静岡市美和地区の茶園土壌について現地調査を行ない,さらに採取した試料について一般理化学的性質を調べた。これらの結果を要約すると次のとおりである。
1,美和地区の茶園地帯は,大きく低地,高地(傾斜地),台地(平たん)の3地帯に区分されるが,さらにこれら地帯の茶園土壌は,土層断面形態の差異によって細分類すると,10種類(1~10型)の土壌が分布する。
このうち,1~5型はほぼ低地に分布し,黒褐色の礫に富む中粒~細粒質の粗しょうな土壌である。6~8型は高地の傾斜面に分布し,黄褐色の礫を含む細粒質の土壌である。9型は台地上に分布し,腐植に富む黒褐色の細粒質で,かつ,きわめて粗しょうな土壌である。10型は低地に分布し,下層に黒泥層を伴う特殊な土壌である。
いずれの土壌においても,表土の理学的性質は一般に良好であるが,下層土においては礫層を伴う茶園がかなり.多く,問題を抱いている。
2,一般化学的性質についてみると,酸度は土壌の種類のいかんを問わず,pH(H20)で3台および4台のものが多く,置換性塩基含量は1~3meのものが多い。置換性塩基飽和度および置換性石灰飽和度ともに著しく低いものは少なく,30%以下のものが多い。
塩基置換容量は一般に小さいが,低地の茶園土壌では15me以下のものが多く,高地,台地の茶園土壌では20me前後を示すものもある。
有機物は表層では一般に多く,腐植として2~10%にわたっているが,台地上の腐植質土壌ではきわめて多く,10~20%の範囲である。
有効態リン酸は表土では一般に多く,20~40mgを示すものが多い。リン酸吸収係数は一般に小さく,1000以下を示すものが多いが,台地上の腐植質土壌では2000前後を示している。
アルミニウムの溶出量は一般に多い。
3,当地区の茶園土壌の改良対策の一助として,.石灰の添加量とpHとの関係および硫安,炭安,リン安からのアンモニアの吸収を比較検討した。
石灰の添加量とpHとの関係をみると,低地の砂質土壌では,石灰の添加量の増加に伴ってpHが急激に上昇するが,高地および台地上の粘質土壌では,きわめて緩慢である。
アンモニアの吸収は,リン安>炭安>硫安の順に多く,また,砂質の土壌ほどその吸収が少ない。
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