1.生葉の酸素吸収は,アジ化ナトリウム,シアン化カリウムによる阻害効果が大であり,また,アンチマイシンAによって阻害を受けることから,酸索吸収の大部分はチトクローム系を末端酵素系として,また,マロン酸,ヨード酢酸阻害試験から,エムデンマイヤーホッフ(EMF)解糖系とクレーブスサイクル系と連らなるものであることが推察された。
2.萎凋葉の酸素吸収は,シアン化カリウムとアンチマィシン阻害が低下することと,QCO
2/QO
2の比が低下することから,チトクローム系の活性が弱まり,銅酵素系の活性が高まっていることが考えられ,また,同時にマロン酸,ヨード酢酸阻害も生葉の半分から1/5に低下していて,解糖系とクレーブスサイクル系の活性も低くくなっているようである。したがって,この時期は,正常な呼吸と,銅酵藻系による酸化が同時に行なわれていると思われる。
3.揉ねん葉の酸素吸収は,シアン化カリウム阻害の低下とアンチマイシンAによる阻害が認められなくなったことと,QCO
2/QO
2の著しい低下から,この場合のQO
2はほとんど銅酵素による酸化作用のためのものであり,マロン酸ヨード酢酸阻害も認められなくなった。
揉ねん葉のQO
2は生葉の2倍以上になるが,DNPによって影響されず,したがってQO
2の増加は酸化的リン酸化に共役しない酸素吸収である。
4.生葉のQO
2は,(+)カテキンおよび紅茶タンニンによって阻害されるが,特に紅茶タンニンの影響が大きかった。この結果から,萎凋葉・揉ねん葉で,正常な呼吸が低下またはほとんど停止するのは,茶葉内にポリフェノールの酸化物が生成蓄積するために,チトクローム系が阻害されることによるものと考えられる。
5.紅茶製造工程中での茶葉の酸素吸収の変化を調べた。
萎凋葉では萎凋度が進むにつれ,QO
2も増加し,QCO
2/QO
2の比は0.65に低下していた。
揉ねん葉では揉ねん時間の短い茶葉ほど,揉ねん後のQO
2が大きく,揉ねん時間が長くなると,揉ねん中に酸化が進んで,その後のQO
2は減少していた。また,揉ねん後,発酵葉のQO
2は,各区とも急速に減衰していた。
この場合のQCO
2/QO
2値は0,3~0.4であった。
次に揉ねん時の加圧量を変えて,揉ねん後のQO
2の変化を調べたが,この場合も揉ねん度の進んでいる茶葉(加圧量の大きい区)ほど,発酵中のQO
2の減少は速かった。
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