茶園の蒸発散量の日変化および季節変化について,chamber法を用いて調査した。
茶樹の蒸散量は晴天日に多く,曇天日および雨天日にはきわめて少なかった。
蒸発量の日変化は晴天日に大きく,曇天日および雨天日には小さく,さらに,晴天日の日変化は,日の出時より増加を始め,9時から16時までの蒸散量がきわめて多く,以後日没に向かって漸減する曲線となった。また,夜間の蒸散量はきわめて少なかった。
うね間土壌面からの蒸発量は茶樹の蒸散量の1/2~1/3であった。
季節による変化をみると,茶樹の蒸散量は12月~1月に最も少なく,7~8月の盛夏期に最も多かった。また,4~5月は比較的少なく、秋季は春に比べてやや多かった。
茶芽の生育との関係についてみると,新芽の生育初期には一般に蒸発散比が小さく,摘採期および摘採直後に蒸発散比が大きくなる傾向を示した。
茶樹の蒸散量は気象要因と密接な関係を有し,日変化については,日射量と最も高い相関を示し,気温および飽差ともきわめて高い相関を示した。また,季節変化についても,蒸散量は日射量,9時気温,9時飽差といずれも有意な相関を示した。
日変化における,蒸散量と気象要因との一次回帰を季節別にみると,いずれの要因についても,回帰係数は冬季に最も小さく,盛夏期に最も大きい傾向を示した。
このことは,蒸散量の季節変化の要因が,直接的な気象要素の影響とともに,気象要素の季節変化に関連した,茶樹自体の蒸散力の変化,すなわち,葉内水分の拡散や補給に関係する生理的な諸機能の変化に由来すると考えられた。
実測された各旬の蒸発散比に,蒸発計蒸発量の10ヵ年平均を乗じて,各時期の消費水量を算出したところ,年間では約1,300mm,4月から9月末日までの,茶の生育期間については約900mm,また,新芽の発芽期から摘採までの期間については,各茶期ともほぼ同一で,120mm程度であった。
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