有機質肥料としてなたね粕,無機質肥料として硫安を用い,その比率をかえて供試し,さらに緩効性肥料としてCDUを加え,茶芽の生育,生葉収量,製茶品質,製茶成分ならびに土壌化学性等に及ぼす影響を検討した。
1 茶芽の生育は,なたね粕区が硫安区に比べ優れる傾向がみられたが,生葉収量は芽数,芽重,出開度の調和のとれた硫安区がやや多く,その他の区は僅かながら減収となった。
2 製茶品質は,外観に処理区間の差はあまりみられないが,水色,香気,味の内質については,なたね粕区が優れ,とくになたね粕多量区の審査評点が高かった。
3 製茶成分のなかで,全窒素含量,全アミノ酸量は硫安区と緩効性肥料区に多く,なたね粕多量区に少ない。熱湯可溶分はなたね粕多量区に多く,タンニン,可溶性窒素含量の区間差は判然としなかった。アミノ酸のなかで,最も含量の多いテアニンが全アミノ酸に占める比率は,なたね粕多量区が高く,硫安区は低かった。
4 土壌の化学性は,なたね粕施用により全炭素含量,塩基置換容量は増加するが,pH,全窒素含量,置換性塩基については,変化はあまりみられなかった。
5 なたね粕多量区における土壌中の無機態窒素含量は,春肥施用20日後にかなり高くなるが,その後も無機化はゆるやかに続き他区に比べて長期間多く保たれた。
硫安区の無機化は,10日後に最高となり以後急速に減少し,40~60日後の含量は,なたね粕多量区に比べ少なかった。緩効性肥料区の無機態窒素含量は,終始少なく無機化がゆるやかな傾向を示した。
6 細根中の全アミノ酸量は,茶葉(製茶)中の全アミノ酸量とほぼ同様に,硫安区,緩効性肥料区が多く,なたね粕区では少なかった。時期別には,一番茶摘採時が春肥直前に比べて各区とも多かった。アミノ酸は,テアニンが最も多く,全アミノ酸量に占める比率は,一番茶摘採時には春肥直前に比べやや低下した。
7 製茶品質に関係の大きい茶葉中の全窒素含量,全アミノ酸量は硫安区に多く,なたね粕区が少ない傾向を示したが,製茶品質とくに内質の審査評点では,硫安区が劣り,なたね粕区が優れた。これは,茶の品質が,茶葉中における品質関与成分の量的な多少のみではなく,各種成分の調和が強く影響するものと考えられる。
本試験を実施するにあたり,ご指導を賜わった農林水産省茶試池ヶ谷賢次郎博士,当場畑地土じょう研究室高橋和司室長,アミノ酸,カテキンなどの分析のご指導を賜わった農林水産省茶試化学研究室長中川致之博士ほか室員の方々,本報をとりまとめるに当たって懇切なるご指導を賜った農林水産省茶試平峯重郎栽培部長,同土壌肥料研究室長石垣幸三博士に対し厚く感謝の意を表する。
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