セメント・コンクリート論文集
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セメント化学
セメント硬化体・モルタルの物性
  • 安達 丈, 茶林 敬司, 新 大軌
    2025 年78 巻1 号 p. 111-118
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    低温焼成型組成クリンカーを用いて試製したセメント(LTC)の初期強度発現性と水和反応に及ぼすトリイソプロパノールアミン(TIPA)の影響について、普通ポルトランドセメント(OPC)組成を使用した場合と比較して検討した。LTCにTIPAを添加することで、材齢3日以降の強度発現性が向上し、石灰石微粉末を混合した場合はOPCを用いた場合と比較して、材齢28日の強度発現性が特に良好となる結果を得た。水和解析の結果から、TIPA添加による強度増進効果はフェライト相の反応性が向上したことが一要因であると示唆された。また間隙相の水和によって生成するカルシウムアルミネート水和物の種類の違いが強度発現に影響を及ぼすことが示唆された。

  • 須田 裕哉, 金城 雄大, 野中 栄太郎, 平良 莉久
    2025 年78 巻1 号 p. 119-127
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、コンクリートの炭酸化における体積変化機構を明らかにすることを目的に、水セメント比の異なるセメントペーストを用いて、相対湿度4条件の下で炭酸化収縮ひずみを取得し、C-S-Hの炭酸化による構造変化との関係を評価した。その結果、炭酸化収縮ひずみは炭酸化期間の進行とともに経時的に増加し、同一のCO2固定量の場合では炭酸化時の相対湿度が低いほど炭酸化収縮ひずみは増加した。FT-IRにより測定されたSi-O伸縮振動領域の波数の変化との対応関係から、相対湿度に依存した収縮ひずみの変化はC-S-Hの炭酸化によるものであることが示された。また、シリカゲルの生成量と炭酸化収縮ひずみの関係からC-S-Hの脱灰と分解は同時に進行する可能性が示された。

  • 小山 拓, 小澤 満津雄, 兼松 学
    2025 年78 巻1 号 p. 128-136
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究はコンクリートの高温環境下における機械特性についての理解を深めるため、セメントペーストの高温環境下における変形挙動を把握することを目的とした。セメントペーストの水結合材比はW/C=50%、W/C=30%、W/B=18%の3水準とし、W/B=18%のセメントペーストはセメントに対して質量比10%の割合でシリカフュームを添加した。結果、高温環境下におけるセメントペーストの水和物脱水に伴う変形挙動を明らかにした。W/B18%とW/C30%のセメントペーストは100℃近傍で膨張挙動から収縮挙動へ転じた。さらに、セメントペーストの熱膨張係数の温度依存性を確認し、水和物の脱水により4段階に変動することが明らかになった。

  • 井上 真澄, 崔 希燮, 吉岡 憲一, 須藤 裕司
    2025 年78 巻1 号 p. 137-143
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    原料コストは高いものの凝固点降下作用に優れる亜硝酸リチウムと、原料コストが安価でセメントの水和反応の促進に優れる亜硝酸カルシウムを混合使用することにより、氷点下環境での耐寒性と汎用性を併せ持つ耐寒剤の開発を目的としている。本研究では、亜硝酸リチウムと亜硝酸カルシウムをそれぞれ単独および混合使用したセメントペーストの流動性や、練混ぜ直後から氷点下環境で養生した場合の強度発現性について実験的検討を行った。その結果、NO2量の配合比として亜硝酸リチウムを50%以上添加することによりセメントペーストの流動性を保持できるとともに、練混ぜ直後から-5℃の氷点下環境で養生しても良好な強度発現性を示すことを確認した。

  • LE THITHIENLY, 久我 龍一郎, 兵頭 彦次
    2025 年78 巻1 号 p. 144-151
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、産地の異なる15種類の岩石粉末を普通ポルトランドセメントに置換し、セメントペーストあるいはモルタルの流動性、凝結、強度発現性、ASR抑制効果を評価することにより、セメント用混合材として利用可能か否かを評価した。その結果、全ての岩石粉末はフライアッシュセメント(JIS R 5213)の凝結時間を満足した。Zeolite系の一部、andesite、granite、porphyrite、tuff、sandstone、shale、limestone、crystalline limestoneはコンクリート用フライアッシュのフロー値比および活性度指数(JIS R 6201)の範囲内であった。岩石粉末のBET比表面積が大きいほど流動性は低下し、凝結の標準軟度水量は高くなった。活性度指数やR3試験(ASTM C 1897)による反応性が高い岩石粉末は、概ねASR抑制効果が高くなった。

  • 市川 大貴, 丸山 一平, 伊神 竜生, 五十嵐 豪
    2025 年78 巻1 号 p. 152-160
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、セメント硬化体への海水及び塩分浸透に伴う膨張挙動を理解するために、乾燥させたセメント硬化体を精製水または塩化物水溶液に浸漬させ、吸液に伴う円盤状試験体の膨張量の測定、プロトン核磁気共鳴法を用いた空隙構造変化の分析、粉末X線回折法を用いた鉱物組成変化の分析を行った。その結果、塩化物水溶液の浸漬によって試験体に生じた膨張挙動は、鉱物組成変化によるものではなく、乾燥によって変質したケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)の空隙構造への水分供給に伴い、C-S-Hが膨潤する挙動に起因していることが確認された。塩化物の種類によっては、C-S-H空隙構造中のゲル空隙の空隙径が徐々に増加する長期的な膨潤が生じたことが確認された。

  • 寺田 千穂, 相澤 一裕, 樋口 隆行, 坂井 悦郎
    2025 年78 巻1 号 p. 161-168
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    カルシウムサルフォアルミネート系凝結促進材(ACF)とポリカルボン酸系分散剤(PC)を添加したモルタルの5℃環境下での流動性、ブリーディング率や凝結時間についてPC無添加の場合と比較検討した。PCを添加した場合、ACF添加後60分まではACF無添加と同等の流動性を確保でき、またPCの有無に寄らずACF添加量に応じてブリーディングの低減や凝結時間の短縮が確認された。液相分析の結果から、流動性保持の要因は、ACFを添加しても所定のPC吸着量を確保できている事が寄与していると推察した。また水和反応解析の結果、ACF添加によるエトリンガイトなどの水和物の増加が、凝結促進効果やブリーディング抑制効果に寄与していると考察した。

  • 小林 和揮, 扇 嘉史, 細川 佳史
    2025 年78 巻1 号 p. 169-177
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    高炉セメントB種と石灰石・焼成粘土セメントを対象にメチルジエタノールアミン(MDEA)による中性化の抑制効果について検討を行った。その結果、中性化抑制効果は高炉セメントB種と石灰石・焼成粘土セメントの両方で確認され、MDEAの添加量が多くなるほどその効果が大きかった。MDEAの添加によって、C4AFの水和が促進したこと、および直径150nm以上の細孔量が減少したことが確認されたため、中性化抑制メカニズムとしてMDEAがセメントの水和を促進し、モルタルの空隙構造を変化させたことが考えられた。

  • 木角 有希, 久保 善司, 小黒 拓郎
    2025 年78 巻1 号 p. 178-186
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    セメント、モルタル、およびコンクリート系材料に関するACインピーダンス法を適用した研究は古くから行われきた。その適用において等価回路モデルの重要性は高く、これまで多くのモデルが提案されている。本研究では、時定数の異なる多数の電気抵抗と静電容量の並列回路からなる等価回路を用いて、含水量変化に伴うモルタルセンサのACインピーダンス特性について検討した。その結果、多並列等価回路ではパラメータは多くなるものの、含水量が変化した場合にも有限個の並列回路によって近似でき、変化しない時定数が多く存在することが明らかとなった。パラメータと細孔構造の関係については更なる検討により明らかにする必要がある。

コンクリートの試験・評価
  • 新杉 匡史, 桜井 邦昭, 西澤 彩, 河合 研至
    2025 年78 巻1 号 p. 187-195
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    全有機体炭素計(TOC)を用いたセメント系材料中のCO2固定量の測定方法の確立に向けて基礎的な検討を行った。また、モノカーボネートを含むセメント水和物を模擬したカルシウム化合物中のCO2固定量を示差熱分析(TG-DTA法)とTOC法で測定し、その測定値を比較した。その結果、TOC法により精度の良い測定値を得るには、試料の粒度を150μm以下、試料への純水滴下量を4mL/g以上とする必要があること、セメント水和物を模擬したカルシウム化合物中のCO2固定量は、TOC法では概ね精度良く測定できるが、TG-DTA法では理論値との誤差が大きくなることを示した。

  • 山田 宏, 若杉 三紀夫, 神田 利之, 阿久根 航
    2025 年78 巻1 号 p. 196-202
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度をオンサイトで把握する、銀塩化銀電極を用いた簡易塩分センサによる塩分測定技術を応用して、フレッシュコンクリート中の塩化物イオン量の簡易測定について検討した。ひとつの簡易な測定法で、製造から維持管理段階のコンクリートの塩分測定技術の確立に寄与することを目的に、塩化物イオンを定量するための簡易塩分センサの検量線の拡張およびその検量線に対するモルタルを用いた検証実験を行った。フレッシュコンクリートが流通する5~35℃の環境条件に適用できる簡易線分センサの検量線を再構築し、その検量線によって、フレッシュモルタル中の塩化物イオン量を概ね正確に把握できることを示した。

  • 坂野 公祐, 五十嵐 心一
    2025 年78 巻1 号 p. 203-211
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    ふるい分け試験結果とコンクリート断面画像から、骨材の表面積と骨材粒子表面間距離および骨材‐セメントペースト近接性を評価した。コンクリート中では微細な骨材粒子数が全骨材粒子数の大部分を占め、遷移帯の起点となる骨材表面密度は微細な粒子で決定される。また、実測された骨材表面密度に基づくと、骨材表面からセメント粒子寸法程度の距離内にあるセメントペースト体積率は小さく、骨材粒子表面間の平均距離はセメント粒子よりもかなり大きい。よって、セメントペースト中の多孔質領域の形成は、遷移帯の連結と考えるよりも、微細な骨材およびセメント粒子のランダムな空間分布により、骨材界面に限らずにマトリックス中に分散して存在する統計的事象とみなすべきである。

  • 遠藤 大樹, 安久 憲一, 泉尾 英文, 上野 敦
    2025 年78 巻1 号 p. 212-220
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    コンクリート舗装のすべり抵抗性に影響を及ぼすマイクロテクスチャ(波長0.5mm未満)を対象に、路面のすべり抵抗性に影響する波長について検討した。取得した路面波形に対してフーリエ変換を行い、波長毎の振幅と波数を利用してタイヤと接触する割合を示す線長増加割合を検討した結果、すべり抵抗性に寄与する波長領域は0.1mm以下である可能性が高いことが示された。また、粒径0.1mm程度の硬質砂を添加することで、すべり抵抗性とテクスチャの持続性が向上し、供用中のマクロテクスチャ消失後には波長0.1mm以下のマイクロテクスチャの存在が重要であることが示された。

  • 木原 祥哉, 福田 泰樹, 寺澤 広基, 鎌田 敏郎
    2025 年78 巻1 号 p. 221-228
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、電磁パルス法によるRC床版の水平ひび割れ検出において、弾性波の伝播時間に着目した評価手法の検討を行った。具体的には、RC床版の表面に複数の弾性波受信点を設定し、床版内部の鉄筋を電磁的に加振した場合の水平ひび割れの有無による弾性波伝播時間の違いを供試体実験により確認した。その結果、従来の手法で用いられてきた振動応答の大きさに基づく評価では検出が難しい水平ひび割れを、弾性波伝播時間の違いに着目することで評価できる可能性が示された。

コンクリートの物性
  • 久保田 雅也, 斎藤 豪, 北川 遥喬, 神村 幸弥
    2025 年78 巻1 号 p. 229-236
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、煆焼アロフェンを用いたセメント系材料中で生成することが確認されたストラトリンガイトの炭酸化挙動を把握することを目的とした。具体的には、促進炭酸化した合成ストラトリンガイトの結晶構造の変化や炭酸塩の生成量、分子の結合状態を各種分析により検討した。その結果、炭酸化によりバテライトが生成し、結晶性の低下には二重四面体層の乱れが関係することが示唆された。また炭酸化により結晶構造中の結合水が離脱することで、結晶構造内の空隙に水が供給されることが示された。

  • 髙木 亮一, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦
    2025 年78 巻1 号 p. 237-244
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、バイオマス灰を用いたコンクリートの諸物性として、フレッシュ性状や圧縮強度に及ぼす影響を明らかにするための検討を実施した。その結果、コンクリートにバイオマス灰を100kg/m3まで用いた場合、経時変化を含めてフレッシュ性状に及ぼす影響は少なかった。バイオマス灰はフライアッシュよりもコンクリートの強度増進に寄与し、非架橋酸素および四面体イオンの比であるNBO/Tの高いバイオマス灰を用いた方が、セメント有効係数kは高くなる傾向を確認した。また、バイオマス灰をセメント置換として用いることで、使用するセメント量を少なくすることが可能となり、CO2排出量が削減できることが確認できた。

耐久性
  • 東條 真士, 佐藤 正己, 小泉 公志郎, 梅村 靖弘
    2025 年78 巻1 号 p. 245-253
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    火山ガラス微粉末(VGP)またはシリカフューム(SF)をセメントの内割り10%置換した硬化体の塩化物イオン浸透抵抗性を無混和と比較した結果、浸透深さは低減した。この要因を細孔構造とケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)、アルミン酸カルシウム水和物(C-A-H)に着目し検討した結果、VGPはSFと同様に、無混和と比較してゲル空隙が増加し、毛細管空隙の屈曲度が高くなったことが一因と考えられた。さらに、VGPを混和した場合、生成したC-S-HのSiとAlが置換しC-A-S-HへシフトしてClが吸着したことやフリーデル氏塩の生成によりClが吸着したことも一因であることが明らかになった。

  • 豊田 颯太, 崎原 康平, 笠原 巧, 高田 聡
    2025 年78 巻1 号 p. 254-262
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、雨掛かりを考慮した柱部材に付着する塩分を定量的に評価することを目的に、沿岸域における鉄筋コンクリート構造物の各柱部材の飛来塩分測定および感水紙を用いた雨掛かり試験を行った。また、鉄筋コンクリート構造物の雨掛かりおよび周辺の風況や地形を考慮した飛来塩分粒子の拡散・付着解析を実施し、雨掛かりを考慮した各柱面における付着塩分を定式化し、得られた解析結果と暴露試験結果を比較・検討した。その結果、解析結果は概ね暴露試験結果の傾向を捉えることができた。また、飛来塩分粒子数が変化しても解析結果に影響を殆ど与えないこと、解析に用いた風速場の最小格子間隔を小さくすると解析が安定することが確認された。

  • 西 陸登, 齋藤 俊克, 出村 克宣
    2025 年78 巻1 号 p. 263-271
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、吸水調整材塗布による下地処理後ポリマーセメントモルタル(PCM)で被覆したコンクリートについての下地処理条件や被覆条件を変化させて促進中性化試験を行った研究成果をもとに、基材コンクリートの中性化に対する抵抗性に及ぼす影響因子としての吸水調整材の塗布量、PCMの被覆厚さ並びにポリマーセメント比の影響を整理することによって、PCMを被覆した基材コンクリートの見掛けの中性化速度係数算定式を提案している。更に、コンクリートの中性化速度に関する一般式を用いて促進中性化試験期間と屋外暴露期間の関係式を導き、PCMを被覆した基材コンクリートの屋外暴露での中性化深さ推定式を提案している。

  • 原 百花, 岩本 泰徳, 新見 龍男, 岩月 栄治
    2025 年78 巻1 号 p. 272-278
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    アルカリシリカ反応の抑制対策として、アルカリ総量の抑制、混合セメントの使用、非反応骨材の使用が規定されているが、現在においても新たな構造物の劣化が報告されている。本研究では、コンクリート練混ぜ時の添加により膨張抑制効果が確認されているプロピオン酸カルシウムについて、膨張後に添加した場合の膨張抑制効果およびアルカリシリカゲルの組成に及ぼす影響について検討した。その結果、プロピオン酸カルシウムをアルカリシリカ反応による膨張後に添加した場合でも膨張抑制効果が確認され、その要因はプロピオン酸カルシウムにより供給されたCa2+がアルカリシリカゲルに取り込まれることで変質し、吸水膨張性が低下するためと推察された。

  • 前田 拓海, 樋口 隆行, 荒木 昭俊, 坂井 悦郎
    2025 年78 巻1 号 p. 279-287
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    蒸気養生を施し、材齢5年まで水中養生したエトリンガイト系の膨張コンクリートについて、蒸気養生温度が寸法安定性に及ぼす影響を調査した。本試験の水結合材比38%の膨張コンクリートでは、蒸気養生温度90℃で遅れ膨張が確認され、80℃以下では遅れ膨張や強度低下は生じなかった。蒸気養生温度80℃以下では硫酸イオンの溶出量が90℃に比べて少なく、蒸気養生温度の適切な制御で、エトリンガイトの分解のリスクを低減できる可能性が示唆された。膨張コンクリートを用いた場合でも、マスコンクリートのひび割れ制御指針で規定されるR2O量やSO3量、蒸気養生温度の範囲内で使用することで、遅れ膨張の危険性が低減できる可能性が高いと考えられる。

  • 吉田 夏樹, 澁井 雄斗
    2025 年78 巻1 号 p. 288-296
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    エトリンガイトの遅延生成(DEF)とアルカリシリカ反応(ASR)は巨視的な劣化現象が類似するため、慎重に識別する必要がある。本研究では、DEFおよびASRを生じたコンクリート試験体のセメントペースト部分をEPMAで分析し、DEFの潜在性を解析した。DEF潜在性を有する場合、C-S-H組成のデータ群はエトリンガイト組成の方向へ伸びるように分布した。反射電子像のうえに可視化すると、データ群の一部はlighter C-S-Hの組織に重なった。試験体がDEF膨張性を失うと、lighter C-S-Hの組成はモノサルフェート組成の方向に分布した。ASRとの複合劣化試験体では、ASR膨張が先に生じ、膨張が収束したのちもDEF潜在性を有している可能性が示唆された。

  • 佐藤 賢之介, 矢永 彩乃, 斉藤 成彦
    2025 年78 巻1 号 p. 297-304
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、DEF膨張の発生に伴うモルタルの塩分浸透性状の変化を明らかにし、塩分浸透によるDEF膨張の促進効果について検討することを目的として、DEF膨張を生じさせたモルタル供試体を濃度の異なるNaCl溶液に浸せきし、膨張量、塩化物イオン浸透性状、硬化体空隙構造を評価した。その結果、DEF膨張が発生した供試体では、膨張していない供試体と比較して塩化物イオンの浸透領域が拡大した。空隙径分布より確認された直径50nm~4μm程度の毛細管空隙の増大は、ひび割れの形成によるものと推察され、これにより塩分の浸透が促進されたと考えられた。

  • 岸本 豪太, 濱井 洋, 安田 正雪, 濱 幸雄
    2025 年78 巻1 号 p. 305-313
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、スランプ管理のコンクリートに増粘剤含有流動化剤をあと添加して製造するスランプフロー(SF)で管理する流動化コンクリートの耐凍害性の向上策の検討を行った。SFで管理する流動化コンクリートの耐凍害性はベースコンクリートより低下し、流動化時にAE剤を添加することで改善されるものの、ベースコンクリートより耐凍害性は劣った。フライアッシュコンクリート用のAE剤(AE-M)やパラフィンエマルジョン(Pa)を使用することで、流動化コンクリートの耐凍害性が向上した。汎用的なAE剤を使用した場合、流動化後に気泡間隔係数が増大した一方、AE-MならびにPaを使用した場合、流動化後の気泡間隔係数が良好であった。

高強度・高流動コンクリート
繊維補強コンクリート
補修・補強
  • 齋藤 俊克, 荒木 裕人, 福井 拓也, 神田 利之
    2025 年78 巻1 号 p. 356-364
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、断面修復工法を想定した施工条件がポリマーセメントモルタル(PCM)の強さ性状に及ぼす影響について検討している。その結果、練混ぜ直後、その後30および60min練置き、またはそれらの時点で練返して成型し、養生したPCMの曲げおよび圧縮強さはこれらの成型条件にほとんど影響されないが、PCMの水湿しした下地に対する接着強さは、練置き時間の長いものほど小さい傾向にある。一方、その接着強さは、プライマーとしての吸水調整材(WACM)塗布後のPCM塗り付けまでの経過時間に伴い低下する傾向にある。更に、PCMの接着強さに及ぼすWACMの指触乾燥状態を得る乾燥条件の影響は、ほとんど認められない。

  • 吉田 亮, 近藤 政晴, 藤 正督
    2025 年78 巻1 号 p. 365-371
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、CO2など鉄筋コンクリートの劣化因子がコンクリート空隙に侵入した際の、ケイ酸ゲルの生成について、試験管内での凝集現象の検証と、セメント硬化体の水分浸透にもたらす影響を検討した。試験管内では、いずれの劣化因子の侵入もケイ酸ゲルを生成させることを確認できた。凝集メカニズムは溶媒中のpH低下、電解質の増加によるゼータ電位の増加に起因する。また、CO2によりケイ酸ゲルを生成させたモルタル硬化体の水分浸透深さは、無施工の硬化体より77%程度低下する結果が示された。ゲルを非乾燥で捉える低温DSCを用いることで、空隙中のケイ酸ゲルがセメントペースト硬化体の水分浸透を抑制していることが示された。

  • 岡 滋晃, 篠口 冴子, 渡辺 ともみ, 宮里 心一
    2025 年78 巻1 号 p. 372-380
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    湾岸付近に建設された地中送電用のRCシールドトンネルにおいて、トンネル内への漏水による塩害が発生する懸念がある。その防錆方法の1つとして、防錆剤混入ジェルの適用を試みている。しかし、本防錆剤混入ジェルにはW/C55%程度のコンクリートを想定しているため、W/C35%程度の緻密なセグメントコンクリートに防錆剤を浸透させづらい。そこで、本研究では、低W/Cのコンクリートにも防錆剤を浸透可能な防錆剤混入ジェルの開発を志向した。浸透実験の結果、新たな防錆剤混入ジェルの増粘剤には吸水性高分子系が適切と考えられ、その塗布厚さは3mmを超える厚さは不要であること等がわかった。

環境・リサイクル
  • 月舘 秀典, 中村 充志, 川之上 太志, 一坪 幸輝
    2025 年78 巻1 号 p. 381-388
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
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    セメント製造工程におけるCO2削減技術開発の一環として、アミン系吸収液によるCO2分離回収技術の課題であるCO2回収エネルギーの低減を実現可能な運転条件の選定を目的に実証設備(CO2回収量:10t-CO2/d)を用いた実証試験を実施した。その結果、セメントキルン排ガスのCO2濃度を上げる、液ガス比を下げる操作が有効と判明した。この2つの操作を行うとCO2を吸収した直後のアミン系吸収液に含まれるCO2量が増えることから、CO2含有量の増減が省エネルギー化の指標になることがわかった。この操作により、本試験に用いた実証設備では最大11%の省エネルギー化が確認された。

  • 吉田 夏樹, 高塚 稜, 新 大軌, 池尾 陽作
    2025 年78 巻1 号 p. 389-397
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    再生微粉を強制炭酸化させてコンクリートへ再利用するためには、炭酸化生成物の物理的および化学的特性や、化学的な経時変化を把握しておく必要がある。本研究では、半乾式炭酸化を行ったセメントペースト微粉を試料とし、高湿度環境下およびセメントペーストに混和した環境下において化学的な経時変化を捉えた。炭酸化試料を高湿度環境下に7日間静置しても、試料中のバテライトは安定なアラゴナイトやカルサイトに変化せず、固定CO2量にも顕著な減少は認められなかった。一方で、炭酸化試料をセメントに混和して水で練り混ぜると、試料中の多くのバテライトは1日後にはカルサイトに変化した。ただし、固定CO2量に顕著な減少は認められなかった。

  • 横川 勇輝, 横関 康祐, 取違 剛
    2025 年78 巻1 号 p. 398-406
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    近年、炭酸化コンクリートが注目されており、多くの研究が行われている。炭酸化コンクリートの分析を行う際、一般的には試料を絶乾状態にするため、液相の分析が行われていない。液相中では、CO2がイオン化し、固定されていない炭酸イオンが残存していることが予想される。そこで、本研究では、炭酸化ペーストの溶解試験を行い、液相および固相の分析を行った。固相の炭酸化領域では、液固比の増加に伴いCalciteが溶出したが、pH=12ではCalcite、pH=9ではVateriteが沈殿した。液相分析を行った結果、固相および液相から炭酸イオンが溶出し、最大で7kg/m3のCO2が溶出した。また、浸漬水中のCa2+と炭酸イオンの溶出は正の相関を示しており、炭酸化の進行に伴い、炭酸イオンの溶出割合が増加した。

  • 山下 和也, 田原 和人, 亀田 博之, 宮本 慎太郎
    2025 年78 巻1 号 p. 407-415
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    前養生材齢を変えた普通セメント(OPC)、高炉B種(BB)セメント、非晶質カルシウムアルミネート系急硬材を用いたセメント(ACC)に高濃度炭酸化養生を施し、前養生期間の違いがCO2固定挙動と硬化体へのCO2拡散速度に及ぼす影響を調査した。拡散の影響がない微粉砕したペーストではいずれの系も前養生期間が長いほど炭酸化後のCO2含有率が高くなり、モルタルではACC系を除き前養生期間が長いほどCO2拡散が遅くなった。セメント種により炭酸化前の鉱物組成や水和物種は異なり、炭酸化後の鉱物組成も同様に異なった。前養生材齢が長くなると炭酸化後のCaCO3にバテライトが増加し、特にACCでその傾向は顕著だった。

  • 黒岩 笑海歌, 本田 和也, 安本 礼持, 小西 正芳
    2025 年78 巻1 号 p. 416-424
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    カーボンニュートラル実現に向けた取り組みとして、廃棄物に対する様々なCO2固定技術が検討されており、その中でレディーミクストコンクリート工場にて発生したスラッジに対するCO2固定に関する研究が進められている。本研究では、より効率的なスラッジへのCO2固定技術を確立するため、スラッジ水中に1~100μmのマクロバブルサイズのCO2ガスを供給する方法を検討した。その結果、直径14mmのCO2の気泡を供給するよりも効率的にCO2をスラッジ水に固定でき、CO2固定に影響を与える因子はスラッジ水の温度と材齢であることを確認した。また、CO2固定化によるスラッジ水中の鉱物量や水和生成物量の変化についてリートベルト解析を用いて評価した。

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