しかしながら、この低減係数は、セメント種類やコンクリート配合、温度履歴などによらず同じ値が用いられている。本研究ではコンクリート温度がヤング係数の低減係数に及ぼす影響を評価することを目的とし、温度履歴を要因として一軸拘束試験装置を用いた実験的な検討を行った。その結果、クリープの影響を考慮したヤング係数の低減係数は、温度履歴によって異なる値を示すことが確認された。また、その値は温度上昇速度や最高温度、応力が作用する期間と相関性が高いことを確認した。

  • 吉本 慎吾, 新見 龍男, 加藤 弘義, 関 卓哉
    2019 年 73 巻 1 号 p. 208-213
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    近年、環境問題として地球温暖化が深刻な問題となっており、普通ポルトランドセメントに比べてCO2排出量が少ない高炉セメントの使用推進が求められる。しかしながら、高炉セメントは初期強度発現性が低いことが課題である。本検討では、高炉セメントの初期強度発現性の改善として早強ポルトランドセメントと高炉セメントB種を混合した試製混合セメントの強度性状について検討を行った。その結果、材齢28日の圧縮強度が普通ポルトランドセメントと同程度となる水セメント比において、高炉セメントB種の混合率が70%未満であれば普通ポルトランドセメントと同程度以上の材齢1日強度を確保可能であり、CO2削減効果についても試算された。

  • 橋本 涼太, 尾上 幸造
    2019 年 73 巻 1 号 p. 214-221
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、高炉スラグ細骨材(BFS)がその潜在水硬性によりコンクリートのひび割れ修復に寄与するかどうかを検証することを目的として、曲げひび割れを導入したBFSモルタルと普通モルタルを対象に、水中および飽和水酸化カルシウム水溶液中での再養生、通水試験、およびひび割れ内部の顕微鏡観察を実施した。その結果、BFSモルタルを飽和水酸化カルシウム水溶液中で再養生した場合、ひび割れからの通水量が普通モルタルに比べて著しく低下し、また、ひび割れ内部には水和物の存在が確認され、BFSがコンクリートのひび割れに対して修復効果を有する可能性が示された。

  • 本田 和也, 中上 明久, 上原 伸郎, 橋場 正明
    2019 年 73 巻 1 号 p. 222-228
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    プレキャストコンクリート製品間の明度差を小さくし、明度が安定した製品を製造する手段を検討することを目的に、製造時の脱型時積算温度と保管時の暴露環境が明度に及ぼす影響を確認した。その結果、プレキャストコンクリート製品の明度は保管時の暴露環境の影響を受けるが、脱型時積算温度が600℃・hを超える蒸気養生を施すことによって、コンクリート配合や保管時の暴露環境によらず表面の明度が安定したプレキャストコンクリート製品の製造が可能になることを確認した。

耐久性
  • 大嶋 俊一, 大溝 尚英, 宮里 心一, 黒岩 大地
    2019 年 73 巻 1 号 p. 229-236
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    けい酸塩系表面含浸材の塗布が硫酸劣化に及ぼす影響について検討することを目的に、2種類のけい酸塩系表面含浸材を塗布したモルタル試験体を用いて、硫酸劣化後の透水抑制効果や中性化深さ、硫酸イオン侵入量、表層のビッカース硬さ測定を行った。けい酸ナトリウム系表面含浸材を塗布した場合、硫酸劣化後の表層に難溶性化学種が残存することにより表層の多孔化が抑制され、透水量や酸による中性化深さ、硫酸イオン侵入量が抑制されることが示唆された。その結果、硫酸劣化後においても表面含浸材の改質効果は得られることが示唆された。

  • 井形 友彦, 村上 聖, 武田 浩二, 松田 学
    2019 年 73 巻 1 号 p. 237-243
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は耐硫酸性に優れるプレキャスト部材用調合の開発を目的に、結合材や骨材の種類、材料の組合せ、混和材の置換率、砂結合材比および水結合材比を実験要因とし、モルタル試験体による硫酸浸漬試験を行った。結果、耐硫酸性には結合材に比し細骨材の与える影響が大きく、ごみ溶融スラグ、石灰石砕砂および高炉スラグ細骨材は内部への硫酸の浸透を抑制した。また、水結合材比が耐硫酸性に与える影響は、細骨材に洗浄海砂および石灰石砕砂使用調合では水結合材比が小さいほど表層部が剥落し内部への硫酸の浸透が進行したが、高炉スラグ細骨材使用調合では表層に緻密な膜が形成され、水結合材比が小さいほど内部への硫酸の浸透が抑制された。

  • 田中舘 悠登, 羽原 俊祐
    2019 年 73 巻 1 号 p. 244-250
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    凍結防止剤溶液の凍結と融解過程がスケーリングに及ぼす影響を明らかにするため、種々の凍結防止剤溶液の凝固点以下-30~-5℃において、様々な温度範囲で降温と昇温を繰り返し行った。凍結防止剤の種類によってスケーリングが起こる温度域が異なる結果となった。全ての凍結防止剤溶液において、スケーリングが起こる温度域は凝固点と共晶点の間であり、純氷と高濃度の凍結防止剤溶液が混在する状態である。一方、凍結防止剤の結晶と純氷の2成分の固体状態である共晶点以下では、スケーリングは起こらなかった。温度変化に伴い凍結防止剤溶液の一部分において凍結と融解が起こることにより、スケーリングが起こると考えられる。

  • 宮薗 雅裕, 岸 利治
    2019 年 73 巻 1 号 p. 251-258
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    乾湿繰返しがコンクリートの空隙構造と凍結融解抵抗性に及ぼす影響について検討した。その結果、早強ポルトランドセメントのみを使用した供試体に乾湿繰返しを与えた場合、乾湿繰返し回数に従い毛細管空隙中の連続性の高い箇所が増加し、凍結融解試験実施時に供試体のスケーリングによる質量減少を確認した。一方、混和材を併用した場合、または供試体に強制炭酸化を与えた場合は、乾湿繰返しを与えた場合においても、空隙構造の変化は早強ポルトランドセメントのみを使用した供試体よりも少なく、凍結融解試験実施時のスケーリングによる質量減少が抑制されることを確認した。

  • 井形 友彦, 浦野 登志雄, 松田 学, 村上 聖
    2019 年 73 巻 1 号 p. 259-265
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    著者らは既報の研究において、フライアッシュまたは高炉スラグ微粉末をそれぞれ混和材として用いた調合が、普通ポルトランドセメント単味の調合に比し塩分浸透抵抗性を向上させることを明らかにした。本報では耐塩害性能の更なる向上を目的とし、コンクリートの高強度化・高耐久化に期待される特殊無機微粉末を既報の調合に併用し、塩分浸透抵抗性を比較評価した。その結果、特殊無機微粉末の使用により塩分の固定化が促進され、塩化物イオンの見掛けの拡散係数が低下し、特殊無機微粉末による耐塩害性能の向上が認められた。

  • 齊藤 雅仁, 澤本 武博, 舌間 孝一郎, 樋口 正典
    2019 年 73 巻 1 号 p. 266-271
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では普通ポルトランドセメント(N)および高炉セメントB種(BB)を用いたコンクリート柱部材を作製し、呼び強度、脱型時期および養生方法を変化させた場合の透気係数、含水率、圧縮強度、反発度および音速の関係について検討した。その結果、コンクリートの透気係数を小さくするためには、圧縮強度を大きくするよりも養生を的確に行うことが効果的であった。また、透気係数は圧縮強度および反発度と明確な相関性は見受けられなかったが、含水率およびコンクリート表層部の音速が大きくなるほど透気係数は小さくなる傾向にあった。

  • 井上 真澄, 崔 希燮, 広野 邦彦, 杦本 正信
    2019 年 73 巻 1 号 p. 272-278
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    Al-Mg合金溶射を施した鉄筋のコンクリート用補強材としての適用可能性を明らかにするため、Al-Mg合金溶射鉄筋のコンクリート中における耐食性とともに、コンクリートとの付着特性について実験的検討を行った。その結果、Al-Mg合金溶射鉄筋のコンクリート中での耐食性は封孔剤の種類や塗布量に依存し、耐アルカリ性を有するエポキシ樹脂系封孔剤を所定量塗布することで高濃度の塩分環境下においても良好な耐食性が得られることを確認した。また、鉄筋の引抜き試験より同エポキシ樹脂系封孔剤を施したAl-Mg合金溶射鉄筋はコンクリートと良好な付着性を有することを確認した。

  • 黒田 一郎, 堀口 俊行
    2019 年 73 巻 1 号 p. 279-286
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    水流に混入した礫の衝突によってダムや砂防ダムのコンクリートの表面が損傷し維持管理上の問題となる。この現象を解明するためにこれまでに繰り返し衝突実験が行われてきたが、既往の研究では球形の鋼製重錘が使用されていて礫の形状が考慮されてこなかった。そこで本研究では、隅角を有する鋼製重錘を使用した繰り返し衝突実験を実施して、重錘形状の違いが表面損傷に与える影響について検討し、重錘が隅角を有することによって重錘の運動エネルギー当たりの損失体積が増加する割合を評価した。

  • 岸田 政彦, 前田 拓海, 岩城 一郎, 岸 利治
    2019 年 73 巻 1 号 p. 287-294
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    軽量コンクリート2種を用いた道路橋床版の寒冷地への適用性を検討するために、粗骨材、細骨材ともに軽量骨材とし、W/Bが37%と25.5%の配合に対して凍結融解試験を実施した。その結果、軽量コンクリート2種では空気量の増加による耐凍害性の改善は認められず、W/Bが37%の場合には軽量粗骨材と軽量細骨材の含水率を下げ、凍結に伴う膨張圧を抑制することで耐凍害性が改善することを確認した。一方W/Bが25.5%の場合には、水分を含む通常の軽量細骨材を用いても軽量粗骨材が低含水状態であれば、軽量細骨材中の水分が自己乾燥状態にあるペースト部に供給されることで軽量細骨材の含水率が低下し、耐凍害性が改善することを明らかにした。

  • 木内 彬喬, 阿部 忠, 澤野 利章
    2019 年 73 巻 1 号 p. 295-302
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、伸縮継手を通過する際に発生する荷重変動がRC床版に及ぼす衝撃係数に関する実験研究である。実験ではRC床版に一定荷重および荷重変動による疲労実験を行い、耐疲労性および実験衝撃係数を評価した。その結果、一定荷重に対して荷重変動±20%、±30%が作用した場合、それぞれ寿命が60%、90%低下する結果が得られた。また、実験衝撃係数においても道路橋示方書・同解説に規定する衝撃係数を上回る結果が得られた。よって伸縮継手通過付近のRC床版の曲げ剛性を高め、たわみの抑制を図るか、床版に要求される疲労寿命に応じた伸縮継手の段差量以下となるように維持管理する必要があると考えられる。

  • 岸良 竜, 前島 拓, 子田 康弘, 岩城 一郎
    2019 年 73 巻 1 号 p. 303-310
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、実環境下の道路橋RC床版におけるアルカリシリカ反応(ASR)による劣化性状について実験的に明らかにしたものである。鋼主桁上に実物大RC床版を架設し屋外暴露することで実橋における環境作用と主桁による拘束を再現し、長期的に各種計測を実施した。その結果、実環境ではASRの温度依存性により膨張量は周期的変動を有し、劣化の進行に伴い膨張開始温度が低下する傾向を示した。また、偏光顕微鏡観察およびSEM-EDS分析によりASRゲルの発生状況およびその組成を確認した。さらに、ASRの劣化程度を評価するうえで各種非破壊試験が有効であることを明らかとした。

繊維補強コンクリート
  • 森島 慎太郎, 山口 信, 渋谷 颯志郎, 兼安 真司
    2019 年 73 巻 1 号 p. 311-317
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    スラリー充填繊維コンクリート(SIFCON)の更なる高性能化の可能性について調べるため、繊維種類を鋼繊維5種類、合成繊維4種類で変化させ、その違いがSIFCONの基礎的力学特性に及ぼす影響について検討した。その結果、鋼繊維を用いたSIFCONでは、繊維が長く、尚且つ繊維体積率が大きいものほど曲げ強度・靭性が増大し、特に片側のフックに4箇所の曲げ加工が施された両端フック付き鋼繊維(径×長さ:0.9×60mm)を用いた場合に70MPaを超える高い曲げ強度が確認された。また、SIFCONの曲げ特性に及ぼす端部フック形状の影響は上記2因子に比して小さいこと、合成繊維を用いたSIFCONは比較的大変形に至るまで曲げ耐力が増大すること等も確認された。

  • 村上 聖, 武田 浩二, 佐藤 あゆみ, 浦野 登志雄
    2019 年 73 巻 1 号 p. 318-324
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では鋼繊維補強RC梁部材の終局曲げ強度算定を目的に、SFRCの引張軟化曲線の寸法効果を考慮した断面引張応力分布の等価ストレスブロック置換法を提案し、梁試験体の曲げ載荷試験結果より本手法の適用妥当性について検討を行った。その結果として、鋼繊維補強RC梁試験体の終局曲げ強度の実験結果と本手法による計算結果との間に良い対応が得られることが確認された。

補修・補強
環境・リサイクル
  • 井川 義貴, 斎藤 豪, 鈴木 一帆, 細川 佳史
    2019 年 73 巻 1 号 p. 363-370
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    再生利用可能なセメントの実現に向け、高活性β-C2Sとその水和により生成する高CaO/SiO2モル比(以下CaO/SiO2モル比をC/S比と記す)の非晶質C-S-Hに関して検討している。本稿では既報で示された高活性β-C2Sが従来と異なる水和性状を示し、かつ非常に高い比表面積を持つ点に着目し、錯体重合法によりβ-C2S前駆体を作製して、その焼成により原子レベルの均一性と高比表面積を有するβ-C2Sの合成を行い、水和性状を評価した。その結果、出発C/S比を1.0としても焼成により高比表面積のβ-C2Sが生成し、その水和によりCa(OH)2(以下CH)を伴わずに高C/S比の非晶質C-S-Hが生成したことで、コンクリートにおける再生システムの可能性を示した。また条件によっては、ほぼ単相で高比表面積のβ-C2Sが生成し、水和後は高C/S比の非晶質C-S-Hのみが生成した。

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