茶業研究報告
Online ISSN : 1883-941X
Print ISSN : 0366-6190
ISSN-L : 0366-6190
1966 巻, 26 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 勝尾 清
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 1-4
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    暗所でさし木茶樹の主幹や枝条に発生させた軟弱な黄白色のえき芽に対し,0.2コルヒチン水溶液の滴下処理(綿球を用い,暗所で)を行ない,完全倍加芽条および染色体キメラ芽条を得た。
    キメラ芽条からは,切り戻し法によって(容易に)完全倍加芽条が得られた。
    完全倍加芽条の得られた品種は,べにほまれ,はつもみじ,べにたちわせ,やぶきたおよびAi170である。茶樹の栄養系の染色体倍加法について,二,三の考察を行なった。
  • 幼木の生育と越冬性
    勝尾 清, 安間 舜
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 4-12
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1.紅茶用系統の九州における地方適応姓を検定し,育種目標設定のための地帯区分を行なうため,15系統を15場所に栽培し,定植3年目までの幼木期の生育と越冬性を調べた。
    2.15場所は気温条件から5区に分けられ,用いた15系統の耐寒性を雑種程度でまとめると,At>AN(NA,CA)>G1Ak>AAN(AA)>Aiの順である。
    3.活着率の,場所による差は大きいが,品種・系統間の差は小さい。
    4.品種・系統の生育は,暖地が低温地よりもすぐれる。低温地では耐寒性の強い系統が正常でよい生育をするが,暖地ではどの系統も正常に生育し,耐寒性の弱い系統の生育がすぐれる。
    5.暖地ではどの系統も越冬するが,低温地では耐寒性の強い系統だけが越冬する場合と,弱い系統も越冬する場合とがある。
    6.九州南部の離島ではアッサム種が,枕崎以南の沿岸暖地ではAAN程度のアッサム雑種がそれぞれ越冬・生育するが,九州の大部分の紅茶地帯ではAN程度のアッサム雑種が栽培可能である。
  • らいかい製茶法の検討
    勝尾 清, 安間 舜, 鳥屋尾 忠之, 松下 繁, 家弓 実行
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 13-24
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1.紅茶樹育種の個体選抜のための品質検定に用いられるらいかい製茶法について,製茶条件がらいかい茶の品質に及ぼす影響を調べた。
    2.6品種・系統(アッサム種,中国種およびアッサム雑種)を用い,萎凋程度を0%,10%,20%,30%,40%および50%とし,らいかい時間を7分,13分および20分とし,発酵時間を1時間,1.5時間,2時間および3時間として組み合わせ,石川式18号4連かくはんらいかい機で製茶した。
    3.品種・系統,萎凋程度,らいかい時間および発酵時間が茶品質に複雑な影響を及ぼすことがわかった(図1,2,表1および2)。
    4,石川式18号4連かくはんらいかい機の標準製茶法は,萎凋が30%らいかい13分前後,発酵が2時間前後と決定された。
    5,アッサム種.中国種およびアッサム雑種について,標準らいかい製茶法と普通製茶法(lkg機による)との紅茶品質の間に,高い相関が認められた(表3)。
    6.標準らいかい製茶法による紅茶品質の判定は正確であり,個体選抜,系統比較試験および適応性検定試験のための紅茶品質の早期・簡易検定法として有効である。
  • 摘採,整枝による摘採期の延長
    穂村 豊, 松岡 恒雄
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 25-31
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1.紅茶用品種はつもみじを供試し,摘採,整枝の時期を4,8日遅らせて,次期の摘採期延長を試みた。調査は生育,収量および出開度10~70%前後のわく摘みなどについて行なった。
    2.一番茶発芽前の整枝を遅らせた場合は,一番茶の摘採適期(出開度30%)は1日間も遅れず,摘採期の延長は無理である。しかし,一番茶の摘採および摘採後の整枝を遅らせると,二番茶は2~7日間,三番茶は2~4日間の範囲で摘採期の延長が可能であった。
    3.出開度15~40%までを摘採期間とすれば,一番茶は3.2日間,二番茶は10.2日間,三番茶は7.2日間の摘採期間の幅が得られた。
    以上の試験結果から,一番茶の摘採および摘採後の整枝を遅らせると,二番茶の摘採期が遅れて,必然的に三番茶の摘採期は延長され,摘採期間の調節が可能であると推察される。
  • 各種土壌における茶園,未耕地,普通畑土壌の腐植酸の形態について
    池ケ谷 賢次郎, 河合 惣吾
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 32-39
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    牧之原台地の赤黄色土と「黒ボク」および富士火山灰土に由来する茶園,未耕地,普通畑土壌の腐植の形態について比較検討した。その結果を要約すると次のとおりである。
    1.SIMON法,腐植酸の示差吸光曲線およびメトキシル基含量を求めて茶園,未耕地,普通畑土壌の腐植の性質を比較検討したが,茶園土壌の特性を認めることができなかった。しかし,土壌の種類による差異は明ように認められた。
    2. 0.1%シュウ酸ナトリウみにより浸出される真正腐植酸は,茶園〓普通畑>未耕地の順であった。真正腐植酸のうちA型とB型の占める割合は,牧之原の赤黄色土ではA型がB型より多く,「黒ボク」ではB型のほう.がやや多かった。富士火山灰土ではA型がきわめて少なく,大部分がB型であった。
    3.A型およびB型腐植酸の示差吸光曲線の形状は赤黄色土ではA,B型ともにリグニン的性質を示し,「黒ボク」および富士火山灰土ではいずれもリグニン的性質を示さなかった。
  • 窒素の施用量と有機物資材の分解との関係
    池ケ谷 賢次郎, 河合 惣吾
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 39-43
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    窒素施用量の各種の段階(0, 10, 20kg./1000kg有機物)における有機物資材の分解について144日間試験した。供試材料は稲わら,茶葉,ススキ,おがくず,テンポロンおよびテルナイトである。分解に伴う炭酸ガス発生量はインキュベートしてから10, 20, 40, 80, 144日目に測定した。
    稲わら,茶葉,ススキは窒素添加量が多いほど,よく分解した。
    おがくず,テンポロンおよびテルナイトは窒素添加量の少ないほうが炭酸ガス発生量が多かった。また,その発生量は稲わら,茶葉,ススキの約1/2であった。
    有機物資材の分解に伴う無機態窒素の固定量を測定したところ,最も多く固定化されたのはインキュベートしてから40日目であった。
    稲わら,茶葉,ススキおよびおがくずは40日目に乾物1000kg当たり7.5~17kgの無機態窒素を固定化した。
    また,テンポロンは0.85kgできわめて少なく,テルナイトは固定化しなかった。
  • 河合 惣吾, 高柳 博次
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 43-47
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    牧之原の赤黄色土を用いたポット試験で,イオウと炭酸カルシウムで土壌のpHを種々に変え,さらにこれらにマンガンを施用して,茶樹の生育,茶葉の化学成分および跡地土壌の化学的性質に及ぼすマンガンの施用効果を調べた。これらの結果を要約すると次のとおりである。
    1.イオウを加えてpHを3台とし,さらにマンガンを施用した区では,定植後1ヵ月でいずれも枯死した。
    その他の区は,ほぼ順調に生育したが,そのうちでも,マンガンだけを単独に施用した区の生育が良好で,次が炭酸カルシウムを加え,さらに,マンガンを施用した区で,炭酸カルシウムおよびマンガンのいずれをも加えない原土の場合が最も劣っていた。
    2.茶葉の化学成分のうち,処理別に差異が比較的明らかに認められたのはマンガン含量で,炭酸カルシウムを加え,さらに,マンガンを施用した区では,いずれもマンガン含量が少なく,マンガンのみ単独に施用した区では,0.3~0.5%で著しく増加していた。
    3.跡地土壌については,石灰とマンガンとの相関関係がみられ,石灰含量が多ければ可給態マンガン(置換性および易還元性)の溶出が少なく,逆に石灰含量が少なければ可給態マンガンの溶出が多い傾向が認められたが,との関係は各地の茶園土壌を用いて,室内的に調べた結果と同様であった。
    4,以上の結果をさらに取りまとめてみると,茶樹によるマンガンの吸収量は一般に多く,土壌中に可給態マンガンがかなり多いほうが,むしろ茶樹の生育が良好であった。しかし,極端に多ければ生育障害も現われるものと推察されるが,土壌によっては石灰の施用によってマンガンの可給化を抑制するよりも,むしろ可給化の促進あるいはマンガンの施用が生育に好影響を及ぼすものと思われる。
  • 揉ねん中の温度が茶の品質に及ぼす影響
    桑原 穆夫, 竹尾 忠一
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 48-57
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1,揉ねん室の温度を15℃から45℃の間を5℃間隔に変え,茶葉温度を室温に近い温度に保ちつつ揉ねんし,その製品の品質を比較した。
    2,茶葉の発酵力は,揉ねん中葉温が44℃になった場合に低下がみられた。
    3,茶葉のタンニンは,揉ねん室温度が低い場合は揉ねん中の酸化の進み方は少ないが,これを25℃で発酵させた場合には正常に酸化した。25℃,35℃区は揉ねん中にもタンニンの酸化は進み,その後の発酵中の酸化も正常であった。
    45℃区は揉ねん中にタンニンの不溶化が進み,発酵力の低下もともなって,発酵2時間後の酸化,重合型タンニン量は少なかった。
    このため,製品の水色も15,25,35℃間ではあまり差がなかったが,45℃区は色調はさえずうすかった。
    4,揉ねん室温度によって発酵適期に至る発酵時間は変化し,揉ねん15℃,20℃では180分前後,25℃区:120分,30℃区,35℃区:60~90分と短縮するが,40℃区は若干長くなり,45℃区では発酵120分たっても十分に発酵が進まなかった。
    5,茶の品質は,揉ねん室温度15℃,20℃,25℃,30℃,35℃区間でみると,茶期による差が若干あるが,この区間ではあまり大きな品質の差がなかったが,40℃区45℃区になると品質は前5区よりも低下し,特に45℃区の品質は劣っていた。
    しかし,15℃区では揉ねん中茶葉の粘性が減り,揉ねん操作が円滑にゆかない欠陥がみられ,これらの点を考えると,揉ねん中に茶葉温度が20~35℃程度に維持されてることが望ましいように考えられた。
  • 茶葉の貯蔵器,装置の試作と調査
    桑原 穆夫, 竹尾 忠一, 佐藤 哲哉, 西条 了康
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 58-62
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    生葉貯蔵実験器を改造し茶葉の積み上げを厚くして試験するとともに,すぐに現在の生葉室に役立つ通風式生葉貯蔵器,装置が製作されたので,実地調査をした。
    その結果,茶葉は貯蔵前に保有していた熱を急速に放散するには相当の風量がいるが,かなり厚く(1m以上)積み上げた葉層に対しても,平均に空気圧力がかかっていれば平均に通風できることがわかった。したがって,理想的には冷蔵庫(室)の利用を考えたいが,常温下でも試験および調査の方法でほぼ供給空気温度に茶葉温度を維持でき,従来の方法に比べれば低温に保てて,生葉の品質低下を阻止する効果が大きかった。
    なお,生葉を厚く積むことができるため,生葉室は広い面積が不要となるし,呼吸熱放散のために行なっている手入れはなくなるし,萎凋も少なく,通風はごくわずかですみしかも常時通風の要もない等々,省力,経済効果のきわめて大きいことがわかった。
    最後に本試験および調査を行なうに当たり,ご協力をいただいた北榛原農協金谷第二製茶工場,富士東製茶農協の各位に厚く感謝する。
    1) 桑原穆夫,竹尾忠一,佐藤哲哉:茶技研, No.32, 71~75 (1966).
    2) 桑原穆夫,竹尾忠一,西条了康:茶技研, No.31, 65~68 (1965).
  • 竹尾 忠一
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 63-68
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1.生葉の酸素吸収は,アジ化ナトリウム,シアン化カリウムによる阻害効果が大であり,また,アンチマイシンAによって阻害を受けることから,酸索吸収の大部分はチトクローム系を末端酵素系として,また,マロン酸,ヨード酢酸阻害試験から,エムデンマイヤーホッフ(EMF)解糖系とクレーブスサイクル系と連らなるものであることが推察された。
    2.萎凋葉の酸素吸収は,シアン化カリウムとアンチマィシン阻害が低下することと,QCO2/QO2の比が低下することから,チトクローム系の活性が弱まり,銅酵素系の活性が高まっていることが考えられ,また,同時にマロン酸,ヨード酢酸阻害も生葉の半分から1/5に低下していて,解糖系とクレーブスサイクル系の活性も低くくなっているようである。したがって,この時期は,正常な呼吸と,銅酵藻系による酸化が同時に行なわれていると思われる。
    3.揉ねん葉の酸素吸収は,シアン化カリウム阻害の低下とアンチマイシンAによる阻害が認められなくなったことと,QCO2/QO2の著しい低下から,この場合のQO2はほとんど銅酵素による酸化作用のためのものであり,マロン酸ヨード酢酸阻害も認められなくなった。
    揉ねん葉のQO2は生葉の2倍以上になるが,DNPによって影響されず,したがってQO2の増加は酸化的リン酸化に共役しない酸素吸収である。
    4.生葉のQO2は,(+)カテキンおよび紅茶タンニンによって阻害されるが,特に紅茶タンニンの影響が大きかった。この結果から,萎凋葉・揉ねん葉で,正常な呼吸が低下またはほとんど停止するのは,茶葉内にポリフェノールの酸化物が生成蓄積するために,チトクローム系が阻害されることによるものと考えられる。
    5.紅茶製造工程中での茶葉の酸素吸収の変化を調べた。
    萎凋葉では萎凋度が進むにつれ,QO2も増加し,QCO2/QO2の比は0.65に低下していた。
    揉ねん葉では揉ねん時間の短い茶葉ほど,揉ねん後のQO2が大きく,揉ねん時間が長くなると,揉ねん中に酸化が進んで,その後のQO2は減少していた。また,揉ねん後,発酵葉のQO2は,各区とも急速に減衰していた。
    この場合のQCO2/QO2値は0,3~0.4であった。
    次に揉ねん時の加圧量を変えて,揉ねん後のQO2の変化を調べたが,この場合も揉ねん度の進んでいる茶葉(加圧量の大きい区)ほど,発酵中のQO2の減少は速かった。
  • 可溶分定量法の検討
    岩浅 潔, 坂本 裕, 鳥井 秀一
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 69-73
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    茶の可溶分定量法として,従来わが国で用いられていた茶試法の代りに,AOAC法を採用することにし,この方法で分析精度,個人誤差を検討した。
    12人の分析者のデータから計算して,分析法精度はC.V.1.63%であった。個人誤差は分析法精度に比ベてかなり大きく,分析者1人が1回分析した数値に伴う誤差はC.V.3.17%・分析者1人が2回測定した平均値に伴う誤差はC.V.2.96%と計算された。
    分析法操作の細目について検討を加えた結果,AOAC記載のものを若干修正して次のように定め,これを茶における可溶分量の公定法とする。
    茶粉末をよく混合して,その29を500mlのフラスコに取り・熱水200mlを加える。冷却器(冷却器はガラス管やロートで代用してもよい)をつけて,電熱あるいはガスでdjだやかに2時間煮沸する.直ちに流水で冷却して500mlに定容し,口紙(凍洋No.2)でロ過する。
    恒量を出したひょう量びんに口液50mlを取軌スチームバス上で蒸発乾固させる。これを定温器(98~100℃)で乾燥して恒量を求める。
  • 中川 致之, 岩浅 潔
    1966 年 1966 巻 26 号 p. 73-77
    発行日: 1966/11/30
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    With the colorimetric determination of tannin a labor-saving preparation of estimating solution was investigated in order to facilitate a large number of determinations.
    A weighed sample (1-2g.) of plucked tea shoots cut as wide as 5mm. was taken into 25 ml. of aqueous acetone and was stood overnight at room-temperature.
    By this simple treatment tannin in the shoot was almost completely extracted in acetone solution. And it was shown that this solution was applicable for the determination by the ferrous tartrate method.
    Further this solution was tested for the availability on the determination of chlorophyl, but it was impossible to attain the aim owing to a considerable degradation of chlorophyl.
feedback
Top