茶業研究報告
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1968 巻, 29 号
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  • 茶葉浸出液の電導率による凍害の判定
    鳥屋尾 忠之, 勝尾 清, 家弓 実行
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 1-5
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    茶の耐凍性に,凍結処理した葉の浸出液の電導率で,凍害の程度を測定する方法を明らかにした。
    約39の処理葉をひょう量し,150mlの蒸留水中で20℃,20時間浸出し,この液の電導率(μΩ/cm2)を測定し,電導率Aとする。無処理の試料の電導率も同様に測定してBとし,さらに完全凍死で溶出する電解質に相当するものとして,煮沸処理の電導率を測定し,この値をCとした。いま,これらの値に,次のようなモデルを与える。
    A=a(1-β)e+βe
    B=βe
    C=e
    ここで,αは凍害率で,凍害を受けたために増加した溶出電解質量の,完全凍死によって増加した溶出電解質量に対する割合を示し,βは無処理の試料で溶出する電餌質の,完全凍死のときに溶出する電解質に対する割合を,またeは,完全凍死葉で溶出する電解質とすれば,凍害率αは次式で推定される。
    α=A-B/C-B×100
    この方法で,多数の品種・系統の厳寒期の耐凍性を検定したところ,αの値と,肉眼観察による凍害の判定とは,ほぼ一致するが,かなり値の開く場合もあった。これは,凍害程度がとくに少ないか,または大きい場合,いたんだり変色した葉を使用した場合には,肉眼観察がぱらつきやすいことを示していると考えられた。
    凍害率の代用値としては,(A-B)の値がすぐれている。
  • 数種の生育調節物質の散布時期と濃度について
    杉井 四郎, 簗瀬 好充
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 6-20
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    摘採作業の時期的集中を緩和し,製茶工場への原料供給を調整するため,生育調節物質を利用して,摘採適期を促進あるいは遅延させ,摘採期間を拡大延長することを試みた。試験に用いた生育調節物質はMCP,MCPP,MDBARD-7693,α-NAA,2,4-DおよびTIBAで,それぞれ10~2000ppmの範囲の濃度で茶樹に葉面散布し,散布時期と使用濃度について検討した。
    これらの生育調節物質は,本来の目的が除草剤であるものが多いので,濃度および散布時期によっては薬害が多発する。しかし適正な濃度で適切な時期に使用した場合には,薬害は回避され,発芽を抑制することによって摘採期を調節することが可能であると判断された。葉面散布の適期は,一番茶を対象とした場合は発芽期の1~2週間前,夏茶を対象とした場合は前茶期の摘採直後から次の発芽期の1週間ぐらい前までであると考えられた。
    摘採期間延長のために使用できる薬剤の種類と使用濃度は,散布量を1m2当たり200mlとした場合,MCPZ100~1000ppm,MCPPで500~2000ppm,MDBAで100~500PPm,RD7693では100~1000PPmが適当であると考えられた。なお,これらの薬剤および濃度範囲では高濃度ほど発芽の抑制期間が長いので,実際に利用する場合には,摘採期の調節計画に基づいて,使用濃度を選択することが必要である。
  • 酒井 慎介
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 21-27
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    以上の実験結果から,茶樹炭水化物の簡易定量法として,H.WEINMANNのTAC分析法の茶樹への適用は可能であることが認められた。
    本法では,試料約300mgを用い,糊化した後,酢酸1緩衝液とタカジアスターゼ液を加え,恒温器中で炭水化物を抽出・転化せしめる。中和後,塩基性酢酸鉛でタンパク質・タンニンなどを除き,除鉛,ロ過し,塩酸で加水分解して,生成糖量をハンス法でグルコースとして定量し,全可利用炭水化物(TAC)として一括表示する。
    タカジアスターゼは製品によって抽出能力に差がみられ,あらかじめ検定する必要があった。検定して酵素を適当にえらべば,茶タンニンによる酵素の阻害はほとんど認められなかった。また除タンパク法は,原報と異な9,中和後,塩基性酢酸鉛を用いるのが適当と認めらきた。
    本法の精度は変異係数で3.6~5.0%であった。また従
    来の分別定量値に比べ,表示を同じにしても相当高い値が得られたが,両者間の相関は高く,各種の試料について検討した結果,r=+0,908が得られた。本法は従来の方法に比し,精度はやや劣るが,測定能率は1週間当たり72点と約4倍以上であるので,多数の試料について,生理的に利用可能な炭水化物含有率の,だいたいの変化をすみやかには握する場合に有効に使用し得る。
  • 池ケ谷 賢次郎, 平峯 重郎
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 27-31
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    牧之原洪積台地の"黒ボク"に由来する茶園(やぶきた種)で苦土石灰の施用が茶樹のリン酸吸収に及ぼす影響を調べた。
    すなわち,放射性リン酸32Pで標識した過リン酸石灰を苦土石灰無施用区,苦土石灰100kg/10a,および300kg/10a施用区に1株当たり4.32mCi,P2O5として12gを昭和42年5月30日に施用した。
    試料は二番茶期(6月21日),三番茶期(7月31日)に新葉を採取し,常法により各試料の放射能強度および全リン酸含量,さらに施肥リン酸の全リン酸含量に対する割合を求めた。また,各区土壌の有効態リン酸含量とリン酸の形態転移についても調べた。
    これらの結果を要約するとつぎのとおりである。
    苦土石灰100kg/10a施用区が最も収量が多く,苦土石灰無施用区が最も少なかった。
    苦土石灰の施用により新葉のリン酸含量は増加した。
    新葉に吸収された施肥リン酸含量の全リン酸含量に対する割合は,苦土石灰の施用量の増加に伴って低くなった。
    苦土石灰の施用により土壌の有効態リン酸が増加し,苦土石灰300kg施用ではFe型リン酸が多くなり,Al型リン酸が少なくなった。
  • ニッケルおよびマンガンの施用と異常葉の発生について
    向笠 芳郎, 小川 茂
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 32-36
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    茶樹におけるニッケル過剰と班葉発生,マンガン過剰と黄化葉発生との関係を明らかにするため,場内赤黄色土(洪積層)を詰めたポット(a/5000)に幼茶樹を定植し,ニッケルおよびマンガンを施用して,班葉および黄化葉の発生状況を調査した。ニッケルは硫酸ニッケル,マンガンは硫酸マンガンで施用した。また,県内のジャモン岩地域5か所の土壌をポット(a/5000)に詰め,幼茶樹を定植し,ニッケルおよびマンガンの形態別含量と班葉および黄化葉発生との関係を検討した。
    1.ニッケルを5ppm(ニッケルとして)施用した区で班葉が発生し,50ppm以上施用した区では定植した幼茶樹が枯死した。マンガンはポット当たり19(MnOとして)施用すると,黄化葉が発生した。
    2.班葉は夏期、黄化葉は秋期の茶芽に発生しやすい傾向があった。班点が薄い班葉は生育が進むに従って班点が消失した。黄化葉では冬期に褐色の班点が葉面に生じ,一部の葉は褐変部が枯死した。
    3,班葉には亜鉛含量が少なかった。
    4.ニッケル過剰による班葉発生と土壌中の置換性ニッケル含量とは関係が深く,マンガン過剰による黄化葉発生は土壌中の置換性および水溶性マンガン含量と関係が深い傾向を示していた。
  • 被害茶樹の根から分離される糸状菌
    広川 敢, 高屋 茂雄
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 37-47
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    茶の立枯症状の原因として考えられる多くの要因のうち,まず糸状菌について検討した。
    被害茶樹の根からはFusarium菌が最も多く分離され,次でCylindrocarpon菌,Pythium菌と思われるものの順であり,そのほかRhizoctonia菌,Verticillium菌などもまれに分離された。これらの菌のうち,120系統について室内で茶細根に接種した結果,Pythium菌(?)は供試15系統中13系統,Cylindrocarpon菌は17系統中15系統,Fusarium菌は42系統中15系統,Rhizoctonia菌は6系統中4系統,そのほかの糸状菌は40系統中15系統に多少なりとも病原性が認められた。
    室内試験によって選抜したPythirrm菌(?),Cylindrocarpon菌およびFusarium菌の8系統を鉢植の幼茶樹に大量接種した結果,いずれの菌も病原性を示したが,中でもPythium菌(?)のP-4系統の病原性が最も強かった。
    分離および接種の結果から,おもにこれら3属の菌が茶の細根腐敗に関与する糸状菌として問題になるものと考えられるが,実際に発生している茶樹の衰弱あるいは枯死に対する糸状菌の役割については,さらに検討する必要がある。
    Pythium菌(?)は菌そうの状態や菌糸の形態などの点についてはPytlaium属の特徴を備えているが,卵胞子,遊走子のうなどの確認ができず,分類上の位置は未決定である。Cylindrocarpon菌は大部分の系統がC.radicicolaに,Fusarium菌の最も病原性の強い系統はF.solaniに属するものと考えられる。
  • 古谷 弘三, 岩堀 源五郎, 田中 伸三
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 47-56
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    In frozen storage of steamed tea leaves, it is necessary to maintain the storage temperature at about -20°C or lower. Above this temperature the steamed tea leaves cannot keep freshness for long time of 30-90 days.
    Tea, manufactured with stored leaves for 90 days at -20°C, had no evident difference in the qualities compared with standard one, manufactured with fresh leaves.
    But, some damages were found on their tissues in these frozen leaves and these damages seemed to occur with slow freezing of air flow at -20°C.
    These damages occurred usualy in parenchyma of stem of shoots, rarely in main nerve and none in leaf blade tissue.
    The occurrence of these damages was avoided with rapid freezing by immersing the leaves into 50% gricerin water solution at -20°C or liquid nitrogen.
  • 中川 致之
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 57-61
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    The nature and the origin of major polyphenols in Hôji-cha were elucidated from the effects of heating on individual flavanols by using paper-chromatographic technique. Furthermore the direction of thermal transformation of each flavanol and the quantitative variation of major products and original flavanols were shown. The heating of flavanol solution resulted in epimerization, polymerization and decomposition, though the aspect of change was different with the kind of flavanol and thermal condition. Thus it was revealed that (-)-catechin, (-)- gallocatechin, gallic acid, phloroglucinol and two thermal products from flavanol gallates occurred characteristically in Hôji-cha.
  • 酵素活性の熱度・葉位・茶期・年度・品種による変異
    太田 勇夫, 中田 典男, 和田 光正
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 62-68
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    茶芽のポリフェノールオキシダーゼ活性を測定し,熟度・葉位・茶期・年度・品種による変異を調べた。また,らいかい紅茶の品質との関係についても考察した。その結果,熟度による変化は品種によりいくぶん異なるが,後期になるとアセトンパウダーあたりの活性は低く,Nあたりの比活性は高くなる傾向があった。しかし,出開度50%程度までの変化はゆるやかであった。
    葉位別では1葉が高く,葉位とともに順次低下したが茎の活性は高かった。Nあたりの比活性は3葉までは順次高くなったが,4葉になると低下した。しかし,茎はきわめて高い比活性を示した。
    茶期間の差は二番茶が最も高く,一・三番茶は低かったが,比活性では春芽と夏芽との差は明らかで夏芽が高かった。
    品種間差は明らかで,ANAN1671,はつもみじは活性の低い品種であり,いんど,べにかおり,べにほまれは常に高い水準にあった。また,年度による差も認められたが,品種による活性の強さの順位には大きな変動はなかった。
    らいかい紅茶の品質との関係は,一・二・三番茶をこみにした場合に相関関係が認められた。
  • 岩浅 潔
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 68-74
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    The influence of shading culture on the catechin composition in the tea leaves was examined.
    During the developing period of the tea shoots, the tea plants were covered with several sheets of black net for 8-13 days. The light intensity under the shade was reduced to 1.6-6.4 percent of the open field. The shoots were plucked at different intervals from the shaded and the unshaded plots and subjected to the estimation of each catechin fraction.
    As a result of shading, the yield of the plucked leaves and the content of total catechins decreased, however, a uniform tendency of decreasing in catechin content was not observed with each catechin fraction. The decreasing of the contents of (-) epicatechin and (-) epigallocatechin was characteristic of variation by shading. A significant difference of gallate content between the shaded and the unshaded shoots was not observed. In consequence, the tea shoots grown under the shade were rich in the proportion of (-) epigallo catechin gallate. After removal of the shade, a remarkable restoration of catechin content occurred quickly.
    It seems that the results mentioned above involve a suggestion of the possible pathway of catechin formation in the tea leaves.
  • 穂村 豊, 中山 仰, 青野 英也, 松岡 恒雄, 簗瀬 好充
    1968 年 1968 巻 29 号 p. 75-162
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
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