1.おもに2~3年生の茶苗にたいして,種々の接種源を用いて,一連の接種試験を行ない,おもに接種源側の各種条件の発病に及ぼす影響を検討した。また,接種試験の結果から,菌の生態について,二,三の考察を行なった。
2.二つの接種方法により,各種の培地で培養した病原菌を接種した結果,〔接着法〕により接種を行なった場合は,発病の激しさはフスマ培養菌=イネわら培養菌>煮茶茎培養菌〓り病根の順であった。PDA培養菌でば,ごく軽微な発病しかみられなかった。〔混合法〕により接種を行なった場合にもフスマおよびイネわら培養菌は,10cmばち17gおよび70gの接種で,ほぼ同様に,激しい発病がみられた。PDA培養菌50gでは,ほとんど発病はみられなかった。
3.6年生および2年生の茶にたいして,イネわら培養菌5本~45本の3~4段階の量の接種源を接種した結果,両試験ともに接種量の多いほど発病は速やかで,激しい傾向が認められた。
4.イネわら培養日数が10~150日の病原菌を接種源とした場合,それらの間に差異はみられず,いずれも,すべての苗が感染し,ほぼ同等の発病を示した。
5.白紋羽病菌の分離系統には,病原性に明らかな差異が認められた。いちばん強い病原性を示したのは金谷菌,,ついで市ノ瀬菌と岩江戸菌の順で,吉沢菌は前2者より,さらに,やや劣るように思われ,堀之内菌はきわめて弱い病原性しか示さなかった。
6.分離後のPDA培養期間の異なる病原菌を接種した場合の発病は,菌の分離系統によって差がみられた。金谷菌は3年間PDA培養を続けた菌も,再分離直後の菌も,ほぼ同様の発病を示したが,岩江戸菌は,1年間PDA培養した菌は発病が少なくなり,2~3年培養を続けたものでは,ほとんど発病しなかった。吉沢菌は,両者のほぼ中聞であったが,PDA培養期間が経過するに従って,徐々にではあるが,発病が少なくなる傾向が認められた。
7.命根から0~5cm離れた地表面近くの所定の位置に,2種類の接種源を埋め込み,発病を調査した結果,イネわら培養菌では,接種源を接着させたものはもちろん,2cm離れたところに埋め込んでも,ほぼ確実に発病がみられた。り病根を接種源とした場合は,発病は接種源を命根に接着させた場合に限られた。
8.り病根を接種源とした場合の発病にはムラが多かったが,前年に採取して土壌中に埋めておいたり病根,または,きわめて古く,くち果てているものを接種源とした場合を除いて,白紋羽病に感染直後のり病根~木部まで褐変しているり病根の間には,発病にあまり差がみられないようであった。
9. 2~3年生の茶苗に対しては,病原菌を培養したイネわら片3~5本を束ねたものを接種源として〔接着法〕により接種を行なうのが適当と考えられる。発病には,菌の系統および分離後PDA上における培養期間の長さなどによって大差があるので,接種にあたっては,特に留意する必要がある。
10.白紋羽病菌の土壌中における活動および生存には,未分解の粗大有機物が重要な働きをしていることが,接種試験の結果からも認められた。
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