茶業研究報告
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1987 巻, 66 号
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  • 渕之上 康元, 岡野 信雄, 北田 嘉一
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 1-13
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    “Fukumidori” is a new clonal cultivar suitable for green tea.
    It was bred at Saitama Prefectural Tea Experiment Station, and was registered in the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries as a superior cultivar, “Cha Norin No.36”, in June 1986. “Fukumidori” was selected from the hybrids between “Yabukita” and “23F1-107” (“Sayamamidori” × “Yabukita”).
    Its pedigree is illustrated as follows.
    Its vegetative propagation is very easy because of its good rooting ability. And it shows vigorous growth and consistently high yielding from a young plant.
    As to the cold hardiness in winter, it is very hardy and more resistant than “Yabukita” (the leading cultivar in Japan).
    Its bud opening time is medium and the plucking time of it is about one day later than that of “Yabukita”.
    Its cup quality of the cultivar is very excellent, particularly in color of liquor and taste of the first crop.
    Therefore, “Fukumidori” is adapted to the northern areas of green tea production in Japan, such as Saitama and Ibaragi prefectures.
  • 渕之上 康元
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 15-39
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1埼玉県茶業試験場で,品種園の中の100品種・系統(日本種,準中国種,準アッサム種など)を供試して,4年生時(1974)から14年生時(1984)までの11ヵ年間にわたって,圃場耐寒性を調査し,同時に冬季の気象条件などとの関係を調べたところ,耐寒性茶樹育種のための多くの知見を得ることができた。
    2調査方法の概要は下記のとおりである。
    (1)圃場耐寒性は,関東茶産地での主要な寒害(赤枯れと青枯れ)に対する抵抗性で,いずれも越冬圃場(毎年3月上旬に)での被害の程度を肉眼観察により1(軽微)~9(甚大)に判定区分した。
    (2)気象観測は,茶業試験場内の百葉箱によるもので,11月第3半旬~3月第1半旬の最低気温,降水量,降雪量,地温,凍結期間などである。
    3得られた成果の要約は下記のとおりである。
    (1)赤枯れ被害は,幼・成木期に関係なく何時でも発生がみられるが,青枯れ被害は,特異な異常気象年を除き幼木期程被害が大きい。
    (2)主要な32品種の11ヵ年のデータについて分散分析を行ったところ,両被害共年次間及び品種間に顕著な有意差を認めた。
    (3)赤枯れ被害でも年により被害程度に多少の差がみられるが,青枯れ被害は,茶樹の幼木期に生じやすいとはいえ,毎年発生するとは限らず,とくに成木園になってからは,異常気象年を除き,被害軽微の年が多かった。
    (4)被害度の反復力(遺伝力)を計算し,耐赤枯れ,青枯れ性の検定に適した年の有無について検索したところ,耐赤枯れ性では,一般に被害度が特異的でしかも品種の変動係数の小さい年を除いて,平均被害度が4.0~5.0程度で品種の変動係数の比較的高い年(平均0.3~0.4位)を選ぶこと,また,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象を除き,幼木期を対象として適度の被害度(平均3.0~4.0位)と品種の変動係数の大きい年(0.6~0.8程度)をそれぞれ選んで,これを検定に適した年とするのが良いように思われた。
    (5)これを冬季気象条件との関係において検討したところ,耐赤枯れ性検定では,暖冬年や寒の戻り年などの特異な気象年を除き,冬期の日最低気温積算値が-320℃~-460℃位の当地方でも比較的寒冷な年で,しかも1976年のように前年の12月下旬から厳寒期にかけて半旬別平均最低気温がほぼ直線的に低下していた年が最も検定に適していた。また一方,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象年を除き,茶樹の幼木期に相当した年次の中で,茶樹が吸水低下を来たすと言われている土壌凍結~地温3~4℃以下の継続日数の長い寒冷な年で,しかも無降水継続日数が50日以上にも達する年が適していた。
    (6)検定に適した年の被害度の分散分析の結果をもとに主要32品種の圃場耐寒性の階級分けを行い,耐赤枯れ性を強~弱の5群に,耐青枯れ性を強~甚弱の6群に群別した。
    (7)今後,気候遷移期の特徴といわれる異常気象年(冬季の)に対応できる品種育成の基礎資料を得る目的で,特異な気象条件下での品種の耐赤枯れ,青枯れ性の変動について,やや強以上の品種(検定に適した年のもとでの)について調べた。その結果,まず耐赤枯れ性では,寒の戻り年でも比較的その低下をみなかった品種にやまとみどり,たまみどり,こまかげ,さみどりなどが,また逆に著しく低下をみたものにおぐらみどりがみられた。また一方,耐青枯れ性についても同様に検討してみると,1984年の異常気象年でもこまかげ,さみどり,安化県種の3品種・系統のみは被害が極めて軽微(被害度1.0)で特異的であり,あさひ,さやまかおり,やまとみどりなども比較的耐青枯れ性の低下が少なかった。しかし,一方おぐらみどり.他数品種に著しく耐青枯れ性の低下するものを認めた。なお,検定に適した年に平均的被害度が4.0であったやぶきたが異常気象年に8.0まで低下していたことは注目された。
    (8)赤枯れ,青枯れ被害と一番茶収量との相関関係は,赤枯れでは被害の著しい年にのみ負の相関関係を認めたが,一方,青枯れでは被害のあったすべての年で負の相関関係が認められた。
    (9)最終的に,特異な気象条件下での各品種の変動も含めて,わが国主要46品種の耐寒性の階級分けを6~7段階に行った。そしてこれによれば,まず耐赤枯れ性では日本種が強~弱,準中国種がやや強~やや弱,準アッサム種がやや強~甚弱に,また一方,耐青枯れ性では日本種と準中国種が甚強~甚弱,準アッサム種がやや強~甚弱にそれぞれ変異していた。
    なお,これを個々の品種でみれば,とくにこまかげ,さみどり,さやまかおり,あさひ,やまとみどりの5品種が耐赤枯れ,青枯れ性共に他の品種よりも上位にランク付けされており,将来の超耐寒性品種育成のための素材として注目された。
  • 関谷 直正, 山下 正隆, 田中 勝夫
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 41-59
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    年間の摘採回数,整枝時期および整枝強度が次年度収量に及ぼす影響を明らかにするため,やぶきた8年生園を用い,これらを組合せて処理を行い,以後5年間毎年同一処理を行って,これらの影響について検討を加えた。
    1.一番茶収量に及ぼす影響については,刈番を含めた合計収量では処理間にかなり大きな差異がみられたが,本茶収量では差異は比較的小さかった。
    2.摘採回数が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,1cmの高さで整枝した場合は差異はみられないが,3cmの高さで整枝した場合は,三茶区は四茶区に比べてやや多い傾向がみられた。二,三番茶収量は,秋整枝を行った場合は摘採回数の影響はみられないが,春整枝を行った場合は,三茶区は四茶区に比べてわずかに多い傾向を示した。
    3.整枝時期が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,春整枝区は秋整枝区に比べていずれの場合においても劣る傾向がみられたが,刈番を含めた収量で比べるとほぼ同等であった。二,三番茶収量は,春整枝区は秋整枝区に比べてわずかに多い傾向がみられた。
    4.整枝強度が収量に及ぼす影響については,一番茶本茶収量は,三番茶まで摘採を行い秋整枝を行った場合は中間整枝の3cm整枝区が最も多かったが,春整枝を行った場合は浅整枝ほど多かった。
    四番茶まで摘採を行った場合は1cm整枝区が3cm整枝区に比べて多かった。刈番を含めた収量で比べると,いずれの場合も浅整枝ほど多い傾向がみられた。二,三番茶収量については,いずれの場合も浅整枝ほど多い傾向がみられた。
    5.新芽数に及ぼす影響については,一番茶期においては摘採回数の多いほど多く,秋整枝は春整枝に比べて多く,整枝強度では,深整枝は浅整枝に比べて多い傾向がみられ,二番茶期においては,これらの差異は小さくなったが一番茶期とほぼ同傾向であった。三番茶期では,摘採回数および整枝時期による差異はなくなり,整枝強度では,一番茶期とは逆に深整枝区は最も少なくなる傾向がみられた。
    6.百芽重に及ぼす影響については,一番茶期においては摘採回数の多いほど軽く,秋整枝は春整枝に比べて軽く,深整枝は浅整枝に比べて軽い傾向がみられ,二番茶期もほぼ同傾向であったが,摘採回数については一定の傾向はみられなくなった。三番茶期では差異は小さくなり,整枝強度では,一番茶期とは逆に深整枝区は最も重くなる傾向がみられた。
    7.一番茶の摘採期に及ぼす影響については,処理間にかなりの早晩がみられ,摘採期の最も早い処理区と最もおそい処理区の間には6日~10日間の幅がみられた。
    8.一番茶期の摘採期の早晩に対しては,整枝強度の影響は大きく,秋整枝を行った場合は深整枝ほど早く,かつ処理間の早晩の幅は毎年3~4日とほぼ一定であったが,春整枝を行った場合は一定の傾向はみられず,また年次変動も大きかった。
  • 関谷 直正, 山下 正隆, 田中 勝夫
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 60-67
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    年間の摘採回数,整枝時期および整枝強度が次年度一番茶の品質,成分に及ぼす影響を明らかにするため,やぶきた8年生園を用い,これらを組合わせて処理を行い,以後5年間毎年同一処理を行ってこれら影響について検討を加えた。
    1.窒素およびタンニン含有率に及ぼす影響はかなり小さく,摘採回数および整枝時期による差異は'ほとんどみられなかった。整枝強度の影響については,深整枝区は浅整枝区に比べて窒素含有率はやや低下し,タンニン含有率はわずかに高くなる傾向がみられた。
    2.アミノ酸含有率に及ぼす影響については,処理間にかなり大きな差異がみられ,摘採回数では,四茶区は三茶区に比べてやや高く,整枝時期では,春整枝区は秋整枝区に比べて高く,特に深整枝した場合に差異が大きかった。整枝強度では,浅整枝区は深整枝区に比べて高い傾向がみられた。
    3.外観に及ぼす影響については,原葉が小型化し,また,芽ぞろいの良好になる処理区ほど向上する傾向がみられた。
    4.内質に及ぼす影響については,摘採回数では,三茶区は四茶区に比べてすぐれ,整枝時期では,秋整枝区は春整枝区に比べて良好であり,整枝強度では,深整枝区は浅整枝区に比べて勝る傾向がみられた。
    5.処理の累年的影響については,三番茶まで摘採を行った場合,深整枝を毎年継続した区は,浅整枝区に比べてアミノ酸含量および滋味が経年的に低下する傾向がみられた。
    本試験を行うにあたり,製茶指導および製品の審査をしていただいた製茶研究室の岡田文雄室長,中田典男技官,和田光正技官に深甚なる謝意を表す。
  • 中村 充
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 68-75
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    茶園のせん枝作業で刈り落とされ,うね間に堆積した枝葉の圃場における分解と養分動態を解析するため,リターバッグ法により調査した。
    1.調査は,やぶきた35年生,栽植密度1.5m×0.3m,樹高90cmの茶園を用い,5月下旬に,深刈り区は株面から深さ30cm,浅刈り区は株面から深さ8cmの位置で刈り落とした。この際の枝葉量は,乾物重で1ヘクタール当り,深刈り区は,葉3.7t,枝7.4t,計11.1t,浅刈り区では,葉3.1t,枝2.3t,計5.4tであった。
    2.12ヵ月後の乾物重の残存率は,深刈り区で葉41%,枝80%,浅刈り区では葉42%,枝75%であった。また,養分含有率の変化では,葉,枝ともにカリウムが速やかに減少して行くのに対して,窒素,リン,カルシウム及びマグネシウムでは数ヵ月間は上昇し,その後減少へと転じていた。
    3.うね間に刈り落とされた枝葉の養分量は,深刈り区で1ヘクタール当り窒素205kg,リン24kg,カリウム102kg,カルシウム63kg及びマグネシウム15kgであった。また,浅刈り区では1ヘクタール当り窒素173kg,リン14kg,カリウム59kg,カルシウム35kg及びマグネシウム9kgであった。
    4.刈り落とされた直後の葉の分解過程を調査したところ,養分残存率の変化は元素の種類によって異なり,カリウムが最も速く減少し,次いで窒素,リンで速く,カルシウム,マグネシウム及びアルミニウムの減少は緩やかであった。
    5.刈り落とされた枝葉の分解に伴う養分の消失割合は枝よりも葉で大きく,枝ではカリウムを除くとゆっくりとした速度で養分の減少が進んでいるのに対して,葉は最初の2ヵ月間で急速に分解し,乾物重及び窒素,リン,カリウムはもとの50%以下になり,養分は速やかに土壌に還元されていくものと推定される。
  • 吉田 勝二
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 76-79
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    23年生の緑茶品種やぶきたの越冬芽と2年生の根から調製したアセトンパウダーを用いて,トリフェノールであるPyr,Phl,EGおよびGaAを基質にして酸化酵素活性を調べた。また,部分精製したPhO活性へのMn2+添加の影響と蒸熱による影響も調べた。
    1.茶葉では酸化酵素活性はPhl>Pyr>EG>GaAの順に大であった。根ではPyr>EG=Phl>GaAの順に大であった。
    2.EGはMn2+によって自動酸化を受け,茶葉のアセトンパウダーによって更に酵素的酸化を受けることが認められた。PhO,PyOもMn2+によって若干活性が増加した。
    PhOはKCNおよびDDTC-Naによって活性が著しく低下した。
    3.熱に対しては,PyOが最も安定で次いでPhO,EG酸化酵素の順であり,それぞれ88%,27%,20%活性が残存した。
    4.部分精製したPhO活性は,Mn2+添加により6.93倍に増大した。55秒間の蒸熱によって19.4%に活性は低下したが,Mn2+添加により,33.0%に低下が抑制された。
  • 佐藤 昭一, 花田 十矢, 大城 光高, 松久保 哲矢
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 80-85
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    網胴回転かくはん型蒸機における生葉形質と蒸熱時間の関係について次のような結果を得た。
    (1)蒸機の胴傾斜度と蒸熱時間の関係にはY=aebXの指数関数で数式化でき,一番茶でY=70.91e-0.136X(Y;蒸熱時間(sec),X;胴傾斜(度)),二・三番茶でY=68.10e-0.148Xとなり二・三番茶の生葉で蒸熱時間が短かった。
    (2)芽長の長い生葉は蒸熱時間が短くなり,その傾向は緩傾斜ほど大きかった。
    (3)熟度の進んだ生葉は蒸熱時間が短くなった。
    (4)同一傾斜度における蒸熱時間の差は,蒸機に投入される生葉の投入容積と投入乾物重で説明でき,その時の重相関係数も有意であった。
    最後に,本報の取りまとめに際し,御指導を頂いた農水省野菜・茶業試験場茶利用加工部長岩浅潔博士並びに当場場長藤嶋哲男博士に深く感謝申し上げる。
  • 滝谷 洋, 中野 不二雄, 吉冨 均, 鈴木 勝弘, 鈴木 三郎, 岩浅 潔, 斉藤 弘, 深津 修一, 田中 伸三, 岩堀 源五郎, 萩原 ...
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 86-97
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    製茶における省エネルギを考える資料とするため,乾燥機の熱の流れと熱効率を求める実験を1983年三番茶期に行い次の結果を得た。
    1.設定温度70, 90, 110℃,風量7.6~10,2Nm3/minの実験範囲内では,荒茶1kg当たりの熱量は約347.7kcalで,このうち12.6%が蒸発熱として利用された。
    2.設定温度が高くなり,あるいは風量が増加しても火炉の効率への影響は認められないが,本機の効率は向上した。
    3.この実験の範囲内における平均火炉効率は85.6%,本機効率16.5%,総合効率13.9%であった。
  • 小菅 伸郎
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 98-101
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
  • 丸峯 正吉, 浅井 久良
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 102-107
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
  • 堀川 知廣
    1987 年 1987 巻 66 号 p. 108-109
    発行日: 1987/12/01
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
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