「畑土壌生産力に関する研究」の一環として今回,磐田原の茶園土壌の調査を行つた。まず聞取によつて茶園の状態を調べ,さらに茶園土壌を一応,黒ぼく,黄色土および赤黄色土に分類し,これらに属する茶園のうちで,比較的収量の多い茶園と少い茶園を対象として,これらの土壌の断面形態および一般理化学的性質を比較検討した。
これらの調査結果を要約すると次のごとくである。
1.聞取によると,磐田原の茶園は一般に管理が悪く,収量の少い茶園が多かつた。これら茶園の管理状態は,農家の経営形態と密接な関係があつて,全般的にみて茶園が占める重要性が低いためと推察された。
2.収量の多・少による土壌断面形態の相違は,いずれの土壌にても明瞭とはいえないが,一般に黄色土および赤黄色土では土層の深いものほど,収量の多い茶園が多かつた。黒ぼくではむしろ浅いものに収量の多い茶園が多いと農家の人々はいつていたが,調査の結果ではこの関係は明らでなかつた。黒ぼく層の深い茶園は比較的低い所にあつて,立地条件は一般に不良であつた。
3.いずれの土壌でも,収量の多い茶園では,下層が比較的乾燥状態であるが,収量の少い茶園は,例外なく多湿であつた。
4.物理性についてみると,収量の多少による差異は明らかではなかつたが,一般に孔隙中の水分割合は2層が大きいが,とくに収量の少い茶園ではこの傾同が大きく,これは排水不良に基づくものと思われた。
5.粒径組成についてみると,黒ほくと黄色土の茶園ではその傾向が同様で,一般に収量の多い茶園では,その1層に粘土が多いが,収量の少い茶園では,むしろ2層に多かつた。赤黄色土ではこの傾向が明らかでなかつた。
6.黒ぼくの茶園土壌の一般化学性についてみると,比較的収量の多い茶園は,収量の少い茶園に比較して,pHが高く,置換酸度が小さく,腐植含量が減少し,りん酸吸収係数はやや小さかつた。置換性石灰は,一般に収量の多い茶園土壌に多いことがみられたが,その他の化学性では差異が明らかでなかつた。
7.黄色土および赤黄色土の茶園土壌の一般化学性をみると,収量の多い茶園は,収量の少い茶園に比較してpHが高く,腐植含量が多く,置換容量も大きかつた。また,置換性石灰も多いことが認められた。なお,赤黄色土の茶園では,石灰飽和度と塩基飽和度も収量の多い茶園のほうが高い傾向がみられた。
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