1.チャ萎黄病は従来アリ類の根部食害による栄養障害とされてきたが,病徴からみて疑問があるので,再検討を試みた。
2.本病の特徴は葉に黄色ないし黄白色,不整形の著しい退色斑を生じることである。萎縮,叢生,奇形化などの症状.は伴わない。枝変わりによるふ入り,ニッケル過剰症による「斑葉」,マンガン過剰症による「黄化葉」,そのほか原因不明とされているモザイク症状などとは明らかに病徴が異なる。
3.病株から採取した穂木を未耕土にさし木したところ,活着後2年を経ても病状回復の兆候はみられなかった。同じ床土にさし木した健全穂木は全く発病しなかった。
4.つぎ木伝染は罹病穂一健全台,健全穂一罹病台のいずれの組合せにおいても確認され,つぎ木後2~4ヵ月目に健全側の新芽に典型的な病徴が発現した。罹病穂一健全台の組合せでは,つぎ木が不成功であったのに伝染は行なわれた例もみられた。
5.以上の結果から,本病は栄養障害や遺伝的原因ではなく,伝染性の病因によることが明らかになった。光顕レベルの病原体は見出されないので,ウイルスまたはマイコプラズマ様微生物のいずれかによると思われるが,病徴からみるとウイルスの可能性が大きい。
6.本病の分布は佐賀県の一部に限られているが,ツバキ,サザンカの園芸品種には本病に酷似したウイルス性ふ入り(斑葉病)が知られている。また,佐賀県の現地では本病と同様の病徴が周辺の野生サザンカに発生している。本病がツバキ,サザンカのふ入りと同じウイルスによるものかどうか,また,その自然条下での伝染経路が何であるかについては,今後さらに検討を要する。
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