茶園におけるスプリンクラーの多目的利用のうち,かん水の効果,施肥,病害虫防除について検討した。
1,かん水の効果気象条件とかん水の効果との関係はかなり明確で,降水量が少ないか降雨の分布の悪い年はかん水の効果が高い。土壌の保水性とかん水の効果との関係もかなりはっきりしており,保水性の悪いほ場はかん水回数が多く,かん水の効果も高い。茶期別のかん水の影響では,二~三番茶での効果が高い。
品質に対する影響をみると,干ばつ時にかん水することにより品質が向上する傾向がみられた。
土壌水分張力をもとに最適かん水点を調べた結果,pF2,3程度でかん水したものが生育は最もよかった。
2,施肥年間液肥のみを施用した場合,慣行施肥区より収量が減少した。液肥を利用する方法としては,秋,春肥は慣行法により,夏肥のみ液肥を用いるのが適当と考えられる。
液肥を施用することにより品質が向上した。特に開葉期の散布の効果が高かった。
散布する液肥の濃度としては,新芽のある時は200倍(窒素濃度15%の液肥の場合),新芽のない場合は100倍程度とすればよい。
単肥を溶かして使用する場合は尿素が適しており,硫安は被害が発生し易く不適当である。
3.病害虫防除M2型スプリンクラーを中心に検討した。
M2型スプリンクラーとM1型スプリンクラーを比較すると,防除効果ではM2型がやや劣るものの,いずれのスプリンクラーを使用しても実用上は問題がない。
交差散布と無交差散布での防除効果を比較すると,交差散布の効果が高い。配管に当たっては最大限散布半径(約15m)より3~4m長い程度にするのが適当である。
スプリンクラーによる薬剤散布は,風の影響を受け易いので,できるだけ風の弱い時を選んで散布すると同時に,噴出角度の低いスプリンクラーを使用したほうがよい。
ダニ類の防除に当たっては,散布量を10a当たり800~1000l程度とする(一般の防除では400~500l/10aが適当とされている)。
スプリンクラーにより周年防除を行うには,早,晩生品種が混在していると防除が困難な時期がある。品種統一が必要である。
現地の施設について,残液量を調査した結果,濃度により差はあるが,1500倍で400l/10aを散布すると原液換算で約36%が残る。一次稀釈液槽の構造を工夫するとともに,配管内の残液を押し出す施設を併設することが必要である。
本試験を行うに当たり,いろいろと御助言をいただいた当場環境研究の小泊重洋主任研究員,大場正明技師に厚く感謝の意を表する。なお,本報をとりまとめるに当たって,懇切なるご指導を賜った農林省茶業試験場茶樹第3研究室青野英也室長に対し厚くお礼申し上げる次第である。
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